[不備]
自我を持たず
主従のプログラムだけで組成され
交わり増えることをしない彼等は
兵隊蟻に良く似ていた
ある者は鳴いたが 「聖なるかな!聖なるかな!」
他の音は有していなかった
翼に隠れた顔にはその実
目も鼻も耳もついてはいない 「聖なるかな! 聖なるかな!」
薄い水晶板を砕くような
叫びを発する割け目だけが黒く 「聖なるかな! 聖なるかな!」
感情など望むべくも無く
彼らの全てが盲いたわけではなく
眼を持つものもいた
代わりに彼等は唖していた
ただ見 ただ生き
天の軍勢の数を水増す
神の気まぐれで潰える刻まで
彼等は生きた
他に術を持たない為に
継続だけが履行された
天の国には
人によって造られた神と
粗悪な機械人形の群れとがいる
世界の創造という身に覚えの無い業の責を負わされ
その身に余る期待と依頼と敵意を瀑布のように浴び
泣くことすら許されずに神は
独り立つ
支えることも能わず天使は
作動し続ける 「聖なるかな! 聖なるかな!」
空から憐憫が賜れないのは
至極当然のことなのだった
雲の上に燦然と建つ国は
ひどく
地上のどこよりも
貧しく乾いているのだから