〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜
陽はあまねくそそぎ
おもい実にかがむ夏みかん
四年目のぼくらの庭で
そろえた髪が羽ひろげる
止まれないのでは、と 腰を浮かすほど
娘はしばふの波を とててて越えていく
ゆりかごのふちに手をかけて まわり 戻ってくる
ギューニューくさー ギューニューくさーと 羽根を乱して
「その匂いはきみのものでも あったんだよ」
きょと、と止まった豚足が しらないもんっと跳ねていく
そのせなかを追うように
まだ見ないわが子が 力づよく一歩
そらの透明がゆらぐ目で 妻がわらった
以前のように 彼女をきれいだとは思えなくても
縁台のきょりを縮める 娘のおしりも入れないくらい
いぶかる妻の注意を ことば少なにそらしそらし
しらじらしく指した先 ゆりかごが娘と振れ
ほころぶ庭のテクスチャー
いまこのときが 昼のみじかい夢のように
こんな小さい子供たちも ぼくらの腕を去るのだろう
風化する ぼくと妻を かろやかに蹴りつけてそとへ
つぎの世代へ
ぼくから妻へ
ぐん、 と娘へ
この夏さいごの風がいく
そしてはしゃいでいる ゆりかご