自分だ 自分だ 自分なのだ
殺しているのも
殺されているのも
奪って富むのも
失って呪うのも
止めようもなく
それはみんな自分がしていることなのだと
海が答えた
海が襲い来る!
守るべきものはたくさんあるのに
守ってくれるものはないのだ
長く髪を伸ばせ 青い衣を着て
怒れ 訴えろ
どうして黙っていられよう
漫ろ笑み
いまは病院でながい居眠り
激動の時代を笑い飛ばした
あのひとが安らかにながい夢路
テレビが映す 燃える日章旗
「なんでいまさら言うのかねェ
「なぜあのとき咎めなかったのかね」
事情も知らずに私は嘆く
翁 昏昏と沈黙に耽る
「お互い不憫で遊んでいるの
「親父は捕虜さ 妹は餓死さ
波に呑まれてフィリピン・パブへ
そぞろつないだ 画描きの生命
「逃げた 逃げた ひたすら逃げた
殺さなかった 殺されなかった
でも襲われた だから笑った
そして許した 酒に溺れた
「ボケて ボケて ボケまくった後
ボケ切ってもうた ボケの最果て
ユーモアと怒りに満ちた微笑は
頬の丸みを日に照らされ
浜辺の病棟最上階
秋蝉の声はカラカラ響く
「ユルセ 笑エヤ 笑オウヤ
……。」