〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山拍 10th edition〜〜

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694被告人 3/4
 子供の頃、キャンディーを盗んだことを咎められたから笑ってやった
私の生まれた町は綺麗だったろ
15の頃、祖母を騙したことを咎められたから笑ってやった
私の育った平屋は立派だったろ
20の頃、二股をかけていたことを咎められたから笑ってやった
私の選んだ男達は素敵だったろ

 今日の聴衆はついている、静粛に

裁判官の振りかざす袖がシルクの布を少し捲ったとき
それを慌てて押さえた誰かが善人面
裁判官にウインクをしたが
私は気付いていないらしい

彼は私に歩み寄り警告するふりでキスをして
私は反論するふりで彼に問いかけた

 陪審員さんが裁くなら

宥めるふりで返される言葉を
私は二度も聴き間違えたかもしれない

 あれは罪だが私は君の味方だと聞こえたので笑ってやった
あれは罪だし私はお前の味方ではない
あれは罪でもないし私は君の味方だと聞こえたので笑ってやった
あれは罪でもないし私はお前の味方ではない
695被告人 4/4:04/03/21 23:27 ID:MVMZkuC5
裁判官の欠伸がシルクの布を捲ったとき
彼がまた慌てたので邪魔してやった
シルクは罪とやらから、いいえ私から、いずれにせよシルクの布は私が捲り

 次の裁きが始まった

すでに聴衆は3人、二人は夢の中、一人は盲の唖

 今ならもう言っても良いんだろう裁判官に
そのシルクを被り裸になれと
今ならもう言っても良いんだろうその陪審員に
そのシルクを被り裸になれと

 家まで送れと

 紅茶でもいかがと招きいれてから小さなテーブルで
ちゃんと告白してと催促して長く長く愛の言葉を聞いた
檸檬とミルクどちらも並べてから小さなテーブルで
ちゃんと裁いてとからかって深く深く罪とやらの容を聞いた

私は耳でその音を聞いて、私は心でその音を聞いて
冷めないうちにと冷め切った紅茶をすすめて
しかし紅茶はシルクの上を滑り落ち
彼の唇へは届かなかった

696被告人 (+ 完):04/03/21 23:28 ID:MVMZkuC5
茶葉が死んで何処かの
 皺くちゃの婆さんは泣くんだろう
 同情した嫁は泣いている婆さんにコインを一枚握らせるんだろう
 婆さんは明日から泣いてばかりになるんだろう

紅茶は最後の一滴まで
カップからシルクに移り床に移り私の右手の布巾に移り

 だから冷めないうちにと言ったのに

 気にしないでと慰めるふりで
自分の紅茶だけ温め直したけれど
掲げた両手のまに揺れようと震える鼻からずり落ちようと
私はそのシルクには触らない