線路は続くよどこまでも〜詩板の車窓から〜

このエントリーをはてなブックマークに追加
215ましゅう ◆ACMASyU/iM
タイミングを見計らって
頭上に半月が現れる
ぼかし絵の輪郭で存在を告げる

冬目前の午後六時
それは立派な夜だった
半月は一人になったばかりの私の前に
追い討ちをかけて独りであることを告げた

そうか 私は 半月だったのか

彼と別れたばかりの私が
冷めた空に映っていた
今夜は半月であるべくして半月なのだ
満月や三日月ではなく
ただの半分

満月は満ち足りた顔で似合わない
三日月は儚げで媚を売ってるみたい

私は半月だ
ただの半分だ
半身を失ったまま闇夜を彷徨う小船
片割れを求めて東から西へと迷走する横顔

216つづき ◆ACMASyU/iM :02/11/06 22:41 ID:w8trbYe/
その光は
夜道を照らすには頼りなくて
落とす影も たちまち地面に溶ける
車の鮮やかなライトは
薄暗い光をかき消して轢き去った

今は冷たい空気に滲んでも
あの見えない半分の月に出会う
誰かの見えない半分になる
俯いた赤い頬は
今夜だけ独りではない

もう一度顔を上げた
白い息が半月にかかる
そうすると少しだけ
半月の輝きが増したような気がした