〜 やさしい風に さそわれて 〜

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232Canopus ◆DYj1h.j3e.
『Forgottin' in the Moon』

夜のまんなかで 立ち上がる兎のように
いっそ 月に狂ってしまえたなら
よかったのに

村のはずれ
丘の祠にむかうほそい道の
両脇に列をなす
篝火 ゆっくりと
四つ脚の車輪が滑るように昇っていく
ふっ と途切れそうになる あれは
みずの音だろうか それとも
ゆらゆらと炎に明滅する背中
あなたの
坂の軌道にさしかかる

 月。

(月ガ沈ミ我ラ 月ヲ忘ル
 忘ラルル月 昇リユク時
 我ラ赤児トナリテ照ラス
 初メテノ月 思イ出ヅル)
高速でまわる独楽を手のひらで受けとり
たわむ草 闇に浮かびあがる能面
あかあかと燃える
切れた弦と 放物線と 失われた記憶の

 月。