「サンリオピューロランドにさよなら」
かわいらしいキャラクターたち、記号たちが僕の手をとって
ダンスにさそう
さまざまな色のライトが輝いて
大げさなふりで体をおりまげて
彼らの歌声が僕に見えないように設置されたスピーカーから流れてくる
生まれたときからひどく小さな笑顔が顔にくっついている彼ら
キラキラと光って目の前がかすんで見えなくなる
本当みたいに楽しくって
薄暗い部屋に誰かがおき忘れていたしわくちゃのチケット
僕はまだ大切にもっている
キャラクターたちは何人もいる
僕たちは眠るたび違う夢をみてしまう
2度と同じ夢を見ることはできないんだ
今夜
キャラクターたちが歌うのをやめたら
静かな夜にハローキティを連れ出そう その瞳を見ずに
さようなら ピューロランド
それはきっと僕がいう ハローキティは口がないから
メリーゴーランドのライトがついて 回り続けるだけのどこへも行けない馬たちが
いっせいに無言で僕たちをみつめている
ハローキティはたちどまり
僕は大きな声で君の名を呼ぶ
ハロー!ハロー!キティ!
僕の中にもあまりたくさんのものは無い!
君の中に昔はいっていた人は一体どこへ行ってしまったんだろう
ハロー!キティ!君にもし口がついていたら一番伝えたい事は一体なんだったんだろう
どこへいってしまったんだろう 本当に
ハローキティはふらふらと 頭を揺らし
それが合図で
たくさんの夢、たくさんの笑いあった寂しさたちからそっと離れてゆく 滑稽な姿で
その光景に、目を無くしたたくさんの親子連れがあらわれて写真を撮りはじめる
フラッシュのうずの中
僕は口を両手でおさえる
僕は泣きわめきながら乱暴に子供たちを押し大人たちを引き倒しはいずり何度も転びながら
そうして突然、大事なもの以外すべて消えてしまうんだ
真夜中、詩、シンナー、公園、そういうものとだけしかうまく付き合えず
うまく人の目をみれない僕は、ハローキティ、君がサンリオの外にいるのを見る
それだけで
なんどでも
なんどでも
僕は叫びたくなってしまうんだよ
キティ!君はゆっくりすわりこみ一瞬だけ何か聞こえたような気がして
でもだから 僕は君のかわりに かわりにたくさんのものにさよならを
さようなら 静かに糸がほつれてゆき
さようなら 君のプラスチックの瞳が落ちる
さようなら 布がはがれて
さようなら 君の中にはなにもないのに
さようなら 君は首をかしげて
さようなら サンリオピューロランド
ハローキティは昔、僕の友達だった
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