【渋谷のキング】まことPart219【イエバス】

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279実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー
私が教師になって初めて一年生の担任として受け持ったクラスに「小山」という子が居た。
初日。出席簿を順に読み上げながら出欠をとり顔を確認していった。
大きな声で返事をする子、眠そうな声の子。色々な子がいたが、小山くんだけ返事が無い。
素行の悪い子なのかと思ったが、聞えていないわけでも無視をしているわけでもない事はわかった。
私とジッと視線を合わせずっと不思議そうな表情をしている。
「ちゃんと返事をするんだよ。」と注意したのだが、その状態は数日間続いた。

一年生は入学数日後、簡単な学力テストを行うことになっている。
私達教員一同は小山くんのテスト用紙を見て驚いた。氏名欄に汚い字で「こやまじゅんいさ」と書いてある。
「じゅんいち」ではなく「じゅんいさ」。
鏡文字を書く子供は珍しく無く、稀にこういう子も入って来るとは聞いていた。
新入生にはこんな子もいるのか、大変だな、と一年生へ教鞭をとる事にプレッシャーと強いストレスを感じ
ひらがなから教えなければいけない生徒がいるだなんて、とまるでハズレくじを引いた気にもなっていた。

翌日の出欠確認でも小山くんの返事はなかった。しかしもう解決の糸口は見えていた。
授業が始まりテスト用紙を返す時、
「こやまじゅんいさ君」と呼んでみると、右手を垂直に高く挙げ、勢いよく立ちあがり
「ハイ!」と大声でうれしそうな笑顔で返事をした。
小山くんは間違えて「じゅんいさ」と書き続けた事で自分を「こやまじゅんいさ」だと認識している
自分のバカが原因で自分をもっとバカにしている、複雑にバカな脳を持っているバカだっだのだ。

翌朝からクラスでは小山くんの元気な返事が聞けるようになった。
私が高校教師になって初めて受け持った一年生思い出
じゅんいさくんは今もどこかで元気に返事をしているのだろうか。