〜〜詩で遊ぼう!投稿梁山泊 3rd edition〜〜
雷神は見たことがある
真夏の夕方4時過ぎだというのに
いきなり夜がやってきて
町は鈍いグレーに覆われた
「まるで」と思った瞬間、雨が降り出して
まだ世界の終わりじゃないんだ。ってことにだけは安心した
13階の窓から
変貌した地方都市のありさまを眺めていると
隣の屋上に立って
誰かが雷を呼ぼうとしているのに気がついた
金色のたてがみと黒いスーツが
雨なんか降ってないみたいな乾いたばたつき方で
目がないから狙いは定まらないけれど
どれかのビルを間違いなく裂こうとしていた
あたしはデスクの下に潜り込んで
一所懸命ポテトを食べるくらいしかできなかった
風神は見たことがない
台風吹き荒れる最中でも
空を動いて行くのは黒い風の龍だったし
台風のあとの掃除で
落ち葉を散らして遊ぶのは風の精霊だと思った
そういえば雷神が町を狙っていたあの時でも
アルミサッシの窓はかた、とも動かなかった
風神を探そうと思うようになったのは
どうしてもあの雷神のペアが欲しかったから
台風の季節がまたやってきたことだし
今年こそは見たいんだ
まずは電車の中から探してみよう