「五月の空」
雲が搾られて雨になったころ
ぼくは証言台から引きずり降ろされた
じたばたしていると
警備員が注射針に化けて
ぼくの脇腹に飛んできた
あっけなく体の筋肉は緩んでいくものだ
遠のく意識の奥で 水のうねるような音がした
目をあけると
ぼくは脱水機にかけられていた
びしょ濡れの体の爪先から
二つのローラーに巻き込まれていった
すこしだけ気持ちよい
骨がメキメキと折れる音が乾いていた
すっかりぺちゃんこになってしまったぼくは
白い和紙のような雲と共に
病院の屋上の黄色い洗濯ひもに吊るされた
五月の空は
蓋が落ちたようにドボドボと
光を吐き出していた
洗濯ひもに絡まりながら
花粉の一粒一粒の細部まで識別できた
風が吹くと足と手がバタついた
まるでYシャツのように
遥か遠方の夕暮れは果てしなく静かで
干からびたぼくは
若い看護婦に取り囲まれ
四角に折りたたまれ
そっと
箪笥の奥の
光の届かないところに
しまわれた