詩板の選集をつくろう!運営会議

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バス停で、5才くらいの女の子と、
母親がいる。長く待っているようだ。

だからもう子供は頭で考える前に動いている。
予想もつかない危うい足取りで、
その小さな足が着地した歩道の枠に、
その子供本人さえ、どうしてここにいるのか、
あどけない顔をして、首をひねる。

そして四角い問題が解決するまえに、
またとりつかれたように動きだす。

こうして残された小さな疑問達は、
母親の中に、子供の中に、
蓄積されていく。

それは彼女が母親になった日に、
同じような風景が繰り返される予感なのだろうか。

俺は信号が青になっているのに気がつかなかった。
うしろのトラックのクラクションに、ようやく重いアクセルを踏み出した。

完璧に見えたこの午後も、
じつはもっと完璧なものに支配されているのだと思いながら。