ただ書きたい。

65雨森 通
「かなしい影を踏んでゆく」

翌日へと続く街路の上で
僕たちの影は街灯の下で深まってゆく

君が僕たちの共有する友情と
同じ質量の孤独に飢餓を抱く時
僕は暗澹とした歌をくぐって酒を舐める

君が決して孤独を口にしないように
僕も体の内側で孤独を押し止めている

僕たちはこの世界に生まれ出た瞬間に自分以外を喪った
僕たちに襲い掛かってくるものは
止め処ない幻肢痛に他ならない

皆同質の痛みを抱えながら
それは予感の域を出ない
それゆえに僕たちは恐る恐る一人だ

僕たちの影は重ならない
だが夜という差し掛かる大きな影が
巨大な子宮のなか僕たちを兄弟にする

今夜僕たちはそれぞれ
冷たい舗道を歩みだす
孤独を血の暖かみにして
かなしい影を踏んでゆく