〜チャンプを目指せ!投稿梁山泊 2nd edition〜

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11第三週Champ作品「 火 」
匿名希望(某コテ):02/05/24 23:19
「火蛙」

私という木は
草も生えない焦げた丘の上に 立ち
両手を枝として広げ
千の青い林檎を実らせて
待ち望んでいる
ついばむ嘴を
もぎとる手を。

私を仰ぐ蛙どもは
私に実っている林檎の蜜を狙って
喉を鳴らしてずっとそこにいるのだが
彼らのためにひとつとて
落としてやる気にはなれない
自慢の跳躍でもぎとってみろ
そのうち干物となる運命か?

しかし蛙とは
火を吐く動物であったか
丘を焦がしただけでは飽き足らず
私の根元は既に焦げている
しかし侮るな
私の逞しい千本の根は
貴様らごときの火では焦がし尽くせぬ。

しかし私には見えている
蛙どもは木に登ることを覚えるだろう
怒りに我を忘れている蛙どもは
もはや蜜を啜ることなど意中に無く
千の林檎を焼き尽くしにかかるだろう
青い林檎は炎で内から赤く染まり
どす黒い灰を風に飛び散らすだろう。

もしも
私がもしも歩けたなら
前へ進み続ける人間であったなら
そして私の腕の林檎が
蛙の目につかぬところに実っていたなら
彼らは私を馬鹿にして
小便もひっかけぬただの蛙であったろうに。