〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜

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634決然と
さようなら、とつぶやいて電話を切った
こころでは当然のように
嵐が迫っていた

私の四方には壁があり
それは部屋だった
仕切られて動かぬもの
それは私だった
窓は北向きで太陽はいつも見えない
すべてはどうやら私向きにはできていないようだった

ないている
ただないているのは鳥たち
窓外に目をやると空は柔らかく晴れていた
弱い光にまんべんなく照らさせた景色が
陰影のない顔だちのまま息をつめ
身をこわばらせた木々の 次の呼吸を支えているだった

ゆくりなくも死に急ぐもののふの
しずかな躍動を懐かしむように 私は目を閉じ
ありえなかったものだけについては思い巡らせながら
次に起こるはずの何かを だらしなく待ち受け
ただじっと 待ち受けていた
635決然と(つづき:02/10/12 01:04 ID:dPU+RkOG
ないている
まだないているのは鳥たち
あの日のあなたのつぶやきが
私をかき混ぜ いまも生かしつづけているように
美しいものは音の中だけに
存在している、と深く念じ
次の何かは必ず起こる、と深く念じ

はたして
風は山を越えて立ちがる
景色は乱れて音は激しく揺れ
木々は弛緩し吸い込んだ熱を再び吐き出して身を震わす
そして舞い上がる
無数の枯葉

ありえなかったことはただ
ありえなかったのだ
あったこと かつての季節だけが確かにあり
木々はそれを決然と脱ぎ捨てていく
その力強い摩擦音を聞く

私はおもむろに目を開いた
過ぎ去るべき冬の嵐を
受けとめるために