眠くないね ああそういえば、あのホテルには
青リンゴのボディソープがあったよね
と マボロシの君は言っていたよね
あのホテルに青リンゴのボディソープなんてあったかしら?
って マボロシの私は首をかしげていたよ
マボロシの君にキスをするとキスは嫌いかもって呟いたね
さっきね 青リンゴのボディソープの意味がやっとわかったよ
あれはね ホテルに置いてあったんじゃなくて
私が持っていったお気に入りの石鹸だったのよ
わざわざ新品を買ってまるごと持っていった
溶けやすい石鹸だったのよ
夜におろしたはずなのに朝にはなくなっていたから
不思議だなとは思ったけれど
それどころじゃない不思議な一夜だったから
君もお風呂で使っていたんだね
長年使用しているお気に入りの石鹸だけど
あれが青リンゴのにおいだなんて私はぜんぜん知らなかった
後でわかることって大体がくだらないことでとても心に残っている
もしも 今 あの日に戻れても
あの日と同じように私たちはしょげた顔して泡だらけ
もうね 死は常に身近にあって紐を持って私に寄り添い歩くね
君や私やあの子や僕、の くやし涙や しかめっ面や 寂しい肩や
わからなくて悲しかったコト、は悲しいうちはわからないって
わからないから悲しいんだ、とテレパシーは聞こえるのかしら?