〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜
808 :
木がその葉を落とす国で俺は:
意外にもこの国の空は 俺達と同じ顔のつくりで
島の道を北西に進んだら着けたのではとすら思えた
「夏だからさ」と先輩は 目の奥を深くしたけれど
送電線の下の緑化工事に 俺達は接がれた
ワイヤーや縄を1日使えば軍手ごしに マメがちぎれ
石材や木を動かした晩は 腰の断面が重ならない
それでも俺は
先輩や部長達とおんなじ 譲らない重い踏みこみで
太陽が急かす日々を汗で浸し 陽炎であぶった
夏だったから
緑は腹からの勢いで強く 痛いほど生きていた
空気に混じりだす鋭角
そして葉が 落ちた
黄色 黄色 茶色 赤 黄色 茶色 茶色 茶色
木が一斉に葉を落とすさまは 俺の爪を剥ぎ緩慢に浮かすが
この国の 背景に過ぎない
冷える この地では 木を生かすために葉が死ぬという
ひび割れが駆ける痩せた幹 土中で裂け白を晒す根
枝も葉もそれを知っているから
全身の夏の形跡を 最後の暖かな樹液にして
すじと溢し 除き
葉を捨てて(捨てられ) 断ち切り(切られ) 身を震わせ一葉も残さず 残らない
809 :
:02/10/22 21:48 ID:EEYyvoTG
封筒の中で軽い”離層”は 事務的に指に傷を引く
秋が陰を増した動画は 視線にすら触れられない他人
あてもない葉は吹きだまり 葉脈も露わにかけらを散らす
戻れは しない枝
冬が来る
俺が曝されたことのない風がうろこを軋らせ 幾重もの渦で
昼を殺し
雪を 降らすという
俺達や秋を叩き潰すべく 迫る迫りせり上がる津波
「春になれば「春にさえなれば 「少しは ましだろう」
堪える 落陽の地表
だが 落ちた葉も抱いてくれるのか 春は 落ちた葉も
確かに春は 訪れるのか 冬は 過ぎるのか
綻びたスニーカーの傍
息を無くした葉の黒に 何千と霜が突き刺さる
注)離層 葉柄の基部に作られる特殊な細胞の集団 葉が離れて行く部分