バス停でもいい 散歩中でも
出来れば道路は二車線がいい
都合よく夜は少し疲れているので
両目の焦点はだんだんぼやけていって
ヘッドライトの光が闇の敷布に滲み始めるから
光は滑らかに流れ広がり
減速してカーブし失われ
信号灯さえが揺れ始める
その頃にはガードレールの折り目正しい領域が煩わしくなって
ぼくは身体をピーターパンへと縮めて光の中に踊り込む 純真無垢な三角笑顔に整形手術して
光たちがぼくの加入を喜んでくれている ぼくはいっとう元気に低空飛行
くるくるはゆらゆら くねくねはすいすい 時速40キロで
真面目に年をとったものだ
ぼくは現実をメルヘンに仕立てあげる方法すら身に付けてる
メルヘンもいまとなっては大事な逃げ道
でもみんないつ逃げたっていいことは知っているが
自分をピーターパンのようなガキに戻すのは本当は卑怯だ
大人になったら大人のまま背中を向けられる奴がやっぱり偉い
だいたい身の丈180センチで毛穴が開いたひげ面が光の中を低空飛行したとすると
それはもうメルヘンでなく怪奇現象だ
道行く人は神仏に祈らざるを得ないだろう
大人だから自分のつまらない姿を知っているし空想の中でも他者の視点ぐらい持てる
空想癖だけど飛び越せるのはせいぜいガードレールぐらい 制限速度も越せない
何が言いたいのかも分からない気弱なぼくが 確実にいえることはひとつくらい
年を取らないことは地獄だ
ぼくはいま揺れる光を見ている そう実際に唱えてみたりしながら
ぼくが光を見る
どんけつを走る駄目な奴が
今まさにゴールする寸前
それまでピーチクパーチクやっていた女どもが
頑張れだのあと少しだの
声援を送るのは多分
偽善からくるものだと思っていたから
ゴールしていた僕はふてくされて
ひと足先に給食に帰った
人は最も優れたものを好み
人は最も劣ったものを好み
そうして中途半端な僕たちは
所詮引き立て役に過ぎないのかもしれない
朝日は赤くて夕日は赤い
そうして真昼の太陽は
明るく照らせども見られない
ベストタイムが出たね
僕は認める
例え誰も気付かなくても
蛹を見ている
今蛹を見ている
サングラス越しに
この世は最初と最後だけじゃないから
だからこそ時は流れるように進んでいく