〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜

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611桜のわかば
あの時全てはきれいな世界で 
太陽はとがった光を放ちました
空気はきんと冷えていて 透明感がありました

真夏の庭の片隅の 大きな老いた桜の木
生っぽい葉を少しずつ 毎朝庭にまいていた
真夏の風に煽られて さらさらと散る桜の葉
「弱っているのよ、老木だから」
「酸性雨の影響だ」
大人は色々教えてくれました
わたしはただただ葉を集め、庭の隅に埋めました
スコップを目印に立てました

どんどん増える若葉のお墓
するどさを失っていく太陽
冷たさを増した風
老木は丸裸になった
かちかちの幹、こわばってもろくなった枝を残して

日光がすっかりまるくなってしまったある日
桜は伐採されました
枯れ木は危険だからです
よどんだ曇り空の下、わたしは少し泣きました
何が悲しいのか分からなくて 小枝を記念にもらいました