ーある書簡
**、
この手紙を書くかどうか迷っていた。
あの日の君はおかしかった。僕はあの乱れた君を思い出す。
気が狂いそうになる。
君は今日も平気な顔をして、隣で授業を受けている。
あの日、君の唇はぬめぬめと光り、目が、
ああ、あの目が、哀願するようでもあり、怯えるようでも
ありながら、執拗にせがむあの目が
僕の中の始原の記憶を呼び覚ます。
あの日、君は「あたしは、お便所なの」と、か細い声でささやいた。
僕は、そんなことはないのだと言いたい。
だが、誰か知らない男の下で、白くあえいでいる君を考えると、
気がおかしくなりそうだ。
その男をけりだしてやりたいと思うのか、
いや、僕がその男になりたい。
思うままに、君を殴りつけ、「違うだろう!」と言う。
血が染み出るまで、全身を吸いだしてやろう。
「痛い」と泣き出すまで、さいなんでやろう。
君はそれを望んでいた、あの日。
僕も望む。
軽蔑の目も欲しいのか? まったく際限のない欲望だな。
無垢を装った貪欲な牝犬だ。
ひらひらと骨をみせびらかしてやろう。
お前は犬だ。
ー独白
彼女から、離れるべきなのだと理性は思う。
奴隷は彼女ではなく僕だ。
執拗な要求を求めるのは、あの懇願する卑屈な目であり、
僕はその暴力的ともいえる力に拮抗する支配を彼女に与える。
より醜悪で、より刺激的で、より甘美な支配を
僕のなにものかをこそげ落としながら搾り出し、歓喜する。
彼女は、支配を求めることで僕を支配する。
干からびた猿の頭が、からんからんと転がっていく。