ひたすら縦書きにこだわるスレッド

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254迷探偵 ◆gqLUpInzFM
しづかに潜むあかりに揺らいで
水のかげはうなじを撫でた
後尾燈を曳いた 蛍に似てゐた
儚い生命とかはらぬ破線は 闇に浮かんで金色だつた

セピア色の写真が一枚 あなたのために残つてゐた
いつかの夏の夜に 淋しさうに ただ幽かに笑つてゐた
かすれた面の中にひとつ きれいな花が咲いてゐた
遠い記憶では二人並んで 角は少し煤けてゐた

あなたはその咲いた姿を 燃やしてしまひませうと云つた
過去の淡いスクリーンは 半分だけ燃え残つた
水面にはしる月光の底へ 川の底へと灰は沈んで行つた

ベランダに靴下がぶらさがつて 尖つた屋根が恐ろしく見へた
こんなにも優美な夜に なぜ悲しい曲が流れるのだらう
緩く家路を一人辿る みじめな男のかげがあるだけ