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名前はいらない:
「輝けるもの」
晴れ上がった朝に
果ても知らず つづく空
昨夜の重く激しい雨さえ嘘のように
ピンと張った空気で深呼吸
広げた胸と腕 一本一本の指の先まで
生まれたての 新しい酸素は行き渡る
視線の先には
朝露きらめかせる蜘蛛の巣ひとつ
狭い庭先の門の上に
蜘蛛は 巣の中心にじっとしたまま
待っていた
何をか? 私たちに知る術はなく
知る必要もない
朝露の重みに耐えながら
その輝きを守るように堂々と張る巣
そして何奢ることもなく 在りつづける蜘蛛
深と 目を奪われてどれほどか
その先に広がる道へ 駈け出す前に
神聖 という名のもとに
架かる巣の下 くぐりぬけよう
わだかまりなど 捨ててしまえる
ピンと広がる この朝に