詩というよりはエッセイ風味

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約束


昨日の憂鬱さを張り付けた顔にふわり軽い風がそよぐのを感じる

道端の木の首からぶら下がる薄い隈を白い光が浮きだたせる

片足を引きずりながら
お金はかけなくていいから
優しさを慰めの言葉を、とつまずき

脳天気に転がるもの言わぬ石や草に心を添える余裕なく

以前門の前を通りすぎた見知らぬ男の夜をぼんやり膝に乗せてみる

何かしら頼りたいという思いがあるから日がな一日口を閉ざす

泥まみれになって遊びに興じる大人が歌謡曲のように流れていく


子供はお面をかむるものだと

苛立ちながら
老犬をシャカシャシャンプーし
部屋を模様替えしながら

出口のない泡がぐんぐん下へと沈むように暗くなったとき携帯が鳴り

さらり白んでいく


日常を犠牲に逸れていく陰影
過ぎる夜を濁るにまかせる
弱い自分が疎ましい


仮に男の頭が石のように重くてもそこから動かないわけではないはずだと



さやかそよぐ風
移り変わる季節


守れずにいる約束


掌に握り締めているのだ