379 :
犬大好き:
眼科の待合室は、今日も白い眼帯がたくさん並んで、盛り上っています。
右目眼帯人は左回り、左目眼帯人は右回りで、トランプに興じています。
そこは真昼の森の、古い野外病院です。
眼帯をくわえた百舌鳥が、テーブルの上に羽ばたいています。
昔の歌がちいさく聞こえてきますが、誰も歌詞など知りません。
高い空には、花びらみたいに薄い月が、空気と一緒に震えています。
ふいに誰かが立ち上がって、森の奥へと向かいます。
そしてそれきり、帰りません。
右目眼帯人は左回り、左目眼帯人は右回りで、森の奥へと向かいます。