〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜
紫に枯れた樒が 姉の耳からさくさく出て
リノリウムの床を埋める 十月の夜
私は枯葉をザルいっぱい集めて 病室の水盆で焚く
テレビが見えなくなる前にと 毎晩焚く
薄い煙りが枯葉の来し方の
たぶん人々の姿を真似て ねじれ 裂ける
青い花びらみたいに ひらひらと揺れる炎
廊下では発情松虫が うっとりと鳴き
赤んぼ蒲団を着たきりの姉は かなり止まってる
火サスを見ているうちに 揉み砕いた枯葉
指先には お線香の匂い
せめて蕨餅くらい その肌が透けていれば
黄泉路に黒々と口を開けた からっぽの体内を覗けるのに
青い花びらみたいに ひらひらと揺れる炎