〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山拍 10th edition〜〜
子供の頃、キャンディーを盗んだことを咎められたから笑ってやった
私の生まれた町は綺麗だったろ
15の頃、祖母を騙したことを咎められたから笑ってやった
私の育った平屋は立派だったろ
20の頃、二股をかけていたことを咎められたから笑ってやった
私の選んだ男達は素敵だったろ
今日の聴衆はついている、静粛に
裁判官の振りかざす袖がシルクの布を少し捲ったとき
それを慌てて押さえた誰かが善人面
裁判官にウインクをしたが
私は気付いていないらしい
彼は私に歩み寄り警告するふりでキスをして
私は反論するふりで彼に問いかけた
陪審員さんが裁くなら
宥めるふりで返される言葉を
私は二度も聴き間違えたかもしれない
あれは罪だが私は君の味方だと聞こえたので笑ってやった
あれは罪だし私はお前の味方ではない
あれは罪でもないし私は君の味方だと聞こえたので笑ってやった
あれは罪でもないし私はお前の味方ではない
裁判官の欠伸がシルクの布を捲ったとき
彼がまた慌てたので邪魔してやった
シルクは罪とやらから、いいえ私から、いずれにせよシルクの布は私が捲り
次の裁きが始まった
すでに聴衆は3人、二人は夢の中、一人は盲の唖
今ならもう言っても良いんだろう裁判官に
そのシルクを被り裸になれと
今ならもう言っても良いんだろうその陪審員に
そのシルクを被り裸になれと
家まで送れと
紅茶でもいかがと招きいれてから小さなテーブルで
ちゃんと告白してと催促して長く長く愛の言葉を聞いた
檸檬とミルクどちらも並べてから小さなテーブルで
ちゃんと裁いてとからかって深く深く罪とやらの容を聞いた
私は耳でその音を聞いて、私は心でその音を聞いて
冷めないうちにと冷め切った紅茶をすすめて
しかし紅茶はシルクの上を滑り落ち
彼の唇へは届かなかった
茶葉が死んで何処かの
皺くちゃの婆さんは泣くんだろう
同情した嫁は泣いている婆さんにコインを一枚握らせるんだろう
婆さんは明日から泣いてばかりになるんだろう
紅茶は最後の一滴まで
カップからシルクに移り床に移り私の右手の布巾に移り
だから冷めないうちにと言ったのに
気にしないでと慰めるふりで
自分の紅茶だけ温め直したけれど
掲げた両手のまに揺れようと震える鼻からずり落ちようと
私はそのシルクには触らない