「茗荷」
茗荷 しゃっきり薄むらさき
食べすぎたらだめっておばあちゃんが言った
こどもはせっかく覚えた年表を忘れて
おとうさんはおかあさんにやさしくするのを忘れて
おかあさんはおとうさんに恋したわけを忘れて
年寄りはこの世が楽しかったのを忘れる
茗荷 去年のとこからすこしはずれてつんつん
どうせ根っこはつながってるんだから
拗ねてるだけなんでしょ
茗荷 あれから何年も何年も信じて
摘んでは食べてるのに忘れられない
茗荷 なんだかかなしい傷あとのいろね
さっくり切ったらむかしの涙がよみがえりそう
ね、茗荷 いくらあなたにちからがあっても
消せない思い出だってある
きっとおばあちゃんも遠いむかしからそんなの持ってるけど
知らんぷりしてかくしてる
茗荷 ほろにがく喉にしみてつんつん
だっておばあちゃんもわたしと同じ
女の子だったわけだし