『肩にふりかかる、雨が』
肩にふりかかる、雨が、
どうしてもやまないのなら
そっと傘をこわしてしまおうか
暗い昼の空、信号機がにじむ、
雨雲はゆっくりと北東を向いていて
シャツの背中に変な汗をいっぱいかいて
シャツの背中に変な汗をいっぱいかいてるよ
と 言われる
ぱらぱら、ぱらぱらと、ここちよく雨音がひ
びくのが良い傘の条件である、と 父さん、
いつだったかあなたは話してくれましたね、
父さん あなたのつくる傘は大きくはないけ
れど、ぼくはあなたの傘の雨音で眠りました、
そして雨にぬれた冷たい肩で目を覚ますので
すよ、靴がよごれないよう気をつかいました、
雨はどこまでも肩にふりかかる、父さんの肩
は、ぼくよりもさらに濡れて、重く冷たい両
肩を岩のように振りしぼり、父さんは、ひと
つひとつ、ていねいに傘を仕上げていきます
国産の傘は売れなくなって
修理に訪れる人もみるみる減って
ぼくは
ちいさく貧しい傘をひとりで差すことにした
、、雨が、、、肩に、、、、、、、、、
、、、ふりかかる、、、、雨が、、、、
、、肩に、、、、、、、ふりかかる、、、
傘、傘、傘、道行く人、傘の花が咲く、誰の
肩も雨に濡れ、濡れた肩を寄せ合う、幼な子
をしっかりと抱いている、落とさないよう、
みづいろの濁流に溺れないよう、父さん、ぼ
くは偉大な傘職人ではありません、ぼくの傘
は皆を包むには多少こわれているようです、
いやむしろこわれているのは空のほうであり、
肩にかならずふりかかる雨であり、そんなこ
とはないよ、と、なにかを隠すように諭す、
ぼくの笑顔が、
肩にふりかかる、慈愛の雨が、
どうしてもやまないのなら
そっと傘を差している
雨は肩にふりかかる