〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜

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616けむる森
 透明な、水銀の実る、縁には何故か
 赤い喉をした蛙の一匹が、水に片足をつけて陸を向いてそこに居る
 私は、潜水具をつけたからだで、湖の一メートル程、
 内側に入り、そこに、ひとまず座り込み
 腰から下を、そっと、粘性のない液体につける
 湖底を覆っているのは、見える限り、おそらくは
 紅葉樹の葉であり、それが朽ちもせず
 敷き詰められては、今も私の下で重なりあっている
 思うよりは、硬く、脆くはなく
 砕けるよりは、しなやかに曲がる
 そして私は両手をも水につけて
 真っ直ぐに視線を放つのだが
 こうしてみると、上空、低く薄い靄の下に
 私が潜り込んで隠れているのが分かる
 私は水遊びをする子供のような仕種で
 片手をすぐ顔の前に持ってくると、
 こうした姿勢というのは、当たり前の潜水夫には
 決して分かられはしないものだと思う
 水につけてよりすぐに、やはり下半身は低温が侵入し
 感覚をなくしているのだが、あの独特のかゆみを感じていて
 今には、それが全体に、響き低く発熱しているように感じられた
 ようよう、私は腰を上げ、沖合いへ歩き、
 立ったまま半身が埋まる頃に、
 水面をできる限り波立たせぬよう
 膝を少し曲げ、頭頂から潜り込んでいった
(続く)
617けむる森(続き):02/10/11 22:19 ID:M3ia4+qm
 湖の中で、湖底はアリノス状に中心に深くなっていて
 私は斜めにその先へ刺さっていった
 やはり生物の居ない、僅かに白濁した水質であり、
 透明度が高いのでかなり先の湖底を見ることができるが、
 底には水草ひとつなく、縁と変わらずに落ち葉が、
 堆積している
 中心近くまでくると、深度はかなり高く、
 見上げることもないが、辺りはふいに暗くなった
 そこで、相変わらず湖底を覆う落ち葉は朽ちもせず
 ただ、段々と、黒く、深く、変色している
 奥へ、
 私は深く突き刺さり
 今や、湖底近く積もった落ち葉を掻き分けようかという頃に、
 腕の先で、動かした手が水を回し
 それと共に、すぐ近くまで迫っていた黒い落ち葉が、
 一瞬に舞い上がって、私の目の装備に張り付いては落ちた
 その次には、私はほとんど湖底に顔を埋めるようになっていて
 眼前が迫ってきた
 だが、そこには何もない
 変わらぬ灰とまだらの黒ばかり
 落ちている
 はずの友人のからだ
 そして、私は、突き刺すように手を伸ばし
 その先へ
 からだを、至らせようとするが、
 近付いては、やんわりと反発されて戻り
 巧くいかない
 そうするうちに、乱れた落ち葉が何度も視界に渦巻き
 張り付いては、一枚の仔細な形を
 見せては落ちて、流れていく