タイミングを見計らって
頭上に半月が現れる
ぼかし絵の輪郭で存在を告げる
冬目前の午後六時
それは立派な夜だった
半月は一人になったばかりの私の前に
追い討ちをかけて独りであることを告げた
そうか 私は 半月だったのか
彼と別れたばかりの私が
冷めた空に映っていた
今夜は半月であるべくして半月なのだ
満月や三日月ではなく
ただの半分
満月は満ち足りた顔で似合わない
三日月は儚げで媚を売ってるみたい
私は半月だ
ただの半分だ
半身を失ったまま闇夜を彷徨う小船
片割れを求めて東から西へと迷走する横顔
その光は
夜道を照らすには頼りなくて
落とす影も たちまち地面に溶ける
車の鮮やかなライトは
薄暗い光をかき消して轢き去った
今は冷たい空気に滲んでも
あの見えない半分の月に出会う
誰かの見えない半分になる
俯いた赤い頬は
今夜だけ独りではない
もう一度顔を上げた
白い息が半月にかかる
そうすると少しだけ
半月の輝きが増したような気がした