734 :
1/7:
「・・・・・・ん?」
どこだろう。辺りを見渡したが、真っ暗で分からない。
なぜか全裸で寝転んでいるらしい。冷たい感触を床から感じる。
(・・・・・・レイプされた?!)
体のその部分に手を当ててみたが、どうやら大丈夫のようだった。
(やられてたら、もっと痛みがあるはず。大丈夫。)
そう言い聞かせた。体が縛られていなかったことも少しだけ安心できた。
首に手を当てると金属の感触があった。
首輪?いや、そうとしか考えられない。
しかし何故首輪が?なぜここにいる?
これまでの出来事を一つずつ思い出してみる。
(昨日は大学から帰ってご飯を作って食べて、ドラマを見てすぐ寝たはず
・・・ということは寝てる間に誰かに運ばれた?)
不意にバトル・ロワイヤルのテーマが脳裏をよぎった。
(これ、DVDで見たのと同じじゃないの・・・・・・!!)
叫ぼうとしたが寸前で思いとどまった。
ここまでやられてると叫ぶだけ無駄だろう。
何より犯人に見つかることと、パニックになることは避けないと危険だ。
(落ち着け私・・・まずは明かりを探さないと)
手探りで近くを探っていると、低いテーブルを見つけた。
テーブルの上には、わざとらしく懐中電灯のようなものが置いてあった。
カチッ
明かりがともった。
「ふぅ・・・」
周囲を見渡すと、6畳くらいのフローリングだったことが分かった。アパートの一室だろうか。
部屋の隅に大きな鏡と私のジーパン、見たことないアニメ柄の白Tシャツ、
コードが延びて箱に繋がっている怪しげなパンツ、そして見慣れた私の携帯が置いてある。
部屋の外に出るにも全裸じゃまずい。
ブラジャーはなかったけど、贅沢を言うわけにもいかない。
ただこのパンツは色々な意味で危険だと判断し、とりあえずノーパンで服を着た。
(携帯で助けを呼ぶのが最善策か・・・いや犯人を怒らせたらまずいか。)
そんな事を考えながら携帯を見たが、圏外だった。
私の携帯にはGPSはついていない。白い犬のCMを思い出しながら後悔した。
鏡で首輪を観察すると、やはりバトル・ロワイヤルで見たような首輪だった。
横の方に小さなデジタル数字がついていたが、見なかったことにする。
恐怖を振り払うために鏡から目をそらし、しばらく辺りを見渡す。
ドアは1箇所。鍵をかけられているかどうかは分からないが、ドアを開けるのもためらわれる。
躊躇していると、私の腕時計が見慣れないラジカセの上に置いてあるのを見つけた。
寝る前に枕元に置いたはずのものだった。
736 :
3/7:2009/04/29(水) 23:54:22 0
(よっと・・・)
時計をはめた。11時36分。まだ朝だ。
ラジカセを見ると、カセットテープがセットしてある。
(今度はSAWシリーズの真似・・・いやそんなはずは。
でもこれはスイッチを入れろってことだよなぁ)
そんなことを考えた。恐怖に襲われそうになったが、負けるわけにはいかない。
この部屋でやり残したことがないかどうか、もう一度冷静におさらいして辺りを見回した。
服を着て時計と携帯を持った。いつでも走り出せる状況だと確認してラジカセのスイッチを入れた。
「・・・こんにちは。『運命の出会い』事務局です。
あなたは性の再教育プログラムの対象者に選ばれました・・・」
(・・・・・・!!)
若い女性の声が部屋に響く。
「・・・運命の出会いを信じることなく、妥協して結婚するアラフォー。
せっせと風俗に通う会社員。
誰でもいいやと体を売る高校生。
オナニーで性欲を解消する大学生。あなたもそんな中の一人ですね?
運命の出会いの大切さ、運命の相手との付き合いの大事さ。
それを体感してもらうのが本プログラムの目的です。」
737 :
4/7:2009/04/29(水) 23:54:51 0
テープは続ける。
「・・・あなたの首輪には爆弾が仕掛けられています。
8月26日になった瞬間、爆弾が爆発します。
それを防ぐために、あなたには運命の相手と性交渉、要はセックスしてもらいます」
(・・・・・・!)
「運命の相手にあなたの体内で射精してもらい、
その精液とあなたの体液の混合物を首輪のデジタル時計の下のセンサーに接触させてください。
あなたと相手のDNAを簡易的に測定し、一致したと確認できればタイマーは止まり首輪が外れます。
それ以外の方法で首輪を外そうとすると・・・わかりますね?
警察や他の誰かに相談するのもルール違反です。
相手と1000m以内に近づいたら、パンツのローターが振動します。
そのローターの振動開始から20分以内に、精液をセンサーと接触させてください。
それができないと、やはり爆発することになります。
同じ解説を、あなたの運命の相手も聞いています。
あなたの運命の相手は、同じ首輪をしている男性です。男性はローターではなく、後ろの穴に棒が入れられています。
あなたと同じアニメ柄のTシャツを着ていることでしょう。」
その男が少し可哀想になった。
738 :
5/7:2009/04/29(水) 23:55:22 0
「ここは東京都新宿区の廃ビルです。
あなたにはこれから街に出て、運命の相手を探してもらいます。
これは強制ではありませんが、あなたと運命の相手に同じ3箇所を指定します。
東京駅八重洲北口、渋谷ハチ公前、新宿駅東口です。
この3箇所のどこかを目印に落ち合うことをお勧めします。
説明は以上です。よろしいですか?
期限は8月26日になった瞬間です。それでは・・・・・・スタート!」
(スタートって・・・私処女だよ?!死にたくないよ!!!)
一瞬誰かの冗談かとも疑ったけれど、そんな親しい知り合いはいない。
冷静に考えようと何度も思ったがやはり混乱した。
しかし思い当たる節がないわけではなかった。
ライヤーゲーム事務局が新しいゲームを始めたと、噂に聞いた事があった。
(そういうことか・・・)
739 :
6/7:2009/04/29(水) 23:55:51 0
テープを巻き戻し、聞きなおす。
このままでは8月26日になった瞬間に死ぬ。
それを避けるためには首輪をした人を探して20分以内にセックスし、射精させなければいけない。
1000m以内に近づくと、ローターが知らせてくれる。
逃げられるかどうか、何度か考えてみた。しかし何度考えても難しそうだ。
事務局の人間が警官に変装していた・・・それが頭をよぎってしまう。
警官に言うのは危険すぎる。事務局の人間は何だってやるだろう。覚悟を決めるしかない・・・
でも何故私が?
・・・きっと誰でも良かったんだろう。
さすがに戸田恵理香にやるのは気が引けたんだろうから、彼女と正反対の私に来たんだろう。
とても内気。彼氏なんて出来たこともない。
高校の頃に好きな人はいたけど、もう結婚したらしいという噂を聞いた。
女子大なのに大学と家の往復のみ。性欲処理は一人遊び。
(・・・なんだかなぁ)