【底辺】詩板最下級民族【貧民】

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「雨の夜」 (リライト2)

車輪が水溜りをはねる音が聞こえた、12時、
買ったばかりの白いレインコートをはおり、長靴を履く。
花柄模様の傘を広げて、水に街灯の光が反射して、白い輪を
いくつも作る静かな夜の中に滑り込む。

黒のカーテンに守られて、
水のメロディ、ステップ踏んで踊りだす。
回る、回る、闇が落とす白い線。
傘が回る、花が回る、白いコートが翻る。
靴が回る、水が回る、レースのしぶきを作りだす。


古い歌を口ずさみながら、秘めやかに夜の雨の中をゆく。
足の赴くままに、どこか見知らぬ町をゆく。
あの人もいらない、あの子もいらない。
霧にけぶる雨の中、優しい夜に溶けてゆく。