階段のような詩を書く詩人の集い

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87なみなみお ◆o4TtjLxu9A
「五月の空」
雲が搾られて雨になったころ
ぼくは証言台から引きずり降ろされた
じたばたしていると
警備員が注射針に化けて
ぼくの脇腹に飛んできた
あっけなく体の筋肉は緩んでいくものだ
遠のく意識の奥で 水のうねるような音がした
 
目をあけると
ぼくは脱水機にかけられていた
びしょ濡れの体の爪先から
二つのローラーに巻き込まれていった
すこしだけ気持ちよい
骨がメキメキと折れる音が乾いていた
 
すっかりぺちゃんこになってしまったぼくは
白い和紙のような雲と共に
病院の屋上の黄色い洗濯ひもに吊るされた
 
88なみなみお ◆o4TtjLxu9A :03/12/02 17:11 ID:YEQdqmhy
五月の空は
蓋が落ちたようにドボドボと
光を吐き出していた
洗濯ひもに絡まりながら
花粉の一粒一粒の細部まで識別できた
風が吹くと足と手がバタついた
まるでYシャツのように
 
遥か遠方の夕暮れは果てしなく静かで
干からびたぼくは
若い看護婦に取り囲まれ
四角に折りたたまれ
そっと
箪笥の奥の
光の届かないところに
しまわれた