〜チャンプを目指せ!投稿梁山泊 2nd edition〜
774 :
真珠の水飛沫:
眩暈がする熱気 岩をよじ登る
腿まで浸かり 川の中を歩く
絶壁にある 僅かな段
下を見ないように
ツル草を掴みつつ 向こう側へ
目の前の巨大な岩 溜息が2つ
もう 引き帰そうか・・・
『えー、おかぁ!あちゃーやー、わんねーヤンバル(*1)いちゅーんど!』
ねぇ、お母さん!明日、俺はヤンバルに行くよ!
『ヤンバルまでぃん?はぁーっさ、わらばーには危ないよ。何しに行くばー?』
ヤンバルまで?あれま、子供には危ないよ。何しに行くの?
『何でもいいやしぇ・・・』
何だっていいだろ・・・
キッと前を見る 先はまだ長い
ふと手を見る 血まで滲んで爪がボロボロだ
『この岩を越えたら・・・』
しにちゅーばー(とても我が強い)な どぅしぐわー(友達)を見る
ヤツも俺を見ていた 眉こそハの字だが気持ちはひとつだ
さぁ 先へ
どれくらいの時間 岩と格闘しただろう?
ふと前が開けた
まぁるい水飛沫 汗まみれの坊主頭に降り注ぐ
うっそうと茂る深緑色
弾ける白の珠
薄水色の冷たい風が心地良い
ヒジー(*2)に来たぞ!
真っ赤な顔2つ
遠い昔の 真夏のある日
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*1 ヤンバル:「山原」と書いてヤンバルと読む。
沖縄本島北部地方の山岳地帯全般を指した呼称。
*2 ヒジー:沖縄本島最大の落差と水量を誇る「比地(ひじ)大滝」。
現在は滝壷まで遊歩道ができ、それを使えば山のふもとから40分ほどで着く。