〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜
春だ 春
物語が始まったり漂ったり
泡のようにはじけて人が死んだり
ためいき その他
あまたあるものの透きとおる季節だ
未来とともにある不安に
買物帰りの主婦さえ
浮き足だち
名も知らぬ花など飾ったりしてしまう
とたんに居間も透きとおる
春だ
春 はなぐもり
せっかちな桜が風をにらんでいる
(三月の満開!)
新しいものはより新しくなり 枯れゆくものも
低くゆっくりとした若い血を肉に注いで
新しい風にそなえる
そしてその先の
雨のために根を育てる
身をよじる
砂絵のようなビル壁
風の通らない路地にも
けだるいぬくもりとくもり空の視線
どこかで誰かが云う
「まんべんなく街はやわらかい」
そして
ようやくポケットから出された
ぼくたちの白い手
新しい物語のための
新しい風が 小さく立つ
花びらはまだ枝を離れようとしない
一瞬 過ぎる倦怠に
屋上の猫があくびをする
若葉のあぶらむしたちもあくびをする
つかのま透きとおる
こもれびにふと
立ちどまる
ぼくもつられて 大あくび