【メトロノーム】
毎日の儀式に似た入浴
湯船に潜るように浸かって
ゆっくりと
自己嫌悪が嵩む夜には
このまま溺れてしまえば、と
沈むふりをするけれど
お湯の中は静かで
規則正しい心拍だけが身体に響き続ける
気弱な魂の在処など意に介せず
生命を推し進める律動の
その、強さ。
言葉で綴られた理由など何程も無い
今、此処に在る事の確かさだけで
明日を過ごせるから
温かさの余韻のまま
今日も、眠ろう。
【泡沫夢幻】
生まれ生まれて
たかだか100年
死に死に死んで
億兆の年月を
【馬鹿だったあなたへ】
とても、
とても馬鹿だったあなた。
馬鹿で在る事を恥じて
知識と論理に身を委ねたあなた。
そらのいろはあお
あおがあおいことにいみはない
あおにかんげきするだけでよいものを
とても馬鹿だった頃
世界はもっと単純で美しかった
あなたは何を手に入れたと云うのだろう
馬鹿だった、
馬鹿だったあなたは、
やがて砂の味ばかりの世界を掌にする。
もう、あなたは居ない。
【秋の歌】
暑い昼間が嘘のように
夕暮れにひゅうと抜ける風は針に似た冷たさを含んで
収穫時期を外してしまったのか
庭先でしんなり鄙びる米茄子の褪せた紫
腰の曲がった向日葵は土の色に沈み種を散らす
秋のうたは
何故か物悲しい
実りの意味に気付いているから
庭木の根元に軽々しく横たわる蝉
吹く風に煽られて無造作に震える硬質な翅
秋が、来た。
【アンタレス】
停まりかけた蠍の心臓は
赤く、おおきく脈を打ち。
雑誌の付録で手に入れたボール紙の星座板
手の熱で歪むぐらい握り締めて見上げた幼い日々
天体望遠鏡を自慢する男子が羨ましくて
停まりかけた蠍の心臓は
やがて、虚空へ実りを蒔く。
ブルーバックスを図書館で読み耽った中学時代
重い元素は星の燃え残りだと知らされた
かつて私も太陽の一部だった、と呆然とした午後
シリウス、ベガ、アンタレス
星の名前を口にする事も絶えて
今
蠍座は何処だったろうか
ふと気になって窓を開いてみる
雨混じりの夜空に星は見えなかった。
【社会に】
此処に並べる1000の言葉より
募金箱に落ちる100円玉の方が重い。
【異形】
生まれる前の胎児は
勾玉に似た均整のまま、ただ眠る。
(初めての異形は中学の頃
(ただ一心に続けたデッサンに悲鳴を上げた中指
(歪に隆起した胼胝が嬉しくて、何度も親指で撫でた
折れ曲がり絡み捻れ
嘔吐を催すマロニエの樹にも似た猥雑さで
じんわり異形と化すばかりの生。
(胸の膨らみが呼び込んだものは分断
(望んでなど居なかったのに
胸の底の底で
くるくると滑らかに回る勾玉
(空手家の拳に触らせて貰った覚えが有る
(むしろ岩盤にこそ似た、ごつごつと粗く堅い関節
(そこが歪みの到達点であるなら
無垢である事が何程だろうか
瘤と捻ればかりの異形がにんげんを叫ぶ。
【麻婆茄子】
お隣さんに貰った茄子は
まだ滴る程に艶が良かったから
ざっくり短冊に切って頂こう
汗をかいて
少し多目の豆板醤
はふはふ一口毎に火を噴き乍ら
通り抜ける風が心地良い
汗をかいて
夏の、夕暮れ。
【潮騒】
引き潮の時間に生まれたんだよ、と
小さな頃に何度も聞かされたから
今でも海辺に佇むと鼓動が鎮まってゆく
眼を閉じて
漣のうねりを満たす
サンダルの親指をひやりと濡らす波
引き潮の時間に生まれたなら
きっと還るのは潮騒の只中だろう
今はただ、一時の生を彷徨っているけれど。
【放物線】
美しく単純な数式に沿って
ただ落ちてゆく小石で在りたかった。
午後6時を過ぎて
交代前の検算で叩く使い込んだ電卓
指先はとっくに数字の位置を覚えて
曖昧さも嘘も入り込めない数字の世界は
無味乾燥で、こんなに綺麗だ
美しく単純な数式に沿って
ただ落ちてゆく小石で良かったのに。
検算を終えて、ゆっくり息を吐く
胡散臭く粘っこい現実がじわっと戻ってくる
目を伏せて、
溺れるように立ち上がる。
【割り箸】
何度繰り返しても
綺麗に割れない箸に落ち込む。
左右の大きさが不揃いだからって
本当は何の不自由も無いのに
お前は駄目だ、と
箸も割れない粗忽者め、と
指の中で木片が嘲笑うようで
何度繰り返しても
不恰好に
ぱきん、と割れてしまう箸が嫌い。
【半身】
鰺の開きが海を泳ぐ
ちょっと笑えて、でも有り得ない景色
人間の半身だって似たようなもの
何時だって完璧にはまるで足りない
出来損ないの私達だけど
不足を補える他人なんて本当は居ない
そこが原点の筈なのにね
鰺の開きは海を泳がない
私は私を誰とも共有してはいない
それを孤独、と呼ぶのだとしても。
【Holmes】
胸のポケットから
大きな虫眼鏡を取り出して見せなくても。
何処かの子供が
低い塀の上に忘れていった白のチョーク
歩道いっぱいに描かれた升目
けん、けん、ぱ
したり顔で推理の行方を吹聴しなくても
気付く事は、ただそれだけで。
少し崩れたブロック塀の穴に咲くちいさな花の黄色に
短く磨り減ったチョークの中央にまだ光る金色の文字に
10月になって驚く程早くなった夕暮れの訪れに
その度ごと、
息を呑む。
【神隠し】
神様が連れていったんだよ
そう、神様が
ひんやり沈む土
この底に在るのは有機物
ただ腐るだけの。
神様が連れていったんだよ
きっと、神様が
嘘だけど。
【Mass hypnosis】
開きかけた桔梗のほっこり膨らむ蕾が
夕暮れの寒風にふるふると揺れる
何処か滑稽で、そして淋しい秋の景色。
伝わるのだろうか。
私は
私達は
見も知らぬ大勢は
嘘かも知れない
幻想を共有し
それを貨幣に
ことばを
意味を
感情を
価値観を
ひとときの振幅を
分かち合う
つもりに
なる
『萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなへし また藤袴 朝顔が花』
秋の七草を諳んじる
どれも何処かに寂しさを負う花ばかりだから
ふ、と誰かと顔を見合わせる。
それが、嘘に基く共感で有っても。
【亜光速】
時計の針さえ停滞する速度域で
洗いざらいを振り切れたなら
暮れた空を見上げる。
行き交うトラックの轟音の彼方には
ぽっかりと三日月。
私の歩みはこんなにも遅く
踵が擦り切れる迄歩いたとしても
何処にも到達しない
そんな、気がして。
銀色の玩具のロケットが
想像の空を亜光速で切り裂いてゆく
澱んだ世界を薙ぎ払う炸薬
そんな風に、
そんな風に。
私が、私で在る理由。
私と呼ばれる頭陀袋には
血と肉と糞尿、出鱈目に詰め込んだ言葉の欠片、
思考の航跡と痕跡、野放図な熱量の欲、
何が、違うのだろう。
私と呼ばれない頭陀袋と。
こうかんしよう
そうしよう
私が、私で在る理由。
肉体の檻に阻まれた完璧な孤立
ただ、それだけが
私を私として定義するのかも知れない。
こうかんしよう
そうしよう
固くかたく閉じられた頭陀袋から漏れ出る
僅かな言葉を汲み出して
後ろ手でそぅっと交換しよう
私に気取られぬ様に
その色を
貪るように嘗め尽くして
私は、
微かに、世界を覗き見る。
【10月5日、花。】
急な冷え込みに
慌てた姿態の彼岸花がまばらに開き始めた
すっと伸ばした背筋の先には淋しい赤
猫じゃらしに混じって群れ咲く秋桜が
ざわ、ざわと風のかたちに波打つ
俄雨を知らせる匂いは何処から来るのだろう
嘘のように季節は押し寄せて、
またひとつ何かを取り残して、
いつか
忘れ去られる日まで。
【黒い雨が降る場所】
ぴか、
どん。
私の住む街には
何十年かの昔に
黒い、くろい雨が降った。
<ひとり殺せばひとごろし>
老女の髪を
幼児の掌を
牧師の髭を染めて
一切の慈悲も差別も無く
誰も彼もを
人を犬を牛を草を樹を
いのちを
殺して
殺して
殺して
殺して
殺して
殺した。
<万人殺せばおおいばり>
その日降った雨は
今もまだ世界の底を浸し続けている
しとしと、
降る、黒く暗い、雨。
【烏】
ひゅう、と風が鳴る薄暮の帰り道は
コートの裾を握っても体温が逃げてゆくから
背中を丸めて、かつかつと煉瓦の歩道を歩く。
<三千世界の烏を殺し>
電線には、影と同じ色の鳥。
冷えて沈む藍色の空をものともせず。
<三千世界の烏を殺し>
誰かが言う不吉や誓約など知らない
羽根の漆黒が純白に変わろうと何程の事も無い
此処に在る自分こそが自分だ、と。
くゎあ、と烏が一声鳴いて
くしゅ、と私はクシャミをひとつ
三千世界の烏は生きる
しぶとく、逞しく。
【Sugar Pink】
Sugar Pink:
薄桃色の甘く柔らかな時間は
追憶が拵えた、罅割れを糊塗し慰撫するだけの嘘。
現実の手触りは残酷なまでにマットなざらつき。
chocolate Crysis:
板チョコの封を切る
しゃりん、と硬質に鳴る銀紙の煌めきはもう無い
馴れ尽くした甘味の奥に据えた苦い真実に気付く。
Caffe Latte Trigger:
蝉が孵化しその本質を昇華させる様に
世界を捉える角度の転換は、ただひとつの銃爪で良いのだろう
苦味とざらつきに満ちた、この世界に対峙する為に。
薄桃色の時間は、もう要らない。
【チャンネル】
薄暗い澱のような疲労が纏わり付いて眠れない真夜中
毛足の長い毛布にくるまってTVのチャンネルを切り替える
さして興味の無い音と光がくるくると明滅を繰り返すまま
無為
背中を丸めて膝を抱く
静寂が怖いからチャンネルはそのまま
爪を噛む癖は治したと思っていたのに
無為
1000のチャンネルが有ればひとつぐらいは
この夜を死んで過ごす毒薬が流れていないだろうか
無い物ねだりの真夜中に
無為を、噛み締める。
【叶わぬ逢瀬】
待ち惚ける。
それが誰だかも知らずに。
待ち惚ける。
有りもしない運命の人を。
(最早、人は神の宣託などに耳を傾けたりはしない
地上に満ちた性愛で充分満たされるのだ、と)
待ち惚ける
無条件に愛を捧げて呉れる誰か。
待ち惚ける
ただ、
待ち続ける。
651 :
名前はいらない:2007/11/14(水) 11:49:36 ID:Yo8XM7tT
きもちわるいからほんとうにもうやめてください
652 :
名前はいらない:2007/11/14(水) 11:50:26 ID:Yo8XM7tT
あなたの詩は吐き気がします腐臭がします
雨タンの世界好きですよ
頑張って更新して下さいな。
メンヘラのくせに生意気だよ、、、
拒食症のガリ体重で働いてるのも嘘だし、、、
【異邦】
ソファにもたれて息を吐いた瞬間
窓ガラスをがたん、と揺らす風に気を取られた瞬間
キーボードを打つ指と指の隙間に忍び込む感覚
何年勤めても馴染めない職場のバックヤードで
音が耳鳴りのように揺れる雑踏の只中で
俯く毎に湧き上がる感覚
間違いだ、と
此処に在る事が間違いだ、と
つい呟きそうになる
弾いたのは、自身かも知れないのに。
Je pense,donc je suis.】
急に崩れる11月の空。
びりびりと襟を震わせて吹き荒ぶ木枯らしには、
幾分か刃に似た雨粒が混じっている様だ。
pendant que je voulais ainsi penser que tout etait faux,
ニットを重ね着にしても歯の根は合わない。
痩せぎすの腕ではコートの煽りを抑えるのが精一杯で、
心頭滅却しようと寒いものは寒いんだ、と
禅だか仏教だかに八つ当たりの愚痴を吐いてみたりする。
il fallait necessairement que moi qui le pensais fusse quelque chose;
重い雲間からほんの少し覗く青の空に
ひととき、見惚れて、
et remarquant que cette verite,
不意に、気付く。
≪ je pense, donc je suis ≫,
ここに、世界が在り
ただ、世界は在り
世界が在ると思う、私が在る。
etait si ferme et si assuree,
渦を巻いて撒き上がる砂と枯葉を掌で遮り乍ら
今夜は火傷をしそうに温かいスープを飲もう、と思った。
明日目覚めても、私が在るように。
私も、冷たいけど好きです。
658 :
名前はいらない:2007/11/25(日) 07:28:03 ID:TP3NPFpp
私は、きらいです。
659 :
名前はいらない:2007/12/10(月) 11:45:50 ID:pQCYp3RV
いんちき
660 :
名前はいらない:2007/12/10(月) 11:49:54 ID:Z0kRv2wY
いいね、とてもいい
自演乙
記念
663 :
名前はいらない:2008/03/15(土) 22:32:44 ID:ov8awTDp
晒しage
664 :
名前はいらない:2008/03/24(月) 07:13:46 ID:j6+7KclD
えど
てすとーヽ(。・ω・)ノ
)ノシ 通り魔すょぅ
>>665 この女まだ未練たらしく懲りないね
出てくんなボダ
そして粘着だけが取り残された、と(嘲笑
雨っち、元気かい(^一^)?
670 :
名前はいらない:2008/10/11(土) 07:28:36 ID:eCePsb99
拒食症と自傷行為悪化で入院中
671 :
名前はいらない:2008/10/11(土) 08:19:57 ID:1qqZXXkU
お前の選択は正しい
そのまま詩ね
672 :
名前はいらない:2008/10/11(土) 08:39:15 ID:eCePsb99
もうどうでもよくなってきた
673 :
名前はいらない:2008/10/11(土) 08:41:07 ID:2vSB9gSL
>>672 おい、お前のせいでシューシューの更新が止まったんだぞ
どうしてくれるんだ?
ありゃヽ(。・ω・)ノ
何故うちの入院を知って居るのだ?
とは云え、原因は喘息なんだけどね。
不摂生は良くないっす(笑
675 :
名前はいらない:2008/11/06(木) 01:02:10 ID:/LB28ow8
メンヘラ帰れ
>>675 数ヶ月にわたって粘着し続けるお前も、十分メンヘラだと思うが。
せめて同病相哀れむって方向へ持っていけよw
677 :
名前はいらない:
あげ