/きのうみたゆめのはなし
まず 何から話そうか
という言葉から始めてみよう
安易で
もったいぶって馬鹿みたいなのが
今の僕にぴったりでいい
あらかじめ言っておこう
これから先の文章に
昨日見た夢の話は出てこない
夢なんて ここ数ヶ月
まったくお目にかかっていないし
こうした説明文がずらずらと続いて
イオンカードの入会誓約書みたいに
穴のないように
完璧に漸近で
その上むつかしく仕上げてみせては
君を
またはそのほかの誰かを
遠ざけていたのが今までの僕で
今までの僕たちの亡骸が堆積して小山のようになっている
僕という一人のちっぽけな大地に
アルミのシャベルをもって立ち向かうのが
今の僕という淡い意思だ
「スピルバンはもう少ししたら終わっちゃって、
そうしたらこのおもちゃは古くなっちゃって、
そしたらいらなくなっちゃうからね、
だからべつにほしくないもんー」
我慢するということを覚えて
遠慮や強がりや建て前を駆使していた幼稚園生は
自分の中に穴を掘って
欲や願望をしまい込む
年を経るごと
僕はそれら隠し事に長じ
秘匿されるのは
恋や感情 決意や夢におよび
僕 と い う 表 面 は
滞りなく優良に育った
今夜 僕の中を掘ってみよう
あんまり上手く隠したもので僕自身にすら見つけ出せなくなって
その内に忘れ去ってしまった
想いや 夢や 僕だったものを
掘り起そう
それは鑿と槌で化石を取り出すような繊細な発掘作業
これは今までの全ての僕に対する裏切りで
今までの全ての僕に対する危害で
今の僕自身の自傷でもあり
救済でもあり
真剣な暇つぶしだ
それはきっと鎧の一端だから
上記の常用ではない漢字や言い回しに冷笑というか苦笑して
覚悟をしきれない自分を再確認して
さて
でも
死んでしまえ