〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 6th edition〜〜

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ジョルジュという男のペンネームを持つサンド
女権伸張論者の革新的文学者
既婚者でありながら         私の恋人でもある

男装し、常に恋人を複数で持つ、稀代の女
第一印象は最悪であった

「何て虫の好かない奴だ、サンドとかいう女は。
実際あれが女なのだろうか?
リストもリストだ。
どうしてあのような女を私に紹介したのだ。
彼を疑いたくなるよ」

どこでどう道を踏み外したか、そのサンドに魅入られてしまい
・・・というか彼女の母性本能をくすぐってしまい彼女との共同生活が始まった

初めから分かっていた事だが・・・本当に分かっていた事だが
私との生活が始まっても、彼女の振る舞いは何も変わらなかった
連日連夜出かけ、帰ってこない日もあった
胸を患っていた私は、家でただ不安な夜を過ごすしかなかった

どうにかして彼女の関心を私だけに向かせたいという嫉妬と焦り
   そして後悔
     かつて私はコンスタンチアを一人残し祖国を逃げ出した
      大人しく品のある少女であった・・・
       私は彼女を捨てた事をまだ後悔しているのか?

サンドが飼っている一匹の子犬が庭で遊んでいる
この子犬は、ことあるごとに妙な行動をする
自分の尾を捕らえようとくるくるくるくる回るのだ

「この様子を是非とも音楽としてあらわして欲しいものだわ」
プックリと太った子犬を見つめながら彼女が言った
これで彼女を喜ばせたら、これから私だけを見ていてくれるのか?
私だけのものになってくれるのか?

とにかく私は必死だった

優しく優雅で、それでいて軽やかなワルツ
悪戯っぽい旋律 中盤には彼女の姿も織り交ぜよう

以前のように私が作った曲に夢中になるだろうか?
私が弾くプレイエルのピアノの音にうっとりとしてくれるだろうか?
 『私は何のために作曲をしているのか?』
我にかえるもう一人の私を押し殺し、サンドを振り向かせる事だけを考える私

外では相変わらず自分の尾を追う子犬
冬の冷たい陽が差しこむ部屋からはくるくるくるくる回る子犬の音が

サンドは今日もいない
97ペール・ラシェーズ墓地より独り言:03/02/13 12:17 ID:uE8TehL6
注釈
ペール・ラシェーズ墓地: ショパンが埋葬されている墓地
リスト: リスト・フランツ ハンガリーの作曲家・ピアノ奏者
コンスタンチア: ショパンの初恋の相手
            (ショパンは20歳の時に祖国ポーランドより亡命)
プレイエル: ショパンが長年愛用していたピアノメーカー