〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜

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813楓の一葉
水の白銀は 和式便器ならではの色
妻の手入れも行き届いて 黄茶の染みのひとつなく
この水に空の青が映ったなら どんなに美しいだろうなぁ
思いを飛ばしながら 毎日便をひる

水の白銀に 楓の一葉

 それはまったく「ある日、突然」でした。網戸を張った窓から
は舞い込んでくる筈もないものでした。深山の紅葉、といった風
情でしたね。私は便をひりに入って来て、何をするのだったか忘
れて、暫し見とれました。何か、待望のものが舞い込んできた。
そんな感じでした。

便意
便意 便意
便意 便意 便意 便意!

 どうしようもなかったんです。私が便をひるためには、そいつ
の上にどうしてもしなくちゃならない。した後には、何がどうし
ても、流さなくちゃならない。どうしようもなかったんです。

 初恋の女の子が差し出した手のひらの上にひるように、私は便
をひりました。かけがえのない想い出を流すように、私は水洗レ
バーをひねりました。どうしようもなく、それは流れて行きまし
た。

水の白銀に 映る幸せ亡くした顔

水の白銀は 和式便器ならではの色
妻の手入れも行き届いて 黄茶の染みのひとつなく
しかし手は触れられなかった どうしようもなかった
そこにあった楓の一葉は 遥か宇宙よりも遠くにあった