このスレ内で語られる内容は完全なフィクションです。
実在の個人及び団体とは一切関係ありません。
1(469)さん乙です〜。
あれは続きますよね!?新スレでもお願いしますっ(;´Д`)
>>1 469たん乙ですー!
投下のみならず新スレ立てまで…
ありがとうありがとう。・゚・(ノ∀`)・゚・。
続き楽しみに待ってます!!
>>1…いや、469さん乙です。
チバの肩・背中の骨格ふぇちの私には、も〜う堪らんとです(*´Д`)ハァハァ
あの〜…
もしかして469さんって、前に目を怪我したアベのお話を書いてくれた方と同一人物?
あのお話も、チバの肩のラインにこだわった描写があったから…
それもあってあの怪我アベのお話が大好きなんですが(*´∀`)
勘違いだったらゴメンナサイ。
>>1=469タソ乙です。
エロ肩のチバ話、あそこで終わっちゃ住人総生殺し状態に陥ると思われます。
ぜひ続きを〜!!!
あ、これ新スレ引っ越し祝いです。つ
http://k.pic.to/3jefw 待ち受け用に加工したものなので、
上部に妙なスペースが空いてるトリミング…ごめんw
469さんスレ立て乙です!
このスレにもいっぱい職人さんの投下がありますように…。
>6
この写真見たことないけど、テラカワユスなスットコさんですね(*´Д`)
自分も待ち受けにしたいなー
すいません長いです。左塔637から読んで頂くと、ちょっとはわかりやすいかも知れません。
----------
並木の隙間から2人の姿が見えて、そこで俺は足を止めた。
この公園は広くて、散々走って来たけどまだ入り口まで数メートルある。
めんどくせえ。ここから入ってもいいよね?ああそうだ、こっそり近づいて驚かしてやろ。
そう思いながら静かに踏み出したのとほぼ同時に、ベンチの二人が動き出した。
アベくんがコウジくんの手を掴む。コウジくんの手の平や指を舐めて、アベくんが企み顔で笑う。
---見てない。俺は何も見てない。
くるっと身体を反転させて、今来た道を急ぎ足で戻った。
駅前のカフェに入り、一番奥の席に座ってコーヒーを注文する。
待つ間に俺は、タバコをバカみたいに吸いまくった。吸って、消して、また吸って、消して。
そうやってどのくらい経ったか。
コーヒーがテーブルに届いた頃、目の前の小さな灰皿には、勿体ない程長すぎる吸い殻で溢れ返ってた。
タバコを何本揉み消しても、頭を強く振っても、コーヒーをぐるぐるとかき混ぜても、
さっきの二人の姿が目の裏側に焼き付いて離れなかった。
あれは何だったんだろう。あの時二人の間に流れた空気…まるで恋人同士みたいな、
…"恋人同士"? …っは、何言ってんだ俺。バカじゃねえの。
自嘲して笑いながら、空になったタバコの箱を捻り潰して吸い殻のてっぺんに乗せた。
カップを持ち上げて、くい、と一口含んだ時に、ふと店内の時計が目に入る。
14時、30分…?やべ。
苛立ち怒るみんなの顔が浮かんで、俺は慌てて店を出た。
----------
目が、知らず知らずのうちにアベくんの口元やコウジくんの指を追ってしまう。
あの日、撮影が終わった後、2人はさっさと帰ってしまった。
何か急ぎの用事が入ってたのか、それとも、…いや、だから、変な事想像してんなって。
「なーに考えてんの?」
打ち上げの席で、酔ってほんのり顔を赤らめたコウジくんが覗き込んでくる。
「…別に」
言いながら、やっぱり目線はコウジくんの手元に落ちる。
視線に気付いたコウジくんがひらひらと手を上げた。それを追いかけて一緒に上がる俺の顔を見て、ぷ、と笑う。
「どうかした?」
「こう、」
『公園でアベくんに指舐められてただろ』って、そんな事言ってどうすんだよ。
「…や、何でもない」
「何よ、気になるじゃん。何?」
「何でもないって」
「俺には言えない事?」
「…そうだよ」
「そっかー」
残念そうに下ろされたコウジくんの手が、グラスにぶつかった。
慌てて支えようとしたその指先に、ぴしゃん、とビールが降り掛かる。
「うわ、もったいねー」
指先の雫を舐め取るコウジくんを見て、俺の鼓動が早くなる。
あの日の2人の姿がまた、目の裏にじわじわと浮かび上がる。
途端に耳鳴りがして、その高音の向こうで、俺を呼ぶコウジくんの声をぼんやり聞いていた。
耳鳴りが煩すぎて、頭が割れそうに痛くて、全身の隅々まで苛立ちに支配された。
「どした?大丈夫?」
「…公園」
「ん?」
「こ、公園でアベくんに指な、…舐められてた。よね?」
一瞬の沈黙の後、コウジくんがバツ悪そうに俯いて頭を掻いた。
ああ、こんな事言うつもりじゃなかったんだけど。どうしよう。
「あー、あれね…」
「気持ちいいの?」
止めろって。何を聞いてんだ。
「…興味あんの?」
あの日のアベくんと同じような企み顔をして、コウジくんが笑った。
「アベくんね、上手いよ?色々と。チバもやってもらえばー?」
---ふざけんな。
その言葉が出るより先に、俺の手はグラスを掴んでコウジくんの顔目掛けてビールを打ちまけてた。
「チバ!」
背後から呼ぶ声に驚いて振り返ると、すぐ傍ににアベくんが立っていた。
「何してんのお前」
「…ごめん。ごめんアベくん。ごめん」
「謝る相手が違うだろが」
「いいよいいよ、今のは俺が悪いんだもん。なあ?」
にや、と笑うコウジくんと、俺を睨むアベくん。
全身に広がる苛立ちと焦りが、汗となって手の平にじわりと滲み出た。
「………帰る!!」
俺は、どうしたらいいのか判らなくなって逃げ出してしまった。
呼び止める声を無視して、酔って覚束ない足を必死に動かして店を離れた。
----------
『次遅刻したら罰金。』
あの撮影の後、マネージャーに無理矢理約束させられた。
そのお陰で、今日は集合時間の2分前に事務所に着いた。
ギリギリだけど、遅刻じゃねえもんな。俺だってやりゃあ出来んだよ。
罰金なんか取られてたまるか。あんな金額、誰が払うかっつーの。
勝ち誇ったように笑ってドアを押し開けると、部屋の隅っこにアベくんがいた。
パイプ椅子に座って、じっと壁の一点を見つめてる。
『謝る相手が違うだろ』
3日前に俺を睨み付けた、あの顔を思い出す。
ま、まだ怒ってるかな…。
躊躇いながら近寄って声をかけると、アベくんがこっちを見て笑った。
「お、早いな」
「遅刻したら罰金だって、言われたし」
「1万だっけ?」
「そう。ありえねえっつーんだよ」
「そりゃ遅刻出来ねえなあ」
穏やかなアベくんを見て、ほっと胸を撫で下ろした。あん時は酒入ってたし、もう忘れちまってんのかも。うん。
でもコウジくんにはちゃんと謝らないと…って、そう言えば、
「2人は?」
「キュウはまだ。ウエノは買物行った」
「キュウ来てないの?何だよ、人には遅刻すんなって言う癖に」
「お前のは度が過ぎんだよ」
アベくんが、俺の顔を見上げてからからと笑う。けれどその次の瞬間、笑顔はあっさりと消え失せた。
「…チバ」
「…何」
「こないだのあれ、打ち上げん時、」
心臓が、どくん、と強く脈を打つ。
「ごめんな」
「………え?な、何で?」
何でアベくんが謝るの?
「ウエノに全部聞いたから」
「全部、…って、」
「うん。全部、聞き出した。」
身体がどんどん熱くなる。
「…いつ?」
「夕べ」
「一緒だったの?」
「うん」
「…ずっと?」
アベくんは、言葉を飲み込んで目を伏せた。
答えなくても、それは肯定してるのと同じ事じゃん。
「………ヤったんだ、コウジくんと。」
アベくんの口が微かに動いた。何事かを言おうとして、躊躇ってるようだった。
言えよ。言ってよアベくん。
「素直に認めんの?それともごまかすの?どっちなんだよアベくん」
早く何か言えよ。ずっと黙ってるつもりかよ。
…なんかむかついてきた。
「アベくん、」
呼びながら、中指を突き出した。
アベくんの目が、俺の指を見て、それから俺の顔を見上げる。
ぽかんと開いた唇の間から、歯列が僅かに覗いてた。
そこに指先を当てると、押された反動なのか、それとも逃げたのか、アベくんの顔が後ろに下がった。
追いかけて、また指を当てる。
「舐めてよ。」
爪先をアベくんの下側の歯列に引っ掛ける。ぐい、と押し下げて、開いた隙間に指を滑り込ませる。
「んんっ!?」
アベくんは素早く俺の手首を掴んで、口から指を引き抜いた。
「何してんのお前」
「舐めてって言ってんじゃん。コウジくんにしてたみたいにやってよ」
「おい、」
「俺じゃ嫌?コウジくんじゃないとダメ?」
「チバ、」
「っせえな、何だよ!!」
「お前、自分が何言ってるか判ってんの?」
「判ってるよ!!」
「冗談で言ってんなら止めとけよ?」
「そんなんじゃねえよ!!俺は本気で、」
そこまで言った時にアベくんの携帯が鳴り出して、言葉が遮られた。
「…煩え。早く出ろよ」
吐き捨てて、アベくんの手を振りほどいて背中を向けた。
『本気で』?本気で何をしようっつーんだ俺。何がしたいんだよ。あーもう訳わかんねえ。
「困らせて悪かったな」
電話を終えたアベくんは俺の腕をぽんと叩き、椅子から立ち上がってドアへ向かった。
「ア、アベくん、」
「飲みもん買って来る」
アベくんがドアノブに手を掛けたのを見て、喉の奥で息が詰まった。
「…行かないでよ」
「ん?」
「い、行くなっつったんだよ。一人にすんな」
「ちょっとそこまで行くだけじゃん」
「ちょっとでも嫌なんだよ」
「…寂しいの?」
「寂しいよ」
「ふーん。じゃあ一緒に行く?」
「…やだ」
「お前ねえ、一人になんのも嫌、一緒に行くのも嫌、って、だったらどうすりゃいいんだよ」
「だ、だから、ここにいろって、言ってんじゃん」
「俺は喉が乾いたの。飲み物が欲しいの。解る?」
「わかるけど、でも、…ここに二人でいたいんだよ」
アベくんが眉間に皺を寄せる。ドアノブから手を離して、舌打ちを一つ。
「…我が儘だねえほんとに」
面倒くさそうに吐き捨てながらこっちに戻り、椅子に座って俺を睨みつけた。
解ってんだよ。解ってんだけど止まんねーんだよ。ごめんアベくん、そんな困らせるつもりなんかなかったんだよ。
俺の我が儘に付き合ってくれなくてもいいのに。俺なんか放っといて出て行けばいいのに。
「チバ」
アベくんが手招きをする。
その手の動きに吸い込まれるように近づくと、アベくんの腕が俺の首に伸びて、ぐい、と引き寄せられた。
「飲みもんよこせ」
そう言ってアベくんは俺にキスをした。
口の中に入って来た舌が、俺の唾液を絡め取って行く。
アベくんの喉が、ごく、と音を立てる。
「やっぱ足んねえな」
唇を離して、アベくんが呟いた。
「な…っ、ちょ、何すんだよ!!」
「だーってこうするしかねえじゃん」
「じぶ、自分の飲むとか、誰かに買って来て、も、もらうとか、何かあんだろ!!」
「あー、考えてなかったわ。お前が一番旨そうだったし」
「なん、っだよそれ!!俺が我が侭ばっか言うからってそんな、」
「いや可愛かったよ?それに、」
したり顔でアベくんが笑う。
「指舐めるよりキスの方がいいでしょ」
「ばっ…!!」
「『バカ』?最初に仕掛けて来たのはそっちだろ。あんな顔であんな事しやがって。堪んねえっつーの」
そう言ってまたキスしようとするアベくんを、腕に精一杯の力を込めて拒んだ。
「誰か来たらどうすんだよ!」
「大丈夫。誰も来ないよ」
「来るって!!だってもう時間過ぎてんじゃん!!」
「だーいじょうぶだって」
「大丈夫じゃねえって!」
「お前と二人っきりで話したいからって、席外してもらったんだもん。キュウの事も足止めしとくように頼んどいたし。」
「…っ!!」
「こっちから呼ばない限り、誰も来ないの。さ、ゆっくり話をしようか、チバ」
アベくんが、首に回した手をそのままに、もう片方の手で俺の腰を引き寄せる。
呆然として拒む力も出ない俺は、されるがままにアベくんの膝の上に尻を落とした。
「ごめんな?」
最初の時とは違う、明るいトーンでアベくんが言う。
「まさかお前が見てるとは思わなかったよ」
「…見てなきゃ何やってもいいっつーのかよ」
「お前だって、好きな女と二人っきりだったらあれくらいやるだろ?」
「そりゃ、…?や、やんねーよ。つーかさ、あん時は二人っきりじゃなかっただろ!」
「あー、」
「それに、コウジくんは女じゃねえ」
「似たようなもんでしょ」
「何が!!」
「好きになったら男も女も関係ねえじゃん」
「…まじで?」
「おう。」
「アベくん、そうなの?」
「さあ?そうなのかどうかは判らんけど。でもウエノは好きよ?」
「嘘だろ…」
「お前も好きだけど?」
「まじか………え?今何つったの?」
「お前が好きだっつったの。でさあ、この状態も結構辛いんだけど」
アベくんの目に欲情の色が見えて、俺は狼狽えた。
「だ、だって、だってさ、座らせたのはアベくんの方じゃんか」
「そうだけどさ、でも何でお前も退けないの?ヤってもいいって事?」
「ちが…っ、お、俺は、疲れてて、…そうだよ、疲れたから座ってたいだけだよ」
「何でそんな、自分に言い聞かせるみたいな言い方してんの」
「そんなんじゃねえ!!」
「座りたいんだったら、他にいくらでも椅子空いてるよ?」
「…だ、だって、動くの、めんどくせえし」
「ふーん?じゃあ、動かなくていいからさ、もっかいキスさして」
「やだ、…っ」
アベくんの唇が耳朶に触れた。
舌が耳の形をゆっくりとなぞって、小さな水音が脳に甘ったるく響いて、肩が小さく跳ねた。
「ちょ、やめ…アベく、…や、」
「ほんとに嫌だったらそんな顔しねえだろ」
からかうような声色で言ってアベくんが、耳の中に息を吹き掛けた。
その刺激に、すっとんきょうな声を出して身体を震わす俺を見て、アベくんは吹き出しながら両腕を離した。
「はい。もういいよ。」
「……………え?」
「ほんとは最後まで行きたいんだけどさあ、ここでする訳にも行かねえじゃん。だからもう終わり。」
「…ああ、うん」
「あ、何?ヤりたい?」
「や、………」
「ん?」
…あれ?
そりゃさ、アベくんの目とか、唇とか、すんげー色っぽくて、好きだなあって思って、
『好きになったら〜』ってのもちょっと判るなあって思ったけど、でもだからって、…あの、ヤりたい、とか、
そんなの思ってる訳、…ない、よな?…あれ?
「…わかんねえ」
「わかんないの?自分の事なのに?」
「わかんないもんはしょうがねえだろ」
「否定はしないんだ?」
「否定も何も、わかんねえって、」
「それってさ、ヤりたいっつってんのと同じじゃねえの?」
「何でそうなるんだよ!」
「否定しないって時点でそうじゃん」
「…そう、かなあ?」
「そうだよ」
「じゃあ、そうなのかな…」
「面白いねえ、お前」
何だかバカにされてるようで、全身がカッと熱くなった。
「早くみんな呼べよ。もう話済んだろ?」
「あ、怒った?」
「うっせえな、早く呼べって」
「はいはい。」
そう言って携帯を取り出して、アベくんはコウジくんに連絡をした。
手短に用件だけを伝えて電話を切り、
「みんなすぐ来るって。降りないと誤解されるよ?」
まだアベくんの膝に座ったままだった俺に、離れるように促した。
「それとも、ずっとこうやっとく?俺は別に構わないけど?」
「な、何言ってんだよ、んな事出来ねえよ」
俺は慌てて立ち上がって、隣の椅子に移動した。
背もたれに身体を預けると、酷く疲れたせいか、急に眠気がさした。
手足をだらんと投げ出し、天井を仰いで目を瞑る。
するとアベくんが俺の肩を掴んで、耳元で小さく囁いた。
「今度ゆっくりお前の処女貰うからな。」
「しょ…っ!?」
アベくんの言葉に驚いて身体を避けた俺は、勢い余って椅子ごと床に転がってしまった。
「なーにやってんの。大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃねえよ!!何だよ処女って!!」
「だってお前、男とヤった事ないだろ?だったら合ってんじゃん」
「お、おれ、俺は女じゃねえ!!」
叫んだのと同時にドアが開いて、隙間からコウジくんが顔を覗かせた。
「…何してんの、そんなとこ転がって」
「な、なんでもねえよ」
そう言いながら床から起き上がって、アベくんに向かって小さく吐き出した。
「…変態」
「はははっ!!」
アベくんは、俺の吐いた台詞なんて全く気にする様子もなく、げらげらと笑った。
それにコウジくんが興味を示した。
「何、何か面白い話?」
「あのね、チバが、」
言いかけて、アベくんがこっちをちらっと見た。
「あ、本気で怒りそうだから止めとくわ」
「えー」
アベくんはずっと笑ってた。
そんなに面白いのかよ。俺はおもちゃじゃねえっつーの。遊んでんじゃねえよちくしょう。
いつか絶対仕返ししてやる。 …無理かな。この手の話じゃ誰にも勝てねえし。
----------
その日の打ち合わせの内容は結局、何も覚えてなかった。
アベくんの色んな言葉が頭ん中でぐるぐると回るばかりで、話なんか何一つ聞いちゃいなかった。
そして俺は、その2日後の仕事で罰金を取られる羽目になる。
こんなのしか書けなくてすいません。
新スレ記念にと思ったんですが、ゴミにしかならないですねw
>>24 乙です!
アベ…なんて男…!!
両方のスレに出張って食ってくなんて…!
エラさんがかわいそうな展開になりませんように…
チバオタですが4人のうちの誰かが悲しいのは辛い…(つд`)
子ども産んでもいいとまで思ってのにね
なぜか凹むw
29 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 13:22:59 0
メンバーを当て馬にしちゃいかんということやね。
チバが2人にヤられちゃえばいいんじゃないかな…(*´∀`)
でも鰓とアベはお互いに割り切った関係ぽくないか?
鰓は「チバもやってもらえば?」とか言ってるし、
アベはこの調子でいくと「キュウも好きだよ?」とか言いだしそうだしw
>>32 これだけ読むとそうだけど
左塔スレを読んでくると微妙…
なので
>>30希望(*´∀`)
>>32 左塔の読むとそんなこと言っちゃう鰓が切ないww
>>30がいいw
いっそ3Pがいい
仲良くやりたいチバは広島ドンブリしてしまいます
広島丼ワロタ
広島丼…夢のようだわ(*´∀`)
人いにゃいね…
いるよ。普段ROM専なわけだが…。
お話しましょう
469さん、エロ肩チバの続き待ってます(*´∀`)
プ厨はまた来てくれるかな…?
来て欲しいね>ぷちゅう
>>44 気になるよね、エロ肩(*´Д`)ハァハァ…
色気があるような、ないような…っていう背中の描写が
まさにスットコだとオモタw
48 :
469:2006/01/09(月) 04:49:37 0
全然お休みがないよう今から仕事だよう
帰ってきたら頑張ります
>>5 はい…前スレ
>>79=
>>469です…
やっぱりバレバレなんですねorz
皆様を不快にさせてしまったのが申し訳なく名乗れずにいました
チバさんの肩のことは友人が大好きらしくエロいエロいと言うので
ついつい描写に入れてしまうのです
やっぱり同じ方だったんですね、469さんw
でも少なくとも私は全然不快になんかならなかったですよ(*´∀`)
むしろチバの肩〜背中の骨格描写なんてあまりないので、かなり萌えましたw
お暇な時に続き落としてくださいねー。
>>49さんと同じく469さんの続き、期待してます〜!!
で、自分も同じくスットコさんの肩萌えです。
469さんの(特に79さんのお話の時)アベが、スットコさんの肩萌えしてたので、
お前はオレか!?の勢いで(*´Д`)ハァハァしてました…wwww
>>49-
>>50 ずいぶん前だが、スットコスレで「レントゲン写真欲しい!」と
熱望していたのは姉さんたちですか?w
続きは読みたいけど、忙しいなら無理はしないでね(*´∀`)>469タソ
みんな連休でおでかけなねかなあ…サビシス
54 :
53:2006/01/09(月) 21:16:55 O
なねかなあ…って何だよ自分 orz
ハズカシス……おやすみなさい。
今日はどこも人いないね
携帯からすいません。
++++++++++++
隠しも(隠せも)しないお二方なのでタチがわるい。
(ほら、また、)
今事務所にいるのは、コンビニに行っているキュウを抜かした3人。
つまり俺と、アベくんと、チバ。
いや、問題は無いよ?
誰とだれが仲悪い、なんて馬鹿馬鹿しいものは俺達にはない。
ただ、二人の間に在る空気?みたいなもんが、張り詰めてて冷たい…気がする。
あー損な役回りだよな。なんでこういうの気付いちゃうんだろ。
そもそも事務所入った瞬間から、(あれ?)とは思ったよ。でも、ありゃキュウがいたおかげかもしれない。バタバタ動きまわるあいつのおかかげで、少しは緩和されてたんかな。
向かいあってソファに座るチバとアベくん。俺は何も考えずにアベくんの隣座って。アベくんはパラパラと積んである雑誌を適当に読んでて、チバは向かいで煙草吸ってて、俺も新しい煙草開けて、火をつけたとこ…でこの不穏な空気を感じとっってしまって。
「あ、煙草がない!ちょっとコンビニ行ってくるー!」
と言うキュウの明るい声に、俺も行くわー。なんて言いたかったけど、火をつけて腰をおろした直後だったから、行くに行けないわ状態だった。
ちょっと位変に思われてても、ひとまずはこの席から離れてたたかった、と今切に思う。
なんでアベくんは。
(まただ)
あのチバの目線に気付かない?
すごい目をして、アベくんの事見てるよ。でもすぐ反らすんだよな。
それとも気付かないふり?
話を切り出せる雰囲気ではないし、煙をくゆらせながらどうしたもんか、と考えながら向かいのソファの、斜め右に座る男を見ていた。
(あ、)
正面に座るアベくんから視線を外し、目を伏せかけたチバの目が、チバを見ていた俺の目とかち合った。
――瞬間、背筋に冷たいものが走る。
指先でもて遊んでた煙草を落としそうになった。
―お前、なんつう目で人のこと見てんの。
いや、見てたの、か。
アベくんを見てたそのままの目が、俺の目目線と被さってしまった。
その目を見て、俺は記憶の中の、ステージ上でのチバの目を思い出した。
「なに。」
チバの声にアベくんも顔をあげた。
3人の目線がかち合った。
+++++++++
誤字の多さ…死ねるorz
携帯から乙です!
これまた続きが気になるお話…(*´Д`)
続きキボンしてもよろしいのでしょうか?
61 :
469:2006/01/10(火) 08:49:32 0
こんな時間になんなんでしょう…
チバさんが可哀想な目に合ってるのはダメだー!!
という方はスルーしてください〜
62 :
469:2006/01/10(火) 08:50:30 0
籍を置いてたバンドを抜けてしまったため、日々することといえば、
暇な時にギターを爪弾くことと、バイトと、ぼーっとすることくらいだった。
たまに押しかけてくる、友達とも呼べない女の相手をしたり、してもらったりもする。
こう言うとひどくだらしないように聞こえるし(実際クギを刺してくる友達もいる)、
実際自分でも清廉潔白な男なんて思っちゃいないが、一応ちゃんと相手は選んでるんだわ。
俺に本気な娘は何となくだけど判る。そしてこっちも本気じゃない以上、そういう娘とは寝ない。
面倒くさいことになるから。身の回りも人の心も。
ついでに言えば、ここ最近頼んでもいないのに通ってくる女からはそろそろ逃げたいなあ、
なんて身勝手なことを考えている。
どうやら彼氏ともめてるらしく、そのイザコザに巻き込まれそうなのだ。
俺に責任がゼロかと言えばそうじゃあないだろうけど、
その「彼氏」も何人いるんだか知らねえくらいだし、目クソ鼻クソだよな。
どーすっかなあ。でもまあ、どうにかなんだろ。
バンドも人間関係もなるようにしかならねえもんなー。
ただ、引っ越すだけの金はないんだわ、これが。
なので、上手く俺に飽きてくれないかと、待ちの体勢を決め込んでる。
63 :
469:2006/01/10(火) 08:51:12 0
のんべんだらりと暮らしてたところに、突然ふってかぶったような妙な景色。
別にコレが俺に何をしてくれるわけじゃないし、何をする気にもならないけど、
やることととしたいことを合わせても片手で足りる俺には、妙な刺激物だった。
衝撃的というだけで、胸湧き踊るっつうこともなかったけどさ。
さすがにやってるところを一部とは言え垣間見た時は、あんまり気分のいいもんじゃなかった。
ゲイの濡れ場を見て面白がるとしたら、同じ性癖のヤツか、女だと思う。
悪いが(別に悪くもねえが)俺はそのどっちでもない。微笑ましく感じられなくても罪はないよな。
ただ俺は、長所なのか短所なのかわかんねーけど、こういうのを見ても「へぇ」としか思わない。
国際的なモノには音楽くらいしか興味がないけど、文化や習慣が違う人間の話を聞くのが好きだった。
こーれは性格だなあ。
自分と違う性質の人間を見てもどうとも思わないし、逆に自分が人と違ってても構わなかった。
迷惑がかかんない程度に、皆やりたいようにすりゃいいんだよ。
(そういえば)
絡み合う手や足を見ても興奮しなかったけど、横たわる男の後姿を見た時、目を離せなかったなあ。
つまり俺もそーゆーシュミがあるってことなのかね。
正直ありえねえと思うが、結果的にそうなるのかな。
まあそれならそれで色んなもんが広がってお得なんじゃないか?
64 :
469:2006/01/10(火) 08:52:04 0
そんな疑問や結論を自分で出したことも一日くらいでどうでもよくなり、
もうすっかり忘れた頃には、梅雨の真っ最中だった。
毎日雨だし、あれ以来窓辺には何となく近寄りたくなかったので、
向かいのアパートのこと自体全く頭から飛んでいた。
だけど。ある日の夜。
風呂上りにビールを買う金がなくて代わりに飲んでる発泡酒を煽ってると、
パラパラという音が聞こえた。見渡すと、少しだけ開いていた窓から雨が降り込んで来てる。
煙草で煙った部屋を換気しようと昼間に開けてたんだった。
少し風が出てきたのかな、とソファ代わりになってるベッドから腰を上げて窓辺に行く。
窓枠に手をかけた時点で、ああ、そういえば向かいの…ってのを思い出した。
多分だけど、ここ最近あの部屋のことが頭に浮かばなかったってのは、
前の建物自体が目に入ったとしても、例の部屋の窓枠内に何もなかったからかもしれない。
やっぱね、人間の肌の色ってのは、あると目に入るよね。
65 :
469:2006/01/10(火) 08:53:23 0
その時、窓を閉めようとした手が止まったのは、やっぱり肌色が目に飛び込んできたからだ。
口につけて飲みかけていた発泡酒が、斜めになったまま静止した。
(あー…またか)
これまでの三回と、まったく一緒の光景ってのはどういうことだよ。
数十センチ開いたカーテンと、中から漏れる明かり。
一部だけ見える、人間の体。
なんでそんなに見せたがるんだよ。
ドラマだったらそのうち殺人事件になりそうな展開だ。
それ以上に俺のこのタイミングの悪さはどうなんだ?
友達に話したら、そりゃあアベ君が見たがってんだよ、と言われたが、失礼な話だ。
発泡酒を一口飲んで、音を立てて窓を閉めた。
カーテンを引っ掴んで閉めようとした時、ギクッと体が少しだけ固まった。
───顔が見える。
66 :
469:2006/01/10(火) 08:54:30 0
雨が降ってるから細かいとこはハッキリしないけど、あれはこの間見た後姿の男だ。
それだけは何故か断言できた。
この前とは違う体の方向で、仰向けになってる。
ここの窓から見下ろすと、逆さになって見えた。
向こうの窓枠の上辺に体が隠れる形で、肩から上が覗いてその頭部がはっきりと見えた。
下半身じゃなくてホッとし…いやそうじゃなくて。
もしかしたらケツやイチモツを見るより、見ちゃいけないもんなんじゃねえか?
だってどう見ても女が上に乗ってるって訳じゃなさそうだ。
男同士ってどうやるんだろう。やったりやられたりするもんなんだろうか。
何にせよ、男だろうが女だろうが、最中の人間の表情なんかジロジロ眺めていいはずがない。
と思いつつ、ふーん、あれがこの間の男か、と感慨深くもなってしまう。
後姿から想像していたような、かけ離れてるような…
不思議な印象の顔つきだった。それは顔のつくりの問題ではなくて雰囲気から来てるんだと思う。
加えて言うなら、やっぱり相変わらず「最中」だった。
胸元辺りに、誰かの髪の毛が乗っかってるから。
「…勘弁してくれ」
何の因果で、野郎の喘いでる顔なんか見んといけんのじゃ。
いや別に見なくていいんだけど。
これ以上ここにいると、覗きでもしてると(や、してるんだけど)通報されかねない。
もうあの窓を視界に入れるのはやめようと思ったけど、
なーんで俺が気ィ使わなきゃなんないんだとも思う。
おっぴろげてるのはそっちじゃねえかよ。
「……?」
目の端に一瞬緊張が走った。
67 :
469:2006/01/10(火) 08:55:19 0
向かいの部屋の様子がおかしい。
下に敷かれた男が横を向いて、歯を食いしばっている。
上向いた左頬が赤くなっていた。殴られたのだと、すぐにわかった。
人の家の性生活に口を出す気なんか毛頭ない。
そもそも興味もない。
だけどやっぱり、眉間に皺が寄るのを止めることはできなかった。
尋常でない雰囲気が伝わってくる。
腕の伸びてきて、殴られた方の男の前髪を掴み、喉を反らせた。
下の男が苦しそうにもがいて、その手を外そうとしている。
見るからに、本当に痛そうだった。
おい、…やめとけよ。
正義感も助ける義理もこれっぽっちもねえけど、もし壁や道を隔てずにすぐそばで
行われてたとしたら、思わずそう言ってしまいそうだった。
上に乗ってる男が顔を覗き込んで、何か言い、また体を下に滑らせた。
手が髪から離れてやっと解放されたらしく、仰向けの男は喘ぐように咳き込んでる。
(何してんだよ…)
気分が悪い。
何でこんなもん見ちまったんだろう。
まるで俺自身が犯罪者になったような気がしてくる。冗談じゃねえ。
厄介ごとは俺の知らないところでやってくれよ、と手に掴んだカーテンを引こうとした時だった。
68 :
469:2006/01/10(火) 08:57:03 0
仰向けになった男が、更に首を反らせて、こっちを見ていた。
望まなくも、はっきりと目が合う。
逆さになった顔は驚いたように俺を見上げていた。
まさか人が見ているとは思わなかったんだろう。
目を見開いて、口を半開きにして、動きを止めていた。
まずいとかやべぇとか思う前に、どうしてかわからないが、俺は反射的に目を細めてしまった。
「………………」
その時間はきっと数秒にもならなかっただろうが、俺には一分くらいにも感じた。
小雨だったとはいえ、雨が降る中、まして夜だ。
なのにその表情は何故かくっきりと見えた気がする。
…人間、切羽詰った時に、あんな表情ができるもんだろうか。
哀れみを誘うんじゃなく、誰かを憎む感じでもなく、諦めた様子もない。
かと言って、扇情的でもないし、恥ずかしがってる訳でもなさそうで。
ひどく透明な目の色に、俺はカーテンをそれ以上引けずに固まってしまった。
「彼」も不思議そうに俺を眺めていた。
その時間は、あっちの部屋のカーテンが、もう一人の男によって閉ざされたことで途切れた。
69 :
469:2006/01/10(火) 08:59:10 0
「…」
俺はそのまま、手に持っていた缶の酒をゆっくり何口か飲んで、
中の様子がわからなくなってしまったその部屋をずっと見下ろしていた。
嫌な気分だった。胸がムカムカして吐きそうだ。
面倒くさい事は大嫌いだけど、自分が手出しできない厄介ごとはただひたすらに気持ちが悪ィ。
どうすればいいのかわかんねえし、わかったところでする気もない。
そういう時がたまにある。新聞で嫌なニュースとかを読んだ時の気分を倍にしたような感じ。
ムシャクシャじゃなくて、アレだよ、ムカムカ。
前髪をぐしゃぐしゃとかき乱して、持っていた缶を握りつぶした。
ゴミ箱にそれを叩きつけるようにして放り投げ、音を立ててベッドに横になる。
オーディオに繋がってるヘッドホンを手繰り寄せて、頭に嵌めた。
手を伸ばしてプレイボタンを押すと、SPACESHITSのWINTER DANCE PARTYが流れてきた。
そういえば、コレ入れてたんだっけ。ちょうどいいや、スカッとする。
ボリュームをあげ、組んだ手の上に頭を乗せて、眼を閉じる。
無性にギターが弾きたくなった。
今は弾く場所がないって現実が、初めて苛立ちとなって押し寄せる。
だけど今かき鳴らしたら、弦の一本や二本ブッ千切っちまいそうだ。
二日酔いや車に酔った時のハッキリしない気持ち悪さに似てる。
俺は正直「苛々する」ということに慣れてない。
気に食わないことがあれば、キレるならキレる、そうでないなら腹を据えると、
自分で二者択一して、そうと決めたら迷わないタチだからだ。
こういう時、どうやって感情を処理すりゃいいのかわからん。
70 :
469:2006/01/10(火) 08:59:59 0
驚いたようにこっちを見上げた男の、不思議なオーラを思い出す。
よくは見えなかったけど、俺と同い年くらいに見えた。
少なくとも高校生や年配過ぎるオッサンじゃなかったような…わーからんけどさぁ。
醸し出してた雰囲気は何となくでもよく覚えてるのに、顔立ちは全然覚えてない。
余所見をしていたことで、また殴られたりしてないだろうか。
よく考えたら、俺が見かけた情事は、いつも床の上だった気がする。
ロクに布団にさえあげてもらえてないんじゃないのか。
そんな心配を始めたらキリがなさそうなので、考えることをやめにした。
たまたまケンカの最中だったんだろう。
もしくは、あーゆープレイが好きな奴らなのかもしれない。
いい大人の男が、その気になれば逃げられないはずがねえんだから。
あーやめやめやめ。
ただでさえ不眠症気味なのに、余計眠れなくなるこたぁ勘弁してくれ。
俺は目を閉じて、ヘッドホンから溢れてくるギターよりベースラインが多種多様な
そのバンドの音に集中することにして、電気を消した。
そしていつしか寝てしまい、夢を見ることはなかった。
71 :
469:2006/01/10(火) 09:04:37 0
--------------------------
全然すすまない…ずーっとアベ氏のモノローグでごめんなさい…
次こそは絡ませます。早くキスのひとつもさせたいです。
>>56 つ、続き!!続き読みたいです!!orz
二人…いや三人には何があったの〜
469さんだー!続きありがとう。
相変わらずの先の読めなさにワクテカです!!
早く2人が出会ってくんないかな…(*´Д`)ハァハァ
>>56さんも469さんも乙です!!!!!
続き楽しみ〜(*´∀`)
みしぇるの画像ってどこ行けばあるかなあ
469さんメチャクチャ好みな感じの話です!!
続き楽しみにしてますね〜(*´Д`)ハァハァ
469さん乙です〜。
もしかしてチバは、本意ではなく誰かに抱かれてんのかな?
誰かって……誰だ?w続き楽しみです(*゚∀゚)=3
殴ったりするってことは
ウエノやキュウではないんだろうけど…
誰だ?!
わかった!志賀だ!!!!!wwwwww
こらこらこらwww
ウエノとアベは既に知り合いなんだよね。
てことはアベチバが出会う前?
わー、この先がどうなるんだか楽しみ!
出来れば神テクウエノさんであってほしい>チバの相手
>>81 でも殴ってるからなぁ…
あべとウエノは知り合ってるみたいだし、二人連れの後ろ姿見てるしね
どうなるのかな(0。゜∀゜)
ウエノだったらアベが気付いちゃうんじゃない?
殴ったりしてるのは第三者だと思いたい…
ひがっさんじゃない?
でも感情的になって大喧嘩したりしたら
思わず殴るのはあるかも
ウエノが知ってて見せ付けプレイしてるとか(;´Д`)ハァハァ
やだなあそれ…
道に歩いてたおじさんとか連れ込んでるんじゃなかったらいい
ウエノは殴らないとオモ
>>87 かなりなアバズレっぷりにちょっと萌えてしまった…orz
自分を大切にしないチバ萌えw
ウエノならきっとチバを嫌ってほど大事にしてくれるとオモ
>>87 毎回違う男を連れ込んでたとして
アベがそれに気付いたらモヤモヤしそう
92 :
469:2006/01/11(水) 16:34:52 0
クリスマスから無休で働いてたら体イッちゃった…
半年振りくらいに連休もらえて寝倒してたらこんな時間。
期待してた通りじゃなかったらごめんなさいです
93 :
469:2006/01/11(水) 16:35:34 0
「アベ君がイライラしてんの、珍しいね」
軟骨を指で摘み上げながら、ウエノが言った。
「ちょっとな」
「飲みに誘ってくれること自体珍しいけどさ」
「おごんねーけど」
「お互いギリギリだもんねぇ」
あれ以来、努めて窓の外を見ないように暮らしながら、一週間ほど経った頃。
誰かに話すつもりにないってのに、知り合いを誘って飲みに行くことにした。
やっぱり気分転換は大事だよな。こんなことでモヤモヤしてるのはマジでアホみたいだが。
ウエノは、スタジオの入れ替わりですれ違った時に、言葉のイントネーションで
同郷ということを知り、話をするようになった音楽仲間だった。
バンドは違うし、まだ俺は彼の、彼は俺の音をロクに聴いたこともない。
そのうちお互いのライブを観に行く観に行くと言いつつ、実現しないまま今日に至る。
「なんかあったの?」
「ん〜。少し気分悪ィもん見ちまってなぁ」
「ふーん。何を?」
「…………」
ここで俺が沈黙したってことは話す気ナシ、そしてこの先も話す事はないんだってことを
ウエノは瞬時に理解したみたいだ。こいつは俺と違って賢く鋭いし、また気遣い屋だった。
元から俺は口数が多い方じゃなく、相談や愚痴の類はまったくしないタチってこともあって
誰と飲んでもそれほど会話が弾むわけじゃないが、ウエノはそれもあまり意に介さず、
気まずい雰囲気を作ることなく付き合ってくれる数少ない男の一人だ。
94 :
469:2006/01/11(水) 16:39:13 0
「ギター弾きてぇなあ…」
「あー、もう抜けて大分経つもんねえ。ウチもギター探してるしさ、やっぱ一度合わせようよ」
「そうだねぇ」
何度もこの話は出てるんだが、いつも何となく流れてしまってる。
弾かせてもらう場所があるならと俺も思うんだが、自分から動くタイプではないので、
向こうから誘いかけてもらえない限り、なかなかきっかけを掴めない。
「まあ、ウチも今ドラムが半抜け状態だから大手を振って誘えないんだけどね…」
「あ、結局就職しちまったの?」
「しちまったのよ〜。どうする、北見から通いっすよ」
「そーりゃ辛いなあ」
就職した、ということはバンドは趣味にとどめておくっていう意思の表れなんだろう。
そのドラムとウエノは付き合いも長く、仲もかなりいいようだ。
ここのとこウエノも元気がなかったのはそのせいか。
「ギターが見つかれば、あいつも戻ってくっかなぁ」
「俺でいいなら、入るけど。あれだろ、リーダーの好みがうるさいんだっけ?」
「うーん、でもチバとアベ君は合うと思うんだよね。けど、チバも最近悩みがあるらしくて…」
何だそりゃ。ギターがいなくて、ドラムが半抜けで、ボーカルがバンド外で悩みがある?
かーなりヤバいんじゃねえか、それ。まあ組んでるバンド自体がない俺が言うのもナンだが。
「なーんも喋ってくれんしさぁ、時々口の端とか切ってスタジオ来んだよね。
ここ一ヶ月くらいすげぇ機嫌悪いし、練習もこねーし、電話かけても出ねえし…何やってんのかなぁ」
「ふーん…。彼女とかとトラブってんじゃないの?」
「あいつがバンドを後回しにするなんて、あんまないんやけどねぇ」
95 :
469:2006/01/11(水) 16:41:30 0
大変そうだな…。
ウエノの話を聞いてると、俺のイライラなんて本当にどうでもいいことのような気がしてきた。
そもそも俺自身の問題でもないのに、余計なお世話もいいとこだよな。
ウエノんとこでプレイできれば、俺も弾く場所が出来るし、このイライラも吹っ飛ぶかもしれない。
そのリーダーの好みに合えば、そいつやドラムの気持ちもどうにかなるのかもしれない。
人助けなんてつもりは全然ないが、利害が一致すればこんな有り難い話はないんだし、
世話になってるウエノの役に立てれば幸いだとは思う。
「今度都合いい時、スタジオ行くよ」
「ホントに?助かるぅ。まぁ上手くいくかわかんないけど、やってみんとね」
「うん」
よし、と二人で頷きあって、お互いのガラスをカチンと合わせた。
「チバに連絡とらんといけんねぇ…」
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96 :
469:2006/01/11(水) 16:47:36 0
ウエノと飲んだ次の日、早朝から昼までのバイトを終えて家に帰る途中、
煙草を切らしてることを思い出して、自販機に立ち寄った。
ナントカ洗うが如しっつうくらい貧乏のくせに、どうして煙草代と酒代は切れないんだろうなあ。
ついでに一本吸ってこうと、自販機そばの灰皿の横にヤンキー座りで腰を落とした。
今日は雨が降ってない。早く梅雨あけねーかな。傘持ち歩くの面倒いんだよ。
青空に煙が溶けていくのを見て、最近外で煙草を吸うこともなかったなと思い出した。
一本目を吸い終えて、やっぱりもう一本、と箱の口を指で弾いていると、後ろでカタンと音がした。
誰かが買いに来たようだ。
そいつも吸っていく気らしく、ビニールをはがして灰皿の中に押し込み、ライターの音をさせた。
(一応「灰皿」なのだが…。俺もたまにやってしまう)
ジッジッという音の後、フーッと煙を吐き出すのが見える。
灰皿のすぐ近くに腰を下ろしていたので、少しずれようかと立ち上がった時に、
その男と目が合った。
(あ)
あいつだ。
向かいの部屋で見た男だった。
あんまり驚いた表情を表に出すことはない俺だが、さすがに口が開いてしまった。
すぐに体の向きを変えて顔から目をそらしたけど、口の端に絆創膏を貼っていたり、
目の周りが腫れぼったくなってたり、半袖から覗く腕にスリ傷があるのがわかった。
なんで気づくんだよ、俺も。嫌なものほど目に入るってアレかな。
部屋から見た時は前髪を下ろしていたが、今は軽く立てていて、かなり凛として見える。
一瞬見ただけだけど、俺は結構第一印象を重んじるタイプだ。
彼がカッコよく見えた事は、何故かかなり俺の気分を悪くさせた。
世の中、見た目じゃわからんもんだなあ。
97 :
469:2006/01/11(水) 16:54:09 0
そいつは俺が自分を見て驚いたことが判ったのか、俺が目をそらした後も
「?」の空気を纏いつつ俺を眺めていたが、すぐにはっと息を飲んだようだ。
まさかこんな場所で顔を合わせるなんて思わねえもんな。
いわばご近所さんなわけだから、出くわさない方がオカシイと言えばそうだけど。
「………」
「………」
当たり前だけど気まずい。沈黙は慣れてるし、気にしないタチだが、さすがになあ。
俺もだが、あっちの方が輪をかけて早く消えてくれと願ってるだろう。
フィルターまであと二センチほどになった煙草の先を見つめながら、
自分より頭一つ分低いその男のいたたまれなさを気の毒に思ってた。
「…ああいうのが好きなの?」
隣の男が反射的にこっちを見たが、それ以上に俺自身がビックリした。
(今、俺、何言った…?)
人のことに口出しするなんて、俺が?この俺が?
そもそも「ああいうの」が何のことだよ。
どのことを指しても、大きなお世話以外の何でもないに決まってるが。
98 :
469:2006/01/11(水) 17:02:29 0
溜まっていた灰が地面にようやく落ちた頃、
「…関係ねえだろ」
ひっくい声が返ってきた。
怒ってんな。当たり前か。何のことだと訊いてこないってことは、俺が見てた事を解ってるんだろう。
関係ない…ね。その通りだ。
「そうだ…な」
悪いことを言ったと反省している。
今のじゃ、一部始終を見てましたとぶっちゃけたのと同じだもんな。
本当は、やるならカーテン閉めてウチの窓から見えない場所でやってくれないかと
頼みたかったんだが、これ以上何かを言うのは躊躇われた。
俺の頭じゃ上手い言葉も見つからねえし。
所詮は他人事だ。もう、帰ろう。
俺が灰皿に煙草を押し付けてその場を去ろうとしたのと、彼が腕時計を見ながら
踏み出したのは同時だった。
驚いて立ち止まろうかと思ったけど、ここで立ち止まったら動きが取れなくなりそうだったので、
そのまま同じ方向に向かって歩くことにした。
「つ、ついてくんなよ」
「ウチもこっちなんだよ」
真向かいだって知ってんだろうが。
途轍もなく嫌そうな顔をした彼も、そう言うと仕方なく両手をポケットに突っ込んで歩き始めた。
一応は一方通行だけど、頑張れば二車線走れそうな道幅の路の、
俺は右端ギリギリ(俺のアパートが建ってる側)に逸れて、チェーンの鍵を弄びながら
歩いていたが、彼は路のど真ん中を下を向きながらぼんやりと歩いていた。
俺の方が若干後ろを歩いていたので、時々腕時計をチラチラ見てるのが目の端に映る。
つられて俺も自分の時計を見ると、あと五分で三時という時間だった。
煙草の自販機からアパートまで大体100mほどだが、たったそれだけの距離がえらく遠く感じる。
少しだけでも人通りがあるのが救いだ。
99 :
469:2006/01/11(水) 17:06:37 0
あと20mくらいで着くというとこまで来ると、ふと彼が足を止めた。
何かと思って顔を上げると、車が曲がり角を曲がってこっちに向かってくるのと、もうひとつ、
ウチの向かいのアパートに男が一人入っていくのが見えた。
一瞬だったので「男だ」とわかる程度だったが…。
やつの背中がこわばってるのが見え、何となく察する。
どういう関係か知らんが、こいつの「相手」だ。
「…?」
彼はまた歩き始めたが、少し様子がおかしかった。
車がこっちに向かってきてるというのに一向に道の端に寄ろうとしない。
いくら徐行してるとは言え、危ない…というより、車が止まらざるを得ない、迷惑な形だ。
まるでクラクションが聴こえないかの如く、動く気ゼロに見える。
道往く人たちも、何あの人、といった感じで怪訝な視線を投げている。
「…おい?」
咄嗟に呼びかけたけど、ブチ切れたかのようにデカいクラクションにかき消された。
「おい!!」
人が歩くのと殆ど変わらないスピードの車に、あと数メートルでぶつかる、というところで、
俺は彼の腕を引っ掴んで、道の端に引き寄せた。
ふわりと自分のとは違う煙草の香りが舞う。
特別抵抗されることもなく、すんなりと動いてくれたが、黙ったままだ。
止まりかけていた車の運転手が、ふざけんな、と窓から怒鳴ってアクセルを踏み込み
解放されたかのようなスピードで駆け抜けていった。
100 :
469:2006/01/11(水) 17:10:00 0
「………」
自分の行動に驚きながら、引き寄せた男の顔を覗き込むと、
彼は大して戸惑った様子もなくどことなくボンヤリしていた。
こうなることを予想してたというより、今の状況を掴めてない感じ。
なんなんだ、こいつ…。
途端、俺の中で何かが切れた。
「う、わっ」
俺は突然何を思ったのか、二の腕を掴んでいた手を外して、今度は彼の手首を掴むと、
有無を言わさず自分のアパートに向かって引っ張っていった。
さすがに我に返ったのか、男は抵抗するように足を止めて振りほどこうとしている。
構わず、そのままアパートの階段を上り始めた。
俺は非力だが、キレるととんでもなく腕力が強くなるらしい。
「ちょ…何だよ!」
俺の方が歩幅がデカいからか、階段で踏ん張る力がないからか、俺の勢いにビビったからか、
足を止めようにも止まらない彼が慌てたように呼びかけてくるのを全部無視した。
さっきのクラクションとは違う。ちゃんと俺には抗議の声が聴こえている。
聴こえていて、無視をした。
うるせえ、黙れ。
殴られながら犯されるのに耐えられるんなら、このくらいでギャーギャー言うんじゃねえよ。
彼の声と力より、俺の勢いが勝った。
俺の部屋に彼を投げ入れるまで、手首を掴んだ俺の指は手錠のように揺るがなかった。
101 :
469:2006/01/11(水) 17:10:45 0
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長くて誠に申し訳ございません
リアル投下拝見中…(*゚Д゚)ハァハァ
469さん休日にありがとうございます。
続きも楽しみにしてます〜
>>469 GJ!!!!!
でも寸止め・・・どうなるのチバ(;´Д`)
アベがチバの腕を掴んだだけでハァハァしてしまったw
しかも部屋に…
アベすげー(;´Д`)
過労でキツイのに…469さんありがとう!
ついに2人がまともに顔合わせた―――(゚∀゚)―――!!
どうなるんだろー?楽しみ!!!!!
やっぱチバがいたぶられてる相手は、ひがっさんなんでわ?www
チバが謎の男にいたぶられてるのは何故なんだろう?
う〜っ!続きが気になる〜(*´Д`)
でも体調第一、ゆっくり休んで下さいね、469タソ!
ひがっさんだと時期も一致www
>>108 季節は梅雨時…アベがミセルに加入する時期も合致(*´∀`)
前作と同じく二塔の会話がほんのり広島弁まじり…(*´Д`)
ここが真ん中だということを忘れて、つい二塔萌えしてゴメンwwwww
111 :
110:2006/01/11(水) 20:27:18 O
間違えた。
×前作
○前々昨
ですね…スマソ。
469さんキテタ―――(゚∀゚)―――!!!!!
お疲れなのに、ありがとうございます。・゚・(ノ∀`)・゚・。
早く家帰ってPCでじっくり読みたいー!
窓から見下ろしたチバのエロ肩を、アベはどんなふうに触るんだろう…
そ、それを想像しただけで(*´Д`)ハァハァ…ハァハァ…ハァハァ…
469さんお疲れ様です!御身体大事にしてくださいね。
それにしても続きが気になる……!
ぼこぼこにされてるチバ……
アベはそれを粗雑にいたわるんでしょうか 楽しみにしてます!
相手の予想だけでハァハァしてしまう…
>>113 そうなんだよねぇ。
あの日、カーテンの隙間から見えたエロ肩に
アベがどんなふうにハァハァすんのか楽しみ(*゚∀゚)=3ムッハー
…考えてみたらアベは今んとこノンケなんだよね。
初めてのエロ肩、初めての男…(*´Д`)ハァハァ…
>>116 男とヤルのが初めてってことは、
あのスットコさんが手ほどきしたりすんのかしら…
うひょー!!!!!⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
>>117 スットコが手ほどき…できるんだろーか?w
まあ男とヤルことに関してはアベより先輩なんだけどねw
119 :
469:2006/01/12(木) 18:15:27 O
チバさんに
「お、俺だって好きな奴に抱かれんのは初めてだよ!」
とか言わせてみたいけど言ってくれそうにないので
妄想で補完しつつ職場逃避。
早く家に帰りたいー
469さん、職場逃避てwwww
とにかく妄想のまま書いて下さい(*´∀`)
楽しみにしてます〜。
>>119 それ言ってほしい〜(*´Д`)ハァハァ>初めて
469さん激務お疲れさまです。
男とは初めてで勝手がわからないアベの上に乗り、自ら腰を振るチバ…(*´Д`)ハァハァ
>>122 ⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
469さんお疲れ様です…。続き楽しみ!
それとプ厨も…待ってるよw
今日は各スレとも見事に人がいないなー(ノ∀`)
学校や仕事が始まって忙しいのかなー
可愛らしさならキュウ、体ならスットコさん、肌なら鰓さん、色気なら鬼さんらしい(友人談)
何の話題だったか
>>127 (*`皿´)<肌以外はチバが最強に決まってんだろが。
[=;・з・] <…チバの色気?
ヲタにとっては色気の固まりなのよ、鰓さんwwwww
えーと…ヲタなの?この人→ (*`皿´)v
多分このスレではヲタの代弁者なんだよwww
133 :
469:2006/01/14(土) 00:18:16 0
--------------------------
引っ張り込むように男を部屋に入れて、ドアを閉めたとこでやっと手を放してやると、
そいつはそのまま玄関にガックリと足をついた。
四つん這いの格好で大きく息を吐いている。
「はっ…は、…」
喉がヒュウヒュウと音を立てて、額に脂汗がじんわりと浮かんでいる。
喉元のシャツを握り締めるようにして、何度か咳き込んだ。
俺も息が上がってるけど、ここまでじゃない。
喉か肺に疾患があるのかな。知り合いにこんな症状のヤツがいた気がする。
(…ゼンソク?)
三階まで一気に無理矢理駆け上がらされて、発作が起きたらしい。
見るからに苦しそうな様子に、背中をさすろうと肩に触れると、
なかば涙目になった目で睨みつけられ、容赦なく撥ね付けられた。
逆毛だった猫みたいだ。
こんな場合どうしてやっていいのかさっぱりわからなかったので、
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、彼の前に置いてやった。
それに手を付けはしなかったが、少し驚いたようにそのボトルをじっと見つめていた。
俺がどんなつもりなのか全くわからなくて混乱してるんだろうな。
そーりゃそうだよな。
俺自身にもよくわかんないんだから、当たり前だわ。
134 :
469:2006/01/14(土) 00:19:03 0
俺はブーツを履いたまま玄関に座り込み、彼の息が落ち着くのを待つことにした。
気は短いけど、待つのは平気だ。
膝の上に肘をついて、待つついでに軽く観察した。
やっぱり俺と同じくらいの年に見える。
Tシャツにジーンズ、俺ほどじゃないけどかなり細い。
片方のスニーカーの紐が解けてる。
さっきの帰り道にしろここの階段にしろ、よくもすっ転ばずに歩けたもんだ。
そしてTシャツに隠れるか隠れないかの喉許に、痕があった。
俺が掴んだのとは逆の手首にも、一周するように色がついてる。
あー、また気分が悪くなってきた。
だけど、こんだけ身長と眼光がある男が大人しく甚振られてるはずはない、とも考え直した。
全部俺の勘違いで、ただのケンカだったんじゃないか?
殴られたように見えたのは、見間違いだったんじゃないか?
もしそうだったら、いつものごとく開き直ろう。
「…ふ」
男は少し息が治まって来たのか、腕をついてた体勢を起こしてぺたんと尻をつき、
ドアに凭れかかるようにして大きく息をついて、ゆっくり俺を見上げた。
汗で前髪が下りて、額に張り付いている。
怪訝な目つきは相変わらずだ。
俺はペットボトルの方を顎でしゃくって、飲めば、と合図した。
少しの間逡巡した後、のろのろとそれを手に取って煽るのを眺めながら、
俺は、まずそこから、ということから訊いてみた。
「お前、誰?」
135 :
469:2006/01/14(土) 00:27:16 0
自分でも変な質問だなぁと思うが、全部ひっくるめて訊いてみたい事はそれなんだから仕方ない。
男は混乱し過ぎて逆に冷静になったのか、大して驚く様子もなく
何度か瞬きをした後にゆっくり口を開いた。
あの場面からは想像できないような低い声で、
その眼光からは想像できないような高い声で。
「あんたこそ、誰?」
そう来たか。
…誰って言われてもなーあ。
広島県出身アベフトシ、28歳です…なんて答えが訊きたいんじゃないだろう。
男はしばらくの間、答えられない事は沈黙で押し切る俺の態度を「何だコイツ」って顔で眺めていたが、
突然ハッと背筋を伸ばして、慌てて腕時計を見た。
「やべっ…」
あたふたと立ち上がり、飛び出さんばかりの勢いでドアノブを掴んだ彼を見て、
俺もゆっくりと立ち上がった。狭い玄関に置かれたいくつかのブーツを蹴散らすように
出て行こうとして、チェーンがかかってるのに気づき、急いで外そうとしている。
それが外れるより先に、俺は躊躇いなくドアの彼の膝すぐ横のあたりを、力いっぱい蹴った。
136 :
469:2006/01/14(土) 00:36:23 0
間違いなく隣近所に響き渡ったその轟音の余韻が消えないうちに、抑えた声で言った。
「やめとけよ」
「…………」
俺はよく、どこから何を出してくるからわからないからコワい、と言われることがあるが、
彼もまた俺のそんな行動に目を丸くしているようだ。
つうか、ハッキリ言って怯えてる。
外見だけでも怯えられるのはしょっちゅうなのに、更にそんなヤツに拉致まがいに
どっかの家に連れ込まれたら誰だってビビるに決まってるかもしれないが。
「な、何なんだよ、あんた…」
「やめとけって」
「邪魔すんな!あ、あいつキレると、何すっかわかんねぇんだよ…!」
「アイツって、何、彼氏との待ち合わせ?」
「ふざけんな、誰があんなっ」
「お前さぁ、弱味握られてんだろ」
本気で切羽詰った顔と声で今にも俺に掴みかかりそうだった男の動きが、凍りついたように止まった。
ふーん、図星なのか。
適当に言っただけだったんだけど。
天然故の勘の良さ、とウエノに褒められてんだか馬鹿にされてんだかわからん
分析をされたことがあるが、こういう時の事を言うのかな。
こいつもまたわかりやすい反応をしたと思う。
人間、余裕ないとウソつけねえもんなんだなあ。
目の前の男が焦れば焦るほど、俺の方は段々と冷静になっていった。
キタ――――――(゚∀゚)――――――!!!
?(゚∀゚*≡*゚∀゚)?
き、キテルキテル――――――――――――――――!!
140 :
469:2006/01/14(土) 00:45:38 0
「そういうのって泥沼だぜ。やめとけって」
「………………」
口を何度かパクパクさせて、何かを言おうとしては閉じている。
目に怯えが混じっている。
俺に対してというより、自分のやってることが急に怖くなってきたという感じだった。
「あ、あんた…誰だよ…。関係ないじゃんか…」
「………………」
「何がわかるってんだよ。俺だって、す、きであんな…」
───事情があるんだよ。
立て続けにどもりながら、男はそう言った。
言われて、やっと俺はそのことに気がついた。
そうか。そりゃあそうだよな。何か訳があるに決まってるわ。
思わず本能的に連れてきちまったけど、こいつにはこいつの事情があって、
俺が邪魔したことで、下手すりゃこいつの人生レベルの何かが変わっちまうのかもしれない。
脅されるのも乱暴されるのも不運として諦めるしかないくらい守りたいものが
こいつにはあるのかもしれない。
そういう「人は人」っつう概念は俺の信条でもあったのに、
どうしてかカッとなって頭から抜け落ちていた。
冷静になってみれば、ひどく勝手な話だよね。
今、こいつが泣きそうな顔をしてるのは、他の誰でもなく、俺の所為だ。
…悪いことをした。
項垂れて唇を噛み締めてる男の横に、頭を掻きながら腕を伸ばして、ドアを開けてやった。
「行っていいよ」
待ち焦がれたよ469さん!!!!!
142 :
469:2006/01/14(土) 00:49:22 0
彼がゆっくりと顔を上げた。
「…………」
「悪かったな。もう口出さねぇし、部屋見たりしないから」
さすがに、もういいからあの部屋行って抱かれて来いとは言えねえが、
こうして外へと促してるのは結局はそういう意味になるんだろうな。
しかたない。こいつがそうしたいっつうんだから。
俺に止める権利なんかある訳ないじゃん。
…ああ、こんなに色々ものを考えたのは何年ぶりだ。
東京に出てくる時だって、ここまで悩んだりしなかった。
今気がついたけど、この俺が他人のことにこんだけ首を突っ込んだってことは
きっと多少なりとも、こいつのことが気にかかっていたんだと思う。
多分、プラスの方向に。
だから、こいつがこれから先も自分の家の真正面で虐待されてるのかとモヤモヤしながら
暮らしていくのはちょっと…かなり嫌だ。
誰かん家に転がり込んででもここは引っ越そう。うん。
ドアを押さえて腕を突っ張らせたままでいても、彼は動こうとしない。
まあ、流れ的に「はい、それじゃどうも」とスタスタ帰っていくには抵抗あるよな。
それでも俺は、彼がその選択をしたとしても軽蔑はしないと伝えたかったので
辛抱強くその体勢を保っていた。
俺のブーツの爪先辺りを睨むように見つめたまま、
指先ひとつ動かさずに立ち尽くすのを見てると、可哀想なくらいその葛藤のオーラが
感じられて、逆にこっちがいたたまれなくなる。
143 :
469:2006/01/14(土) 00:51:59 0
だけど、なんでこいつは出て行かないんだ?
あの部屋に行くか(こいつの家なのか相手の家なのか知らんが)どうかはともかく、
それはここを出てから後でも悩めるんじゃねえのか。
こいつの言うとおり、俺は何の関係もないんだから、
少しでも早く縁を切りたいもんだと思うんだけど。
───俺は切りたくねえけどな。
できればアレだよ、あんな姿見たくなかったよ。
やられてんのとかはどうでもいいけどさ、苦しそうにしてんのは見たくなかった。
まぁこいつに限ったことじゃないが、特にお前は嫌だって思ったよ。
こうして向き合ったらなお一層、もうやめとけよ、と願う。
今見てもお前オーラあるよ。世の女がどう言うかは知らないけど、俺はカッコいいと思う。
確かに俺は何の関係もない、ただ偶然に「事情」を垣間見ただけだ。
俺は何度かこいつを見かけたけど、こいつにとって俺はほぼ見知らぬ他人だろう。
だから俺にできることは何もないし、ひねり出すだけの頭もねぇよ。
もしこいつのことに口を出す権利や義務があるとするなら、…
「お前さ」
「…なに」
「俺のものにならないか?」
足りない頭に思い浮かんだのは、せいぜいこんなことくらいだ。
ふと気づいた時には俺は腕をドアから離していて、いつの間にかそれはまた閉まっていた。
144 :
469:2006/01/14(土) 00:55:08 0
--------------------------
なんでこんな、三流ドラマみたいな展開になってしまったのか
自分でもわかりません…話がどんどん違う方向に…
長くて長くて長くてもう本当にごめんなさい
SS苦手な方、マジ無視して下さい orz
なるなる!なるなるなる!!
↑チバ
どうなるのこの二人(;´Д`)
いきなり、「俺のものにならないか?」って…アベー!!!!!
もうスットコさん、いつもに増して、お口ぽかーんなんでわ?w
469たん乙です(*´Д`)萌えー!!!
チバの相手が援交オヤジじゃなくてホっとしている自分orz
お仕事忙しそうなのに乙です〜!
469タソの書くお話のアベは、スットコのことをホントにホントに大切にするから
このお話もラストはきっとベタ甘だよね!?
スットコを助けてあげて、アベ。・゚・(ノд`)・゚・。
151 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 13:29:02 O
このスレ以外でどこに行けばACって読めますか…?サイトとかあるのかしら(´_`)
>>151 ここで聞いても、たぶん誰も教えてくれないと思う…残念だが。
こちとら1ッ週間39度の熱が続いてるってのにチバちゃんはセックス三昧ですか
憎いです
>>153 セックスはセックスでも、チバちゃんのはレイープに近いセックスなので許してあげてw
39度の熱とは大変だね。お大事に。
155 :
469:2006/01/14(土) 17:24:10 0
>>153 大丈夫ですか?
39度が一週間って!!入院しないといけないのでは?お大事に!!
今宵の投下もあるかな〜(*´Д`)
続きが気になって仕方ありません…。
469たん以外の神も待ってます(´▽`)
書きたいけどネタ尽きてきたorz
>>158 希望を募ってみてはいかがでしょう!!www
ちょうど熱の話題が出たところですし、
風邪引いたスットコさんとかいかがでしょうw
体壊した時って人恋しくなりますよね…
ウエチバ希望…と言ってみるテスト。
>>160 いいですねえ〜。
忙殺されそうなので、そんな話読みたいです。
鰓さんなら甲斐甲斐しく世話してくださいますよ〜
汗掻いた方がいいやね、とか言ってくれると嬉しい
チバが迷子になる話など如何でしょう
人生の迷子じゃなくて道に迷う方
三人三様で探して欲しい
まともに聞き込み&行きそうな場所を探してみる キュウ
子供じゃないんだしそのうち戻ってくるだろうと待っている ウエノ
探しに行ったわけじゃないけど買い物に行ったら偶然見つける アベ
>>164 やってみます。
でも私一人で書きすぎな気がするので、他の方に書いて貰った方がいいかしら。
>>166 チバがアベ(生ける待ち合わせ場所)を見つけてホッとしそうだね
それぬこチバで読んでみたいな…
170 :
164:2006/01/15(日) 04:53:11 0
>>167 ヤタ−!
ありがとうございます
書きすぎなんてとんでもありません!おねがいします
道に迷ってうっかり暗黒街に足を踏み入れてしまい
ヤクザにリンカーンされたりするの?
172 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 10:46:38 O
センター直前なのに読みたい&書きたい欲望が(´凵M)
>>171 ひぃいええ壮大な迷子だな。
さすが宇宙を手に入れる男
それを三人がかりで助ける話も読みたいが、
大河小説になる予感
ほら、試験監督のバイトだよ!
3浪くらいしてるのかもしれないし!
あげてたりと、その不注意が三浪の原因かもしれない。
気をお付け。
三浪三浪ってチバをそんなに虐めないで!
道に迷って火星まで行ってしまい
火星人と触手プレイ
そのネタをシリアスで書けたら神
22の人さんの新作も読みたい
プ厨の降臨も期待してたりして
185 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 02:52:22 O
刑務所あーちなんてどうだろう
>>184 自分も期待してるが悲惨ネタだと困るなw
orz
そんな宇宙のファンタジーを書ける自信があるアナタはもしや……
ミ;`_ゝ´彡<う、宇宙を手に入れろ!
く、黒くて細い火星人にしてね……
>>191 (`皿´)b゛ ソンナ カセイジン ハ イマセン
ノ川川
ちょwwww
ここはロソ萌えは不可なんでしたっけ…?
>>194 不可という決まりはないですよ。
でも色々あるので皆黙っているだけでは
>>194 住人のベースはちば萌えの人だから可だろうと思います。
中にはやっぱりロソ萌えの人もいるだろうなと思っていました。
冷蔵庫と一緒にロムります。
>>192 いるじゃん!!!www
なんだよアベ星人かよ!?ww
ロソ萌えかー…。
なんか初期のスレでちょっとばかりモメたよね…?
チバ萌えはチバ萌えでも、ミセルマンセーな人が多いみたいだから、
正直微妙な位置付けではあるかも………
198 :
194:2006/01/16(月) 23:24:45 0
なるほど。ありがとうございます。
左で現バンドが出てくる割には
こちらで話題に上らないので不可なのかなと思っていました。
空気読んでみます…
照だのイマイだのが出てくると
最も来て欲しくないヤツがこのスレに来そうでイヤ……ごめん…orz
>>200 ああ…それはあるかも…
せっかく良スレに育って楽しめてるから
アレが来るのは避けたいかも…
(゚ ё ゚)<……
出たな癒し系!!!!!wwww
つか何しにきたの?ww
パッチwwwwww
ボコボコボロボロDVチバの続きが気になって寝られない…
気になるよね…(*´Д`)
ちがうよw
パッチってだれだっけ
ミ*`Д´彡
469さんが来るまで今日は寝ない!
215 :
469:2006/01/17(火) 03:10:48 0
>>214 わああごめんなさい!!
仕事頑張ってたら昇進が決まりまして勉強してました。
き、今日中には続き落としますのでどうか寝てください…
待ってます正座で待ってます!!
217 :
214:2006/01/17(火) 03:27:34 O
469さん昇進おめでとうございます!
今日は寝ます
明日楽しみに待ってます
わー!昇進!?469さんおめでとう!!!!!
やはり体調やお仕事が第一です。
義務感なんかじゃなく、ストレス解消に書く
くらいの気持ちでいいんですよ〜(*´∀`)ノ
>>215 すげー!469さん昇進おめでとうございます!
SS期待してますが、469さんの体とお仕事のほうが心配なので
あまり無理しないで下さいね。
(*`皿´)b<無理は禁物よ>469
ヽ(*`皿´)人ミ*`_ゝ´彡ノ<オメデトーオメデトー469!!
昇進ですか!おめでとうございます〜!
なかなか難しい展開になってるみたいなので、
じっくり練ってイイもん読ませてください。
でも、くれぐれも無理はしないでねー(*´∀`)
/´ `フ
, '' ` ` / ,!
. , ' レ _, rミ
; `ミ __,xノ゙、
i ミ ; ,、、、、 ヽ、
,.-‐! ミ i `ヽ.._,,))∩
//´``、 ミ ヽ ('A`*)
. | l ` ーー -‐''ゝ、,,)) c(_uノ
ヽ.ー─'´)
私も明日からやっとと言うべきか、透析で入院なのでおめでとうが欲しいです。
最近自演以外で話題に上ったのははじめてないので、よい冥土の土産になりました。どうも有り難う。
冥土・・・めいど・・・メイド?!ハァハァ…
ではさようならシ
469さん、おめでとうございます!!!!!
多忙そうなのに更に勉強とは…お疲れさまです!
続きは時間がある時でいいですよ。
お仕事頑張ってくださいねー。
おめでとうございます469さん!
お体に気を付けて、頑張って下さい。
続きにどきどき。楽しみにしてます。今晩いらしてくださるのかな……。
>>182さん ほ、ほんまですか。
暫くばたばたしておるのですが、また時間が出来たら何か書いてもいいですか……?
おいら182さんじゃないですが、22さんお待ちしてます!!(*´∀`)ノ
227 :
469:2006/01/17(火) 23:59:53 0
----------------------------------
開いた口がふさがらないってのはこういう顔を言うんだろうな。
さっきから閉じてるところをほとんど見ていない口を更に固まらせて、
目をまん丸くさせている。「はあ?」と訊き返すことさえできないらしい。
…一足飛びに話を進めすぎたかな。
つうか、これはもしかして「あなたが好きです」という意味で届いちゃってるんだろうか。
それはかなり誤解なんだけど、言い訳したり説明したりするのは面倒くさいので
こいつが何かしらリアクションしたら、それに対してイエスノーを言う形でいこう。
彼は俺の頭の先から爪先まで呆れた視線で眺め回した後、フーッと深呼吸をして
眉を寄せたままの顔を上げた。
「あんた…クスリでもやってんの?」
「なんだと?」
これはさすがにムッとした。
人にどう評されようが全く気にしたりしないし、酒が入ってればかなりトンだ状態になるけど、
ジャンキーに間違われる筋合いはねぇぞ。
バカにされる事の赦せる赦せないの境目は、バカにされ方によるんだ。
カッと来た俺は、チェーンを外してドアを半分まで開き、やつの腕をひっ掴んだ。
228 :
469:2006/01/18(水) 00:02:58 0
「嫌なら無理になんて言わねーよ!じゃあホラ帰れ。もう止めねえよ」
「だ、だって」
「行ってソイツのご機嫌取って来いよ。これからも好きなだけ言いなりになってれば?」
「何だよそれっ、あんたが連れてきたんじゃんか!」
「じゃあ一緒に行って言い訳してやろうか?時間に遅れたのは俺のせいですって。
こいつはアンタんとこに行きたがってたけど、邪魔してスミマセンってな」
まくし立てるように上から叩き付けると、男は言葉の意味を噛んで含んだのか、
泣き出しそうな顔をした。俺の勢いに怯えただけかもしれんが、だんだんと俯いていく。
言い過ぎたかなと思ったけど、多分明日くらいにならないと謝れない。
言葉は悪いかもしれないが、これが言いたくて腹に溜めてたことは本当だった。
人を殴って言うことを聞かせるようなヤツに、気にかけた男が陵辱されてるという事実は納得できない。
事情があるのはわかるが、俺はそれはおかしいと思う、と一度言っておきたかった。
(…より追い詰めちまうんだろうな)
好きでやってる訳でもないことを、おかしいなんて言われたら、逃げ場がなくなるのは想像できる。
現実が事実になる恐怖は、こんな俺にだってわかるから。
なら、誰かがブチ壊さないと。
その誰かに名乗り出るには、こいつのそばにいる権利がないとダメだと思った。
人は人、だから。
そばにいるには、俺がこいつのものになるか、こいつが俺のものになるかすればいいと、
皺の少ない脳味噌で考えたってのに。
>>143続きキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
230 :
469:2006/01/18(水) 00:06:50 0
俺は頭がよくないし、きっと人の心の機微なんかわかっちゃいない。
わかってるのは俺がどうしたいのかだ。
俺の言いたい事はひとつで、何度か口に出した。
「やめとけよ」と。
悪いが、あれが俺の本音だ。
うるせえ、と怒鳴って部屋を飛び出していくかと思った男は、髪の毛一つ動かさずに
その場で立ちすくんでいたけど、そのうちへなへなと玄関に蹲ってしまった。
「…ケツ冷えるぞ」
「…………あの、さぁ…」
「ん?」
こんな狭い場所で大人の男二人がやりあってるのはいい加減暑苦しいので、
俺はブーツを脱いで部屋にあがることにした。
そろそろ三時半を過ぎる。まだそんなに暑くはないが、湿気が多いので蒸してる。
陽気も変だけど、この部屋の空気はそれ以上に変だ。
「あんたのもんになったら、俺を抱くの?」
「え?」
「あんたも、俺を抱くの」
「や、まさか」
あ。
231 :
469:2006/01/18(水) 00:10:02 0
しまった…。
「あー…、や、うん、するかな?そういう気になったらね」
「…………」
慌てて言い直したが、俺の「思わず」はカンペキ聞こえてしまったらしい。
「いや…そこまで考えてなかったっつーだけで、しないとは誓えねえなって…」
「…………」
しかたないじゃん、男とどうこうするされるなんて発想は、すぐにゃ思いつかなかったんだよ!
わーるかったなぁ、どうせ平凡な一般市民だよ。
別に気持ち悪いとか変態とか思ってる訳じゃない。
俺はそういう偏見は割に少ない方なんだ。おい聞いてるか?
俺の言い募る様が、この極悪な顔に似合わずオモシロいのか、
男はじっと俺の顔を見ていて、きょとんとしていたが、やがて苦笑いを浮かべた。
「あんた、変わってるって言われるだろ」
「…たまにね」
「俺も言われっけど…絶対まともだよな、あんたに比べりゃ」
何が面白いのか、ここに来て初めての笑顔で楽しそうに言うので、
思わずふっと口の端をあげて笑い返すと、彼は尻の埃をはたきながら立ち上がった。
「あがっていい?」
お前も十分変だよ、と思いはしたが敢えて口には出さなかった。
232 :
469:2006/01/18(水) 00:15:01 0
「…あー、マジでよく見えるな」
靴を脱いだ後、彼は部屋を突っ切って一直線に窓際にやってきた。
そこから、今はカーテンが引かれたあの部屋を見下ろしてる。
「まあね」
俺はとりあえず冷蔵庫に行き、今日はそんな気分だったので発泡酒ではなく
ビールを二本取り出して、彼に渡してやった。
ども、と小さく会釈して、男はプルトップをあげた。俺もそれに倣う。
「目、合ったよね」
「…ああ」
「あんた、覗きが趣味なの?」
「見たんじゃねえよ、見ーえーたーの」
「女のスカートの中と一緒じゃん。言い訳すんなよ」
「よく言うよ。わざとカーテン開けてたの、お前だろ」
言うと、俺の顔を見たままピタッと表情が凍った。
あれ、まーた図星か。勘いいな俺。
気の毒なくらい、また彼の顔が曇っていく。
「違………なんで…」
言ってることがバラバラだぞ。まあいいけど。
「別に責めてるわけじゃないよ」
「だって…空が見えてねぇと…」
息が詰まりそうだった。
彼はまた苦しそうに、俯いてそう言った。
どうやらこいつにとって、自分の本心をむき出しにされるのは、虐待されるのと同じくらい辛いらしい。
あんまり不用意なこと言わねえ方がいいな。俺、バカだから無理かな。
「そっか」
「…………」
なんとなくだが、俺はこいつのことを、この稚拙さを、愛しく思った。
233 :
469:2006/01/18(水) 00:20:36 0
梅雨も半ばを過ぎてすっかり日が長くなった空は、今日は珍しく夕焼けが見れそうだったが、
彼はじっと眺めていた向かいの部屋から視線を外して、カーテンを閉めた。
やることがなくなって手持ち無沙汰になったのか、ただ単に居たたまれなくなったのか、
キョロキョロと部屋を見渡して、CDラックに目を留めて、近寄っていった。
「あんたギターやるでしょ」
「え、なんで知ってんの?」
「…見えた」
「あの部屋から?」
「うん」
「なんだ。お前も覗いてんじゃん」
「見たんじゃなくて、見えたの」
「はっは」
そっくりそのままの返しをされて、俺は座っていたベッドの上で後ろに体を反らせて笑った。
何度か窓辺でギターを爪弾いていたことがあるけど、誰かに見られてたとは知らなかった。
やることなすこと、案外他人に見られてるもんだと誰かが言ってたけど、全くだ。
うーん、ギターをやってるんだと胸を張って言えない状態なんだけどね。
234 :
469:2006/01/18(水) 00:22:19 0
再びCDラックを覗いて…いやもう既に奥の方にあるヤツまで取り出して眺めてた彼が、
あ、と声をあげた。こんなに何かに夢中になってる姿は(当たり前だけど)初めて見るな。
確かに人ん家のCDラックと本棚は、見ていて飽きないとウエノも言っていた。
「…クラッシュ好きなの?」
「大好き。一番好き」
「ロンドン・コーリングがないんだけど」
「あー、ケース割れたんで置いてきたんだわ」
「ふーん…パイレーツ好き?」
「大好き」
「フー好き?」
「大好き」
「ドクターフィールグッド好き?」
「大好き」
「ふーん…」
…こいつも音楽好きなのかな?興味ないヤツはパイレーツなんて遊園地の乗り物のことだと思うし。
「いいよ」
「あ?」
「なっていいよ」
「何が?」
「あんたのものになってもいいよ」
「……………」
「でも、優しくして欲しいんだけど…」
けど何、とは言わなかったが、はっきりとした声で俺の耳を震わせた。
235 :
469:2006/01/18(水) 00:23:40 0
_| ̄|○チョットヒトヤスミ…キリノイイトコマデカケテナイヨー
な、泣けた…なんか、泣けた…
ひとまず
>>469神様 つ旦
お願いするチバカワユス(;´Д`)
やさしくしてあげて下さいアベさん…。
このチバカワユスで仕方ないお(´Д`*)ハァハァ
469さんヒトヤスミしてください
つ旦
240 :
469:2006/01/18(水) 01:26:21 0
241 :
469:2006/01/18(水) 01:28:37 0
はあ?と思わずこっちが訊きたくなった。
あんなに警戒していた態度が、なんだってこうも変わるんだ。
しかも一瞬で。何がそうさせたのか、俺にはさっぱりわからない。
そして、自分で言っておきながら、こうハッキリとよろしくお願いしますと開き直られると
どうしたらいいかわからん。俺は一体何がしたかったんだ。
俺はこいつをどうしたいんだろう。窓から見た剥き出しの肩に欲情したのは確かだけど、
抱きたいのか、と訊かれると正直よくわからない。
まあ、後で考えればいいか。
「…あんま、俺、優しかないんだよな」
「ははは。ダメじゃん」
「努力もできねえし」
「何だよソレ。普通言ってきた方は妥協するもんだろー」
「大体男相手に優しくするっつーのもどうよ」
「ああ。そりゃそうか」
男は俺の身勝手さに慣れたのか覚悟していたのかそれが面白いのか、
諦めたようなそれじゃなくて、下唇を噛むようにしてくっくっと笑った。
「行かなくていいの」
「あんたがヤメロっつったんじゃん」
「でも、お前が決めることだろ」
「…まあね」
少し黙る。
「俺の、決めることだ」
242 :
469:2006/01/18(水) 01:32:12 0
知り合いにも迷惑がかかるかもしれない、と彼は言った。
何を盾に脅されてるのか知らんが、とりあえず、我慢してヤられ続けろなんつう友達は
こっちから切っちまっていいんじゃねえのか。
まあ、そんなことは言わない友達だろうからこいつも悩んでるんだろうが…。
「いいや、リセットするわ」
「いいの?って、俺が言うのもなんだけど」
「元っから俺、なーんもねえしさ。今更全部ほっぽっちまっても、さ。うん、何だか」
「そっか」
多少責任は感じるが、こいつがそうと決めたことに「それでいいと思う」とも
「やっぱやめとけ」とも「なんか、ゴメン」とも言うわけにはいかなかった。
例えこいつとどんな間柄になったって、俺が出来る事はたかが知れてるし、
多分何もしないんだろう。
「あんた、ケンカ強い?」
「…強いと思う?」
「全っ然」
「当たり。ギターより重いもん持てないから」
「んだよ、俺よりひでぇじゃんかよー。でもさ、あれだよね、やる前に相手逃げそうだよね」
「あー、それで今まで全部やり過ごしてるなあ。…なに、そいつヤクザか何かなの?」
「さあね。…いいよ、そういうつもりで訊いたんじゃねぇから」
CD漁りに飽きたのか、そこらへんにアルバート・コリンズやダムドのディスクやらを撒き散らして
俺の腰掛けるベッドに寄りかかり、頭を凭せ掛けた。
243 :
469:2006/01/18(水) 01:33:46 0
自分を抱くのか、とあんなに怯えてたくせに、ベッドに近寄るのは平気なのか。
俺が言うのもどうかと思うけど、こいつの思考回路は全然読めない。
よりにもよって、とんでもなく複雑な男に関わっちまったような気がしてきた。
「………………」
「おい。何だよ」
「…眠い」
「あぁ?」
「気ィ抜けた…」
眠いって、おい。
…いや、わからないでもないけど。
今日一日の、この短い間だけでも色んなことがあって、頭が混乱した後の上に、
さっきの発作で体が疲れたのもあるんだろう。
一気に疲労感が襲うのも無理ねぇかもしんないけど。
…フツー寝るか、こんな時に。
よく知りもしない人間の家で、ましてや俺のもんになれとか何とか言ってきた男のそばで。
どういう神経してるんだ。
言っとくけど、俺に言われたらオシマイだぞ。
「なんなんだ、お前…」
「………………」
「おい?」
「………………」
返事を待って黙った末に聴こえてきたのは、深呼吸のような寝息だった。
ホントに寝ちまったのかよ。
いいけどさ…
244 :
469:2006/01/18(水) 01:41:27 0
溜息をついたところで、こんなデカい音だったか、と驚く勢いで電話の着信音が響いた。
部屋のオブジェとして考えてるくらいにかかってくることが滅多にない
(かけることはそれ以上に無い)ため、聴き慣れないからか、余計に緊迫感があるな。
無意味にドキッとさせられるし、やっぱり俺は電話ってもんはどうあっても苦手だ。
一応コードレスになってるそれを手にとって、前髪をかきあげながらベッドに戻る。
「はい?」
隣にいる男を起こさないように、少しだけ声を抑えた。
『アベ君?』
「ああ、ウエノか…」
バンドを抜けてからは、電話をかけてくる相手といえば実家とこいつくらいだった。
大抵は飲みへの誘いだが、さすがにまだ四時を回ったばかりでそれはないだろう。
そもそも昨日会ったばっかなのに。
『うん。今大丈夫?』
「ああ平気。…あ、や、ちょっと取り込み中かな」
『なーに、例の彼女?』
「違う違う」
『ごめん、すぐ切る。ごめん、やっぱチバ捕まらんのよ』
「ああ…」
『昨日の夜もかけたんやけどね。悪いけど、もうちょい待ってもらえる?』
「いいよ。どうせ俺ずっと暇してるから」
『知らんうちに他のバンド組んだりしないでよね。ウチが先約だかんね』
「あーしないしない」
『じゃまた電話するけん。もしかしたら、チバから直接連絡あっかもしれないけど』
「わかった。サンキュ」
俺よりウエノの方が気を遣ってくれたのか、手短に用件を言ってとっとと向こうで切れる。
このまま話が流れそうな雰囲気だなあ。
ウエノの心労がなんとなく垣間見えて、電話の向こうの溜息を想像する。
受話器を戻そうと立ち上がろうとした時と、その拍子に隣にあった黒髪の頭が、
倒れてきたのは同時だった。
245 :
469:2006/01/18(水) 01:45:11 0
俺の膝をストッパーにして、その落下が止まる。
熟睡してるよこいつ…。
「………………」
ったく。
こんなことホントに惚れた女にくらいしかしねえんだぞ、とガラでもない自分の行動に
呆れながらも、俺はいつの間にかその頭を撫でるように触れていた。
気が抜けたというのは多分本当で…ロクに寝てなかったんじゃないかと思う。
俺が思っていた以上に、こいつはきっと自分を責めてた。
ごめんな、と心の中で呟いて、その髪に手の腹を滑らせる。
あんな言い方はないよな。ひどいこと言って悪かったよ。
一度だけ往復したところで、その寝息の気持ちよさに釣られたのか、俺の口にも欠伸が浮かんだ。
あんまりこいつのことをバカに出来ないなと思いつつも、膝の位置を動かさないようにして、
ベッドに肘をついてその上に頭を乗せ、俺もまた眼を閉じた。
この時自分の自分の真横で眠っていた男が、その「チバユウスケ」だと知るのは、
三日後…そろそろ六月も終わるかという時期だった。
246 :
469:2006/01/18(水) 01:51:37 0
---------------------------
こんだけかけてまだキスもしてないSSなんてアリなんでしょうか!!
すみませんすみませんすみません…
この様子じゃエッチに至るまでどのくらいかかるのか…orz
というかありがとうございます!なんて優しい…泣きました…
週末に適正試験と研修があって今からビクビクしています…。
>>22さんの新作と
>>158さんの投下、心待ちにしています!!
ありがとうございます
寝ないで待ってて良かった!
素敵すぎる‥!!(´∀`*)
249 :
158:2006/01/18(水) 02:11:45 0
469さん忙しい最中にありがとうございます。
試験頑張ってくださいね。
>>164を書いてはいるのですが…
エロ成分入れようとした途端に手が進まなくなりましたorz
>>249 >エロ成分入れようとした途端
わかりますw
>>246=469さん
乙です!ありがとうございます!
469さんの書くアベ好きなんです(*´Д`)ハァハァ
試験と研修頑張って下さいね、応援してますよ〜!
469さん、忙しくて大変な時なのに続きをありがとう!!
チバ、初めて人に優しくしてもらった野良猫みたいだ…(*´∀`)
長い話バッチコイ!ですよ469さん。
エロに至るまでのプロットは超重要だもの!
それが充実しててこそ、エロシーンが楽しめる〜(*´Д`)ハァハァ
255 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 18:20:35 O
>>254 アベのちぎってムシャムシャしてるの?(((( ;゚Д゚)))ガクブル
>>254は、右でもageまくってた人?
sage覚えてから来てくんないかなマジで。
>>254 アンカー間違えた…ごめんよ。・゚・(ノд`)・゚・。
>>255の間違いだ…
オイラこそ逝ってきます…orz
>>254 ホントに人肉食べてるみたいだ((((;゚Д゚))))
人いなひ…
います!!(*`∀´)ノ
(゚ ё ゚)くたまにはこっちにも顔出してみよ〜っと。
>>263 パッチwwww
なにしに来たんだwwww
パッチ…なんかもう見るだけで笑えるww
ウエノにしてみると元ボーカルのスレにおける現ボーカル
の は ず な ん だ が
スミマセンお邪魔しました[=.・з・]ノ<゜ё ゜)))))イテテテ
469さんはそろそろ試験&研修かなー…
落ち着いたら、ぜひ続きをお願いします(*´∀`)
そしてまた人がいない…
いるんだけど何をどう書き込んでいいのかわかんないんだ。
自分の妄想は脳内に収めておいた方がいい類のものの気がして
吐いチャイナ!
先月のアベすっとこ2ショット目撃情報でしばらく燃料無くても腹イパーイ
と思ってたけど、もう飢えてきたので妄想でしのいでいるのですが
頭の中で2人がものすごいバカップルになっていて、困る
277 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 20:09:03 O
誰もいない…(´_`)
だからってあげちゃだめ
だからこの肩がたまりません
骨に沿って撫で回したい…
スケベなチバさんは撫で回されただけで下半身が大変なことになってしまいます。
剥き出しの肩甲骨に口付け隊員募集中
後ろから抱き寄せられシャツのボタンを外されむき出しになった肩を撫で回されそしてキツく吸われる。白い肌に赤く後が浮かび上がる。その顔を覗き込むと眉を寄せ必死に声を堪えている。
残ったあと二つのボタンも外そうと手をかけると、慌ててその手を掴まれた。
ボタンに手を残したまま、もう片方の手の中指で背骨を撫で下ろすと、
悲鳴に似た声が上がった。
(*´Д`).。oO(ナンカキタ!)
「やだ、な、なんで肩ばっか…っ」
「なんでってw、好きだから(ガブッ)」
「あっ!」
赤い痕が散らばる肩と背に、歯型が加わる。
うっすらと血が滲んだそこに、改めて舌を這わせた。
「あ…」
「ごめん、痛かったか?」
リレー?
「悪かったな。痛いことして。」
そう言って抱き寄せていた体を離そうとすると重ねられていたチバの手に力がこもった。
「何?w」
わざわざ聞かなくてもチバのしてほしいことはわかっている。
誰にヤラれてんだ?チバは。
最初にリレー書いたのはおいらだよ(´Д`)まさかリレーになると思わなかったよ。ごめんね…
相手がわからないのが逆に自由で(・∀・)イイ!
人いなす?…(´Д`)
つ、続きがきになるす…。もう色々とw
┃_ゝ´彡<ま、またいやらしいこと さ、させようとしてんだろ?
チバさんのスレなのにチバさん追い返されてるw
>>298 いいんだよ。
この人がでしゃばるとロクなことないから。
おとなしくしとれ。
チバさんの顔文字ってよくなかったのか…
今まで何度かレスしちゃってました
ごめんなさいです
いやいやいやwwww
良くないとかじゃないんだ。いいんだけど別にw
なんかうまく言えないなぁ…
ウエチバの職人様また来てくれないかな…
あれまさにお菓子ど真ん中で、盛大に萌えたよ
469さんはまだお仕事忙しいんだろうか…
イイ子にして待ってます(*´∀`)
まだまだ謎だらけだもんね、エロ肩チバ (*´Д`)ハァハァ…
チバさんなんか犯されちゃえ(*´Д`)
307 :
469:2006/01/25(水) 22:30:56 0
>>303-304 ただ今20連日勤中でなかなか続きが…ごめんなさいです
試験受かりました。晴れてリーダーに…
>>307 Σ(゜ё゜)リーダー!
469さんおめでとうございます。
続きは気長に待たせていただきますので
お体に気をつけて下さいね。
469さんおめでとうございます!!!!!
無理せずとも、住人一同マターリ待ってますので〜(*´∀`)
469様キテタ―――(゚∀゚)―――!!!!!
合格おめでとうです。リーダー、カコイイ!
気長に待ってるのでお仕事がんばってー!
52公演に渡るツアーの最終日。
いつもの通り打ち上げで普通に酔っ払って普通に飲んでを三回くらい繰り返した後、
ホテルの部屋飲みへと雪崩れ込んだ。これもいつもの通りだった。
夜中の一時を回った頃、誰かにビールをぶちまけられたシャツを替えにウエノは一旦部屋に戻った。
手を滑らせてジョッキを倒したスタッフが心底申し訳なさそうにしてたのも理由だが、
そんな事はどうでもいいくらいにウエノは上機嫌だった。
いーっていーってと肩をバシバシ叩き、鼻歌交じりにフラフラと自分の部屋に戻る。
服を着替え、しっかりと鍵を閉めたことを確認して、安ホテルの狭いエレベーターに向かう。
ツアーは慣れたものだったが、今度のツアーは何かがおかしい。
ライブの内容や会場がどうのではなくホテルでの話だが、何をきっかけに狂い出して
何が起こり始めてるのか最早メンバーにもわからなかった。
とりあえずウエノは、部屋の鍵やドアを閉め忘れようもんなら
とんでもないことになるということを学習した。
鍵をフロントに預けただけではまだ危険ということも。
自分はまだ仕掛けてゲラゲラ笑ってる方だが、いつ矛先がこっちに向かうか判ったもんではない。
酔っ払ってはいても、そこらへんだけは理性を残して、ロックの確認は怠らなかった。
さわらないでかまわないで、を、そうとは発音せずに口ずさみながらホロ酔いのまま
エレベーターまで行き、居酒屋(というよりは地獄絵図)と化した部屋に戻るために
ボタンを押そうとすると、ちょうど下から上がってくるのが頭上の表示で見て取れた。
チン、という音と共にドアが開いた箱に乗り込もうとしたら、
ちょうど中から出てこようとした人物とかち合った。
「あ」
「おう、ども」
正確には人物たち、だった。
見覚えのある顔の男が、おそらく酔いつぶれたのだろう誰かを背負っている。
ウエノの顔を見て、気のせいか顔をこわばらせたその男は、自分たちのライブのスタッフだった。
確かアルバイトで雇われた人間のはずだが、それなりに長く一緒に仕事をしている。
さっきのバーではチバにしきりに話しかけていたし、ただの雇われではなく、
かなりの水準で自分らのファンも兼ねているようなカワイイヤツ、とウエノは記憶の網を手繰り寄せた。
そういえば今日のライブで最後なんだと、ツアーの初日あたりに打ち明けられた気がする。
「あれぇ?もしかして、それチバ?」
「あ、は、はい」
エレベーターの外のボタンを押し続けながら、苦笑交じりに訊くと、想像通りの答えが返ってくる。
その寝こけたシルエットは勘弁してくれというくらいに見慣れたものだった。
前髪と肩口に埋まった頭とでほとんど顔も見えないが、着ているシャツはバーで別れるまで
一緒に騒いでいたボーカルのものだ。
ダランと腕を垂らして、完全に潰れている。耳を寄せればその寝息も聞こえるだろう。
「ごめんねぇ、困った子でねぇ」
「いえ…」
デカくて重い上に自力ゼロの全体重でのしかかる男の体を背負うのは大変らしく、
スタッフの額や腕には汗が浮かんでいる。
バーで一緒に飲んでいたはいいが、チバが潰れてしまったので、仕方なくかのーやんに頼まれたかで
部屋まで送り届ける最中のようだ。ライブが終わってからもこんな仕事を任されるとは可哀想に。
早いところチバを放り込んで、自分も早いとこ部屋に帰りたいのか、
ロクにウエノと目も合わさずに軽い会釈だけして男はそそくさと廊下を歩いていってしまった。
ウエノは大して意に介さず、ああはなりたくないねえ、俺を背負えるヤツなんかいねぇし、
いたとしても迷惑至極だし、などと考えながら箱の中に乗り込んだ。
さて、と階数ボタンを押そうとすると、床にホテルの部屋のキーが落ちているのが目に付いた。
拾い上げて手のひらで転がすと、自分の部屋と近い番号が刻まれている。
誰だよ、こんなもん落とす奴。俺らが泊まってる階で、今時分この中にいた人間で。
…どう考えても、今背負われてった男のものだろう。
何かのはずみでポケットから落ちたのだと考えて相違ない。
だとしても、あのスタッフには何の罪もない。
まったく、あの大将はホントに。
人様の世話になるのはいいけど、人の迷惑になるのはよしとけって。
扉が閉まったまま上にも下にも動かなかったエレベーターの開閉ボタンを再び押して、
ウエノは今いた廊下を戻ることにした。
面倒くさいこと極まりないが、部屋の外で立ち往生してるだろう可哀想なスタッフちゃんのためだ。
チバの部屋に入るのなら、いつかの仕返しに河童かカエルの人形の一つでも置いてきたいなぁ、
と含み笑いをしながら二人の姿を探す。
しかし、立ちすくんだあいつらがいるだろうと予想した部屋の前の廊下には誰もいず、
夜中のホテル特有のシンとした空気が纏いつくだけだった。
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
「…あれ」
前後左右を見渡しても、一直線の廊下には誰の姿も見つける事はできなかった。
…ということは、鍵無しでチバの部屋に入って行ったということだ。
今日のホテルでは、殆どのスタッフの部屋は階が違う。メンバー同士も今回は相部屋ではない。
じゃあナニ、あいつはライブの間中、部屋に鍵を掛けてなかったと?
ああ、ありうるな。チバならありえる、とウエノ溜息をついた。
鍵を掛けずに部屋を出て、その鍵を落としてくるなんてアイツくらいだ。
俺たちゃ金目のもんなんか持ってないが、大事な大事な買ったばかりのレコードを
盗まれたり割られたりしたらどうすんでしょうねぇ。
チバの部屋の前まで行きルームナンバーを見下ろすと、やはり手に持っているキーのそれと一致する。
ノブを捻ると、スルリとドアが開いた。
鍵がかかってなかったんで入れたんだな。ラッキーといえばそうだが。
今頃あのスタッフは四苦八苦しながらチバをベッドに寝かしつけて、
腰の一つでも叩いているかもしれない。お疲れさんと一言やってやんなくちゃね。
音を殆ど立てずに開いたドアの向こう、すぐにベッドやテレビが見える。
そのベッドの上に確かにチバはいたが、一人でではなかった。
ウエノ自身酔っているからか、その兆候はどこかしらか感じることが出来たからか、
ウエノの仰天振りは「ものすごく」ではなく「かなり」くらいに抑えられた。
眠っているチバの上にのしかかり、夢中で撫で回しているその男は、ウエノが入ってきたことにも
気がつかないらしい。空調の音さえも治まったように思えるほど静かな部屋に、
男の荒い息が響き渡る。小さな声で何度もチバを呼んでいるようにも聴こえた。
「やめといてあげてよ」
笑いを含んだウエノの声に、男は反動をつけて飛び上がった。
もっとスプリングの効いたベッドだったら、そのまま宙に浮いたんじゃないかというくらいだ。
汗を滝のようにダラダラと流しながら、これでもかと見開いた目でウエノを見て凍りついている。
言い繕う余裕なんかこれっぽっちもなさそうな様子だった。
「こいつ真面目だし、ヘコんじゃうと大変なのよ。別に俺はアレよ、人の恋路を邪魔する気なんかないんよ?」
「………………」
怒りや軽蔑をまったく含まないいつもの軽い口調が却って異質だった。
実際ウエノは、マンガのような場面に遭遇して最早笑わずにはいられないとばかりに苦笑いしていたのだが、
チバの上から怯えるように退いていった男の目にはその姿はどう映ったのか。
最近チバを崇め奉ってるヤツがチラホラといることを、ウエノは知っていた。
それはファンやスタッフに限らず、同業者やライターに至るまで。
チバに何かを求め、それが叶うと更にまた何かを期待し、チバを勝手に手の届かない位置に据えて満足する。
そしてそんな奴等は、女の子よりも野郎に多い。
男はヒーローには弱いものだが、身勝手な偶像はその中でも最強のヒーローだ。
デビューしてたった二年目の弱小バンドのボーカルで、音楽とったら只の飲んだくれのロクデナシ。
それは謙遜でも何でもなく事実だというのに、チバの内面を暴きたくて身悶えてる奴等は後を絶たない。
変な世の中だ。まさかその代表例の一大作戦に出くわすとは思わなかったが。
ウエノがベッドに近づき、チバの頬を叩くのを後ずさりしながら目で追っていた男は、
ウエノよりもドアに近い位置まで壁に沿って行った後、逃げるように(実際逃げた)駆け出していった。
邪魔するなと逆ギレされんでよかったぁ、と冷静に息をついたウエノは、
何もわからずにいい身分で眠っているチバの頬をもう一度叩いた。
「チバちゃん、起きてー」
ベッドに沈んでいた腕を持ち上げブラブラと大きく揺さぶってみたが、
チバの瞼は頑固に動かなかった。確かに寝汚い男だが、ここまでだったか。
危ないところを救ってやった礼の一つでも聞かせてくれ、などと言いたいわけではない。
未遂で済んだのだから、内輪でなら笑い話になるだろう。
チバに話して聞かせて、キレて椅子を蹴り上げるくらいに驚かせたい気持ちも確かにあるのだが。
何度も起こそうと試みていると、やがてチバの瞼が痙攣し始めた。
少し息が荒くなり、額に汗が浮かび出す。
それでもチバは目を覚まさない。覚醒して楽な体勢になりたいのに、体が言うことを聞かない、
そんな風情だった。おそらくさっきのスタッフが誘眠性のある何かをチバに飲ませたのだろう。
思い起こせば彼はチバの隣に張り付いていたのだから、そんなことは容易かったはずだ。
カンペキ計画的やな、と眉間を押さえた後、ウエノはもう一度チバの顔に目を戻した。
ただ眠らされているだけにしては、苦しげだ。
苦しそうに喉を上下させるのが、見てるだけで辛そうだったので
とりあえずシャツのボタンを三つくらいまで外したが、元々チバの体は細く
Yシャツの類は余裕があるため、大して功を奏したとも言えなかった。
襟元を人差し指で引っ掛けて開くと、チバの表情がかすかに歪む。
ウエノはここでやっと、チバの体の異変に気づいた。
いつもの喘息の発作なら、眉を寄せてるのは一緒でもどちらかいえば
歯を食いしばっているのだが、今は舌を出して口を開いている。
ヒュウヒュウと喉が悲鳴を上げてる様子なら見慣れてるが、
こんな風にハァハァと浅い呼吸を繰り返してるのはそう見かけた事がない。
犬が体温の調節をする時に舌を出すみたいに半開きの口から舌を覗かせてる様は、
苦しそうというより、熱を持て余してると云った呻き方だった。
(暑いのかな)
全然暑くやん。今何月だと思ってんだ。つい先月、年が明けたんだぞ。
空調もきついとは思えなかった。アルコールで赤くなってるだけかぁ?
さほど高くない気温と室温を、意味もなく部屋を見渡しながら確かめたウエノは、
首に溜まった汗を拭ってやろうと、チバの首に手を当ててみた。
「わあっ!?」
指が首筋に触れた時、反射的にチバの体が跳ねたのだ。
思わずウエノの方が声を上げるほどの勢いだった。
なんだよ?何もしてないっつの。
突然の大きな反応に、ウエノは胸を押さえて動悸を沈めた。
チバはそのまま耳元で聴こえる虫の羽音から逃れるかのように、身を捩った。
正確に言うと、捩ろうとした。
だが、薬が神経を麻痺させてるのか、ロクに動かなかったらしい。
数センチも動かせない体にジリジリとしながら、離れていった指がいつまた自分に
触れるのかと怯えているのがわかる。
今度のツアーから下ろし始めた前髪が、小さく音を立てた。
首を振るのも侭ならないらしい。
さっきより更に表情が険しくなったのは、苦しいからか、
それとも動かない自分の体が恐ろしいからか。
要するにアレだ、これはそういう薬な訳だ。
自分の勝手な推理と思いつつも、なかば確信を得てウエノはそう考えた。
あのスタッフ、すげぇな。どこでどうやってこんなモン手に入れたんだろう。
最近は色んなとこで色んなモン売ってるから、大して苦労もせずに変えるのかもしれないが、
こんな得体の知れないモノを他人に飲ませようって言う発想が既にイッちゃってる。
まあ男としては一種の願望のプレイなのかもしれねーけどさ。
こういう薬を使ったAVを観た事ない訳じゃないけど、それは一応演技じゃん。作り物じゃん。
実際こうして使ってる人間を見ると、やっぱりヒく。
あ、でも、合コンや飲み会で女の子の飲み物に目薬入れてたヤツもいたな。
犯罪は厄介なことになるから俺はパスやけど、と酔った時でも滅多に暴走した行動は取らないウエノは、
小心者とも要領がいいとも言える自分の判断を分析した。
だけど、こんなオッサンの意識奪ってどうこうするのが楽しいか?
ウエノはベッド脇に腰掛け、浮かされるチバの顔をチラリと見下ろした。
やはりよく見知った男が寝転んでる姿以上のものは感じられない。
男で、それなりのいい大人で。確か今年の夏で30になるはずだ。
オッサンやん。立派なオッサンやん。
だからこそなんだろうか、とふと思った。
確かに、いくら腕も細く腕力がないとは言え、一応それなりに背もあって、
筋肉もある男を思い通りにするには、力ずくだけじゃ足りないだろうが。
だからっつって、よりにもよってこいつかよ。
金払われたって嫌だね。おおお、想像したくもない。ウエノは身震いした。
世の中色んな趣味のやつが居るもんやねぇ。
「う……」
チバが何度目かの呻き声を上げた。
手足が緊張しているのが見て取れる。
決して目を覚まさない割に深く心地いいものではない眠りが、チバを余計に疲れさせていた。
かすかに動く指先で、というより指先くらいしか自由に動かせないからか、
シーツを引っ掻くことで発作のような波をやり過ごしている。
声も出そうとして出しているわけではなく、深呼吸をしようとして上手く息が紡げず、
勝手に音を伴ってしまっただけだった。
さて、どうしようか、とウエノは首を傾げた。
はっきり言ってチバがこのままである以上、することも出来ることもない。
ここでこうして見ていても楽しいものじゃないし、チバにとってもありがたい話ではないだろう。
薬を盛られた時点で、そしてそれを友人に知られた時点でかなりの不名誉だ。
いつ醒めるものなのか知らないが、ここはほっといてやるのが最善だろうと考えたウエノは、
チバをこのままにして部屋を出て行くことに決めた。
薄情だと言われる筋合いはねえからな。むしろジロジロ観察される方が嫌やん?
とりあえず、と、サイドテーブルにミネラルウォーターを置くあたりは、
アベなどからすれば、それは十二分に気を遣っていると思うだろう。
呑み過ぎて気持ち悪くなり横になった時、服をだらしなく寛げて横になることは多々ある。
まあ、俺の場合全裸になっちまうけどな、と考えつつその時の苦しさを思い出して、
多少同情的になりながら、ウエノは最後にチバの着衣を少し楽にしてから帰ろうとした。
シャツはもういいとして、他人のものだと固く感じるジーンズのフロントボタンを
あまり意識せずに外そうと手をかける。
できるだけ体に触れずに、と思っても、なかなか難しい話で、ウエストに手をかけただけで
その熱い体温が伝わってきた。逆にチバにはウエノの低い体温が肌越しに伝わる。
「あ……」
触られた感覚が望まぬ快感となって、ダイレクトにチバに響いた。
そういう声出すんじゃないよ。まるで俺がヘンタイみたいじゃんねぇ。
親切にしてやってるというのに、傍から見たら変質者に間違われかねない行為を
苦々しく思いながら、ウエノはチバのジーンズの前を寛げてやった。
かすかにでも反応してるのがわかる。
ウエノが触れたからではなく、催淫剤の効果なのだろうが、今チバが目覚めたら
まず自分を疑うだろうと考えると、甚だ迷惑な話とウエノは思った。
だが、ここまで苦しげに息をしながらも、チバは一向に目を覚まさない。
体を動かそうという意思がはっきりと感じられるのに、全く思い通りにならないほど自由を奪われている。
長い付き合いのせいか、普段チバには同情など殆どしないウエノだったが
さすがに気の毒に思うほどだった。
だがそれも、インタビューで歌詞と頭の中を鋭利な刃物で無遠慮にえぐられて
泣き出しそうになってる姿を見ている時ほどではない。
ああいう時は思わず、こいつを突付いても何も出てきませんぜ、と横から茶々をいれて、
その執拗な触手のような質問たちから逃してやりたくなる。
チバにとって音楽は本能で、バラしたりほじったりしても意味がないことをウエノはよく知っていた。
あんな姿に比べれば、今の物理的な苦痛に浮かされてるのはまだマシだろう。
チバにしても、ウエノにしても。
そもそも動悸のせいで息苦しくなっているとは言え、基本的に今チバを襲っているのは快感の波だ。
欲情に抵抗しきれないで喘いでいるのかと思うと、むしろ見ていて面白くもある。
ふとウエノに好奇心が湧いてきた。
…無邪気に眠っている人間を見ると悪戯したくなるのは、どうしてなんだろうねえ。
チバの寝姿を見るのは珍しいことではない。
「眠らなきゃ」と謳ってるくらいにチバにとって眠りは必須で、逃避の場所でもあった。
その邪魔をすれば、不機嫌極まりない寝起きの顔と声が飛んでくる。
台風の目になってるのは、あの天然のギタリストくらいだ。
キュウにいたっては理不尽な蹴りを食らうことさえある。
だが、今はチバは薬によって眠りの世界に繋ぎとめられている。
…要するに何をしても起きないって訳やね。
そう考えると、頬にマジックで渦巻きを書くくらいのことはしてやりたくなる。
だけどそれ以上に。
さっきのスタッフの上前を撥ねてしまいたくなるのは、男の征服欲故なのだろうか。
略奪欲というやつなのだろうか。隣の芝生は青いっていう、アレか?
ただ単に、どこをどうしたらチバがどうなるのか知りたくなったのもあったが。
あんなに下ネタが駄目で、どんな顔して女抱いてるのか見てみたい。
自分のセリフを思いだしながら、ついでに、どんな顔して男に弄くられるのか、
今から少しだけ見てやろうと思った。
長い下睫を震わせながら、チバは一瞬息を止めた。
ウエノの長く細く指が、ジーンズの中に入ってきたからだ。
さすがに直に触れたかぁない、と下着越しに少し硬くなってるそれを包むと、
ウッと鼻にかかった声を上げて、体が動きを止める。
そしてその後、口を僅かに開きながら喘ぎ始めた。
ガタガタと痙攣してるように見えたが、おそらく本人はその指から逃れるために
身を捩ろうとして、失敗してるらしい。
突然はっきりと襲い掛かってきた刺激に頭も体も追いつかないのか、
ウエノが指をほんの少し動かすだけで、ビクッと驚くのがわかる。
何度か撫で擦ると、チバの顎が上がり、胸が反らされた。
(ふーん…)
勃ち上がってきた先端を布越しに引っ掻くと、背筋に痺れが走ったのが見て取れる。
(マス掻いてる時はそんな顔ですか?チバさんよぉ)
チバの体はやっと意識的に快感を与えようとしてる外敵がいることを察したようだ。
嫌々をしようとして、首が自由にならずにもがいているのも恐らく無意識に違いない。
下肢への刺激は、男なら誰でも慣れたものだろう。
それなら、と、ウエノは先ほど自身で肌蹴たチバのシャツに手をかけた。
肩口あたりまで袷を開いて、(他人の事は言えないが)痩せた胸と腹を晒させた。
チバの筋肉はきれいに曲線を描いている。
鎖骨、胸板、臍への窪みもなだらかな坂を何度も描いていて、
男特有の平面を辿るだけの退屈さはなさそうだ、とウエノの触覚を誘惑した。
男って何故か曲線に弱いよな。
ギターやベースが女の括れを象ったものだという認識があるから、
アベ君は大事そうに抱き下ろすし、自分もまたそのネックに口付けるのだろうか。
チバの体を跨ぐようにしてベッドに乗り上げ、その肢体を見下ろした。
やっぱりデカい(女に比べたら)。硬い。見ていて楽しくない。
このくらいの身長の女も何人も抱いたし、チバも男にしたらかなり細いのだろうが、
やはり骨格が男と女では違うのだ。
骨や筋肉の存在感が、ちょっとやそっとではいいなりにならないことを主張している。
だが、今自分の下にあるのは、屈服したくなくともしている意識のないそれだ。
男の、というより、人間の苛虐心を煽るのには十分なものだ。
項を発着点にして下に向かってその筋を人差し指で辿っていく。
頚動脈の上を通り、鎖骨を過ぎて、胸。
突起の上をわざと爪を立てて通り過ぎると、電流が走ったようにチバの体が跳ねた。
円を描くように一周し、また引っ掻きながら掠めていくと、チバは眉根を寄せて、
今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
「や…」
うわ、こいつこんな声出すんだ。
いや、今までの人生でもそうそう出したことはないだろう。
チバ自身、発したことも聞いたこともあるかないかの、稀有な声色。
乳首触られただけでこれかよ。ああそうか、薬のせいもあるのか。
敏感になれば、こんな女みてぇな声出すんだ。
ウエノは、特に色っぽいと思うこともなければ、気持ち悪ぃと思うこともなかったが、
その発見に目を見開きながら、胸躍らせる事は止められなかった。
もっと出させたい。
チバも聴いたことのない声を聴いてるかと思うと、その秘め事ぶりに酔ってしまう。
胸を通過させた指を、臍の中に突っ込むと、チバの全身がこわばった。
より内臓に近い場所に触れられ、恐怖を感じたらしい。
そこも過ぎて、また下肢に戻ってきた。
中心に構わず、内腿まで掌で撫で下ろす。
脚気の検査のように、膝がビクンと跳ね上がった。
へぇ、服越しでこんな反応するんか。
直に触れたらどうなるかな。
ここまでしても声帯を震わせることさえできずに意識を奪われたままの体は、
ウエノを強気にさせた。このくらいじゃ、こいつは起きない。
もっと見せてくれよ。
ステージ上では誰もを惹き付けるその声が、俺の思い通りにあがる様を。
普段は誰も手なづけられない野良猫のような男が、俺のなすがままになる現実を!
意識のない体を持ち上げるのはなかなかに大変で、下着ごとジーンズを脱がすのは
かなりの労力が要る作業だった。
ただ抵抗がないので、腿辺りまで抜き取ってしまえば後は楽だった。
二月の空調の効いたホテルで、ウエノは額に浮かんだ汗を拭う自分を思って苦笑する。
何やってんだかなぁ。
つか、やっぱり男のアレなんか見ても楽しくないよな。
だけど生体実験のモルモットだと思えば、大してどうにも思わない。
ウエノはチバの顔を覗き込みながら、そこに迷わず手をかけた。
「ん、…う!」
何度目かのそこへの刺激に、チバの体はさすがに身構え始めたらしい。
ただ驚くばかりだった先ほどとは違い、爪先や指先に力を入れて劣情に耐えている。
無意識のうちに声も抑えようとしているようだった。
こうなると、無理矢理にでも口を「あ」の字に開かせたくなる。
ウエノは一度舌なめずりをして、殊更軽く、指の腹で先端を撫で回した。
チバの首が左右に振れる。
動くことで快感を外に逃そうという意思が見えたが、ウエノは焦れることなく
五本の指を存分に使った。
中指の腹で先端の窪みを弄り回し、人差し指と薬指で裏の筋をなぞり、
親指と小指で袋の根元を押さえ込んだ。
急所を捉えられているチバはどうすることもできず、その刺激に耐えるしかなかった。
時折全ての指でキュッと包み込むと、瞼が大きく震える。
何度かそれを繰り返した後、さて、とばかりにウエノは棹を握りこみ、数度扱き上げた。
こうすればすぐにイッてしまうだろうとわかっていて、弄び続けたのだ。
チバの喉からヒッと息を吸い込む音が聴こえ、やがて観念したように嬌声が上がった。
「あ…あ、あ………………っ、…ん」
ウエノはチバの意識下の注意が下肢に向いてるのを確認した後、
空いた手で先刻触った側ではない胸の突起をキュッとつまみ上げた。
まったく無防備だった場所への刺激に、チバの身体は声を抑える術を知らない。
その途端、今までの中で最も高い声が聴こえ、ウエノの手の中に温かいものが流れ込んだ。
壁|=3 ピュッ
薬プレイキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
起きてて良かっターーーーーーーーーーーー(゚∀
つ、続きはあるのでしょうか(*´Д`)ハァハァ
続きは・・・(*´Д`)ハァハァ
早くしないとクスリの効き目がきれちゃいますww
ウエノ超冷静なうえにチバは薬…(*´Д`)ハァハァ
キタ━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━!!!!!
336 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 10:36:56 O
アゲ
帽子の名前シャウトしてどうするんだっつーの
338 :
337:2006/01/26(木) 10:46:04 0
すみません誤爆しました
339 :
311:2006/01/26(木) 11:25:15 O
アゲって。怒らせた?
チ、チバに記憶はあるのだろうか…(*´Д`)ハァハァ
続きキボンヌです〜
メンバー同士、子供みたいないたずらしてた頃の話がナツカシス…
マヨネーズで枕元に「LOVE」と書かれた仕返しのつもりか?鰓さんwwww
sage
携帯では無理なので、漫喫行ったときなどに
見てみるといいかもです。リンクは避難所に
>>
>>347わかりました。ありがとうございます(´∀`)
小ネタ満載でうれしい(*´∀`)
鰓は『実験』のつもりみたいだが、このあと興奮したりしないのかな?
チバは目を醒まさないと言うよりは、
意識はあるんだけど目もあけられないし、体も言うことをきかないのかも… (*´Д`)ハァハァ
ウエノはベッド脇に置かれたチバの鞄の中からタオルを引っ張り出し、手を拭った。
…何してんだ、俺。
あいつの精液を手で受け止めて、しかもそれで勝ったような錯覚がしてるなんて…。
ちょっと自分もどうかしてる。夢でも見ているような気分だった。
もし今誰かがこの場面を見たとしたら、いかされたチバよりもウエノの方を不審な目で見るだろう。
眠っている成人男性を脱がして、性感帯を弄り回してるだなんて。
自分の人生年表に、汚点として書き記されそうだ。
ハーッと溜息をついて、ベッドに腰掛けなおし、ゆっくりとチバの方を向くと、
汗びっしょりになったその男が、目を開けるのが見えた。
「……………」
「…おはよ」
いつもの調子で声を掛けると、チバは緩慢な動きで足元を見下ろした。
ウエノの姿を視界に収めると、あれ、という顔をして、
それでもいくらか安心したかのようにもう一度目を閉じた。
皮肉にも、チバは自覚なくともウエノを無害として認識している。
挙動や思考回路の読めないアベや、チバの行動にダメ出しをするキュウに対して抱く
無意識の防壁はウエノの前では取っ払われることが多い。
それはチバに限ったことではなく、友人や仕事相手、そしてあのアベでさえその傾向があった。
意識が戻ったとはいえ、まだボーッとしているチバは、自分の身に何が起きたのか
まるでわかってないようだった。今の自分の状態も頭に入ってきてないらしい。
あちぃ、と呟きながら手で汗を拭おうと腕を持ち上げかけ、力尽きたようにまた下ろした。
果てた後のだるさの所為か、それとも薬の作用がまだ残っているのか。
ウエノはそんなチバの様子を観察しながらも、何故か冷静だった。
ネ申キター*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
ここに座ってる男が自分を犯していたと知ったらどんな反応をするか───
それを想像するのは恐怖でもあったが、どこか楽しみでもあった。
こんなことは大したことじゃない、という根拠のない自信があったからかもしれない。
スタジオにポツンと二人で佇み、バンドが前にも後ろにも進めない時代を乗り切ってきた。
あの深刻さに比べれば、比べるのも馬鹿馬鹿しいほど、こんなのは遊びだ。
ツアーの最終日になれば笑い飛ばして語れるほどの冗談にすぎない。
それがウエノの勝手な思い込みだとしても、自分がそうであれば自ずとそう流れていく気がしたのだ。
…だから、まだ平気だ。
あと少し、タチの悪い冗談をかましても、赦される…
「大丈夫?」
「なんか…体、…うごかね…」
「お前さあ、部屋に帰るまでのこと覚えてる?」
「…?」
「誰と飲んでたとか、覚えてる?」
「…全然」
「…まったく思い出そうとしとらんね。いいけどさ」
チバのことだ。どうせ正常な状態だったとしても、ロクに覚えちゃいないだろう。
アルコールが入ってなくとも、自分にとって大事な記憶以外はゴミ箱に捨てるタイプだ。
「チバちゃん一服盛られたんだよ」
「はぁ…?」
軋む音を立てて、ベッドに乗り上げる。
チバの頭の両脇に手をつき、顔を覗き込んだ。
チバはウエノの突然の動作にギョッと目を見開いた。
なんだよこの体勢は、と頭の中で考えたところで、肌に触れる外気で自分の今の姿を悟った。
息が苦しい割に皮膚に纏わりつく感触がないと思ったら、当たり前だ、何も身につけてない。
肩口から腕だけを覆うシャツだけが唯一のそれで、爪先さえもシーツの感触を直に感じていた。
「な…」
「一緒に飲んでたスタッフの…まあ誰とは言わんけど、そいつに薬飲まされたんだよ。
俺が来なかったらチバちゃんそいつにヤられてたんよ?」
「………」
噛んで含んで説明しているのに、ウエノの言葉はチバの頭の中をより混乱させるだけだった。
スタッフ?薬?飲んでた?やられる?
半裸なのはそれでわかるとして、今ここで、どうしてウエノが?
実際チバから服を剥ぎ取ったのは、スタッフではなくウエノだったのだが、
それを教える意味もメリットもないことをウエノはわかっていた。
チバが何かを言い出す前に、ウエノはチバの脇の下から腕を差込み、大きく抱きしめた。
「……!!」
「あんなやつより俺のがマシだよね?スッキリさせてあげるよ」
足を絡め、肩口に頭を埋め込み、背中と腰を両腕でがっちりと抱きこんで全体重をかける。
チバが取り返したのは意識だけで、催淫の効果も体の拘束感もいまだ体内に残っていた。
暴れるだけの自由もないが、体を捩ればその分勃ち上がった部位がウエノの体や服に擦れ、
チバから力を奪っていく。身体の不自由さもチバの混乱を大きく手伝った。
何?何が起きてんだ?
これは夢なんじゃないか、と呆然とするチバの体をウエノの指が無遠慮に撫で回し続けている。
ど、どこ触ってんだふざけんなよブッ殺すぞ、と叫ぼうとして開けかけた口は、
隙を見逃さないウエノの唇によって塞がれた。
ひー規制食らった…
明日の夜に再挑戦
うひー、マジですか!
ワクテカしすぎて眠れない悪寒wwww
明日待ってます(´∀`)ノ
つ、続きが楽しみすぎる(*´Д`)/lァ/lァ
今夜何時まででも起きて待ってますから!
ゴッド鰓様にヤラレて乱れまくるチバ…(*´Д`*)ハァハァ/lァ/lァ
チバを抱きしめてキスしてもなお、鰓は実験気分なのかな?
鰓の口調がかなり本人に近くてモエス(*´∀`)
今夜も投下あるよね? 待ってます 待ってます
「んぐっ、…!」
唇の間にするりとウエノの舌が入り込む。
頭を両手で抱え込まれ、チバは顔をそらすことも出来ずにその暴走を受け入れさせられた。
しかし乱暴さはなく、呼吸を止められる圧迫感は感じない。
ウエノの方も、チバはかぶりを振ることさえ満足に出来ないことをわかっているため、
暴力じみた動きで虐げようとはしなかった。
鳥が啄ばむような音を立てて、腫れぼったい唇を軽く吸い上げる。
しかし、細かくくすぐったいその感覚は、尚更チバを混乱させた。
強引な乱暴なら自分に対する嫌がらせだと判断できるけど、これは何だ。
ウエノが自分に好意を持っていたとも思えない。
にも関わらず、ウエノはチバの快感をズルリと引き出すキスを繰り返した。
歯列を割って、舌同士を絡ませる。
舌先でチバの舌のあらゆる箇所を突付くと、怯えたように縮こまった。
しかし口を開けていないと、ウエノの舌と唇で完全に呼吸を奪われてしまう。
喘息の気があるチバにとって、呼吸困難は想像にたやすい恐怖なので、
仕方なく喉を上げて口を開き、舌を差し出すことになった。
こんなのは冗談だ。
コウジ君が、…まさか俺を。
必死にそう思い込もうとするチバを尻目に、ウエノは目の前の人形のように大人しい体を
丁寧に嬲り始めた。
口付けを途切れさせること無く、空いた手でピンと張り詰めた胸の突起を
まるでスイッチを扱うかのように摘んで押し上げたり下に弾いたり押しつぶしたりして、たまに口に含んだ。
今なら母乳も出るんじゃねぇの、などとウエノに妄想させるほどに敏感になっているそれは、
明らかに腺と繋がっていて、下への刺激にまでも反応した。
諦めて体の力を抜いて快感の流れに沿ってしまえば楽なのに、チバは頑なに全身を緊張させている。
筋肉を弛緩させる作用のある薬と逆のことをするのは必要以上に疲れることで、
余計な運動をしているのと一緒だ。終わった後の脱力感は想像に難くない。
明日は移動日だが、数日先には待ち構えているライブにも影響が出るだろう。
ウエノは何度もそう説得しているのだが、チバは頑固に警戒し続けている。
というより、この状況への混乱でどうやって力を抜いていいのかわからないのだろう。
チバにできることといえば、途切れ途切れの声で制止と詰問を繰り返し、
ウエノへ罵詈雑言を浴びせることくらいだ。
もっとも、最初のほうで既にウエノにとってそれはただのBGMに過ぎず、
むしろ従順な方が戸惑っただろう、当たり前の添え物だった。
チバの報復なんかたかが知れてる、とウエノは高を括っていた。
せいぜい殴られるか蹴られる程度だろう。
大事な所持品を悪戯されたり壊されたりするのはむしろチバが上機嫌な時で、
本気で怒っている時はむしろ近寄ってきたりはしないのだ。
怖いのは脱退を言い渡されることだが、
今のチバとバンドにとってその選択肢はないことをウエノは知っていた。
ウエノ自身がそう感じているのだから、チバが感じていないはずはないのだ。
もっと上手いベーシストがいたとしても、今の面子が最高の部品たちであることを。
ほんの少しずつではあるが、チバの身体に自由が戻ってきている。
起き上がるのはまだ到底無理だが、腕を持ち上げるくらいには回復してきて、
ウエノの肩を押しやろうと必死になっていた。
それでも押しのけることはおろか、掴むことも未だ侭ならない。
その弱々しさは傍から見れば縋っているようにも見え、チバもその自覚に困惑している。
ウエノはチバの両手首を掴むと、左右にピンと引っ張り、ベッドに押し付けた。
腕を真っ直ぐに張られては、今のチバの体では、揺さぶって逃れることはできない。
まるで十字架に磔にされたような格好で、チバはウエノを見上げた。
「はなせ…」
「無理だって解ってて、言うの疲れない?」
「ゆるさねえぞ…こんな…」
「こんな、何よ?」
「………てめぇ…」
「それにチバのユルサナイは怖くないしねぇ。むしろ───」
「…………」
「俺を怒らせる方が怖いよ?」
ウエノはニッコリと笑い、そしてチバの肩から上のあらゆる箇所に口付け始める。
その柔和な笑みは、薬以上にチバから抵抗を奪い取った。
相手が知らぬ人間なら、どんなに穏やかな顔の殺人鬼であったとしても
チバは意に介さないのだが、ウエノが恨みや怒りで自分を苛んでるのだとしたら、
それは考えもしないことだった。胸の奥の方に絶望が燻るのを感じる。
俺は何かしたのだろうか。
何かして怒らせたから、ウエノはこんな…?
…したのかもしれない。
覚えてない…というより心当たりが無いだけで、また酔った勢いで何か…したんだろうな。
もちろんウエノにはそんな覚えも心算も毛頭なかったのだが、
基本的に精神構造が大きく違うため、ウエノにはチバの真面目な思考回路が想像できない。
それこそ十字架にかけられたような気分になったチバは、親の敵を見るかのようだった
自分の目つきが解除されていくのを感じた。
だからと言って、この行為を黙って受け入れる気などないのだが、状況は激しくチバに不利だった。
そもそもチバの普段の傍若無人ぶりに最もつきあってくれるのがウエノだったので、
そのウエノにカウンターを食らった時の逃げ方をチバは知らない。
おまけに混乱と薬と恐怖と腕力でがんじがらめにされては、少なくともチバ一人の力で
打開するなどまず無理だった。
「あ、」
チバがグルグルと考えている間にも、ウエノはチバの手首を一つ纏めに片手で拘束して、
もう片方の手でチバの片足を持ち上げ、膝を割った。
「お…い、まさか…」
「だって、挿れなかったらセックスにならないでしょ」
「い、要らねぇ、…やめてよ!」
「だぁーいじょうぶだいじょうぶ、痛くしないように頑張るから」
「い、痛くって…だって、どこに…」
「ここ、ここ」
一旦脚から手を放して、チバの後ろの孔を指の腹で撫でた。
チバはきっと予想はしていたのだろう。ただその現実を突きつけられて、
血が引いていくのがウエノにもわかるくらい青ざめた。
俺も今日は絶対おかしい、とウエノは思った。
チバのこんな場所を、チバの精液を指に掬って、何の躊躇いも無く触るなんて。
普段では考えられないことが平気で出来る。酒ではなく苛虐欲に酔ってる自分を自覚した。
事務所持ちでエイズチェックを受けたことがあるから病気は多分大丈夫として、
精液って腹下すんだよな、確か。腸になんか入れたらやばいよねぇ。
中途半端な知識を呼び起こしながら、ウエノはまたガタガタと暴れ始めたチバの膝を押し広げた。
尻が浮き上がり、思わず見下ろしたチバの視界に自分の両膝と勃ち上がった陰茎が飛び込んできて、
なかばパニック状態に陥った。拒否というより、悪夢を追い払うようにかぶりを振る。
ウエノが呟くように、カエルみたい、と言ったのもタイミングよくチバの荒い息の隙間で響いた。
「…ゃだ…。た、す…」
「助けて、って?誰に助けて欲しいん?アベ君?キュウ?のーやん?それともパパやママ?」
「…!」
「どっちにしても誰も来ませーん」
自分でもビックリするくらい饒舌になっているのにウエノは驚いた。
誰も来ない、なんて保証や根拠はどこにもない。
事実、先ほどのスタッフだってそう思っていただろう。
チバを合法的に連れ出して、眠らせ、チバの部屋で二人になり、ベッドの上に縺れ込む、
そこまで多くの賭けに勝って、最後の最後に邪魔が入ったのだ。
ウエノが来なければ、ではなく、チバが服の落ちやすい場所に鍵を入れていなければ、
きっと今頃チバを嘗め回しながら追い詰めているのは、彼だったに違いない。
ほんの一つのきっかけで、全ては変わるのだ。
先刻と変わらず、この部屋のドアには鍵はかかっていないのだから、
ウエノだってチバを最後まで自由に出来る確約があったわけではない。
それでもウエノにはがむしゃらさが無かった分、何故か勝てる予感があった。
そういう賭けに、ウエノはほとんど負けたことがない。
自他共に要領がいいとする所以だ。
普通に男を強姦するなんて無理な話だな、とウエノは思った。
抱え上げた脚がいつ自分の顔目掛けて振り下ろされるか、今でさえもビクビクする。
体動かせなくてよかっただろ、チバ。
上げた嬌声も、敏感な体も、好き勝手されている現実も、
全部薬と俺のせいにできるんやもん。責任逃れできるだろ?
無抵抗だからこそ、こんなに色々と触ってやれるんよ。
性感帯がどこにあるのか、ゆっくりとじっくりと探ってもらえるんよ。
適当なとこを弄くられても、感じないだろ?ラッキーだと思おうよ。
後孔に中指を押し充てると、チバの体が大きく震えた。
片手で内腿をゆっくりと円を描く様に撫で回すと、先走りが伝ってくる。
口は嫌だと言うしかないんだろうけどね。体はワクワクしてんだよね。
さあ、お前が嫌だ嫌だという行為で、
頭の中以外のあらゆるところがどんな風になっていくのか、
突っ張るその腕が最後まで俺を拒めるか、
口が紡ぐ言葉がどう変わっていくのかを今から俺が教えて や る よ!
(*´Д`)ハアハア
チバの吐き出した粘液を潤滑油代わりにして、ウエノが中指が進んでいく。
「うあっ!ひっ………、ぁ、ぐ…」
正確には、進もうとしていく、であったが。
きついどころの話ではなかった。
チバが下半身に力を込めて侵入を防ぐことができないのが唯一の救いだが、
それを差し引いてもそこはやはり人の体が通るべき場所ではない。
チバの全身に興奮のせいではない脂汗が浮かんだ。
切り裂くような熾烈な痛みに、目をこれでもかといくらい開き、
喉から漏れる悲鳴にもならない声を絞り出した後、
今度は眉間に皺が寄るほど目を堅く瞑り、痛みに耐えようとした。
「い、いてぇ…よ、なぁ、無理だって…!」
「…ホントに無理そうやね」
ウエノがそう言うと、諦めてくれたと思ったのか、チバがギュッと瞑っていた目を
薄く開け、おそるおそる息を吐いた。
確かに無理そうだ。今のままでは。
(つまり、痛みなんか忘れるようにしてあげればいいんでしょ?)
ウエノは、自分の体を挟むようにして立てられた両足の間の、
あまりの激痛に萎えてしまったそれに手をかけた。
性急にそして確実に快感を引きずり出すように、さっき知り得たチバの弱いところのみを
集中して嬲り出す。チバは目を見開いて、大きく仰け反った。
声を出して劣情を逃がし、やめてくれと訴えたかったが、最早きちんと発音はできなかった。
額から汗が、目から涙が、口から涎が滴り落ちて、何がなんだかわからない。
制止や拒絶の言葉はおろか、あ、とも、う、とも発音できずに、渦巻く感覚に硬直した。
チューブから残り少ない内容液を搾り出すように、チバの性器の先端から精液が溢れるよう促す。
ウエノの手を伝って落ちたそれは、チバの後孔をも通り過ぎて、シーツにしみを作った。
チバの意識が前への刺激に翻弄されてるのを確かめて、ウエノは再度進入を拒んだ場所に手を伸ばした。
一旦陰茎を握りこんで、チバの高揚を無理矢理せき止める。
頭上でヒッと喉が鳴ったのを確かめると、ゆっくり手を緩めてまた弄ってやり、
チバが再び悶え始めるのを見計らって、少しずつ指を進めた。
第一関節まで入ると侵入を止め、前を嬲る手も止める。
チバの腰が焦れるように揺れ始めると解放してやり、その快感に喘いでいる間に今度は第二関節まで。
それを繰り返し、最後に握り込んだ時には指は根元まで埋まっていた。
「チバさんチバさん」
「………………」
「とりあえず指は全部入りましたよ」
チバからの返事は無い。言葉を紡げる状態でもなければ、言えるべき台詞もなく、
そもそもまともに言葉の意味を理解できてさえいなかった。
そんなのどうでもいい。
とにかく手を放してくれ。もう嫌だ。早くいかせて欲しい。頼むから───
ウエノはチバの願いを知ってか知らずか、いや恐らく知っていて、掴んだままの手を緩めずにいた。
それ以上脈を打たないようにするかのごとく強く握ったまま、親指の腹で先端を擦ると
チバの悲鳴が響き渡った。それはもう、断末魔に近かった。
もう少し。もうちょっと我慢しなさいね。
次はこっちでいかせてあげるから。
ウエノは前を弄っていた方の手を、チバも気がつかないくらいにゆっくりと緩め、
同時に後ろに入れた指を曲げて、中を探るように引っ掻き始めた。
奥に、あるんだってさ。男は。
誰にかは忘れたが、そんな知識を教えてくれたのは一人ではなかった。
知ってるやつは知ってる。というより、この世界、一人二人身を以って知ってる奴もいるだろう。
細長いセンサーを突き入れて、赤いランプが灯るのを待つかのように、
じっくりと指を抜き差ししたり回したり撫でたり引っ掻いたりしながらウエノはチバの「その箇所」を探った。
チバはと言えば、ウエノが何故そんなことをしているのかさえ解っていなかったのだが。
筋肉を弛緩させていた薬の作用はもうほとんどないのだろう。
チバは太腿に力を入れて両方の爪先をピンと立て、シーツを引き吊らせていた。
内腿が緊張しきって、可哀想に。
ウエノは言葉だけでチバに同情した。
好き放題されて気の毒にとは思うが、これを悦んでると言わずして何だと言うのだろう。
「うぁっ、あっ、あ!」
ある場所で一際高い声が上がった。
ウエノは探していたレコードが見つかった時のように嬉しくなり、もう一度その場所を確かめる。
見つけた。
「だめ、さ、触っ」
はいはい、もっと触ってってことね?
掌を若干右上に向けて、このくらい曲げて…このへん。
チバが果てないようにまたも片手で前を握りこんでおいて、
後ろは何度もそこを突付いて、背の跳ね方で反応を確かめる。…ウン、覚えた。
チバのGスポットか。山崎さんあたりに三万くらいで教えたげよっかな。
くっくっと笑いながらウエノは、さて、と自分のボトムのジッパーに手をかけた。
チバの膝裏に両手をかけ、ぐっと上に持ち上げる。
自分の体重でチバの体を折り畳んでいき、晒されたそこに自分のを押し充てた。
「ねぇ大将、どんな気分?」
「………」
「あぁ、気持ちいいとかは見りゃわかるからいいよ。
俺にやられるのって、どんな気分?」
「……知るか!…」
「飼い犬に手ぇ噛まれた気分でしょ」
ウエノの言葉に、快感と苦痛の色だけを載せていたチバの顔に別の表情が浮かんだ。
その隙を突いて、熱い塊がチバの体を割いた。
374 :
311:2006/01/27(金) 23:43:46 0
飲みに行っちゃって続き書けなかったー
眠くてもうダメ。おやすみー
(;´Д`)ガビーン!
376 :
311:2006/01/27(金) 23:56:44 0
>>375 ごめんよ〜。
昨日落とせなかったログで暇つぶししてくらさい。
ではこんどこそ 0o。.(_ _)ノシ
なんですかこの余裕のゴッド鰓は…ハァハァ
ゴッド鰓もエロ杉だけど
屈辱的なチバカワユス(*´Д`)ハアハア
続きが気になるよーー
380 :
311:2006/01/28(土) 05:09:13 0
つ【10000】】】
間違えました、、
>>311 つ【10000】】】
こう書くつもりだったの、、慣れてなくてごめんなさい
>>311さんは今夜も飲みかしら…
続き待ってま〜す(*´∀`)
心当たりないのに、自分が何かしたのかも知れない
という思考に陥るチバ…(*´Д`)ハアハア
>>383 そーなんだよw
そのあたりがまさしくスットコさんの思考回路 (ノ∀`)
スマステのキス講座見てたら、あべとチバは
まんまこういうことしてたんだな〜と萌えてしまいました。
うえちば投下期間にすみません。
387 :
311:2006/01/28(土) 23:55:13 0
>>386>>387(311さん!!(゚Д゚*))
ざっとですが、『気持ちの通じ合うキスのしかた』
優しい会話→見つめ合い→指先など末端部分を触れ合わせる
→髪等に触れる→鼻と鼻、額と額などを触れ合わせる
→唇を湿らせて柔らかさを保ちつつ触れ合わせる
→4秒ほど触れて離し、深呼吸の後、また触れ合わせる
という感じでした。
イベントで手を取りあって踊ってたり抱き合って揺れて踊ってたり
フロアに転がってちばがあべのサラサラ髪を弄んでたり
額をくっつけてクスクス笑いあって、その後にキスしてたというのを思い出して
段階踏んでたんだなぁと思いました。
ついでですがキス講座では他に「特に長いキスの場合はタンゴのような
呼吸が肝要(男が押したら女は引き、女が押したら男が引き)」とか言ってました。
>>388 ……まるでかつてのアベチバちゅー@名古屋イベ!!!!!
⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
390 :
311:2006/01/29(日) 00:26:36 0
>>388 (*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア
そんな話がよかった。なんで薬ネタに…
>段階踏んでたんだなぁと
ワロタです
アベのくせにチバ相手だと段階踏むのか…とw
>>311様!!!!!
早くしないとチバの薬の効き目が切れてしまいます!!!!!wwww
393 :
311:2006/01/29(日) 00:41:30 0
空気嫁てなくてm(_ _)m
そろそろ寝ないとなのでいきます
ゆっくり挿れていく方が、却ってチバの体がを硬直させてしまうだろうと考えたウエノは、
組み敷いた身体が脱力したその瞬間を見逃さず、一気に押し入ったのだ。
チバは何が起きたのかわからず、目をパチクリさせた。
「な…何…?」
「すげぇ…全部入ったよチバ。入るもんだねぇ」
「…嘘だ…」
「嘘じゃないって。見る?」
ブンブンと頭を振って怯えるチバの目に、涙が浮かび上がる。
それが零れる前に、チバはコンコンと軽く喉を鳴らした後、ゲホゲホと大きく咳き込んだ。
ヒューヒューと鳴る喉を反らして二・三度餌付くと、嘔吐を抑えるように口を両手で塞いだ。
被せた手の中でくぐもった音を鳴らしながらまた何度か咳き込み、
自らを落ち着けるようにゆっくり息をした。
異物を押し込まれた違和感に気分が悪くなり、戻しそうになった胃液を飲み下そうとしたら
気管の変なところに入ってしまったのだろう。
ハァハァと苦しそうなチバの涙と鼻水を拭ってやりながら、ウエノも実は冷静ではなかった。
挿れたままチバが咳き込んだため、チバの体に力が入ってウエノのそれをきつく締め付けたのだ。
ものすごい勢いでいかされそうになり、ウエノも慌ててしまった。
さすがに冗談じゃない。
今までの意地悪が全て台無しになってしまうくらいに、格好がつかないと言ったらないだろう。
>>391 相手がチバだからこそ段階踏むんだよ…きっと
キタ!
チバの腕に引っかかったままの最後の衣服を脱がしてやり、体の体勢を楽にしてやると
少し落ち着いたようだった。チバは自分のみが全裸になる羞恥に多少むずがったが、
汗でじっとりと湿ったそのシャツを早く脱ぎ捨てたかったのも事実で、
脱力感で体があまり動かないこともあり、ほとんど逆らわなかった。
チバを蝕んでいた弛緩剤と催淫剤を兼ねた怪しげな薬の作用はもうすっかり消えうせていたが、
快感と、不自由な体での抵抗からきた疲労感で、反撃に出る気力も体力もチバには存在しなかった。
逆に劣情の感覚は、薬が上手く呼び水となり、その後ウエノの手で開発されていったこともあって
敏感さは未だ鮮明に残っていた。
チバにとっては迷惑な話だろうが、ウエノにしてみればまるで自分のために仕組まれたような
幸運なな運びだ。これからも胸を張って自分は要領がいいと公言できる。
だが、そこからはウエノの計算外だった。
張り付く前髪をかきあげ、額に口づけようにしたら、チバが顔をそらして逃げた。
あんだけのことをされても、まだこの程度のことにも抵抗があるのだろうか。
「なぁ〜に?今更恥ずかしがんないでよ」
「…だって」
「ああ、もう全部アレのせいじゃん。別に俺、チバがどんなになったって淫乱だなんて思わねえよ」
「………いっ淫乱って、な、…」
「だーかーらー思ってねえって」
実際ウエノは、ああいった興奮剤の作用でもなければ、
チバをあそこまで敏感にさせる事は無理だと思っていた。
おそらく女との性交でも我を忘れてるなんてないんじゃないか。
まあ推測に過ぎないが、ウエノはそう考えていた。
普段はどこかぼんやりしていて、何をしていても
心は別の場所に向いて見えることが多々あった。
チバが一直線にそのことだけに執心している時間は貴重で、
例えば、アベのギターを初めて聴いた時のような、
レコード店でお目当ての何かを探している時のような、
純粋に目を輝かせている時間はしょっちゅうあるわけではない。
それはウエノにも言えることだったが、チバの思考回路は更にとんでいるので、
麻雀をしながら頭の中は金星木星あたりを彷徨っていたりなんてことも有り得なくない。
おそらく、薬で身体の感覚を狂わされたりするとか、恋をして心が酔っていたするとか、
何か別の力が働いていなければ、乳首を吸われてもチバはただポカンとしているだろう。
だからウエノはチバのことを好き者などと思っちゃいないのだが、
「淫乱」という単語を出したことで、チバの羞恥はまた煽られた。
そう思っていなければ、そんな言葉は出てこない。
チバの無駄に回転の速い頭なら、そう答えを叩き出す筈だ。
思ってないよと繰り返してやっているというのに、
チバは違う違うとばかりに首を振って否定した。
複雑なのに、簡単なヤツ。
だから、面白いんだけどね。
ウエノはそう面白がっているが、チバの方はもう精神的にギリギリだった。
何がなんだかわからないし、何をどうしていいのかもわからない。
信頼していたウエノに苛まれている現実が、すべて自分への嫌悪感に繋がっていく。
なんでなんだよ、コウジ君。
なんか、ずっと怒ってたのかよ。
だったら殴ったり怒鳴ったりしてくればいいじゃんか。
こうしたら俺が苦しむって、そう思ってやってのんかよ。
そんで、やってみたら、俺はずっと変態だってビックリしてたとしたら…
こんな声出して、あんな風に足を拡げて。
淫乱って、本当はそう思ってるんだ。
こんなボーカルについてくんじゃなかったって思ってんだ。
…コウジ君は優しいから。きっとずっと我慢してたんだ。
どんな気分だって?俺の方が訊きたいよ。
俺が喘いでるの見て、どう思ったのかな。
簡単にイかされて、あんなとこで感じてる俺を見て、軽蔑したのかな。
あいつ、すっげぇみっともなかったって、アベ君やキュウに言うのかな。
そもそもスタッフに欲情されて、簡単に薬飲まされたって。
何だよそれ。んなのにひっかかるの、お前だけだよ。
バカじゃん、ただのバカじゃん。
死ね、俺なんか 死 んじ ま え!
こうやって犯されてんのがお似合いだ。
(*´Д`)ハァハァ
チバの目に涙が滲んでいくのを、ウエノは羞恥と苦痛のせいだと思い、
とりあえず早く終わらせてやろうと、チバの腰に手をかけた。
角度を変えると、チバのそこに切り裂くような激痛が走ったが、
チバは唇を噛んで声を抑えた。
苦痛に耐えるのは得意だった。
周りが心配するほど、チバは自分が辛いことに関しては鈍感で、我慢強い。
身体的な苦痛はチバにとって大した責め苦ではなかった。
世界が自分にのしかかってくるイメージを描く方が拷問に感じる。
ウエノが腰を使い始めても、チバはギュッと目と口を閉じ、縮こまっていた。
さっきまである意味解放されていた感覚が、自身の思考回路で萎えていく。
ウエノがそんなチバの様子に気づき、頬をピタピタと叩いた。
「どうした?ちゃんと声出してよ」
「……」
「…やっぱ、辛い?後ろからのが楽なのかねぇ」
「…て、ねぇ」
「え?」
「……んて、…ってねぇ」
蚊の鳴くような小さく低い声に、ウエノは体を屈めてチバの口元に左耳を寄せた。
「飼い犬なんて、思ってねぇよ…」
そう言い終えた後、チバは何度か咳き込み、同時に幾筋もの涙を零した。
「…え?」
ウエノは、その途端襲ってきた刺激に驚き、何を言われたのか一瞬わからなかった。
チバが咳き込みながら、嗚咽を漏らして何度もしゃくり上げる。
その度にチバの中が収縮して、中のウエノを規則的に締め付けるのだ。
キュッキュッと締まるその刺激に、ウエノは慌てた。
「ちっチバ、ちょっと待って、…っ」
「うっ、う、う…」
「バカ、泣き止めて!ちょっ、ヤバ…」
ウエノが焦れば焦るほど、中のそれは大きく震え、勃ち上がっていく。
人間、押し迫った状態であればあるほど体は言うことを聞かなくなるのだ。
自分の精液がローション代わりになり、中での締まりをまた壮絶に気持ちよくした。
部屋にウエノの荒い息と、チバの嗚咽、そして淫靡な水音が響き渡る。
中の粘膜に締められる快感は女性とのセックスでわかりきっているものだが、
ただでさえキツいそこが、程よく緩まり、また締め上げてを繰り返す感覚は
ウエノの頭から冷静さを取っ払った。
「やめ…チバっ」
チバの方も、好きで泣いているのではない。
やめろと言われても涙は一度零れると次々に溢れてくるものだ。
それにこの状況で力を抜けて言われても、はい分かりましたと従える訳ではない。
尤も、チバにはウエノの状態などまるでわかってはいなかったのだが。
もうダメだ、と思った瞬間、ウエノは果てないように渾身の力を込めて
チバの中から自身を引きずり出した。
自由になったそれは、ドクンと脈打ち、チバの腹の上に白い液を吐き出す。
丁寧に狙いを定められた訳ではなかったため、何滴かの飛沫がチバの顔から胸にまで飛んだ。
「え…」
「は……はぁっ、はぁ………は…」
「…あ、や、やだやだやだやだやだやだ…」
「しょうがねえじゃん!だからやめろって言ったのに!」
「だ、だって」
「あっぶね、間一髪だったよ〜。中で出してたら大変だぞ、お前」
軽口でチバに責任を押し付けてみたが、ウエノにしてみたら本当に危なかった。
ビックリしたぁ。なんだよ今のキモチよさ。やっべぇ、マジやばかった。
あんなの、極上の女でも早々なかったぞ。
肉体的な理由と思考的なところからの衝撃に、ウエノは心臓を手で押さえざるを得なかった。
無意識だとしても、チバめ。
妊娠することは無いけど、腹くだしたらどうするんだ。
こいつに中の処理が出来るとも思えない。ってことは誰がやるって、俺だよ俺。
それはちょっと、いくら面倒見のいいこの弘二君でも。
チバは自分の器官がウエノをいかせたというショックがやっと襲ってきたようで、呆然としている。
ウエノは脂汗なんだか冷や汗なんだかわからない、ジットリと浮かんでいた汗を拭いながら、
足を広げて立てたまま、またも自分の体に失望しているその男を見下ろした。
…そういえば、何か言ってたっけ。飼い犬がどうとか…
それは俺が言ったんじゃなかったっけ?
(………)
そこでやっとウエノは、自分がチバを煽るつもりで言った言葉が、
酷く彼を傷つけていたことに気がついた。
ああ…こいつのことだ。きっとまた面倒くさいことを考えていたんだろう。
アベ君ほどフラットになれとは言わねーけどさ、もうちょっと気楽に過ごせないんかね。
ウエノは最初にチバが目覚めた時と同じように、頭の脇に両手をついて顔を覗き込んだ。
チバは相変わらず口を半開きにして、窺うような視線を上げてくる。
「あのさぁ、別に俺怒ってないよ」
「………」
「つぅかさ、怒られんのは俺でしょ、チバが怒っていいんだよ。なんで泣くの」
「……だって」
「あーあーチバちゃんはもぅ!生きてけないよ、そんなんじゃ」
実際寿命の短そうなチバの目元に口を寄せ、残った涙を舐めあげると、
チバはゆっくりと深呼吸して、自分の部屋に戻ってきて初めて、全身の力を抜いた。
薬が解けてもチバはウエノを蹴り飛ばして逃げようとも詰り倒したりも(今はまだ)しなかったのが
気難しい猫がやっと懐いてくれたのようでウエノはそれが嬉しく、肩に顔を埋めて抱きしめた。
(*´Д`)ハァハァハァハァ
チバかわいい…
「そういう考え方してると付け込まれるよ。俺みたいに」
って、何威張ってんだ俺。ウエノは口に出して苦笑した。
ウエノはああ言ったが、チバだって誰に対してもこんなに殊勝な筈はない。
嫌われてもいい相手には、侮蔑されようが詰られよう歯牙にもかけない。
髪の一本にでも触れられるだけで、腹に蹴りを入れたくなる。と言うより実践する。
レイプなどされかけようもんなら、別の意味で舌を噛み切りたくなるだろう。
だが、自覚のないうちに身内を傷つけていたんだとしたら…。
そんなチバの疑念が解けた訳ではないが、ウエノにニコニコと微笑まれると
じゃあいいか、という気になる。
これで何年もの間甘えてしまっているのだと、頭では解っているのだが。
「何…まだ、すんの…?」
「だってまだちゃんとやってないでしょー」
「だから別にいいっつうの…」
「俺がよくないの」
「…疲れて死にそうなんだけど」
「私めが責任持って介抱させていただきますから」
チバがふっと笑ったのが、吐息でウエノの音の震えない耳に伝わってきた。
…こうなるとこの男も可愛いんだけどねぇ。
チバには余裕のあるフリをしているが、実のところウエノにはさっきの興奮が
体の記憶として残っていて、少しでも早くチバの中に戻りたくて焦っていた。
射精に歯止めが利かなくなるさっきの快感を、もう一度味わいたい。
背を抱いて、骨付き肉にむしゃぶりつくように歯と唇で鎖骨に夢中になっていると、
チバの腕がゆっくりとウエノの首に絡んだ。
変なとこで切れたーorz
次回で終わりっす。ではおやすみなさい
乙です!!
萌える…
このチバとウエノは萌える… (*´Д`)ハァハァ…
あの鰓さんが、だだっ子泣きでイカされるなんて(*´Д`)ハァハァ
次はベタ甘なのかな…
鰓さんもう一回やる気だからねw
ベタベタに甘やかしてもらえ (*´Д`)ハァハァ…
311さん乙!!
311さんのウエノがリアルでモエス (*´Д`)
普段ウエチバ派ではないのですが、
311さんのウエチバ無性に…(*´Д`)ハァハァ…
311さん乙ですつづき楽しみ(´∀`)
>>388 遅レスですが萌えー 段階踏んでたのか…!
というかこの2人の常軌を逸したいちゃつきエピソードを聞くたびに
あんたらソレ酔ってましただけじゃ済まされんよと思ってしまうんですが
そのへんどうですか皆さん…
もちろん酔ってない時もそれなりになされていた証拠でしょう
男同士でチークダンスはすごいなと思った記憶がある<アベとチバ
打ち上げ中に二人で抜け出して何やってたんだろう?と激しく妄想させられますな(*´Д`)ハァハァ
>>413 意外な名器、つーかワザを持ってたねチバwwww
>>311さんは2人の心理描写がウマス(・∀・)リアルだよね、なんか。
今夜も続ききますように〜(*´∀`)
98年の二月くらいのチバって、
チキンのアルバムジャケの髪が少し伸びたくらい?
?すみません、詳細を知らないのですが、アベとチバがチークダンスしたんですか?
>>423 抱き合ってゆらゆらと踊ってた(?)のは目撃されてます。…昔。
さぞかしアホな光景だったことでしょう
周りはドン引きだったことでしょう
そういうの多かったんだよね…このバンドの人達…
チキゾンのツアー映像見返してみたら
チバのいやらしいこといやらしいこと
>>311さん、今夜は降臨なしかな…
はぁ…寝るか…
429 :
311:2006/01/30(月) 00:54:03 0
落とすと思うけど遅くなるんで寝てくらさい…
Σ(゚∀゚*)
428さんではないですが、ままま、待ってます(*´∀`)
432 :
311:2006/01/30(月) 01:54:07 0
やってるだけフォ──────!!!
チバの頭の真横に自分の頭がくるくらいの位置に体を寄せると、
ウエノの爪先の方が少しだけ下に来る。
チバに意識が戻った当初、逃がさないために抱きしめた時に既にウエノは感じていたのだが、
チバの身体はちょうどウエノの征服欲を満たすのにジャストサイズだった。
もちろん抱きしめるなら女に超した事はないのだが、女性の華奢な体では感じ得ない、
誰かより優位に立ったことに満足感を覚える、男特有の優越感。
頭一つ分低い背。きっとこれ以上小さければねじ伏せて当然と思うし、
自分より大きければその時点でなんとなく負けたと思ってしまう。
必要以上にガタイがいいと欲情できない上に、むしろ羨ましくもなる。
かと言って折れそうに細く柔らかい肌は、同じ土俵のそれではない。
柔道家の金メダルが胸を張れるのは、やはり柔道畑でのことであって、
新体操の銀メダリストと比べてもお門違いな気がするのと一緒だ。
同じ男であり、同じくらいの体格である人間が自分に組み敷かれて
言いなりになっているという事実に酔うゲイの嗜好というのは、
なるほど、解らなくないな、とウエノは思った。
そして何より、チバユウスケであること。
あのスタッフが、非合法にでも手に入れたがっていた、
あのライターが、その内面を暴きたくて目を血走らせていた、その人であること。
ウエノにはチバのカリスマ性がさっぱりわからない。
だけど、他人が手に入れたくて足掻いている玩具を、ひょんなことで貰い受けると
不思議とそれが誇らしくなってくる子供のような気持ちが確かにあった。
ウエノはチバが世間から受ける評価が彼に見合ったものかどうかは判らなかったが、
純粋にチバをすごい男だと思っていたので、誰に見せびらかさなくとも、
チバが自分に体と心を開いたという事実も又、ウエノを悦ばせた。
男性以外の何者でもない筋肉と体格でありながら、細く自分より小さく、
そして憂鬱にのしかかられて丸くなってしまった猫背の曲線。
ウエノは無自覚に、チバの身体に酔う。
気がつけば、「そんなに楽しいもん?」とチバに訊かれるまで、
ウエノはチバの胸から上を唇と指で愉しんでいた。
「いや、チバ先生をね、粗雑に扱ったらバチが当たりそうだしね」
「んだよ、それ」
「前戯なしでヤったなんてバレたら、怒られちゃう」
「…人に言う気ならぜってぇやらせねえぞ」
「言いませんよ、俺が変態ってことになっちゃうもん」
「十分変態じゃんか」
「あははは、そうだねぇ」
でも変態って楽しいよね、きっと。
そんな話題をしようとして、ウエノは口を閉じた。
このまま世間話に雪崩れ込んでは勃つものも勃たなくなってしまう。
時間が経ってチバに言葉の自由が戻れば戻るほど、大学時代来の友人という意識も戻っていき、
白けた空間が出来上がるのが目に見えている。
自分とチバの口を両方塞ぐためも兼ねて、ウエノはチバに口付けた。
キタ━━━━(*゜∀゜)=3━━━━!!
「…ん」
軽く触れて、キスしますよ、という意思を見せた後、もう一度今度は深く口付ける。
チバの唇を押し潰すように吸い付いて、何度も角度を変えて。
ウエノの鼻がチバの鼻の右横から左横に三回移動したあたりで、チバは息苦しさに口を薄く開けた。
鍵を開けて眠っている部屋と同じくらいにウエルカムと言っているも同然のそれに、
ウエノは遠慮なく相伴に預かる。
二人が二人とも、揃って「違うタバコの味がする」と思った。
ウエノのニットの感触が剥き出しの皮膚にくすぐったく、チバは思わず身を竦める。
チバの手がウエノの鎖骨に食い込んだ時、ウエノの下半身にまたあの屈服欲が戻ってきた。
「う…」
左手でチバの背中を支え、右手で肩甲骨から尻の付け根辺りまでをツツと撫で下ろす。
真っ平らな尻を揉み解すと、震えた膝がウエノの脛を蹴った。
口を離し、チバの息が落ち着くのを見計らって、ウエノはチバの体を裏返しにした。
え!?と驚いて振り返ろうとしたチバの襟足辺りを押さえ、枕に押し付ける。
スタッフに投げ入れられてから一時間強、ほとんどずっと同じ体勢でいたチバの背中は
肌がじっとりと汗で濡れていた。
床擦れせんばかりに同じ箇所のみを痛めていた尻や肩の尖った骨が、
やっとその負担から解放されてホッとしたというのにも関わらず、
チバは自分の取らされた格好の方が問題で、慌てて上向こうとした。
が、ウエノがのしかかってくる方が先で、後ろから抱きしめられると同時に
両方の腕がすぐにチバの急所を押さえ、手足に力が篭るのを邪魔した。
尻だけを上げた状態のチバの中心にウエノの指が絡む。
細く長い、綺麗な指。
今日、何度この指に弄ばれたんだろう。
…思い起こせば、意識が無い間に下肢を剥かれていた。
ウエノは何も言ってなかったが、その間に何もされなかった保証はない。
その証拠に、胸にも性器にも、触られた感触が残っていた。
訊く機会もなかったし、あらためて訊くのも怖かった。
チバにしてみれば、そのスタッフにされていたという方がまだマシなのだ。
知り合いに意識の無い体の隅々を見られたり触られたりする恥ずかしさは、
意識がある時の比ではない。
寝顔を見られる程度でも多少の怒りが伴うのに、性感帯を弄られてたなんて事実を
突きつけられたら、明日からまともにセッションもできなくなる。
訊かないでいた方が、誰にとってもありがたいに違いない。
ウエノの方もチバを絶望させて遊びたい訳ではないので、黙っていた。
「あぅ…」
上と下でウエノの指がシンクロしているのに気がついて、チバの体はそれ以上に大きく揺れた。
同じ動きで摘まれ、同じように根元をなぞられ、同時に先端を弾かれる。
下を扱かれる時は、まるでダウンピッキングをされるかのように乳首を弾かれた。
押し付けた枕に、チバの唾液が染みを作る。
左右の手を変えて、もう一度また。
この一時間で脚が掻き回しまくったシーツは、今度はチバの手によって滅茶苦茶にされ、
もうマットレスが覗き始めていた。
顔を見られず声も枕で掻き消すことが出来るが、こういう体勢は慣れてないだけに
どうしていいのかわからない。仰向けでいるのは女性を乗せる時にも経験があるが。
そして自分の腕の届くところに相手がいれさえすれば、自分もまた相手に触れて
対等な立場でいられるが、こんな風に一方的にされるのはどことなく屈辱だった。
それがウエノの狙いでもあり、また半分は、チバのためでもあった。
先刻、チバの体を無理に折りたたんだ時、圧迫感で咳き込み苦しんでいた彼の姿を思い出すと、
チバの表情が見えない物足りなさを我慢しても、こっちの方がマシだと判断した。
ウエノの気遣いの精神は本能的なもので、たまに本人が自覚していないこともある。
べーつにチバを大事に扱ったってなぁ、と頭の中では言葉にして考えているものの、
反射的に腕や口がチバのフォローに走ってしまうのだ。
どうしようもない人間(そして今いるバンドの過半数がそれだ)に対すれば対するほど、
その感度は鋭くなっていく。これはもう、生まれついてのものなのだろう。
またウエノはチバが苦痛を訴えない性質であることも知っていた。
傍から見れば、それは羞恥より辛いだろうと思うこともチバは耐えるから、たまったものではない。
なら、強引にでもこうさせてもらう。
一旦ウエノの体がチバの背から離れた。
そして再び戻って来た時、チバの背にウエノの肌が直接触れた。
脱ぐのはお得意のクセに、いつまで俺ばっか素ッ裸でいさせる気だよ、と
チバは憤慨していたにも関わらず、いざ素肌同士が触れ合うとなると
身の置き所が無いくらいに恥ずかしい。
再びウエノの剥き出しの腕が、チバの体に絡みつく。
ああ、俺、コウジ君とセックスしてんだ。
つきあった女といつもやるのと同じことやってんだ。
その自覚が改めてストンと落ちてきて、チバは何故か照れた。
「あ………っ、………く、」
チバが躊躇する前に、中にウエノの指が入ってくる。
既に中を知り尽くしているそれは、もう迷うことなく、ただ解す為だけに進入してきた。
一度引き抜かれ、次は人差し指を伴って。
ついさっきまでウエノ自身を含んでいた場所は、それらを簡単に飲み込んだ。
チバもウエノもその容易さに気づき、敢えてお互い口にしなかったが、チバが自分の体に対して
何と言い訳しようとしているかを考えてあたふたしていることだけは間違いなかった。
緊張するチバの体の意識を違う場所に向けようと、アーチ型に蹲った背中に口付ける。
それでも、再度後ろの孔に何かを充てられ、それの先端が濡れていることに気づいたチバは、
ギュッと目を瞑らざるを得なかった。
一度ウエノを受け入れてるそこは、もう一気に押し入ってこなくとも先刻ほどの痛みは感じない。
むしろ敏感な場所を刺激されることを覚えた内壁は、今か今かと待ち構えている。
チバが何度も首を振っているのは、嫌悪感でも、痛みからでも何でもなく、
快感しか感じない自分の体を認めまいと否定しているに過ぎない。
「ほらチバちゃん、力抜いて」
「だって」
「さっきからだってだってって煩いねぇ。そんな言い訳なんかしなくても何とも思わないつったじゃん」
「だっ…て…」
「だぁーいじょうぶだいじょうぶ。俺についてくれば大丈夫だから」
「……………」
数秒置いて、チバが声を殺して笑い出す。
チバの中が収縮され、またもウエノを締め付けた。
あ、気持ちいい…
「…それいつも女に言ってんの?著作権料取るよ」
「俺のはマジで大丈夫だもん。そっちは元祖、こっちが本家」
「んだよ、あ、……あ!」
チバが黙るのを待たず、ウエノはゆっくりと腰を使い始めた。
焦らさず、チバの感じる場所を正確に突き始めたのは、ウエノ自身、
口上で見せてるほどの余裕が無かったからだ。
律動を繰り返し、たまにグラインドさせて掻き回す。
チバの内側でつい先刻では性感帯じゃなかった箇所までが、
徐々に敏感になっていった。奥を突かれると、チバもまたウエノを刺激する。
胸の突起に手を絡めようとすると、チバが悲鳴を上げて逃れようとした。
ダメ、逃がさない。
お前、今、俺のもんだろ。
違うなんて言わせないよ。
ホラ、こうすれば。
「ひっ…、ああ…」
乳首やアソコ弄られて気持ちよくするなら誰でも出来るけど、
ケツの穴でチバを喘がせられるの、俺だけでしょ。
チバのいいとこ知ってるの、俺だけなんだぜ。
たまんねぇよ、それってさ。
つーかさ、こいつの中もたまんねぇよ。
下手な女なんかよりずっといい、ハマりそう、やべぇよ、どうすんだよ俺。
今だけなんてマジかよ。
チバだからなのか男抱いたら全部こうなのかわかんねぇけど、すげぇイイ。
熱い内側。女みたいに濡れないから、引き攣れて俺のを擦る。
(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァ
「んっ…んっ、んっ、んっ、う…」
突く毎、抜く毎にあがる声。
くぐもったそれではない声を聴きたくなったウエノは、チバの顎を後ろから持ちあげた。
「あ…あ」
チバの声が鼓膜にクリアに届くと、たまらなくなった。
がむしゃらにチバの陰茎を扱き出す。
チバの体がビクンと跳ねて、咄嗟に、嫌だ、という声が上がった。
お前も男なら、「いや」なんて言ったら相手は悦ぶって解ってるだろう、チバ。
ウエノはいつの間にか、チバがやめてと叫ぶ箇所をひたすらに探して攻めていた。
触れて探っていない場所は無いくらいに、いたるところを。
果ては口の中に指を突っ込んでまで。
「ん…ぐ……………、…やだっ、…………あ、あ、あ───」
「………………」
果てる時、ウエノが頭の中で思い描いたのは、
いつの未来か、また抱かせてくれと言って拒んだチバに薬を飲ませ、
意識の無い体を無理に抱こうとする馬鹿みたいな自分の姿だった。
ごめんな、…チバ。
一時間ほど気を失ったか眠っていたかしたチバは、数時間ぶりに体を起こした。
あーあー、と何度か声を出し、何度か咳き込んでから辺りを見回すと、
ウエノがバスルームから出てくるのが見えた。
「…俺の服、どこ?」
「あーここに落ちてる落ちてる」
肩も痛ければ腰も痛い。泣きすぎて頭も痛いし、叫びすぎて喉も痛い。
尻も背中も腕も内腿も痛い。
ウエノと顔を合わせる気恥ずかしさがないわけではないが、それどころではない。
起きたくないが、寝ているのも辛い。体の至る所にこれだけダルさが蔓延していると、
最早麻痺していてどこも痛くないんじゃないかという気にさえなった。
女って大変なんだな、とチバは考えたが、チバが受けた負担はむしろ女性には軽減される類のものと、
普通だったら背負わなくていい種類の苦痛だ。
大事なことのみ濾過していくチバの脳には、自分に劣情を抱いていたスタッフのことなど
既にどうでもよく、例えウエノ以前にその男に何かをされていたとしても、知ったことかと一蹴された。
ウエノに投げてもらったシャツを手にしてみると、汗で湿っていて身につける気にはならなかった。
風呂に入りたくてしょうがないのだが、立ち上がる気にならない。
まして数分でも立ち続けながらシャワーを浴びる根性も無かった。
察したウエノが、責任持って介抱すると言った言葉どおりに、
先ほどまで自分が汗を流していたユニットバスに湯を張りに立ち上がった。
湯が溜まった頃、胸辺りまで毛布を引き上げて体育座りの格好でぼんやりとしていたチバに肩を貸して
バスルームまで連れて行き、バスタブに突っ込んだ。
しばらく気持ちよさそうに湯に浸かっていたチバの髪をシャワーで濡らし、シャンプーで泡立ててやる。
洗い流した泡が湯を白濁させていくのを、チバはボーッと見ていた。
「…どうすんのさ、これから」
「いやー?どうもしないでしょ」
「…そういう生き方もどうかと思うんだけど。さっきのじゃないけどよー」
「あっはは。でもまぁアクシデントでしょう今回のは」
「ぜってぇ意志の力を感じんだけど…」
「つぅかね、薬飲まされたんに気づかねえチバも悪ィよ。また似たような事あっても面倒見ないからね」
「そこに便乗したのは誰だよ!助けてもらったなんて思わねぇぞ」
「そうだね、でも俺はラッキーだったよ」
「…は?」
チバの額にべっとりと張り付いた前髪を後ろに撫で付けるどさくさに紛れ、ウエノはチバの頭を引き寄せた。
「なあ、またやらせて」
「あん?」
「やべぇよ、クセになりそう。チバちゃんよかったわぁ」
「頭くされてんの?」
頭を抱え込む腕をピシリと撥ね付け、チバは風呂桶の栓を抜いた。
立ち上がりバスタブから出てきたチバの体にバスタオルを巻きつけながら、
ウエノは後ろからじゃれるように肩を抱く。
「いやぁマジマジ。たまにでいいからさぁ」
「たまにって、俺はコウジ君たちと違って元からたまにしかやんねぇの!」
「いいやん、チバが結婚考えるくらい好きな女が出来たらやめるからさ」
「……………大丈夫?コウジ君…」
「だって変態デビューしたんやし。なあチバ、俺って結構今がんばってると思わん?」
「………………」
いつの日か、さっきの自分の妄想が現実になってしまったらヤだな、と考えたウエノは
さっさとチバに頼み込むことにしたのだ。
ニコニコ笑うウエノの真意が、チバにはよくわからない。
あまり深く考えてはいけないとも思うのだが、深く考える癖のある自分だからこそ、
軽く返事はできないと思うのだ。もっと割り切れる性格ならよかった。
ただ、ウエノがそんなチバの思考回路を熟知していることを、チバ自身知っていた。
あまりに自分が悩むことがあれば、多分ウエノの方から察してくれるだろう。
さっきまでの行為自体は嫌ではないのだ。
割り切ってしまいさえすれば、チバも常識や倫理は気にしないタイプである。
世間からどう見られるかなどより自分で納得できるかが鍵なのだが、
どうにもこのままウエノの気楽さに流されそうな雰囲気に、チバは溜息をついた。
結局そのままチバは返事をすることなくウエノの腕から逃げ出したが、
数ヵ月後、ウエノは最も嫌いな食材で愛情の意の単語を贈られると云う、
解釈に苦しむ仕打ちをされることになる。
ウエノが怒り任せに押しかけた部屋で、一人ゲラゲラ笑うチバに勢いよく口付けけても、
彼は大して抵抗しなかったというのが、結局のところである。
余談ではあるが、あの日、チバの部屋の片側の隣室はウエノであったが、
もう片側の隣室にいた、いつものごとく眠れずにいたアベには色々と筒抜けであったことを、
ライブのアンコール前、チバが無頓着に着替えようとする前に止めてやれと耳打ちされることで
ウエノは知ったのだが、それをチバに言ったら二度と自宅から出てこなくなりそうだったので、黙っておいた。
結局アレか、俺はあのスタッフに感謝すべきか?
それもまたウエノの悩むところであったが、
縮図としてチバに運命を変えられていることに関しては、どうやら間違いないようだ。
四夜?も連続で長い話ごめんよ〜。では!
壁|=3 ピュッ
マヨLOVEキタコレ!
続きキタ━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━!!!!!
でら萌えす(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァ
神降臨 GJ!!
チバさんがいろいろ悩んでいる割に
読後に明るい気持ちになるお話なのは
鰓さんのおかげかしら?
>>311さんありがとう!萌えますた(*´Д`)
455 :
311:2006/01/30(月) 03:03:23 0
あ、あれで完結っす。
んではおやすみなさーい
>>311 またお時間のある時にでも書いて頂けると嬉しかです!
(;´Д`)鰓チバハァハァ
>>311さん乙です!
隣のアベに筒抜け…そりゃまた…(*´Д`)ハァハァ
マヨLOVEの現物写真、ツアーパンフに載ってたよねwwww
あ〜ナツカシス(*´∀`)帰ったらパンフ見よう。
>>458 チバの鳴き声の一部始終を聞いてしまったために、
自分も何かに目覚めてしまうアベ…(*´Д`)ハァハァ
そしてキュウを襲いにいくアベフトシ
むしろこのスレ的には自分と相部屋の時のチバを襲って欲しい
あれ以上に乱れるんですか?www
鰓さんのお相手の他にそんなサービス残業があっては
スットコさんの体がもちません
アベチバだと、どうしてもメンタル面が重視されてしまうが、
たまには体の欲望だけの2人ってのもいい…かも。
>>467 りアルが尊敬しあってるからなかなかに難しい?
でも読みたいな〜
>>467 体だけ…って言っても、悲惨ネタじゃなく
割り切って楽しんでるって感じなら…(*´Д`)ハァハァ
スポーツみたいに軽くやってるあべとちばって見たこと茄子w
どんなんだろう…
>>470 「チバー やらせろよ」
「またかよw」 みたいな?
鰓が相手だと軽い関係の話になるのにねwwww
アベが相手だと、どうにもこうにも…(ノ∀`)
あっけらかんとしたアベチバ、読んでみたい(*´∀`)
ラブラブじゃなくてあっけらかんって難しいよね
チバはアベにはいつもドキマギしてるイメージがある
つながりませぬ…orz
何?
見れた!マヨLOVEナツカシス
あっけらかんのアベチバか…
バカップルは数多かれど、あっけらかんってないね〜。
書いてくださる猛者はいないだろーか…ヨミタス
>>474 おなじくそんなイメージある。そして
「誰でも良いんじゃなくてアベくんだからイイんだよ」
っつってあんあん鳴かされてるみたいな感じ。
でもあっけらかんの快楽主義もイイ!とどのつまり何でも来い!
>>480 そのイメージはアベチバのデフォだよねぇ…
だからなおさら、あっけらかんの2人を読んでみたい(*´Д`)
「どうしてもバカップルになっちゃう〜」と
あっけらかんとしたやってるだけの
仲良し話がむずかしいなんて…あの二人って一体
チバの性格がアレなのも手伝ってる
アベははっきり言われないと分からない性格だしね
鰓さんは言わずとも分かってくれるのでチバも素直
>>311 遅レスですが、鰓チバ・薬プレイ・第三者のゴーカン未遂・
リアルな鰓口調・リアルなチバ思考・チバの体に酔う鰓・小ネタ満載と
ツボ突かれまくりでした。
この勢いでアベチバも書いてみませんか…
あっけらかん…確かに難しいw
書いてるうちにキャラが変わってきちゃう
じめじめしてるのがチバの良さでもあるからね。
なかなか難しいwww
アベに対しては万年梅雨だよね…
だがそこがいいw
でもあっけらかんな二人にも興味津々
以前に投下されたウエチバの時みたいにさ、
チバが「今度は手加減してよね」なんて軽口叩くくらいの
あっけらかんなアベチバが読んでみたいもんだす(*´∀`)
お互いが気持ちよく酔ってる状態ならどうでしょ?
イチャついてたときもそうだったしw
469さんリーダーになったから仕事忙しいのかな?
気長に待ってまーす
つ旦
「…暇だねえ」
アベくんの、この後に続くセリフは大抵決まってんだよ。
「やる?」
ほら。
いきなり人んち来て、何か用かと思えば何もないし、そんでゴロゴロして暇だ暇だつって、「やる?」って。
いっつもそうなんだよ。だから俺もいっつも同じセリフで返してやるんだ。合言葉みたいなもんだよ。
「また?」
「他にする事ないじゃん」
「っとにしょうがねえなぁアベくんは」
しょうがない、と言うとアベくんは笑って、ちょい、と指先で俺を呼ぶ。
ソファを背もたれにして座ってるアベくんの、投げ出された長過ぎる両足を跨いで、その上に俺が座る。
向かい合って、お互いの首を抱いて、キスをする。
舌を絡めて、口の中を思う存分味わって、それから、アベくんが俺の首筋を舐めて、シャツのボタンを外す。
剥き出しになった乳首を舐めて、噛んで、
「…ん…っ」
俺が感じ始めると、アベくんは俺の背中を抱いてゆっくり押し倒す。いつものパターン。
…だと思ったんだけど。
「なぁ、このままやってみない?」
「…ん?なに?」
「このまま、座ったまんまでやりたい。」
「まじで?俺が乗っかんの?」
「うん」
「…あー、うん…」
「だめ?」
「うん、いや、…いいけど」
「ほんと?」
ほんとは、恥ずかしいからやだって言おうとしたけど、全く興味がないって訳じゃないし、たまにはアベくんが下ってのも、
…ちょっとだけ、いいかなって。ちょっとだけね。思ったからさ。
まぁ、アベくん嬉しそうだし、いいか。
「じゃあ早速」
満面の笑みを浮かべて、アベくんが俺のシャツを脱がす。
「立って」
言われた通りに膝立ちになると、アベくんは俺のジーンズの金具を外して、生地を膝まで下げる。
アベくんの右手が俺の左脚を撫で上げて、そのまま下着の中まで手を滑らせて、直に触れて来る。
「ふ…っ」
竿をやんわりと掴んで、親指の腹で裏筋をなぞって、人さし指で先端の穴を弄る。
いつもと姿勢が違うせいか、今まで味わった事のないような快感が襲って来る。
膝が震えて座り込みそうになった俺は、アベくんの両肩を支えにして何とか堪えた。
それでもこんな姿勢はやっぱり辛くて、身体がどんどんアベくんの方に傾いて、しまいにはぎゅっとしがみついてしまう。
「チバ、苦しいって」
「…う、うるせ…」
早く先に進みたくて、俺はアベくんの股間に手を伸ばした。
アベくんがしたみたいに、ジーンズの金具を外して、下着の中に手を入れて、アベくんの竿を掴む。
けど俺はアベくんみたいに上手くないし、攻められっぱなしで身体が上手く動かないし。
出来る限りの事はしようとしてんだけど、ぎこちなく扱くのが精一杯だった。
「…無理、しなくていいって」
吐息と笑いの混じったアベくんの声が耳元で響いて、顔がカッと熱くなる。
下手くそ、とか思われてんだろうな…。かっこ悪いな俺。
「お前は、そのまんまでいいの」
右手を動かしたまま、アベくんは左手を俺の尻に回して、穴を探り出す。
「んあ…っ」
入り口を見つけた指が、何の迷いもなく中へ入って来て、蠢く。
前と後ろを同時に攻められて、俺はアベくんの竿を掴んだまま扱く事も忘れて、ただ快感に酔いしれた。
「ア…アベく」
俺がイきそうになってるのを察すると、アベくんは手を動かすのを止めた。
「一緒に、ね?」
アベくんが俺の手を退けて、腰を浮かして自分のジーンズと下着を下げる。
それから俺の下着を下げて、両手で俺の尻を掴んで引き寄せる。
「入れさせて」
自分のものを扱いて起ち上がらせると、アベくんはそこに俺の穴を宛てがった。
「そのままゆっくり座って」
言われた通りに腰を落とすと、指で慣らされて弛んだ穴はアベくんの竿の先をすんなり受け入れた。
「ん…っ」
いつもは入れてもらうばっかだったから、自分から、っつーのに慣れてない。
恥ずかしくてつい退けてしまう俺の腰を、アベくんが抱えて止める。
「逃げんなよ」
「んな事言ったって…」
「いつもやってる事じゃん。はい、座って」
「…わかったよ」
今更止めらんねえし、アベくんは体勢変えるつもりなんか全くないみたいだし、…続けるしかねえよなぁ。
「っふ………う…」
ゆっくり、少しずつ、アベくんのを入れて行く。俺の腰が沈む毎に、アベくんの息が荒くなる。
「…う、動くよ?」
根元まですっかり納まったアベくんの竿を、上下に動いて刺激する。自分が一番感じる所に宛てようと腰を捻る。
そこに行き当たると身体が震えて、中でアベくんのを締め付けた。
「うあっ!」
アベくんが悲鳴を上げる。
「は…ぁっ」
アベくんが喘ぐ。アベくんの背中がソファに張り付いてく。アベくんの手が、俺の竿をゆっくり扱く。
アベくんの手の動きに気を取られて俺が動かなくなると、今度はアベくんの方から突き上げて来る。
俺が体重かけて乗っかってるから、いつもみたいな激しさはないけど、
途切れ途切れに弱く襲って来る快感に焦れるってのも、これはこれで…堪んねえ。
「ア、アベくん…もう、ダメだ…」
「…俺も…」
イきそう。
俺は力を振り絞って腰を動かす。アベくんも手の動きを速める。
程なくして、俺はアベくんの腹の辺りに、アベくんは俺の中に、ほぼ同時に射精して果てた。
そのままアベくんの上に倒れ込むと、アベくんが俺の頭を撫でた。
「…すっげー気持ちよかったわ。またやってよ」
「え、やだよ。いつもの方が楽でいい」
「何よそれ。ほんっと我が儘だねお前」
アベくんが笑う。俺もつられて笑う。
「まあいいや、いつも通りで」
「うん」
アベくんは、どんな女よりも俺を悦ばせてくれる。だから、こんな事続けてんだよ。
相手が誰でもいいって訳じゃねえんだよ。アベくんだからだよ。
その辺察して、このくらいの我が儘受け入れてよ。
…って言おうと思ったけど、やっぱ恥ずかしいからいいわ。
あっけらかんとしたものを書こうとしたんですが、やっぱり無理でした。
すいません。
ありがとうございます!
チバが割と素直でセクースに積極的だとアベが可愛らしい…(´∀`*)
平和で心地良くモエ
チバがカワユス(*´Д`)
このシチュはあっけらかんの部類に入るんじゃないかな?
ありがとう!
乙です!
明るいアベチバ、いいじゃんいいじゃん!(*´∀`)
>相手が誰でもいいって訳じゃねえんだよ。アベくんだからだよ。
スポーツ感覚の関係でも、これがあるとないとでは大違いだよね(*´∀`)
あんまりお互いを縛り付けてないような二人いいっすね!
>>499さんありがとう!
ああ…一日人がいなかった…サミシス
1日3回はROMりに来てますよ。
明日は節分ですしたまには鬼さんをいじめてみてはいかがでしょうかチバさん?
倍返しじゃ済みませんかそうですか…。
いいですねぇ〜年に一度の鬼さんに反撃する日!
最終的にスットコさんが勝っても負けてもいい、
そんな話読みたいっす誰か誰か誰か…
>>22さんいかがすか…
読みたいです読みたいです!いっそ
>>507さんいかがですか…
509 :
507:2006/02/03(金) 14:32:22 0
先日の鰓チバで燃え尽きましたので神様方をお待ちします
ある意味鬼は外な話だった
>>509 (`皿´)y-~~ 今度気が向いたらシクヨロ〜
469さんのエロ肩チバを、かなり禿しく待ってます…
お仕事忙しいのかなー…(ノд`)
>>507さん 22って私ですか
スットコさんが反撃する話 私も激しく読みたいです……取り敢えず私もやってみます
507さんは鰓チバ書かれた方なんでしょうか。 あの、むっちゃ萌えました……
また気が向いたら鰓チバでもアベチバでも是非書いて下さい〜
私も469さんの続き待ってます
>>22たん
wktkで待ってます(*´∀`)
前スレ644さんもまだいらっしゃるかしら・・・
鰓チバど真ん中だったのでコソーリ期待してます(*´Д`)ハァハァ
「…うぉい!きいてんのかー」
俺の背中でひとりの男が呂律めちゃくちゃで喚き続けていた。
「お願いだからもうちっと静かにしろって!」
そう注意するとおとなしくなったので、やれやれと溜息をついた次の瞬間、グイッと髪を引っ張りやがった。
痛ってーなと舌打ちした俺に向かって、男は一言こう言った。
「俺…酔っ払ってんだよ!」
いやいや…だからなんでそれで威張ってんだよ!意味わからん。
こんな酔っ払いはさっさとベッドにぶちこんじまおう。それがいい。
酔っ払いと言い争いをすることくらい無益なことはない。
特にこいつとの言い争いなんて不毛だ。
決まり。
キタ─wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~─ !!!
歩く速度を上げた俺の変化を感じ取り、多少動揺したのか、背中で大騒ぎしていたチバが静かになった。
「コウジ君…お…怒った?」
恐る恐るという感じをわずかに滲ませた口調で尋ねてくる。
いや、別に怒ってねーけどな。
頭では返事をしながらもそれを口には出してやらなかった。
ちょっとした仕返し。
大体後々気にするくらいなら最初っからおとなしくしてりゃーいいもんを。
ちっとは自分の性格ってもんを把握しろ。
「なぁ…怒ったのかってば?」
チバの顔は見えないけど、どういう表情をしているかはわかる。
わからんとでも思ってるなら大間違いだ。
でも声に出して返事はしてやらない。
黙々と歩き続ける俺に余計不安になったのだろう。
チバがぎゅっとしがみついてくる。
「怒った?」
俺の耳に唇をくっつけて小さな声で尋ねてくる。
俺の様子を窺う声音。
普段は絶対そんな声出さないのにね〜…とちょっとおかしくなる。
でもポーカーフェイスでシカト。
チバってほんと…どーしよーもねーよな。
そんな放置プレイを、チバ自身なんとかしたかったのだろう。
俺の肩に額を押しつけて囁いた。
「今日…一緒に寝る?」
オイオイオーイッ!そんなんで俺の機嫌取ろうとすんなって。
まったく何を考えてんだ何を。
ほんとどーしよーもねーわ、チバは。
「そういうのはアベ君にお願いしな」
「やだ」
チバが俺の肩口に顔を埋めたまま頭を振る。
「やだ」って子供かよ?
ベッドまでは俺の役目、ベッドの中はアベ君の役目。
こっちだって酒入ってるんだからチバが寝付くまでチバの相手なんてそうそうしてらんねーよ。
そういうのは寝付きの悪いアベ君にやってもらいなさい。
俺の結論には変更ナシだが、どうやらチバは不服らしい。
後ろから回した腕にさっきよりも力を込めて、またぎゅうっとしがみついてきた。
自分の息抜き妄想でした。
お目汚しで申し訳ないです。
では〜ノシ
レス番214様!!!!!
きてくれたんだね〜!!!!!
チバカワユス‥
どぅおおおおぉぉ
214様!!!!ありがとうございます───!!
キーッチバかわいい〜!!
さすが鰓萌えのレス番214様だ〜。鰓描写が絶妙(*´∀`)
レス番214様の書くチバは、なんか可愛くて好き。
たまに落としてくれるレス番214様の短編が大好きっす!!
なんか続きそうな終わり方……気が向いたらまた書いてください(*´∀`)
ウエノに対しては傍若無人なチバキター!!
チバは何を駄々捏ねてんだ…
チバ〜!!かわいいかわいい……
レス番214様のお話は凄く瞬間の風景が浮かんで素敵……いいなあいいなあ
鰓さんに負ぶわれてるというだけで憎たらしいほどチバが羨ましい
犬の容貌で、猫の思考、男の躯に、そこいらの商売女よりも自然で淫猥な媚態。
緩やかなファンのモータ音は導火線の手前。
この一室が。
もう直ぐ、少しの期待で至極当たり前に空気を変えるのが分かった。
扉が僅かな隙間を作るのが尖った神経に痛みを与える。
無理矢理に。
酔った男がにホテルのフロントに空けさせた部屋は、シンメトリーの配置。
ビロードの壁紙。緞帳の様なベットカヴァー。ローブの曲線。靴底に沈むカーペット。
ベルボーイの笑顔に一部の隙さえも無い完璧なホテル。
格調高い品のある、料金に見合った室内で。
コンシェルジュに電話をして、セオリーに乗っ取りシャンパンを頼む。
ついでにイチゴを。
ふざけて酔った男は云った。
――――――――
す、すみません続けても平気でしょうか
なんかキタ──────!!!
イイヨイイヨー(・∀・)
続きキャモン!
ぬこチバならこんなカンジなのかな?かわいー
534 :
527:2006/02/06(月) 02:21:02 0
すみません。文が飛んでしまい打ち直しています・・・ごめんなさい。
完全復旧できたらまた投稿させて下さい。
首をとぐろ巻いてお待ちしてます(*´∀`)
537 :
527:2006/02/06(月) 05:47:24 0
打ち直しがすむまでにこれを落とします・・・ごめんなさい
――――――――
装飾品を嵌めた指の節は男に見合って骨がリアル。
縦に伸びきってしまった身長に並行する長い指に何の変哲も無い指輪。
左手の薬指に何かの証か誓いの塊を大事に嵌めている。
その手がちらちらと目に付く。
何も考えずに拳を作り頬下から殴り上げた。
当たる皮膚の感触は皮製のソファとはそんなに違いは無い。
相手が自分の躯に乗っている男だという以外。
何すんの
突然の暴力は二人でするセックスにも日常にも介入しているから男は驚かない。
それでも殴った自分も男だ。力を緩める義理などない。
唇は裂けて、頬に切り傷。
右手に嵌めていた指輪は石をカットし嵌め込んだ物。
思った以上の出来に笑いが込み上げる。
似合ってる
頬骨から口端から。
大したことがないと云う様に男は臍下に舌を滑らす。
伏せられた顔は見えず退屈だった。
テンションを持続できないときもある。男の生理は勃起しをして射精と云う切断面。
思考に横槍を入れられた欲望は持ち上がらない。先ほどの殴打が射精の代りか、組み敷いた男は萎えたまま。
女と違い膨らみも柔らかさも目に見えて欲望に繋がらない男の肢体。
冷めたならばここにいるのは穴の一つ減ったダッチワイフか。
膝を立てせて股を割って。
右手でぬるいペニスを扱き、左手で用のある穴を指で押す。
収縮して膨れる襞にようやっと声。
痛みも貰ったならば返してやら無いと。
引きつる皮膚を無視して二本の指を突き立てた。
538 :
527:2006/02/06(月) 05:48:01 0
男の趣旨返しの痛みがペニスに血を送る。
潤まない、排泄器官に逆らう行為はいつも削られる気がする。
体液のぬめりなど微々たもの。歯を食いしばっても、口を閉じても指を噛んでみても漏れる声が湿る。
笑う声が聞こえて、捻じ込まれる三本目の指の痛み。
縁に引っかかった冷たく硬い金属は皮膚を破いて、腸液と血液に飾られ。
噴出した精子が腹に降る。
抱え上げられた足が攣り。
傷にあてがわれた熱が、腰の律動が痛みを加速して。
遠慮なく、前立腺を突かれ2度目の吐露は精液の量も微々たるもの。
やっぱさあ、健康にわるくねえ
酒が?それとも煙草とか?
アナルセックス
今更だろう
そうかもね
淫靡なのキテタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
>>527さんGJです!
微妙
こういった雰囲気的なものはもともと
多くの人に理解してもらうことは難しいような気がするな
あったまてっかてーかー
絵というより曲が浮かぶ感じのお話ですね。
自分はなぜか、ピンヘッド・クランベリー・ダンスが浮かんでしまいました。
いかがわしい部屋でいかがわしい事してる感じで…
>>541 そんな感じがするね。
でも私は萌えた(*´Д`)ハァハァ
わかんない…頭悪くてゴメソ
>>526 ウエノおんぶチバ、好きですか?
じゃ、これもどぞ。
==========
ダメ。やらねー。ここは俺の。俺の場所。そんな目したってやらねー。そんな物欲しげな目したってやらねー。ここは俺の場所。ここは俺だけの場所。他のヤツになんてやらねーんだよ。
大体カシスオレンジのカシス抜きって…なんだよそれ。
それただのオレンジジュースじゃねーか。
酒…「弱い」じゃなくて「飲めない」だろ?
間違ってんぞ、日本語。
それともそれは大阪人特有のセンスなわけ?
それなのに最近「飲めるようになった」なんて…何のアピールだよ?
大体図々しいよ。
一緒にライブやってるじゃねーか。
ステージでの後ろだけじゃ我慢できねーのかよ。
ここまで欲しがるんじゃねーよ。
ダメ。やらねー。ここは俺の。俺の場所。俺だけの場所。コウジ君の背中。俺のもん。おまえにはやれねー。悪いな。
欲しがらねーでくれよ。
俺にはもうここしかねーんだからさ。
悪いな。ほんと。
おまえって…おまえって…
ここでも報われないのかS也──────!!!!!!
>>548 なぜ伏せる?w
はっきり言ってしまおうってば(・∀・)
よりによってスットコさんに背中独占宣言されるとはwwww
>>547 レス番214様
テラモエました…(*´Д`)ハァハァ
レス番214様、最高っす!!!!!
⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
シンチャンまた報われてないw
背中シリーズ他にもあれば恵んで下さい!
つーかもうなんでも(;´Д`)
チバ、エラさんには我が侭放題だから「あいつ何なの?」とか言いそう…
エラさんを困らせるチバモエス(*´Д`)
小学生レベルの独占欲丸出しのチバがカワユス(*´∀`)
ごめんよ真也wwww
お菓子スレといい、ミセル関連スレといい、
いっそ気持ちいいくらいの報われなさっぷりだな真也w
だ が 、 そ れ が い い !
556 :
527:2006/02/06(月) 22:54:35 0
流れぶった切った投下物ですみませんでした。
どうみても微妙です本当に有難うございました(・ω・) ノシ
ダイジョーブだよ。
シンヤは毎日毎日、左でプ厨待ちしてるからw
近いうち報われるでしょ。
少なくともカラダだけは(ノ∀`)
>>549 なんとなくこのスレでまで報われないのが不憫でつい…w
京都旅行を知った時の彼の気持ちを察すると泣けてきてならない
>>555 あそこつい先日初めて行った。
彼はいつからあんなキャラで固定に…wwww
やはりあの相関図がまずかったのか…
ってスレ違いスマソ
むしろここや右で報われる可能性は0に近い。
左ならシンヤに優しい神もいるからwww
敵はフトツだけじゃないってことか〜。
大変だなあ、真也w
563 :
526:2006/02/06(月) 23:06:37 0
レス番214様さま!!!!
ああぁぁぁりぃいがぁとぉぉぉぉぉございまぁぁすぅぅぅぅ!!!
>>527さん!
こちらこそ流れぶっちぎってしまったみたいでごめんなさい!
続きドゾー!
面倒見が良くて気遣いのエラさんはこの後各々フォローするのかなぁ。
スットコさんの方が数倍手が掛かりそうだw
>>527 続き楽しみにしています!
詩みたいだなあ
>>565 絶対スットコの方が手がかかる!に20000タンバリン
鰓さんお相手候補手間度
キュウ>真也>>>>>>フトシ>>>>>>>>>>>チバ
ちょっと珍獣生態報告書の53読み返してくる ノシ
>>561 もうゼロというよりマイナスだよw
特に真ん中じゃ、スットコが『やだ』『だめ』って言うだけで、
鰓につけ入る隙は全くなくなってしまうだろうwwww
きっと左で報われるよ。その日を待てシンヤ!!w
スットコさんの我侭の破壊力ってなんかもう最終兵器彼女
>>568 (゚ ё ゚)ゞ<…オイラは入ってないのね…
パッチwww入れるとすればキュウとシンヤの間くらいかな?
スットコ最強杉wwwww
鰓がスットコさんに対してお母ちゃん状態になるのも、
ある意味仕方ないよなあ…wwww
最後の望みだった左で、レス番フトシ様にお笑い要員と言われたシンヤに明日はあるのかwww
>>570-571 チバさんの『やだ』『だめ』は最強ですよね。
効力的には鰓>フトシ>>>>キュウって感じでしょうか?
YO一郎さんらライターの方々にも強力に効きそうですが。
>>576 大丈夫だよ。プ厨から真×鰓書いて貰うって確約取ってるし。
きっとワクピチで待ってるんだよシンヤはw
>>577 アベには「やだ」「だめ」あんまり効かなさそうな気もする…
置いてく時は置いてきそう
逆にフトシの「だーめ」はものすごく威力がありそう
>>579 前スレ22さんのお話では、アベの『お願い』って言葉に
まったく逆らえなかったよねチバwwww
チバは逆らえない
一般人はもっと逆らえない(別の意味で)
その反面、甘えられるとデレデレのアベwwwwwwww
>>578 プ厨が書くと誰でも神テクになるから、きっと真也もw
チバのスットコぶりとアベの天然は、ある意味で互角だよなぁw
>>572さん
密かに続き期待してます(*´∀`)ノシ
ツボりますた…ハァハァ
三四郎様キタ!!
なんだっけなあ。ラジオじゃなかった?
591 :
158:2006/02/07(火) 03:35:13 0
今頃ようやく書き上がりました。
>>527さんのお話が終わったら投下しても宜しいですか?
592 :
527:2006/02/07(火) 03:37:25 0
あわわすみませんこちらにかまわず産んで下さい
本当にごめんなさい
>158さん
>>158さん
お願いします!
>>527さん
投下しにくいと思いますが機会がありましたらまた是非お願いします(・ω・`)
萌えの表現の仕方はそれぞれですし、どの神様のも鼻息荒くお待ちしてます。
>>527さん今までになかった雰囲気で好みですハァハァ
>>589 スペシャの公式サイトの画像。
代々木暴動の翌日にウルトラカウントダウンにゲストで出た時の、
番組のプレゼントページかなんか。
>>595 ありがとう!!
どっかで見た服だなあと思っていたら、その番組持ってました。
当時そんなページがあったんですね。
そういえば二人とも酔ってたもんな〜
可愛くて気になっていたんです。サンキューです。
番組中に靴脱いで体育座りしちゃったチバに萌えた>ウルトラカウントダウン
あの頃のチバは激ヤセしてたから、体育座りしたらちっちゃーくなっちゃってねwwww
>>587 三四郎様!!!!!
また真ん中にも落としてきださい〜(*´∀`)
>>589 その画像見るたびに、駄々っ子チバを妄想して萌える(*´∀`)
>>597 ただでさえ標準より細いのに、
オールバックに帽子で目鼻筋がものすごくくっきり見えてたよね
チバはホント輪郭がウツクシイ
あのグラサンははじめウエノがかけてたヤツか
↑ごめん、大きな勘違いでした
603 :
527:2006/02/07(火) 23:23:04 0
527の続き、書き直しできたので投下してもよろしいでしょうか。
文体読みやすく変えてみました。読みやすいと、いいな・・・。
どうぞ!!!!!落としてくださ〜い(*´∀`)
605 :
527:2006/02/07(火) 23:28:39 0
誤字脱字あるかと思いますが許してください・・・
――――――――
あのさあ、俺、結婚すんの
打ち上げは楽しかったし、何よりもライブが最高だった。酒も進み随分と暴れたあとで男が笑いながら言った。
お前、何言ってんの?
てっきり彼も知ってるものなのだと、また自分は捨て置かれるのかと思ったのに、ウエノすら知らなかった事らしい。
まじかよ!よかったじゃん!
はしゃいで喜びを伝えるキュウすら、驚いている。
祝ってくんねーの?ねえ
二人の反応を満足するまで眺め、振り返った男が口を尖らせる。
言葉にならず、ただ数日前の逢瀬を思い出した。
何?
数時間のロスタイムで肺にいれた煙が全身に運ばれる。
軽い虚脱感と貧血に似た症状で身体がだるい。紫煙を吐き出し聞きかえした。
避妊具くらいつけてよっていったの
隣で男がだるそうに躯を起こす。
別に、女と違って妊娠しないでしょアンタ
そりゃそうだけどさあ、こっちの身にもなれよ
中で出してって言うでしょ、最中
あのさあ、言葉のあやだから、本気にしないでよ
ああ、そう
先に風呂入るわ、俺
606 :
527:2006/02/07(火) 23:29:26 0
会話の端々にあったのは紛れも無いチバの心情だったのかと、今まで見てきたもの総てが覆される。
薄い希望とやらを肥大させていた自分に気づき、驚く。
その内お祝いしなきゃな
え、マジ?マジで?ちょー嬉しい
マジマジ、きばるよ俺
やっりー
無邪気にキュウと笑いあうチバを横にぼんやりと思う。この男はどうやってあんな行為を続けてきたのか。
勿論、自分にも家庭はある。だけども妻や仲間まで裏切って手にした筈の男は。苦い笑いがこみ上げた。
うっわ、グレードたっけえ
続く馬鹿騒ぎに付き合いきれないと二人は帰ってしまった。
斜視気味の視線がどこを見ているのかはわからない。
ホテル行こうか、何時もの様にそう云って、いつもみたいにチバが頷いた。
なに、こんなとこですんの?アベくん、金持ちじゃん
お前が選んだホテルだろ
エレベータの中までも品良く、酔った男の存在が異質に浮き立つ。
柔らかな空調も重力に逆らう浮遊感も照らす照明も、この男に効果は無い。
何号室?
カーペットの上ををふらふら歩くチバが鼻歌交じりに問う。
そっちじゃない、ここ
規則的に並ぶ扉の一つをひらいた。
607 :
527:2006/02/07(火) 23:30:39 0
シャンパン、届いた
でけえイチゴ
カラトリーとクリスタルの器を運んできたキャスターは思ったよりも軽い。
室内の扉という扉を開けて覗き込んでいたチバは、広いベットのすみに腰を下ろし、赤い果実を覗き込む。
躯を折り曲げイチゴに気を取られているチバに唇を寄せたが、むずがる子供のように逸らされた顔。捉え所のない視線がどこを見ているのかはわからない。
浮かぶ笑みは苦くなる。
いつものことながら、気まぐれな猫よりも性質が悪い。
野良犬の風体よりも仄暗い。
なんだよ
その女が好きなのか
はあ?
訳がわからない、そんな表情すらもいつもと変わらないのに。
結婚するんだろう
ああ、まあね
どうして
言葉は続かなかった、チバの骨の浮く手がキャスターに届いたのが横目に移った瞬間。
やっべ、絨毯汚れちゃったじゃん
笑んだ形のチバの唇が何かを喋るが、聞こえない。こめかみの傍、耳の穴の前に心臓が有るみたいに鼓動が煩い。
脳が左右にぶれたような感触。
殴られた瞬間に見えた画像は白く光る星。もしかしたら、チバの、いつも見えてるものが見えてるのかもしれない。
きちんと閉ざされなかった扉が僅かな隙間を作るのさえも尖った神経に痛みを与えだす。
生暖かい流れが首筋に到達した瞬間、本能的に躯が動く。薄く開いた扉へ。
何度もよろめきながらもつれる足を交互に動かし、震える指が扉に引っかかる。
目の前に広がった清潔なバスルーム。
アベくん
声に、いつも自分を呼ぶ声に振り返った。
下ろされるシャンパンの瓶が遅く感じ、そして痛みよりも衝撃の音が先に伝わり、チバの表情もバスルームも消えた。
608 :
527:2006/02/07(火) 23:32:30 0
あのさあ、手間かけないでよ、アベくん
視界が滲む。
淡いマーブル模様の石の部屋、ガラスや鏡が間接照明で光を拡散している。
アベくん痩せてるけど重いんだもん
声の主を探そうと目を凝らすが、細かく瞼が痙攣して上手くいかない。
かぶりをふり、少しして自分の状況が把握できた。便座の上に、座らされているらしい。
そして膝の上に、唇を血で濡らした男。
自分の流したモノなのかと思うと頭の痛みが、鼓動と共に膨らんでくる。
チバの唇を拭おうとしたが、手が動かない。後ろ手に縛られて感覚も無い。
どうして
絞りだした声はとても小さい。
俺で勃起できるんだもんねえ、アベくん
笑う口が、細められた眼がどこを向けられているのかわからない。
こんな俺で勃起できるんだもんねえ、アベくん
――――――――
終わりです・・・すみませんでした
チバいいね…
深く関わったら絶対幸せになれない人って感じ。
でもどうしても手に入れたい人。
>>527さんのSSは淫靡で風通しが悪くて、そこがいい。
>>527さんありがとう〜!
乾いてんのか湿ってんのか計りかねるチバの心がツボった(*´Д`)
611 :
527:2006/02/07(火) 23:47:47 0
>>609さん
有り難うございます。腸初心者なのでお言葉有り難いです。
>>158さん
申し訳ありませんでした、お待ちしております!
>>527 自由奔放な男が主人公の、森 茉莉の小説みたい。
あんだけ自分勝手なやつだもん、こういうチバもアリだなって思う。
私はすごく好きですよ〜(*´∀`)
527さん乙です。個人的には今回の文体のが好きです〜
湿度がないチバなんてチバに非ず!…と思っていたけど、
>>527さんのお話を読んでると、これも紛れもなくチバだなあって気がする…
GJです!!!!!
527さん乙です〜!
アベの気持ちだけが切り刻まれてく話、初めて読んだ(逆パターンなら多々有りw)
でも、チバは結婚してもアベと関係を切る気はないんだろうな…(*´Д`)
あ、あの…聞いていいですか?
便座の上に座って何をしているの…?
血…?後ろ手に縛られて…?
ごめんねごめんね、馬鹿でごめんね orz
無邪気すぎて残酷なチバ(*´Д`)ハァハァ
527さんありがとう!
このチバ、物凄く萌える(*´Д`)
俺、結婚すんの
――でもアベくんも俺のもんだよね?
…ってくらいな勢いの、高飛車ぬこチバ萌え(*´Д`)
527さん待ってました!すっごいツボです…!
チバがぐるぐるしてる感じのは最早デフォルトという感じでしたが
アベがチバに引きずられるっていうのがすごく新鮮で萌えました…!
ヒリヒリする感じが後期の二人を思わせますね。是非また読ませてください!
>>612 枯葉の寝床どこやったかな…って気になって眠れなくなったw
>>621 古本特有の匂いを放ちながらも、
しっかりと本棚にあるよw>森茉莉
>>527さんの続きキタテ―――(゚∀゚)―――!!
珍しいシチュのお話、GJです!
チバは自分が何をしようと、フトツは俺のモンって感じだね〜。
チバの一つ一つの表情がすごい鮮明に想像できる〜
本人は自分は絶対正常と思ってるけど、確実にどっか狂ってる人っぽい。
私は アベ→チバ < アベ←チバ なのかなと思いました
>>527さんおつかれです!!
ここの職人さんはそれぞれ色とタッチと文体が全然違って面白い
626 :
158:2006/02/08(水) 11:36:50 0
>>527さん、乙です!
チバが素敵すぎてゾクゾクしました(*´∀`)
あの文体のあとに、また違った文体ってとこもいいなぁー
ミステリ小説の冒頭みたい
すぐにグルグル考えて、自分が悪いんだぁ〜と堕ちたりする反面、
こうやって傍若無人っていうか罪作りな無邪気さっていうか、
そういう部分がありそうな気がするよ、チバは…(*´Д`)
>野良犬の風体よりも仄暗い
この描写が完璧にチバだ…
>>626 158さん!投下予告以来ずっと待ってました!
職人さんそれぞれ個性があって楽しい(*´∀`)
…実は1ヶ月近く、
>>56さんの続きを待っていたりもする…(ノ∀`)
632 :
158:2006/02/09(木) 00:43:21 0
長くなりますので、
>>8とか
>>493がダメだった人は読み飛ばしてください
------------------------------
「…あれ?」
辺りを見回して呟く。
この日、ライブハウスの楽屋で暇を持て余したチバは、ふと思い立ち、レコード屋を探しに街へ出た。
東京と違って無闇にでかいビルなどなく、いつもより広々と見渡せる空は生憎の曇天で、清々しさの欠片もなかった。
天気予報では午後から雨と言っていた。チバは足を速め、スタッフに教えられた道順を頭の中で反復しながら進んだ。
しかし、歩き進むうちに曲がる方向を一度誤っていたのに気付かず、又、自分を信じて疑う事もなかったチバは、
一歩ずつ着実に目的地を遠く離れ、遂に行き止まったそこは、古い家屋が並ぶ路地裏だった。
「ここじゃねえな」
小さい街だからすぐ見つかるはず、と高を括っていた。
しかし歩いてみると、街道は鬱陶しい程複雑に入り組んでいて、初めて訪れたチバにとってまさしく迷路そのもの。
最早、スタート地点に戻ることさえ容易ではなかった。
「どっちだったっけ…」
今来た道を戻り、曲り角を2つめまではクリアした。だがその先がどちらだったか思い出せない。
15時00分。
チバは道の真ん中で呆然と立ち尽くし、額に滲んだ汗をシャツの袖で拭った。
開演予定時刻まで残り4時間30分。
------------------------------
633 :
158:2006/02/09(木) 00:44:46 0
ジーンズのポケットの中で、携帯が震える。
読んでいた新聞をテーブルの上に投げ置き、キュウは携帯を取り出した。
画面に表示されたのは、"チバ"の2文字。
「もしもーし。何か見つかった?」
「…迷った」
「え?」
「迷った。戻れねえ」
「え?今どこ?」
「わかんねえって」
「何か目立つ建物とかないの?」
「…ないわ。あ、待って、電池切れる!!」
「ちょっ、おい!!そこの住所教えれ!!んで近くの喫茶店とか入って待ってろ!」
「あ?あー、わかった。喫茶店ね?」
「待ってろよ!?絶対動くなよ!?」
「わかったって!!あ、あれだ、あの、…ん?」
「早く!!」
「あれだよ、えーと、し」
「…もしもし!!もしもし!?」
頭に"し"の付く町。
何ともアバウトなヒントを最後に、チバとの会話は途絶えた。
キュウは、チバに道順を教えていたスタッフを連れ出し、2人で探しに行く事にした。
634 :
158:2006/02/09(木) 00:45:00 0
「チバ、迷子なの?」
上着と携帯を握り締め、慌ただしく楽屋を出て行こうとするキュウに、然して慌てる様子もなくウエノが声を掛ける。
「うん。俺ちょっと探しに行くから、もし俺らより先にチバ戻って来たら連絡して?」
「携帯は?」
「電池切れ。コウジくん、あとお願いね」
「はいよ。」
15時10分。
楽屋に1人取り残されたウエノは、ゆったりとタバコに火をつける。
「…アベくんにも知らせた方がいいよね」
呟いて、テーブルの上の携帯に手を伸ばした。
開演予定時刻まで残り4時間20分。
------------------------------
635 :
158:2006/02/09(木) 00:45:24 0
その頃アベは、デパ地下にいた。
暇潰しに読んでいた地方誌で紹介されていた『人気の絶品プリン』、それを入手すべくチバより先に楽屋を出たアベは、
チバが迷子になっている事など露知らず、プリンを求める順番待ちの列の中にいた。
周囲から注がれる好奇の目を疎ましく思いつつ十数分、あと3人、という所まで来たその時、
ジャケットの胸ポケットの中で携帯が鳴り出した。
「はい」
「アベくん?チバがさ、迷子になったみたい」
「…は?チバならさっき見たぞ?」
「え、どこで?いつ?」
「20分くらい前?デパートの前歩いてたよ」
「ほんと?アベくんさあ、今から追いつけそう?」
「…あー、うん、探してみるわ」
「見つけたら連絡ちょうだいね?」
「わかった」
やっと回って来た自分の順を後ろのおばさんに譲り、アベは列を離れてエスカレーターへと急いだ。
エスカレーターを駆け上り、デパートのドアを抜け、信号を越えて向かい側の通りに渡り、チバが歩いて行った方角へと走る。
15時15分。
追いつく自信などないが、それでも事情を知ってしまった以上、我関せずという訳には行かない。
開演予定時刻まで残り4時間15分。
------------------------------
636 :
158:2006/02/09(木) 00:46:23 0
頭に"し"の付く町へ到着したキュウ達はタクシーを降り、喫茶店を隈なく覗いて回った。が、どこにもチバは見当たらない。
「いねえよ…」
「もしかして、○○の方ですかね?よく読み間違う人いるんですよ」
「ほんと?じゃあそっち行ってみましょうか」
2人はまたタクシーを拾って移動する。車中でキュウは、しきりに時間を気にしていた。
15時35分。
開演まではまだ余裕があるにしても、通常ならばそろそろリハが始まる頃。
キュウは携帯を取り出し、ウエノに電話をする。
637 :
158:2006/02/09(木) 00:46:39 0
「もしもし?リハどうなってんの?」
「どうなってるったって、俺1人じゃどうにもなんねえじゃん」
「ごめん、なるべく早く戻るから」
「チバ見つかったの?」
「いやまだ。これからまた別んとこ探しに行ってみるけど」
「…早く戻って来てね?」
「うん、ごめんね」
電話を切り、キュウは溜息をついた。
大丈夫ですか、と心配げに見るスタッフに笑顔で応え、"し"と響きの似た町はないかと訊ねてみる。
念には念を。チバが読み間違えたという以前に自分が聞き間違えたのかも知れない。そう思っての事だった。
「"ち"とか"ひ"はありますけど、どっちも歩いて行ける距離ではないんで…」
「そうですか…」
座席の背もたれに深く沈んだキュウの目前に、次なる目的地への入り口が見えて来た。
15時40分。
今度は見つかりますように。そう祈って2人はタクシーを降りた。
開演予定時刻まで残り3時間50分。
------------------------------
638 :
158:2006/02/09(木) 00:47:11 0
最後にチバを見かけてから、もうかなりの時間が経っていた。
向かった先がどこなのかも分からないし、今更見つけるなんて無理だろう。
半ば諦めかけたアベは進む速度を緩めた。
商店街のアーケードを入ってすぐ、傍にあった自販機からミネラルウォーターを買い、喉に流し込む。
小さなペットボトルはすぐさま空になり、邪魔物と化した。
辺りをぐるりと見回してゴミ箱を探したが、それらしき物は見当たらない。
仕方なくアベは、指先で軽く摘んだボトルをぶらぶらと揺らしながら、アーケードの中心へ向かって進んだ。
進みながら尚もゴミ箱を探し、あちこちを彷徨っていたアベの視界に、ふと、見慣れた影が飛び込んだ。
「…チバ?」
一本道の中程で一旦途切れたアーケードの、そこから横に延びた細い路地を掠めて消えた影。
その正体を確認しようと、アベは再び走り出した。
路地の先の角を曲がり、その向こうに認めたのは、やはり間違いなくチバの姿。
出来過ぎた偶然と軽く笑って、アベは全速力で走り寄り、握っていたボトルでチバの後頭部を叩いた。
「ってえな!!…あれ?」
「お前、何やってんだよ!」
「や、道に迷っちゃって…」
「それは分かってるっての。何でこんなとこうろついてんだって聞いてんの。余計に迷うとか考えないの?」
「あ、あの、喫茶店が見つかんなくて、」
「あ?」
「キュウに、喫茶店で待ってろって言われたんだけど、ねえんだよ」
「んな訳ないだろ。1軒くらいあるだろうよ」
「ないよ!なかったんだって!ほんとだって!」
「見落としただけじゃねえの」
「…ちゃ、ちゃんと探したんだけど…アベくん?」
アベは力尽きてその場に座り込んだ。チバも後を追ってしゃがみ、アベの顔を覗く。
639 :
158:2006/02/09(木) 00:47:35 0
「大丈夫?」
「疲れた…ちょっと休まして」
「アベくん、ごめんね、心配さして」
「ほんっとお前は…」
「ご、ごめん…」
「うん、まあ、見つかってよかったよ」
アベはチバの首に片腕を回して顔を引き寄せ、額にキスをし、安堵の息を吐き、その髪に頬を摺り寄せた。
「ごめん。ごめんね」
何度も謝るチバの声を、柔らかな笑顔を浮かべて聞いていたアベの鼻先に、ふと、雫が当たる。
16時05分。
いよいよ降り出した雨が、2人の身体を湿らせて行った。
開演予定時刻まで残り3時間25分。
------------------------------
640 :
158:2006/02/09(木) 00:48:04 0
2つ目の町でも、キュウ達の苦労は報われずに終わった。
「…どこ行ったんですかねえ…」
「すいません、迷惑かけて」
「あ、いや、僕は構わないんですけど。でもクハラさんどうしますか?もう時間が…」
「あー、…もういいや、戻りましょう」
「いいんですか?何だったら僕1人で探しますよ?」
「いやいや、もういいです。外国じゃないんだし、チバもちゃんと戻れるでしょ。」
「でも、待ってろって言っちゃったんですよね?」
「どっちにもいなかったじゃないすか。きっと会場向かってるんですよ。大丈夫です」
16時15分。
まだまだ不安は拭いきれなかったが、取り敢えずライブハウスへ戻る事にした。
スタッフやコウジくんを、これ以上待たせる事は出来ない。自分だけでも戻らないと。
開演予定時刻まで残り3時間15分。
------------------------------
641 :
158:2006/02/09(木) 00:49:12 0
キュウ達がタクシーに乗り込んだのと同じ頃、アベとチバもタクシーを拾っていた。
「えーと、…会場の名前、何だっけ?」
「わかんねえ。何か長ったらしくて覚えれねんだもん」
「お客さん、どちらまで行かれますか?」
「すいません。あのー、この街にライブハウスってどのくらいありますかね」
「さあ、分かりませんねえ」
「ですよね…。あ、ちょっと待ってもらえますか?」
アベはウエノに電話をかけた。どうしてもっと早く気付かなかったのか。
「ウエノ?そこの住所と名前、何だっけ?」
「会場?○○○○○だけど。チバ見つかったの?」
「おお、やーっと捕まえたよ。今から戻るから」
「うんわかった。」
電話を切り、アベは目的地の住所を運転手に告げた。
車が走り出して暫く経った頃、何とはなしに眺めていた車外の景色の中に、ビジネスホテルの看板が見えた。
642 :
158:2006/02/09(木) 00:49:26 0
「あ!」
何事かを思い出して、アベが声を上げる。
「すいません、○×ホテルに行ってもらえませんか?」
再度告げた先は、自分達が泊まっている場所だった。
「アベくん、どうしたの?」
「着替えたいし、携帯の電池切れそうだから充電しないと」
「ふーん。でも、間に合う?」
「まだ大丈夫でしょ」
16時30分。
電源を落とした携帯をポケットにしまい、再びアベは車外を眺めた。
開演予定時刻まで残り3時間。
------------------------------
643 :
158:2006/02/09(木) 00:49:48 0
同行してくれたスタッフに礼を言って別れ、キュウは重い足取りで楽屋のドアを開けた。
「お疲れー」
「遅くなってごめんね。チバ見つかんなかったわ…」
「ああ、アベくんが捕まえてくれたってよ?」
「まじで!?」
「うん。もうこっち向かってるって」
「何だよもう…」
ウエノの言葉に脱力し、キュウはソファに勢い良く倒れ込んだ。
「お疲れさまでした。」
ウエノがキュウの肩を揉む。
「ちょっ、くすぐったいって!」
「我慢しなさいよ。マッサージしたげるから」
「いいよ、いいってば」
「ライブ前なんだから、筋肉ほぐしとかないと。ねー?」
「うわ、そこ違う!!触んなって!!」
「遠慮しなくていいから」
「なにが…あっ」
「マッサージ、マッサージ」
「やめ………っ」
17時15分。
開演予定時刻まで残り2時間15分。
------------------------------
644 :
158:2006/02/09(木) 00:50:20 0
ホテルの自室に入ったアベは真直ぐバスルームへ向かい、バスタオルとフェイスタオルを手に取って部屋の中央へ向かった。
ベッドに腰掛け、脇に置いてあるボストンバッグから充電器を取り出すと、それをコンセントに繋ぎ、携帯を乗せる。
「…何やってんの?」
アベはフェイスタオルで頭を拭きながら、部屋の入り口付近に立ったままのチバに向かって手招きをした。
チバは歩み寄ってアベの隣に腰を下ろし、差し出されたバスタオルを頭から被り、がしがしと髪を拭く。
「アベくん」
「ん?」
「早く行かないと間に合わないよ」
「せっかちだねえ。まだ充電終わってないじゃん」
「だったらさ、キュウに連絡だけでも、…何?」
アベの手がチバの頬に触れた。
「冷えきってんね。大丈夫?」
「うん」
「暖まった方がいいんじゃないの?」
そう言うと、アベはチバの両肩を掴み、その身体をベッドに押し付けた。
「な、何」
「暖めてやろっか?」
静かに言い放ってアベは、自分のシャツのボタンを外しながらチバに覆い被さり、その唇を塞いだ。
暴れるチバの腕をベッドに押し留め、僅かに開いた歯の隙間から舌を差し入れる。
口の中を満遍なく舐め回して離れたアベの舌は、間髪入れずに首筋へと滑った。
「や…っ」
645 :
158:2006/02/09(木) 00:50:47 0
鎖骨を甘噛みされ、チバの背筋はざわついた。
アベはチバのシャツの襟元に指を掛け、片手で器用にボタンを外して行く。
生地の真ん中から薄赤く染まった肌が現れると、アベはそこに顔を埋めて胸の突起を弄んだ。
「んあっ!」
喉を反らせて喘いだチバが、アベの髪の一束を乱雑に掴み取る。
アベの舌が肌の上で蠢く度、それに同調するようにチバの呼吸は浅く短く、幾度も弾み、やがてそこに乾いた雑音が混じり出す。
「…ア…」
酷く擦れた声で、チバがアベを呼ぶ。
その瞬間、アベは動きを止めて身体を起こし、ベッドを降りようとした。
「ア、アベく」
「喋んな。」
恐らくチバは、楽屋を出てから何も口にしていないだろうし、雨に当たって風邪をひいたかも知れない。
どちらにしても、喉が辛くて堪らないであろう事ははっきりと見て取れる。
部屋の隅に備え付けられた小さな冷蔵庫へ向かったアベは、中からミネラルウォーターのボトルを取り出した。
それをチバに放り投げようとして、また動きを止める。
一瞬の間を置いてからベッドへと足を進めたアベは、チバの身体を跨いで座り、ボトルを開けて一口飲んだ。
それから自分の口内にたっぷりと溜め込んで、チバと唇を重ね、渇き切ったチバの喉奥にゆっくりと流し込んだ。
ごく、ごく、と喉を鳴らしてアベから水を受け取り、全てを飲み干し終わるとチバは横を向いて唇を離し、深く息を吐いた。
646 :
158:2006/02/09(木) 00:51:13 0
「大丈夫?」
「うん…」
声はまだ擦れていたが、それでも少しは楽になったようだった。
「商売道具なんだから、もっと大事に扱えよ」
「酷くなったのはアベくんのせいだろ」
チバは柔らかく笑いながら、アベの背中に両腕を絡めた。
「…アベくん、…は、早く終わらせてよ。間に合わなくなるだろ」
「…へえ、その気になった?」
「そ、んなんじゃねえけどよ…」
目に薄く欲情の色を滲ませながら、それでも、早く戻りたいからだと言い張るチバの頬を撫でて、アベが言う。
「素直じゃないねえ」
「う、うるせえ」
「まーたそんな顔して。誘ってんの?」
「ちがっ、」
「じゃあ何?どうして欲しいの?」
「…」
「何、言いたい事あるなら言えって」
「………は、」
「ん?」
「…は、早く、……」
「早く、何?」
「……………い、…イかせろよ」
「…あ、ごめん、声小さくて聞こえなかったわ」
「…っ」
647 :
158:2006/02/09(木) 00:51:45 0
チバが顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる。その目に、今にも溢れ出しそうな程溜まった涙を、アベは舌先で掬い取った。
「ごめん。ちゃんとイかせてやるから怒んなって」
アベは、チバのジーンズのウエストに手を掛け、ボタンとジッパーを外し、腿の中程まで下着ごと引き下げた。
茎は既に硬く起ち上がり、先走りの液を零している。その先端に軽く触れると、チバの身体がびくりと跳ねた。
アベは中指の先をチバの茎に当て、上から下へと撫でた。チバの背中が反り返り、その肌は瞬く間に粟立った。
「チバ」
「…ん」
アベは、天井を仰いで喘ぐチバの注意を自分に向けさせた。
視線がこちらに降りたのを確認すると、茎を伝って滴り落ちた液を指で掬い上げ、それを自分の口に含む。
チバの液に塗れた自分の指を、アベは音を立ててしゃぶる。
その光景を正視出来ず、チバは顔を背け、きつく目を閉じた。
存分にチバの液を味わったアベは、じっとりと濡れた指をチバの内腿に滑らせた。
「は…っあ!」
チバの足がびくりと跳ねて、空を蹴る。
アベの指はそれに動じる事なく這い上がり、両足の中心へ辿り着くとまた茎を伝い、もう一度液を掬い取った。
チバは自分の手の甲を噛んで声を押し殺し、身を捩る。
液に塗れたアベの指が、中心線をなぞって尻の穴へと下って行った。
648 :
158:2006/02/09(木) 00:52:26 0
「ふ…」
アベの指が穴に触れると、チバは堪え切れずに声を漏らした。
チバの反応を一つ一つ確かめて、穴の周囲を撫で回して液を擦り込む。
快感に咽び、ひくひくと蠢くその中心にアベの指が極浅く差し入れられると、チバは弱々しく悲鳴を上げ、腰を引いた。
逃げて行くチバの腰をもう一方の手で押さえ、アベはチバの茎に唇を寄せた。
「や、あ…っ」
アベの舌がチバの茎にねっとりと絡み、弄ぶ。
アベの指が左右に揺れながらゆっくりと、穴の奥深くへと沈み、チバの内壁をくすぐる。
「…ア、…ア……んんっ」
チバはそろそろと手を伸ばし、アベの髪に触れた。
「アベくん………入れ、て」
アベは耳を貸そうとせず、ただ無言で攻め続けた。
「ア…アベく…はやく…」
チバがアベの髪を掴み、後方へと引く。引き剥がされた唇と茎の間を、唾液の糸が細く繋いでいた。
僅かに持ち上がったアベの顔に濡羽色の髪が張り付き、その隙間から薄らと切れ長の目が覗く。
底に激しい欲情を孕んだアベの目が、チバを見つめる。
その目の表情さえも刺激となって、チバの全身を啄み、くすぐる。
「………はやく…はやくイかせて…」
目に涙を溜めて、チバが懇願する。
649 :
158:2006/02/09(木) 00:52:53 0
「アベくん…ね…頼むから…」
「わかった。」
そう言ってアベは、穴から指を抜いた。
チバの気が一瞬弛んだのを見計らい、今度は2本に増えた指が、再び攻め始める。
「ち、ちが、…うああっ!!」
アベの人さし指と中指が、チバの中で不規則に動き回る。唇はチバの茎を喉元まで深く銜え、吸い上げ、舐め尽くす。
激しさを増すアベの愛撫に意識は霞み、チバはただ声もなく乱れた。
アベの指と口に因って促された絶頂の波が、身体の奥底から徐々に速度を上げて迫って来るのを感じると、
チバは縋り付くようにシーツを握り締め、波に飲み込まれまいと必死に堪えた。
けれどアベが齎すそれは余りに強大で、チバは抗う術のないままあっさりと攫われて行った。
「ア、ア………っ」
アベの口の中へ精液を注ぎ終えると、チバの身体はぐったりと力尽き、ベッドに深く沈んだ。
唇と指を離し、チバが放ったものを全て飲み干すと、アベは身を起こしてベッドを這い、チバの顔へ近づいて行く。
チバがゆっくりとアベの口元に手を伸ばし、その唇から垂れ落ちる自分の精液を指で拭う。
アベはチバの指を口に含み、雫を丁寧に舐め取った。
「舐めんなよ」
「勿体ないじゃん」
「何だよそれ」
見合わせた互いの顔が、ふ、と和らぐ。
アベの背中に両腕を回して身体を引き寄せたチバは、密着した肌から伝わるアベの体温にうっとりと目を閉じた。
650 :
158:2006/02/09(木) 00:54:15 0
「アベくん」
耳元でチバが囁くと、流れ込む吐息に反応してアベの肩がぴくりと跳ねた。
「アベくん」
チバの首筋や肩に、アベの唇がきつく吸い付く。呼吸を乱して尚、チバはアベを呼び続けた。
「…アベくん」
アベの手が、チバの髪や頬を柔らかく撫で、背中へと回ると、腰まで一息に滑り降りて尻の真ん中へ入って行った。
穴を弄りながら、もう一方の手で、腿に掛かっていたジーンズと下着を脱がせる。
チバの両足の間に割り込んで、腰の下に手を回し、そこを抱え上げる。
アベが自分のジーンズのボタンとジッパーを外し、下着を下げて茎を引き出す。
茎の先端が穴の口に触れると、チバは薄く微笑んだ。
チバの片脚を持ち上げて胸の方へと押し遣り、アベが中に入る。
651 :
158:2006/02/09(木) 00:54:33 0
「ふ、…う」
アベが僅か進む毎に、チバは小さく息を吐き、苦痛を逃す。
根元まで入れると、アベはチバに口づけをした。
唇で唇を撫で回し、舌が歯列を舐め、口の中に押し入り、舌と粘膜を余す所なく貪る。
互いの唾液が混じり合って、室内の空気に水音が染み渡る。
アベの唇が首筋へ、肩へと移り、そこに軽く歯を立てる。チバの喉が僅かに反った。
「あ…あっ!」
チバに噛み付いたまま、アベが動き出す。
チバを労るように、丹念に味わうかのように、ゆっくりと突き上げる。
熱く滾ったアベの茎が、艶かしく絡み付くアベの指が、肩に滲むアベの吐息が、じりじりとチバを追い詰める。
快楽の渦の中で逃げ惑うチバは、アベの背中に爪を立てた。
アベも又、身体の奥底から湧き出る快感の波に堪え、ぎりぎりとチバの肩を噛み締めて行く。
互いの身体に自分の影を刻みながら揺動の速度を上げ、2人はやがて絶頂へと達した。
18時10分。
開演時刻まで、残り1時間20分。
------------------------------
652 :
158:2006/02/09(木) 00:55:02 0
「…遅いねえ。大丈夫なんかな」
18時45分。
ウエノがこの日初めての不安な顔を見せている頃、アベとチバは漸くホテルを離れた。
タクシーに飛び乗って行き先を告げ、車が走り出すと同時にアベはキュウに電話をかけた。
「アベくん?」
「あれ?ウエノ?」
「うん。キュウ今寝てるから」
「あそう。あのね、今ホテル出たから」
「…ホテル!?」
思わず上がったウエノの大声に、キュウが目を覚ました。
ウエノは慌てて声を顰め、話を続ける。
「…何でホテル行ってんの?」
「ん、いや、ちょっと着替えとか充電とか」
「そんな呑気な、あ、ちょっと」
ソファから下り、ウエノの傍で会話に聞き耳を立てていたキュウが、携帯を奪い取った。
「もしもしアベくん?」
「キュウ?ごめんね、もうすぐ着くか」
「アベくん何やってんの?ホテル戻ってる場合じゃないよ?」
「色々と、充電をね?」
「そんなの今やる事じゃないべさ!!バカ!!」
そこで電話は一方的に切られた。切られる寸前に上がったキュウの怒声は、チバの耳にも痛い程はっきりと届いていた。
653 :
158:2006/02/09(木) 00:55:28 0
「…お、怒ってんの?キュウ」
「かーなり。ぶん殴られるかも」
「まじかよ…だから早く帰ろうつったのに」
「お前がのんびりとシャワー入ってなかったらもうちょっと早く戻れたよ?」
「だって、身体べたべたして気持ち悪、…違うよ、その前の話してんだよ」
「まあ、過ぎてしまった事はしょうがないじゃん」
チバの髪を指に絡めて遊びながら、アベが無邪気に笑う。
18時50分。
「落ち着けって。何でそんなに怒ってんの?チバだってわざと迷ったわけじゃねえじゃん」
ウエノがキュウの肩を叩く。苛ついた様子で、キュウはウエノの手を払い除ける。
「わかってるよそんなの」
キュウの目が訴えるのは、チバの事だけではなかった。
ああ、さっきのあれが原因か。こんな時にヤっちゃう俺が、つーかあっさり受けちゃった自分に腹立ててんだろうね。
ウエノは一瞬の間にキュウの思考を読み取り、呟いた。
「ごめんね?」
「え?何か言った?」
「いや、何でもない。…まぁ、今更焦ってもしゃーねえじゃん」
「んな事言ったって、もう30分しかないのに」
「30分もありゃ大丈夫でしょ」
654 :
158:2006/02/09(木) 00:55:59 0
ウエノはソファに座り、タバコに火をつけた。
楽屋の外では、慌ただしく動き回る人の気配が絶えない。
それを感じ取って、キュウは増々苛立って行く。
ウエノは、これ以上キュウの不安を煽らないようにと、努めて冷静なふりをする。
「とりあえず、着替えよっかね」
灰皿にタバコを押し付けて、ウエノが立ち上がる。
部屋の隅に置かれたラックから衣裳を2パターン選び、鏡の前で自分の身体に重ねてみる。
決めかねたウエノは振り返り、どっちがいい?とキュウに訊ねる。
「どっちでもいいよ」
「選んでよ。どっちがいい?」
「自分で決めれや」
「じゃあ、お前に合わせるわ。どれ着る…あ、来た?」
19時10分。
楽屋の外が一段と騒がしくなって、その中に、微かにチバの声が聞こえた。
脱兎の如く走り出したキュウがドアを引き開けると、そこには今まさにドアを押し開けようとしていたアベがいた。
「遅えよ!!」
「ごめん。ただいま…あれ?」
不思議そうな顔をして、アベはウエノの方へと真直ぐ進んで行く。
キュウは、ドアの向こうでバツ悪そうに突っ立ったままのチバの腕を掴み、楽屋の中へと引き入れた。
655 :
158:2006/02/09(木) 00:56:28 0
「…どこ行ってた?」
「あ、あの、だってさ、喫茶店がなかったから…」
「あったよ。何軒も」
「…見つけらんなかったんだよ。だからさ、探してて、そんで、」
「更に迷った、と?」
「………う、ん。」
「動くなっつったべや!!!!!」
チバの頭に、キュウの平手が飛ぶ。
19時15分。
「あーあ。…で、アベくんは何をしてんの?」
自分の髪や首筋に鼻を摺り寄せるアベに、ウエノが訊ねる。
「ん?キュウからお前の匂いしたから、ひょっとして、って思ったんだけど。やっぱりね」
「ああ、そう言えばシャワー入ってなかったわ」
「こんな時によくやるねえ」
「それはこっちのセリフだっつの」
部屋の隅で着替え始めたチバの肩口にくっきりと浮かぶ歯形と、それを見つけて唖然とするキュウ。
2人を眺めながら、ウエノはアベに囁く。
「あんな目立つとこに痕残しちゃいかんでしょ」
「ね。ちょっとやり過ぎた」
656 :
158:2006/02/09(木) 00:57:30 0
クスクスと笑うアベとウエノを、キュウが急き立てる。
「そこの2人も!!時間ないから早く着替えれって!!」
「はいはい」
19時30分。
支度を整えた4人は簡単な打ち合わせを済ませ、楽屋を出てステージ袖へと向かった。
客のざわめきと、いつものSE。それらを聴きながら、踏み出すきっかけを待つ。
安堵した為か、僅かながらキュウの表情は和らいでいた。
「じゃあ、お願いします」
スタッフの声を合図に、キュウとアベがステージへ上る。
続いて進んだウエノの足がふと止まり、後ろのチバを振り返る。
「おかえり。」
「…ただいま」
向き合った互いの顔に笑みが浮かんだ。
19時35分。
未だ光のないステージに、ウエノが足を踏み入れる。
一呼吸置いて歩き出したチバが、ステージの中央に立ち片手を高く掲げる。
スポットライトがステージを照らし、しなやかな轟音がフロアに飛び出した。
------------------------------
ベタですいません。
迷子チバモエ(´Д`;)
658 :
794:2006/02/09(木) 01:11:07 0
スットコさんスレなのに大人二塔萌えですみません…(*´Д`)
更に迷子チバ、カワユス(*´Д`)ハァハァ
659 :
658:2006/02/09(木) 01:12:12 0
あ、クッキー食べ残してしまった…orz
名前はお気になさらず!
密かに鰓キュウ萌え…(*´Д`)ハァハァ
私も…Q菓子スレ欲しい orz
Q菓子欲しいけど恐いんだよね…
チバとキュウのやりとりがリアルでカワユス(*´Д`)萌え
>>658 私も大人二塔に萌えてしまいました。
においに敏感なフトツ…ハァハァ
ごめん、自分も鰓キュウに萌えたw
なんという乱れたバンドだw(*´Д`)
チバとついさっきやっておきながら
鰓にすりすりするアベ萌え
667 :
527:2006/02/09(木) 03:18:13 0
はげ萌えしましたハァハァ鰓キュウ・・・!!
仲のいい二塔も、想像できてたまりませんハァハァ
皆様暖かいお言葉有り難うございました、
また何か書けたら投稿させてください(・ω・) ノシ
4人でしてそうな乱れたバンドですねw
激モエしますた(*´Д`)
669 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 15:19:36 0
671 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 19:38:22 0
672 :
チ×:2006/02/09(木) 20:28:39 0
淡々と描写されてるけど、フトシのヤリ方が相当エロいよね(*´Д`)
チバの頭を本気ではたける唯一の存在がキュウってのが、
現実とリンクしてて良かったです〜(*´∀`)
ライブ直前にセクースする皆さん…
その日のライブはさぞやエロかったことだろう…(*´Д`)ハァハァ…
>色々と、充電をね?
マジで色んな意味でバッテリー満タンじゃんwww
158さん乙です。
スットコとアベさんが自然にラブラブで読んでて幸せになりました。
>>677 ほんとだよねw
充電したかったのは携帯じゃなくて、カラダだったわけでwwww
着替えと充電。
アベはウソはついていませんね
言うまでもなく鰓にもキュウにもバレバレなわけだがw
後先考えずにQ菓子スレ立てた者ですが 削除依頼出した方がよろしいでしょうか?
>>676 セクースで完全燃焼してたらお客さんは損だよね
いやだよ
そんな事情でボーカルとドラムが若干ヘタってるライブなんてwww
>>682 セクースはライブ前の助走みたいなもののような気がする(*´д`*)
セクス直後のライブの4人ミタス
助走程度だよ < ミ `_ゝ´彡 (´・ω・`)
(;`皿´) [=;・з・] <…。
687 :
158:2006/02/10(金) 05:48:26 0
こんなにレスつくとは思いませんでしたw
ありがとうございます。
レスつくと職人さんたちも頑張り甲斐あるだろうな
でも本当それぞれ設定やシチュや色が違って面白い…乙です!
>>158 迷子リクさせていただいた者ですが
チバキュウの絡みとアベの満遍ないエロさに激しく萌えました(*´Д`)
アベチバのバカップルぶりにも萌えたけど、
チバの事を(エロ抜きで)本気で心配して本気で怒るキュウが(・∀・)イイ!!
691 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 12:47:10 0
キュウの口調も何もかもかわいい!
>>527さんも
>>158さんも乙です!
色んな雰囲気のチバさんが読めて嬉しい〜幸せです
512で云ってたスットコさんが反撃する話を書いてみたのですが……
今夜辺り投下しても宜しいでしょうか
すごい勢いで待ってます
正座して待っています
ヨダレ垂らして待ってます(*´Д`)
ドンブリ片手に待ってます
ご飯炊きながら待ってます
パンを焼きながら待ってます
紅茶飲みほして静かに待ってます
パスタの山で待っています
こめかみ指でこじ開けて待っています
水牛の角でつくられた街で待っています
マングースの夢を見はじめながら待ってます
な、何時頃投下予定でつか… wktk
正座し始め四時間経過ハァハァ
ふ、風呂も入らず待ってるんですが orz
同じく>風呂とか
すいませんすいません 砂嵐のうさぎ畑から帰還しました
すいません 相変わらず長くてただ致してるだけなんですが宜しいですか
すいませんほんと……深夜って書けばよかったですね
ESに「うわーまとまらねぇ!」て文句言いながら待ってるw
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
待ってました前スレ22の人!!正座のかいあり!
キタ――――――(゚∀゚)――――――!!!
ご飯炊けたよ!!
ごめんなさいほんま……今流行のたまごご飯ですか?
---------------------------------------------
「お……ねが……、い、だから、……いれて、」
「もう我慢出来ない?」
「で……きない、」
「ほんと、……可愛いね、お前。」
ああ。想い出すだけで眩暈がする。
何で毎回俺は、あんな事を云わされなきゃなんねえんだ。
あんな事、もしアベくん以外の奴に云わされたら、俺は舌噛んで死ぬ。だからって、アベ
くんならいいって訳でもない。アベくんだから云っちまうんだけど、アベくんにそう云う
事を云わされる屈辱は、その辺の奴に云わされるより、ずっとでかいと想う。
アベくんの前ではかっこよくありたいと想うし、アベくんが色んなとこで、かっこいい
ね、って云ってくれんのが、何より嬉しい。でも、いつもああ云う場面になると、俺は追
い詰められて、追い遣られて、結局それに屈服してしまう。
セックス自体が厭な訳じゃなくても、俺は反射的に厭だ厭だと云う癖がある。癖と云う
か、凄え恥ずかしい事をしてるから、云わなきゃやってらんないんだよ。多分アベくんは
それも解ってて、悶絶しながら恥ずかしい事を口に出す俺を、貶めて楽しんでるんだ。
ふと想い出す度に、俺は完全にアベくんに踊らされてんだと想う。この間なんか、アベく
んの眼の前で自慰させられた。……あああ、厭だ、想い出したくない。事もあろうに俺は、
アベくんの名前を呼びながらイっちまったんだった。……もう二度としねえ。これも何度
云ったか解らない。そう云う行為に対して俺が、もうしねえって云ったから厭だ、と云っ
ても、アベくんに、忘れた、とか、聞こえない、とか云われると、それだけで効果がなく
なってしまう。劣情に絡められた劣等感。首輪付けられてるような気分だ。
だから常に俺は、何とかアベくんに死ぬ程恥ずかしいってどんな気持ちか、味合わせてや
ろうと想ってた。
キタ━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━!!!!!
アベくんは今、俺ん家だっつうのに、長い手足をソファいっぱいに投げ出してくつろいで
る。ビールを片っ端から開けて、見もしないテレビのチャンネルを変え続けていた。
俺はと云えばそのすぐ横で、アベくんの方ばっかり気にして、酒が進まないでいる。
やがて、アベくんが何の予告もなく、テレビの電源を切った。リモコンを、粗雑に床に投
げる。あれ、と想う間もなく、アベくんは俺に抱きついてきた。俺が口を付けていたビー
ルをさっと奪って床に置き、小さく名前を呼んで口付ける。
―――こう云うのは、好きだ。
好きなんだけど、でも、騙されちゃ駄目なんだよ。
アベくんは俺の頭に手を入れて、髪を掻き回す。タンクトップ一枚だった俺の、剥き出し
の肩をぎゅっと強く握って、引き寄せた。俺の息が上がる頃を見計らって、アベくんは口
を離す。それから俺の下唇を、軽く舐めた。
「抱かせろ、チバ。」
「……っ、」
何回云われても慣れないその言葉に、俺は酔わないように必死で下を向いた。アベくんの
想い通りにはならねえ。
アベくんは俺の返事を待つ間も、俯いた俺の耳を探って、軟骨を舐めたりする。背筋がぞ
くぞくと逆立つ感覚をやり過ごしながら、考えた。
腕力で勝とうとしても、多分無理だ。アベくんは結構非力だけど、俺もそんなに力がある
訳じゃねえ。第一、アベくんでかいし―――。
「……させろよ、」
「っあ、」
不意に耳の中に言葉を流し込まれて、びくついてしまった。
「なあ、」
どうしよう。
そうだ、アベくんがまともに動けねえようにすりゃいいんだ。何かで縛って、……そっか
らどうするかは後で考えるとして、謝るように仕向けて、反省させよう。
キタ――――――(゚∀゚)――――――!!!
ふりかけかけたよ!!
「わ……解ったからさ、ちょっと、放して。」
俺が苦しそうな振りで訴えると、アベくんは腕の力を緩める。俺はその間からすり抜けた。
「何処行く気だよ、」
「と、トイレ。」
俺がそう云うと、アベくんも呼び止めはしない。ふうん、とだけ相槌を打って、俺から眼
を離した。その隙に、俺はアベくんの後ろに回り込む。解らないように、静かに自分のベ
ルトを外して、ジーンズからさっと引き抜いた。よし。
俺は無言で、ソファに横座りになっているアベくんの背中に近付く。そして、自分の片膝
を立て、アベくんの背中に体重をかけてのしかかった。
「うわッ、」
アベくんが驚いて、顔だけこちらを振り向く。俺は必死でアベくんの上半身を押さえた。
「い、痛い、痛い、」
多分、俺の体重もそうだろうけど、強制的に前屈させられてるような体勢だから、無理に
動けない筈だ。俺は体重をかけたまま、強張るアベくんの両腕を取って、抜いておいたベ
ルトを、アベくんの手首の辺りに巻きつける。
「な、何すんだチバ、」
俺はアベくんが慌てるのを聞いて、嬉しくなる。まごつく手を何とか動かして、アベくん
の手首をベルトで後ろ手に拘束した。俺も、後ろ手じゃなかったけど、アベくんに一度、
手をこう云う風に縛られた事がある。
「おい、」
振り返るアベくんが上目遣いに、のしかかる俺を見た。凄え優越感に、俺はぶっ倒れそう
になる。
そんで、これ、ずっと云いたかったんだよ。
「ざ、ざまみろ。」
「…………、」
アベくんがかちんときたような顔をしたけど、反撃もこれじゃ出来ねえだろ。
「チバ、」
「なに、アベくん。」
「取り敢えずどいて。痛い。」
そうか。俺は背中に乗ったままだった。俺はアベくんを痛めつけたいんじゃない。俺は素
直にどいて、アベくんの前に回る。
アベくんは腕を二・三回動かした。ベルトがぎしぎしと革の擦れる音をさせる。そんな簡
単には外れないだろう。
俺はさっき、アベくんの手から奪われたビールを取って、飲んだ。アベくんは、そんな俺
を、じっと見詰める。……別に睨んでるって訳でもねえけど、ちょっと怖い。
「解け、これ。」
アベくんが顎で、自分の背中の方を指す。首の筋がはっきり晒されて、色っぽいな、とか
想ってしまった。違う違う。俺はアベくんに、謝ってもらいたいんだよ。この状況も、ち
ょっと楽しいし、俺は嬉しいけど、このままだと後でまた、酷い目に合いかねない。俺は
厭だ、と云う代わりに首を振った。アベくんは、溜息より少し大きく息をつく。
「何がしてえんだよ。」
またあの眼でじっとりと見られる。怖い。何か、俺ばっか悪いみてえじゃんか。
「あ、アベくんが解ってないんなら、解る迄解かないから。」
「はあ?」
アベくんは、俺が何かしたかよ、とか云いながら、ソファに座り直した。
「教えろって。」
「やだ。考えてよ。」
教えろったって、ヤる時にもうあんな事とかこんな事云わせるのやめてよね、って俺が云
わされるんだったら、意味がない。
アベくんがいつもよりずっと神妙な顔で、少し上体を前に倒している。
「心当たりねえの、」
「いや、……あり過ぎる気もする。」
解ってんじゃんか。
「……こないだの蛙の事?」
「は?」
何、蛙って。想い出すだけで厭な単語だけど。
「いや、……え、これじゃないの?」
「ちょ、……ちょっと待ってよ、……何それ、」
「ああ、ああ、ごめん、違うんだな、」
「どう云う事だよ!」
蛙を何したんだよ。これで想い出すって事は、絶対俺に関係ある事じゃんか。全身に怖気
が走って、俺は跳ねるように立ち上がった。
「いや……この間、ツアー中にさ、チバが寝てた時に……、ああ、やめとくわ。」
「な、何勝手に辞めてんだよ!」
「云わない方がお前の為だと想う。」
どう云う事だよ。何だよそれ。俺は怒りとも恐怖ともつかない感覚に襲われて、ばたばた
とアベくんの座ったソファの周りを一周してから、冷蔵庫にビールを取りに行った。
ぜってー何か、下らない悪戯されたんだ。折角アベくんを見下ろしたりして、いい気分に
浸ってたのに。何なんだよ。
冷蔵庫を開けたら、ビールはもう一本もない。この間いっぱい買ったと想ったのに。アベ
くんががばがば呑むからだ。くそっ。
俺は閉めた冷蔵庫の扉を蹴って、仕方ないから水でも飲もうと想って、グラスを手に取っ
た。
「ごめんってば。」
アベくんの声が近くでする。驚いて振り向くと、キッチンの入口あたりに立っていた。
「な……、」
何でうろうろ出来るんだよ、と想ったけど、よく考えたら、縛っているのは腕だけだ。足
は自由に動く。
アベくんは傍まで来て、シンクに向かったままの俺の肩に、顔を乗せる。
「なあ、拗ねるなよ。」
「あ、謝る意味も解ってねえのに、謝られても駄目なんだよッ、」
解かないからな、とだけ云って、アベくんを押し退けた。
「じゃあどうすりゃいいの。」
「だ……だから、考えてよ。」
アベくんは、難しい事云うなあ、とか云いながら首を傾げる。俺はその姿を一瞥して、リ
ビングに戻ろうとした。
「俺馬鹿だからわかんねえわ。」
不意に、俺を追って、アベくんが歩いた。意思を持つ足音。
「な、何だよ、」
すたすたと後ろにこられて、俺は反射的に逃げた。俺の家はそんなに広くない。すぐ壁に
ぶち当たる。
それなのにアベくんは追ってくるから、俺は壁に身体をつけて、背を晒すような形になっ
てしまった。まずい。背中で、アベくんの声がする。
「教えてよ。」
アベくんの固い胸が、背中に付くのが解った。
「でも、云いたくねえんなら仕方ねえよなあ。」
そう云うアベくんを押し返す為に、振り向こうとする。でも振り返るより先に、アベくん
の足が俺の太股の間に差し込まれた。更に肩を壁に押さえ付けられる。
「ざまみろ、だっけ。俺ああ云う事云われたの、初めてだな。」
俺は一瞬で追い詰められたと悟った。
アベくんの膝が、軽く俺の股間を突き上げる。
「あ……、」
「続きしようぜ、さっきの。」
アベくんは多分、そんなに怒ってんじゃないとは想う。でも、いつも俺を陥れる時の話し
方だった。アベくんの膝が、擦るように動く。
「ま……待ってよ。っ……、腕、縛ってるから、む、無理だろ、」
アベくんが、少し振り返るようにしていた俺の顔を覗き込んだ。逆光で見えにくいけど、
笑ってる。
「手、使わずにイかしてやるよ。」
俺は想わず、一瞬肩を震わせた。その瞬間に、太股の間にあったアベくんの足が、俺の左
足を払う。バランスを崩して後ろ向きに倒れ込んだ。手を付いて身体を起す前に、アベく
んの膝が、俺の両方の二の腕を押さえる。仰向けのまま、上から覗き込むように見下ろさ
れた。腕を何とか動かそうとするが、根っこに近い方を押さえ込まれてる。どうしようも
ない。
アベくんは膝で腕を押さえたまま、顔を俺の腰の方へ持っていく。口でタンクトップの裾
を噛んで、めくられた。
「ちょっ……待ってってば、」
これじゃ結局一緒じゃねえか。無意味に足をばたつかせる無様な俺の顔を一瞥して、にや
りと笑う。それだけだった。止めるつもりはないらしい。
アベくんがめくれた俺の腹を、軽く舐めた。
「うわっ、」
くすぐったくて身をよじると、押さえられている腕が痛む。この姿勢だと、足を動かして
も効果がない。身体がずれる分、腕が痛い。只、動かなければ痛みはなかった。
アベくんはいつも、俺をそう云う風に甘やかす。だから困るんだよ。
アベくんの舌が、臍の辺りをくすぐった。なるべく動かないように、それでも腹筋が痙攣
する様を見て、アベくんが薄く笑う。それから、少し首を伸ばして、俺のジーンズの釦に
歯を立てた。布を軽く浮かせて、それを器用に外す。
―――ちょっと待てよ。
ハァハァハァハァ(´Д`*)ハァハァ
「ま、マジですんの、このまま、」
「解る迄解いてくんないんだろ。仕方ねえじゃん。」
「な、」
何が仕方ねえんだよ。そう云う前にアベくんが、ジーンズの上から、俺のそれを軽く噛ん
だ。
「ひッ、」
温い息が布越しにかかって、声が上擦った。くそっ。
釦が外れればもう訳はない、と云う調子で、ジーンズのジッパーを探り始める。引手の部
分を歯で咥える、かちっと云う音がした。
アベくんの身体で光が遮られていても、ゆっくりとしたその影の動きが、俺の眼から飛び
込んで、羞恥を引き摺り出す。わざととしか想えない速度で、アベくんはそのまま、ジッ
パーを下げた。
「手がなくても出来るもんだな。」
普通はしようとしねえよ、そんな事。……だから俺は、アベくんには勝てねえのかな。
そんな事を考えていたら、下着の上から、アベくんが俺のそれを軽く噛んだ。
「っあ、」
形を暴くように歯を添わされる。いつもより少し、痛いような痒いような刺激に、俺は混
乱をきたした。
「や、やだって……、いッ、た……、あ、」
俺はぐるぐると頭を振って、痛くても腕を持ち上げようとする。アベくんはそれを叱咤す
るように、膝に体重を乗せた。膝でアベくんの頭を蹴ろうと想って、足を持ち上げたら、
変に下腹部に力が入る。むず痒い快感が背中に這い登ってきて、それを降ろさざるを得な
くなった。
―――俺の方が自由がねえじゃんか。
どうすりゃいいんだよ。
「じっとしてろよ。」
アベくんが、まるで俺の脳裏に浮かんだ嘆声に答える様に云う。
「悪いようにはしないから。」
また、俺のそれに口を這わした。形を表し始めた先端を見付けて、軽く吸う。
「いッ……、」
もう痛くはない。痛くはねえんだけど、認めるのが厭だ。いっつもそうなんだよ。
アベくんはあんまり声を出したりしない。少し呼吸を乱す程度で、最後迄俺を見てる。見
る余裕があるって事だ。
我を忘れて、どうしようもなく喘ぎまくる俺を見て、どう想ってんだろう。
俺には、アベくんを見たり、気遣ったりする余裕なんて何処にもない。いっつも俺はマグ
ロに近い状態だし、アベくんが気持ちよくなるとは到底考えられなかった。
「あッ、や、……やだってば、……でるって、」
「出しちまえよ、」
アベくんは笑ってそんな事を云って、俺を追い立てる。
俺は、アベくんがいい。アベくんでないと絶対に厭だ。アベくんが好きだから、こんなに
なるって云うのは、痛いくらい解ってる。それは、アベくんに伝わってんのかな。恥ずか
しくて、口が裂けても云えねえんだけど、解ってんのかな。
俺の口は、アベくんが好きだ、って云うのが限界だ。こんな安い言葉で伝わるようなもん
じゃない。アベくんが俺の脳味噌覗けばいいのに。アベくんが俺になったら、解るのに。
好きだ、すきだ、すきだ―――
「あああッ、」
下着のままで、俺は吐精してしまった。頭の中が、アベくんの事でいっぱいになったまま、
一瞬飛ぶ。
アベくんは、俺の腕からそっと膝を離した。身体をずらせて、俺に軽くキスをする。
アベくんが口を離すと、余り云う事を聞かないだるい腰を持ち上げて、俺は座った。
「……ごめん、腕、外す……。」
急にしおらしくなった俺を、アベくんが不思議そうに覗き込む。
「解る迄解かないんじゃなかったの。」
「……もういい……。」
莫迦らしくなってきた。
単純に俺は、自分ばっかり痴態を晒して、アベくんに全然伝わらないまま喘がされるの
が、厭だっただけだ。アベくんはセックスにそう云う事を、望んじゃいないのかも知れな
い。
俺はアベくんに後ろを向かせて、ベルトを解いた。アベくんの腕が細いからって、きつく
締め過ぎたかも知れない。アベくんの手首に、くっきりと赤い痕が付いていた。
「ごめん……俺が悪かった。」
アベくんの手首を軽くさすって、俺はうなだれる。
アベくんは背中ごしに、どうしたんだよ急に、と困ったような声を出した。
「何だったの、」
「ちょっとさ、……意地悪してみたかっただけだから、気にしないでよ。……ごめん。」
俺はアベくんの長い指をすっと手で辿ってから、離す。ゆっくりとアベくんが、座ったま
まの姿勢で振り返った。
「何で謝んの。」
「お……怒らしたかな、と……想って。」
「はは。こんな事で怒るかよ。」
アベくんは軽快に笑う。それから、自分の膝を軽くぽんぽん、と二回叩いた。
「おいで。」
「どっ……、」
何処にだよ。そう云いかけて、詰まった。暫く視線をうろうろさせていると、不意に背中
を引き寄せられる。
「可愛い奴。」
アベくんは短くそう云って、俺を抱きしめた。
「そ、そう云うの、やめてくんない?」
―――嬉しい。
「何で。」
「恥ずかしいから……、」
わかんねえ。もうむちゃくちゃだ。
「お前、恥ずかしいっつったら何でも済むと想ってないか?」
「だっ……、恥ずかしいんだからしょうがねえじゃんか!」
「隠される方はたまったもんじゃねえんだよ。」
アベくんは俺の頭を撫でる。俺はそうされるのが、特別好きだ。知ってんのかな。アベく
んは大体、俺が何か云う前に、勘か何かかも知れないけど、解ってたりする。
―――あれ。俺、アベくんが解ってないとか、想ってなかったか?
「お前が隠しゃ、それまでじゃん。お前、よくても悪くても、ずっと声出そうとしないか
らね。」
アベくんは俺を抱いたまま、右腕だけ、部屋の明かりに翳す。
「お前の方から何かしてくれんのは、寧ろ嬉しかったけど。」
でも縛られると困るな、と云って、俺の肩に手を戻した。
「こう云う事、出来ないから。」
アベくんはそのまま、俺の頭に、頬を埋める。
「隠すんだったら、俺が仕向けるしかないだろ。……まあ、多少、お前見てると苛めたく
なるってのもあるけど。」
最後のは余計なんだよ。そう云いかけた。でも、アベくんの言葉は、俺にとっては絶大
だった。
「好き。お前が。」
アベくんはずるい。全部アベくんの所為だ。
「俺から……何かすりゃいいの、」
そうすりゃ、もっと伝わるのかな。
「え?」
驚いたような顔。俺は少し身体を伸ばして、アベくんの耳元で囁いた。
「あ……アベくん、……セックスしよう、」
恥ずかしくてたまらなかった。
------------------------------------------------
「ちょっ……離してってば……、痛いから、」
あんまりほっとかれると、正気に戻って、余計恥ずかしい。それなのにアベくんは、もう
ちょっと、と云って、抱きついて離れなかった。
アベくんとセックスするようになってから、こんな風に裸のまま抱きしめられる事も結構
あったけど、……長い。もう2・3分俺は動いてない。
―――嬉しいんだけど。
時間がある分、俺の頭は回る。頭に熱は上ってるのに、必要以上に状況だけ、冷静に見ら
れるのが厭だ。ベッドの上で、じっと抱きしめられて、しかもアベくんは鳥目だから、電
気を消したがらない。アベくんのにおいがする。
「痛いって、」
痛くなんかないけど。あえて云うなら、アベくんの硬い肋骨が胸に当たってるのが苦しい。
「あんまり痛いとか離せとかどけとか云うなよ。」
漸くアベくんが口を開く。
「……解んないか。」
「何が、」
「お前にあんな事云われて普通にいられる訳ないだろ。」
そのまま、ベッドに押し倒された。アベくんが俺の首筋に顔をつける。
「簡単にお前喘がせんの、勿体無い。」
「な……何云ってんだよ、」
わかんねえ。……解る訳ないか。俺はアベくんじゃないから。それが悔しいような、逆に
嬉しくもあった。
「っ……く、」
アベくんがそのまま、首筋を削るように舌を這わせる。ざらついた感触。そこから順に肩
へ下って、そのラインをなだらかになぞった。肩口へ着くと、軽く全体を噛んでから、今
度は鎖骨を辿る。
「……あっ……あのさ、」
「何、」
アベくんが一瞬、口を離す。
「な……舐めて、楽しいの?」
丸みも柔らかさも全くない男の身体なのに。
「……気持ち良くない?」
「きっ……気持ちいいよ……、」
何云ってんだ俺。
「ならいいんだよ。」
アベくんはそう云って、また舌を出す。
「まっ……待ってよ、」
「何。」
今度は動きを止めずに、問い返してきた。胸の突起を、舌でいじられる。
「……っは、……あ、」
アベくんはもう片方も手で潰して弄びながら、云う。
「お前がよけりゃ、俺は満たされるの。」
不意に、舌を這わされていた方に、歯を立てられた。
「っあう……ッ、」
首を反らせる俺を見て、アベくんが、くすっ、と笑う。
「だからもっとイイ顔見せてよ。」
「……な……んでそんな、っ……、やらしい事云うんだよ……ッ、」
「やらしいかな。」
アベくんが、俺の肋骨を指でなぞった。そのまま腹に指を降ろしてくる。臍の周りを一周
して、下腹部へと伝う。
俺は肌が粟立つような感触に震えて、アベくんの首にしがみついた。
「……ちゃんと、触ってってば……っ、」
「はいはい。」
アベくんは軽く俺にキスをして、俺のモノを握り込んだ。
「ひっ……、」
根元に近い裏筋を、指の腹で擦る。
「っああッ、」
俺が急に引き寄せたから、アベくんはバランスを崩して俺の上に倒れる。それでも手を動
かし続けた。
やがてその指の動きが大きくなって、根元から先端迄、行き来する。
多分、イかそうとしてるんだろう。時間が経ったとは云え、俺はさっき一度吐精した。も
う一回イかされたら、まともに動けなくなる。
「ッ……あべく……、」
アベくんの薄い肩を掴んで訴えた。
……恥ずかしいけど、結局俺はアベくんに全部、云う事になる。
「う……後ろ、ッ……いじって、」
一瞬、アベくんの動きがぱたりと止まった。そんなに驚かなくてもいいじゃんか……。そ
う想った矢先、しがみついていた俺の首筋を、アベくんが噛む。
「たまんねえな……、」
そう云って、欲望に駆られた眼で笑った。
しがみついた俺の腕をゆっくり解かせて、アベくんは手を差し出す。
「舐めれるか、」
「ん……、」
俺は上体を持ち上げて座り、アベくんの手を取った。
俺はその手を、爪の先から順番に舐めていく。
「なるべく濡らして。」
そう低く、淫靡な声で云われて、俺は従った。
舌だけ出して舐めるより、口に含んだ方がよく唾液が絡む事に気付く迄、暫く時間がか
かった。
綺麗な指だなあ、と想っていると、アベくんが空いた方の手で、頭を撫でる。
涎が糸を引くようになった頃に、今迄じっとして動かなかった指が、俺の口の中で動い
た。舌を軽く押されて、咳込む。口の端が濡れた。
「っ……にすんだよ、」
「ごめん、ちょっと意地悪したかっただけ。」
さっきの俺の台詞じゃんか。少し睨むようにアベくんを見たけど、全く効果はないみたい
だ。
「おいで。」
アベくんが手招きした。俺は足をすって、座ったままアベくんに寄っていく。アベくんは
俺の身体を少し倒れさせ、両足をぐっと持ち上げた。そのまま、俺の足を肩に載せる。
少し間があって、後ろの穴に、濡れた指が触れた。
「っ……う、」
ゆっくりその指が、そこを押し広げながら内部に入り込んでくる。
「いッ……は、」
やっぱり、元々は排泄する器官だ。何度やっても慣れないし、異様な迄に異物感を訴え続
ける。
「ん……ふッ、」
「大丈夫か。まだ一本だけど。」
アベくんが空いた方の手で、俺の額に手を当てて、必要以上に汗をかいている俺を気遣
う。
「きっ……しないで、いッから、」
いつもはアベくんに任せたまま、すぐに意識をどっかにやるんだけど、ちゃんとそうしな
いで受け入れるとなると、こんなにしんどいもんなのか。
アベくんは、その癖きいきいぎゃあぎゃあ云いまくる俺を、なだめたりすかしたりしなが
ら、最後迄、気持ち良くしてくれる。
―――アベくんは、やさしい。
「一本入った。」
そう云いながら、中で指を動かして、解していく。
「……っあ、あ、」
色んなとこを擦りながら、アベくんの長い指は、こんな時にしか感じない部分を呼び起こ
した。
「はッ……う、」
いつもよりしっかりしている俺を認めて、アベくんが話し掛ける。
「お前はね、ここが好きなんだよ。」
そう云って、正確にその一点を擦った。
「うああッ、」
一度追い詰められていた股間の緊張が、また張り詰める。
「な。」
な、じゃねえよ、と想ったが、俺がその感覚に震えている間に、もう一本の指も侵入させ
られて、すぐに考えられなくなった。
「あう……ッ、」
「……ちゃんと息しろよ。」
俺は大きくがくがくと頷く。今、それ以外に表現する方法を知らない。アベくんも、汗を
かいてる。
アベくんは俺の『そこ』を擦りながら、まだ狭い中を拡げていった。肉が擦れるような鈍
い音が、俺の耳を犯す。女じゃねえから、濡れないのは仕方ないけど、虚しい。
「な……んかッ、……あっ、しゃべっ……てよ、」
「人が真剣にやってんのに。」
「んっ、んッ、」
「……それ、ねだってんの?」
「ち……、」
違うってば。ちょっと声が上擦っただけだよ。
「じゃあ、もう一個教えてやる。」
だから違うってば……。多分アベくんは解ってるだろうけど。
「お前はね、自分のイイとこ突かれると、中がひくつくんだよ。」
「っあ……、」
自分の知らない自分の事を、アベくんが知ってる。軽い劣等感を伴うけど、それでいいよ
うな気もする。飼い猫の気分だった。
だんだん中でアベくんの指が自由に動くようになる。暫くして、アベくんがゆっくり指を
抜いた。
「挿れてもいい、」
聞かれて、俺は止める。
「ちょ……っと、待って。」
「何で。」
アベくんが眉を顰める。俺は鈍い腰を落として、アベくんの肩から足を外して、座った。
「上、……の、乗ってもいい?」
俺が意識を保っていたのは、この為だ。最後迄、アベくんの顔が見ていたい。
「…………、」
アベくんが黙って俺の顔を凝視する。
「だ、駄目?」
「夢かな、」
チバがこんな事云う訳ないもん、とか云って、首を傾げた。俺だって一生やってやるもん
かと想ってたよ。
「……や、やっぱりやめとく、」
アベくんの反応を見ていると、余計恥ずかしくなってくる。俺はベッドに沈み込んで、シ
ーツに顔を押し付けた。アベくんが慌てて、俺の肩に手をかける。
「待って、ほんとにしてくれる?」
「い……厭ならこのまんまでいいよ、」
「全然厭じゃねえ、」
俺の前に身体を割り込ませるようにして、アベくんもベッドに転がった。
「お願い、やって。」
シーツに顔を伏せたままの俺の耳に、キスをする。俺は顔を少しずらせて、アベくんの表
情を伺った。そう、こう云う時は、あの黒い眼を細めて笑ってるんだ。
俺は照れ隠しで、もう一度顔を逸らす。
「や、やった事ないから、解んないよ。気持ちいいかどうか……、」
それから身体を起して、アベくんの両肩をベッドに押し付けた。
「じ、……じっとしててね、」
「うん。」
アベくんの身体の感触を確かめるように、少しぺたぺたと胸や腹の辺りを触ってみる。す
ると、少し腹筋が震えた。
「くすぐったい。」
「う、動かないでってば、」
「はいはい。ごめんごめん。」
アベくんが笑いを堪えるように、口を歪める。俺はアベくんの太股の辺りに乗りかかって、
それを勃たせる為に、手を伸ばした。ある程度迄形を成しているそれを、ゆっくりと擦り
上げる。自分でする時みたいな感じでいいのかな。
ふと、アベくんの方に視線をやると、眼が合った。じっと俺の方を見てる。
「いいよ、そんで。」
空気みたいな声で促されるまま、俺は手を動かす。
「もっと強くしても大丈夫だから、」
「う、動かないでってば!」
「動いてねえよ、」
アベくんが顔を手で押さえて、肩を揺らして笑った。
「アベくん、生意気。」
何で俺が拗ねなきゃなんねえんだ。不意にアベくんが、手を止めた俺の手首を引っ張る。
「どっちがだよ。早く来い。」
引っ張られるまま、上体を倒すと、アベくんが自分の頭を持ち上げて、触れるようにキス
をする。
「……わかった。」
俺は自分の後ろを確認しながら、アベくんのモノを宛がった。
「っつ……、」
自分の穴が引き攣る感じがする。アベくんの両脇に手をついて、徐々に腰を落としていっ
た。姿勢が低くなればなる程辛くなって、腕ががくがくと震える。
「いッ……、あ、」
一気に座り込む勇気はないし、何とか耐えるしかない。さっき中を慣らされたのに、自分
の体重でアベくんのそれが入り込む度に、割れそうなくらい痛い。ぴりっと、中で何かが
切れたような感覚が走って、腕で身体を支えられなくなる。
「っあ!」
急に腰が落ちて、一気に根元迄入った。
「いた……ッ、」
「っ……大丈夫か、」
アベくんの気遣う声で、全身から力が抜ける。
繋がったまま、アベくんの上にもたれかかった。
息が粗くなる。中で少し、アベくんのが脈打ってんのが解った。
上に乗ると、こんな奥迄入んのかよ……。
「どっ……したら、」
俺は混乱する。熱と、中にあるアベくんの存在感で、どうすればいいのか全く解らなく
なった。
「んう……、」
額から汗ばかり出る。自分から乗っといて、何つうざまだ。
「動いてみろよ、」
アベくんがすっと、俺の手を取った。
「ど……やっ……て、」
アベくんはその手を柔らかく握る。
「腰、……動くだろ。ゆっくりでいいから、動かしてみな。」
解らない。俺は首を振る。アベくんは俺の手を更に深く握った。そこから、少しの安心感
が伝う。
「大丈夫だから。」
そう云われて、俺は漸く、ずらすように身体を動かした。
「あぁっ……、」
瞬間、驚く程中の感触が、脳天に伝わる。
それが収まるまで少しかかって、俺はもう一度腰を動かしてみた。
「……んうッ、……は、」
引きずられるような痛みと、その間を縫うような、強い快感。
「あぁ……、あ、」
少しずつ腰を動かし始めた俺に、アベくんは、そうそう、と熱い息を吐きながら云う。
「お前の好きなように、……動けばいいから、」
「ひっ……あ、あッ、」
何度か腰をやると、深い所にある部分が擦れて、全身が反応した。
「あ……、や……ッ、うあ、」
「ん……、ここか?」
アベくんが、一度下から突き上げる。
「や……ああッ、だッ……、」
その一回だけで、腰が悲鳴を上げた。連動して、俺の中が収縮する。アベくんが、軽く喘
いだ。俺は何も解らない状態のまま、腰を上下させ始めた。
「あ、あッ、んっ、」
「チバ……、」
どうしても動きに合わせて喘いでしまう。……凄え莫迦になったみたいで、恥ずかしい。
そんな堂々巡りの頭の中を、省みる余裕もなかった。
アベくんが、俺の手を握っていない方の手を出す。限界に近い俺のモノに触った。
「……あッ……、」
想わず動きが止まる。今度は逆に、アベくんが下から突き上げるように腰をやった。
「あ……ッ、あああ、」
アベくんは、俺の『イイとこ』を知ってる。そこを深く、手で俺を弄りながら突いた。
「だ……めッ、あ、あ、」
簡単に俺は限界に達して、精をアベくんの腹の上に吐き出す。瞬間、後ろが収縮しきっ
て、アベくんもその中で吐精した。
「うぁ……ッ、」
短くアベくんが呻く。
全身から力が抜けて、俺はそのままアベくんの上に倒れ込んだ。そんな俺の背中を、ぽん
ぽんと叩きながら、チバ、と名前を呼んでくれる。右手は繋いだままだった。
「……凄えよかった……、」
よくできました、って、子供を褒める時みたいに、頭を撫でられる。
俺はこう云う時間が、一番好きだ。思う存分甘えても、アベくんは意地悪しないで応えて
くれる。
「もうしない……。」
「そんな事云うなよ。」
お前もよかったろ、と云いながら、身体を横にして、俺をベッドに降ろした。ゆっくりと
自身を抜き去る。
「んッ……、こ、腰が外れそうだから、やだ。もうやんない……。」
云って、気付く。結局堂々巡りだ。俺の額にキスをするアベくんは、またやって貰おうと
か、想ってるに違いない。
「まあ、チバの好きなようにすればいいよ。」
俺はアベくんの首にしがみついて、猫みたいに丸くなった。くそっ。結局アベくんには勝
てないんだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
終わりです
お待たせした割にこんなもんで申し訳ない……ふりかけご飯食ってください
(*´Д`*)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア
>>737 鬼GJ!!つーか鬼神!!!!
ヤバス…このアベくんヤバス……
シャレにならない程萌えました…マジヤバス…
おかーさん、大変です…!!ハァハァハァハァ(*´Д`*)ハァハァハァハァ
22の人…ありがとうございます。幸せです。チバ並に幸せです。
あ〜〜〜〜〜たまらん。萌え過ぎて長文になってしまいました。
ほんとヤバス…(*´Д`*)ハァハァ
GJすぎるよ!!!!!
も…萌え死にしました… (*´Д`)ハァハァ…
反撃どころか、むしろ積極的になっちゃったチバ…
(*´Д`)ハァハァ…ハァハァ…
もえつきそう
チバのアベを想う気持ちがあまりにも可愛すぎる!!!!!
22さんGJ!!!!!
おなかいっぱいです!GJ!!!
エロシーンもいいけど、チバの心理描写が神!!!!!
ああカワユス…(*´∀`)
アベ大好きなこういうチバはもう本当に大好き
そしてこのアベの余裕あるのにチバ大好きなエロさがまたいい
また読み返します(*´д`)ハァハァ
747 :
527:2006/02/11(土) 01:13:21 0
アホなチバを投下してもいいでしょうか。
本当にアホです。
正座して(ry
当方アホじゃないチバの方が馴染みないです
749 :
158:2006/02/11(土) 01:19:31 0
22さん乙です!!
チバ可愛いしアベかっこいいし、もう堪らんです(*´Д`)
>>747 527さん、お待ちしてました!!
750 :
527:2006/02/11(土) 01:22:54 0
鬼畜チバ受け仕様じゃないんですけどいいですか
なんでも来いです!
752 :
527:2006/02/11(土) 01:57:22 0
アホのりで一人称にしてみました・・・読みづらかったらすみません
――――――――
何やってんの、アベくん手際悪い〜
ウエノの笑い声が聞こえるが、こっちはぐうとしか声が出ない。
服脱がしずらいな
服?服をなんだって?アベくん何してんの?
じゃあ〜〜ん、これで切っちゃえ
冷たい何かがジーンズとTシャツの間、皮膚の上に触れた。硬いそれがくすぐったくて躯を捩る。
は〜い、チバ暴れたら危ないよ〜
くっそお、見えねえよ!
コウジくん、どっから出したの!四次元ポッケから?持ってンの?まじ笑える!
キュウの爆笑が、さらに楽しげに聞こえた。
ホテルの部屋のなか、毎度のことビールの空き缶が散乱している。
同室になったアベくんも、機嫌よくビールを飲んでいる。
あの音さあ、すっげ膨らんだよね
ライブビデオになるのが楽しみだな
酒も会話も途切れずに進む。ライブの興奮が冷めない夜の過ごし方としては上等だ。
隣の部屋のコウジくんとキュウも同じらしく、度々物音が聞こえてくる。クレームは全部マネージャーが引き受けてくれるだろう。
彼の額の広さがもっと広大になったとしても。
あーー最高だな
アベくんが一人用のソファの手を置く所に行儀悪く足をくみ上げる。脛毛濃いなあ。
あ、トイレ
尿意が催す、アルコールの副作用は依存だけじゃないのが厄介だ。
一々云うなよ、子供かよ
アベくんの苦笑が背中越しに聞こえ、子供ですみませんねーと言いながらトイレのドアを閉めた。
753 :
527:2006/02/11(土) 01:58:41 0
あーーー、排尿って快感の一種
独り言が漏れるもの、アルコールの作用。どうせ扉一枚隔ててたら聞こえやしない。
水を流し、トイレを出ようとした時、ふとそれが目に入った。
きっと気がついたのもアルコールのせいだったのだろう。
手を洗いながら、思いついた名案に我ながら神の啓示が下ったと確信した。
扉をそっと開け、アベくんがさっきの姿勢のままいるのを見て、忍び足で近寄る。
絨毯でよかった。靴を履いていても大して聞こえない。
手に持ったそれは、トイレの中で使用する部分だけ伸ばしておいた。
あと三歩。
企みに頬が緩む。笑いを抑えなきゃな。
アベくんは足を向けた方向とは違う、窓のほうをじいっとみたまま。
あと一歩。
アベくんの視界に入らないよう躯を縮めて。
いてええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
ぎゃっはっはっ!!!!!!やったやった!!
ガッツポーズした天井に近い手の中にはアベくんの脛毛がみっしりと張り付いたガムテープ。
ゴルゴ13作戦終了!
お前何してんだよ!お前馬鹿だろ!お前馬鹿すぎるだろ!!
脛毛の一部分無くなった足を抱えて、珍しいくらい大声でアベくんが喚く。
やっべえマジ楽しい笑いが止まんねえ。
笑い転げて床に倒れこんでも涙が出てくるくらい楽しい。
アルコールとはかくもいだいだ!
馬鹿いってんじゃねーよ!!あーもう何だよお前、どっから見つけ出したんだよ
ひゃっひゃっはっ、あのさ、トイレ、トイレに置いてあって、うひゃひゃは
あまりにもガムテープの黒さが目にはいり、もうお腹が破裂しそうだ。
アベくんがトイレに行ってしまったのも気が付かずガムテープを眺めて笑っていた。
754 :
527:2006/02/11(土) 01:59:16 0
あぐ!
最初に匂い、ガムテープ特有の鼻につくあれが口もとに来て、次に視界が粘着質なそれで閉ざされた。
んー!
おしおきだべー
何それタイムボカン!?アベくんアニメも見てたの!?へえ〜アベくんにも子供時代があったんだなーやっぱ縦になががったりしたの?と云いたかったが声がでないじゃんよ。くそー!
びりびりとガムテープを破く音がして次に右手をとられ右足首を持ち上げられ、一緒にくくられてしまった。
聞こえてくる鼻歌がアニメのテーマソングなのがまた受ける。
左手も右手も同じくガムテープの拘束。
これさ、このまま棒通して吊り上げたらチバを焼けるね
焼くなよ!レコードだって火が着くのにあんだけ時間かかるんだから、その倍のでかさの人間焼きずらいって!
つっこんでも声にはならねーよな。あーでも楽しいなにこれ。
動けない俺に満足したのかアベくんが満足そうに云った。
隣の酔っ払いも呼ばなきゃな
お邪魔しまーす
あ、キュウだ。
ここまだ酒残ってる?
あ、コウジくんだ。こいつ等たかりかよ!!まぁ前にコウジくんのビールやらツマミやら勝手に飲んで食ってしたけどさあ。
三人の足音が床に転がされた耳に近づいてくる。
ぎゃははははあああああ!!!!なにこれ!!!
ちょっ、チバ!?何お前豚の丸焼き仕様になってんの!?
あーはいはい、笑ってもらえてうれしいよ。ありがとね皆。
うぐうぐと言葉にならない声がさらに三人の笑いを誘う。
この人ね、酔っ払って人の脛毛ガムテープでむしったんだぜ
アベくんがほら、といってガムテープを二人に見せたらしい。真っ黒い!!と感心しているのが解る。だろ。そーだろ。
世界最古の法律って知ってる?
アベくんが笑う。頭いいとこひらけかしてんじゃねーよ!せめてもの抵抗に頭をぶんぶんと振ったが、否定と受け取られたらしい。
髪をぐいっと上に引き上げられ、アベくんが耳元で低く答えを云った。
目には目を、歯には歯を
何それ。
755 :
527:2006/02/11(土) 02:02:18 0
ひとまずここで一旦切ります。夜にまた投下させて下さい。
夜はこれからなのに〜w
また今夜楽しみに待ってます!
527さんの独特なノリ、好きだわ〜(*´∀`)
こっこれは俗に言う4Pの展開なのでわ…
チバっち楽しそうだね〜
4Pクル─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ ?!
みなさんあったかいお言葉有難うございます ごっつ嬉しいです……
>>527さん続き待ってます!わくわく
続きを正座して待ってます
いい子で待ってます
トイレ我慢して待ってます。
764 :
527:2006/02/11(土) 23:37:18 0
――――――――
じゃきじゃきじゃきじゃき
ウエノはチバのTシャツを切りながら、こみ上げる苦笑をこらえる。
傍で、チバが暴れないように抑えるアベは面白げな表情を浮かべている、多分キュウだけが多分この中で一番無邪気なのだろう。
ベットの上で転げ周り、しきりにはしゃぐ。
ガムテープで簡易拘束されたチバすらも、頬の盛り上がりを見れば状況を楽しんでいるようだ。
バカだねー、解ってないね。チバ、アベくん怒らせちゃったお前が悪いんだよ。
ぎゃははは!!コウジくん手慣れすぎ!!普段似たようなことしてんじゃねーの!?
キュウ、お前失礼だな、俺はロマンチストでフェミニストだ
聊か憮然と言い返す。そんな悪趣味じゃありませんよ。誰かさんとひとくくりにしないでくれよ。
抵抗する女の服切るより、我慢できないって自分から脱いでくれるのがいい
ほら。そう云い切るアベの方が悪趣味だ、ウエノはそう確信している。落ちるのをじっと見ながら待つなんてさ。
最後の僅かな布の面積を切断してしまうと、ウエノはアベを見ながら肩をすくめる。
はい、Tシャツが死亡しましたよ
アベは、不恰好に折れ曲がったチバをじっと見ている。僅かに粟立ったチバの皮膚をじっと見て、記憶にあるチバを確かめるように、
やっぱチバそんな毛ないねえ、上半身と云った。
多分チバの口が自由だったら、アベくんには誰も適わないとわめきだすだろう。
あーつまんねえ
わざとはっきり大声を出す。その意図などチバとキュウは解らないだろう。ウエノは、たまに場の空気を察して先手をうつ自分が損だと思う。余計な気苦労が増えるから。
少しの邪魔は必要だよね、アベくん。俺はどうやらチバの保護者らしいし。
転がったチバを見ながら、キュウは笑い転げる、アバラの数が数えられると。ついでとばかりに、チバの乳首上にガムテープを貼り付けたのは、日ごろチバに募った鬱憤の為だろう。キュウってば結構やるね。
あー笑ったらのど渇いた、アベくん、ビールもらっていい?
ウエノはしゃがんでいたせいで、強張った膝を伸ばしベットへ移動した。
取り合えず。多分。このくらい釘さしときゃ平気やろ。
プルトップを開け、一気に缶を煽る。転がっているチバは今頃皆への報復を考えている筈だろう。わけのわからない作戦だとかなんとか。
まあ、たかがしれた子供の悪戯の範疇で。破壊力は大人でもね。
アベくんもチバのこと子供だと思ってんのかねぇ。
俺とキュウ、呼んだ自体考えてみりゃ良心によるセーブってこと?この人はつかめんわ、本当に。
それでも三人の会話はすすむ。大人だから。
765 :
527:2006/02/11(土) 23:41:47 0
しばらくすると不自由な体勢で拘束された物体が暴れだした。じっとしている事にも飽きたのだろう。一時は宇宙と名のつく思考内部を彷徨っても所詮チバのこと、ほって置かれて面白くなかったに違いない。
あ、豚の丸焼きが暴れだした
あ、まだ起きてた?
あ、忘れてた
思わず三人の口から出た言葉が見事なリレーを行い、さらにチバを怒らせたらしい。
チバ、そっちテーブル、あ
キュウの親切心も空しく、ぎこちないながらも巧みに移動したチバの頭が、勢いよくテーブルの角に当たってしまった。
ン゙ーーー!!
すっげえだみ声、近所のボス猫みたい
苦笑するウエノはベットをおり、転がって唸っているチバの頭部をさすってやる。
あ〜あ、こぶ出来ちゃってる
マジ?可哀想じゃね?氷貰って来るよ
基本的に性根は優しいキュウが慌てて部屋を出て行く。
ウエノはチバの薄い背中を膝に乗せ、よしよしともう大丈夫だからねと心で呟く。おもちゃにしちゃってごめんね、と。
766 :
527:2006/02/11(土) 23:42:29 0
ああ、そうだチバ
同じく傍に来て様子を見ていたアベが、長い手をチバに伸ばす。
てっきりウエノはチバの顔に貼り付けられたガムテープを剥がすのだと思い、自分の膝を立てて支えたチバを少し起き上がらせた。
云ったろ、さっき
ビッっと粘着質なそれが、勢い良く、けれど無理やり皮膚を上に攫う様に剥がされる。
んうううぅーーーーーーーー!!!
目には目を、歯には歯をってね
剥がされたのは、チバの胸元に張り付いてたガムテープ。
ウエノは唖然となすすべもなく見ていた。膝の上、チバの脂肪の薄い腹の皮膚がヒクヒクと波打つのを。
あ、血がでちゃった
チバの乳首と乳輪の一部の皮膚が剥がれて、赤い血を滲ませている。
悪趣味だ、ウエノはそう確信してた。落ちるのをじっと見ながら待つなんて、それは罠だと。
ウエノ、これ、消毒したほうがいいよね?
そう云って手を床につき首をかしげ、伸ばした舌をチバの胸元に近づけて行くアベは。
ウエノは知らずに、生唾をのんだ。自分の中で震えるチバの赤く腫れ上がったそれから目が離せない。
アベを止められない、もっと鳴くチバを見てみたい。そう思っている自分がいる。
早く、キュウが帰ってくればいいのに。
767 :
527:2006/02/11(土) 23:44:51 0
終わりです、すみませんでした。
前スレ22の人さんの書かれた、悪戯チバに勝手に触発されてしまい生まれました・・・。
事後承諾と言うか本当にすみませんでした。
も、萌えました。
神。
あたっす!!
ここからが本番じゃありませんか!! orz
770 :
527:2006/02/12(日) 00:14:38 0
4Pどころか、エロですらありませんでした。
どう見ても不発寸止めです。誤字脱字ゴルゴ31だし本当にありがとうございました。
乙です。
527さんの文体、凄く好きです。また書いて欲しい
こっここで終わるなんて
サビ寸前で中断かけられたライブ見てるような気分すよ…!!
>>527さん 触発だなんてとんでもねーです……
あの、よかったら続き的なものを書いて下さいませんか……
チバの丸焼きを調理するとこが読みたいです
忙しすぎてこんな時間にスレを覗くしかできない毎日ですが
疲れも吹っ飛ぶ神様方が続々と光臨を…!!
>>22の人さん
ホントに22さんのお話好きですー!!
至るところで萌えつきました…ハァハァハァハァ
なんでかわかんないんですが、俺はアベ君がいいってとこで
涙ぐんでしまいました。チバのアベへの気持ちがいじらしくて…(つ∇`)
あと蛙のとこの会話がすごい好きです〜
また何か書いてください
>>527さん
つ、続きが読みたくてもんどり打ちました…
アベさんの消毒見たいっす…
キュウちゃん足止めかけときますから!
>>22の人さんのチバに精神的揺さ振りをかけて
泣かせてアベに慰めさせたいドSな自分がいます
469さん見っけ〜(*´∀`)
お仕事大変そうですね…
頑張って!
エロ肩チバ、気長に待ってます〜。
22さんのアベの、
「好き、お前が。」
って台詞がたまんなく好きだ…(*´Д`)ハァハァ
778 :
527:2006/02/13(月) 00:21:14 0
勢いだけのSSに、勿体無いお言葉有り難うございました。
何故か続きを思い浮かべたら鰓さんが総攻になってしまい
うまく話を納める自信が無いのでこのまま終わりってことで・・・本当にごめんなさいすみませんでした
>>前スレ469さん
キュウの足止め方法が見つかりません・・・orz
鰓総攻…
(*´Д`)
>>778 キュウも参加すればいいと思います…(*´Д`)
すいません、お聞きしたいんですが、
こういう話は書かないで欲しい、読みたくない、というのはございますか?
チバがいればなんでもウマーです
>>782 強いて言えば、あまりにもチバが乙女なのはイヤかな…
可愛いをはるかに通り越して乙女なやつwwww
このラストヘブンが出来るまでの2年の月日が
私をなんでも美味しくいただける身体にしました。
投下お待ちしておりますよ
>>782
>>783-785 レスありがとうございます。
では、書き上がったら投下させていただきます。
因みに、158の中の人ですけど。
ハァハァPC前の椅子に正座しながら待ってます
わぁい楽しみ!
人死にさえなければ何でも!
リアルを待ち続けるあまり守備範囲が膨大にでかくなりました。
ファインプレーまでしてしまいそうな勢いです。
>>158さん待ってます!
469さんお疲れ様です。お仕事頑張って下さい 続き待っております
158さんのお話好きなんです〜会話が、風景と一緒に流れていって凄い気持ちいい
楽しみにしてますね!
>>775 自分で自分を揺さぶってめそめそしてるやつならありますが……
何分長いし暗いしでお蔵入り状態なんですけども
それとも何か別な方法で苛めてみましょうか……
>>777 有難うございます 書いてよかった!
>>790 ほんとに暗いんですよ前半が……梅雨どころか雨季で
しかも多分長いので5日くらいに分けなきゃいかんような代物なんですが
そんな価値もないかと……それでもよければ投下しますが……
>>791 お願いします
もうご飯炊けてるんです
今すぐにでもお願いします
正座どころか土下座で待ってます
解散云々にちょっっとだけ触れているので、そう云うの一切駄目だ、と云う方は
読まずにスルーしてやって下さい……
------------------------------
何も見付ける気なんかなかった。
夕暮れの繁華街を、何処へ行くでもなく歩いてる。
煙草の煙と同化するくらい白い自分の息を感じながら、何も考えないようにしてた。
こう云う時は、雑踏が逆にいい事もある。
家を出る前は、何処へ行こうとか、考えていた気もする。けどもう忘れた。
人でごった返す中を、夕闇の迫る空とか、明滅するイルミネーションとか、きらびやかな
ショーウインドウなんかを見て、肺の奥迄煙を吸い込む。
正確に云うと、何も考えたくなかった。
誰かと眼が合うのは厭だ。ぼんやりさせていたつもりの意識が、戻るから。
みんな違う方を向いて、違う方向へ行こうとする。俺とは関係ない人。
それでもたまに偶然、眼が合う時があるんだよ。
今の会社員、俺を見た。
そう云うのは厭だ。俯く。俺はそんなに、いけない人に映るのか。
頭がくらくらする迄、深く煙を吸い込んで、煙草を投げ捨てる。寒い。
何も見付けたくなかった。このまま、夕暮れのままで、時間が止まってればいい。
とぼとぼと歩いていると、交差点に差し掛かる。赤信号。
立ち止まって、また新しく煙草に火をつけようとした。
横断歩道の向こう側に、不意に視線を通す。
―――その時俺は、見慣れた影を見付けてしまった。
雑踏の中、目立つ程背の高い人影。黒い髪。黒いコート。
アベくんだ。俺は反射的に、指に挟んでいた煙草を、冷たいアスファルトに落とす。
人ごみを掻き分けて、その姿を追おうとした。周りの舌打ちする音。
待って。待ってくれ。
ぶつかりながら、横断歩道のぎりぎり迄出る。
アベくんは、俺に背を向けて、だんだん雑踏に混ざっていく。待ってくれ。
横断歩道を渡ろうにも、何台もの車に遮られた。
駆け出そうとしていた足が、そう出来ないでまごつく。待ってくれ。
車に遮られる向こうで、アベくんはどんどん遠ざかっていった。
寒さと、よく解らない感覚で震えながら俺は、雑踏に溶けていくアベくんを見ているしかなかった。
俺の視力の限界を超えて、人込みに紛れて、ついに見えなくなる。
こっちに気付いてる、訳ないか。
追い駆けよう、と想って、長い信号を気にする。
ああ、早く変われ。追いつけなくなるから。
歩行者用の信号が、漸く青に変わった。走り出そうと、する。
が、俺は、信号と一瞬遅れて鳴り出した、盲人用の歩行サインで、我に返った。
独特の、音階すらもよく解らない、原始的な機械の音。
あ、俺、追い駆けてどうすんだ。追いついて、何を云うんだ。
あべくん、ぐうぜんだね。ひま?のまない?さいきんどうなの。おれ?おれはねえ。
横断歩道の初め、5メートルあたりで、立ち止まる。俺を避けるように、一斉に流れ出す人の波。
アベくんは、何処かに行こうとしてた。多分、俺の知らない所。
アベくんは、誰かに会うのかも知れない。多分、俺の知らない誰か。
アベくんは、違う方へ行こうとしてた。多分、俺の知らない方向。
見なきゃよかった。
もう俺には、声を掛ける資格なんかないだろうと想う。
二年前のあの秋の日から、冬が長くなった。
俺は、胸がどうしようもなく圧迫されて、吐気を催す。追い駆ける気は失せていた。
5メートルの距離を引き返す。今来た方向に戻った。アベくんに会わないように。
別に、バンド解散して、会う機会が減っただけで、顔を合わせれば、今でも話は出来た。
どうでもいいような話。解散する前もしてたような話。
あの映画がよかったとか、あのレコードがどうとかとか。
でも、何かが違うと想った。その話の何処かに、何かが足りない。俺にはその何かですら、
解らなくなってる。それが引っかかって、どんどんどんどん、アベくんに伝える言葉が減って
いった。それに、こっちから電話するような事もない。自分から、会おうとしない。
俺がそれをするする資格は、ないんだと想う。
それくらい、俺は酷い奴なんだよ。
それに、アベくんから電話を貰うような事もなかった。不精の所為にして、眼を逸らしたまま、
もう二年もこうしてる。
ああ、でも、もし街中で会ったら、どうすりゃよかったんだ。
もし、眼が合ってたら。向こうから、アベくんが歩いてきたとしたら。
やっぱり、俺は眼を逸らしただろう。許せなかった。自分が。
気付かない振りをして、アベくんに声を掛けられないように、早足で去っていかなきゃならない。
アベくんの視界から、消えなきゃ、俺が。
コートの襟に口元を埋めて、寒さで鼻の奥がつんとした。
俺は最低だ。わがままだ。酷い事ばっか、人には叩きつけるのに、まだずっと、あさましい
事を考えてる。
―――まだ、どうしようもないくらい、アベくんが、好きだ。
黙ったままとぼとぼ歩いて、少し人気のない所へ出る。
街灯もあまりなくて、出来るだけ寂しくて、寒い所を探した。
俺が、石だったらよかったのに。何も考える事も出来ずに、人や車や野良犬に蹴られて、
角がだんだん削れてって、しまいには二つに割れて、こなごなになって解らなくなるような。
空が紺色の闇に染まり切って、星は出ない。
舗装された道を歩いて、少し寂れた裏路地を抜けたら、公園があった。
余り人影もなく、二・三人の男達がたむろしてる。
野ざらしにされて、枯葉が少し落ちてるようなベンチ。そこに座り込む。
座った瞬間に、冷たい金属が俺の体温を奪った。
風が吹き抜けて、足の裏から這い上がってくるような冷たさ。
そう云うとこじゃないと、いる気になれなかった。温かい所は、駄目だ。
考える事を、やめようやめよう、と想っても、出来ない。
脳に、アベくんを見付けてから雑踏に消えるまでの映像が、焼きついていた。
8ミリフィルムの映画みたいに、カラカラと音を立てながら、頭の中を回る。
約20秒。再生が終ると、またフィルムを巻き戻して、再生を続ける。
巻き戻す間には、昔抱かれた時のアベくんの体温だとか、キスの感触を想い出した。
そして、アベくんが俺に云った事も全部。
何でこんなに覚えてんだろう。
その時の記憶だけ、温かかった。
何かもう、その記憶だけ瞼に焼いて、ずっと寒いところで生きていくのが俺には相応しいんじゃ
ねえかって、最近想う。
何度も再生と巻き戻しを繰り返した。身体が冷えていく。
俺が、悪いんだ。
俺がわがままだから。俺が最低だから。
あのまま、バンド続けて行くのはかなわない、と云うのは、全員感じていたとは想う。
でもどうであれ、解散しようと云ったのは、俺だ。
最後のあの秋の日、アベくんが、見た事もないような顔をしていたのを、はっきり覚えてる。
本当に、一度も見た事なかった。全身がばらばらになるかと想った。
そんな顔をさせたのも、俺の所為だ。
ぼんやりして、冷えていく身体をベンチに横たえて、公園でたむろする男達の、ガラの悪そうな声を聴く。
俺が、俺だって解らなくなるくらい、綺麗に消してくれないだろうか。
寒い。全身が暖を求めて震える。
意識が遠のいていっても、頭のフィルムは回り続けた。だんだん、夢を視るみたいに、頭の
焦点がそこに合っていく。
視界がぼやけて、俺が見てるのはその頭の中の映像だけ、と云う気になってきた。
このまま固まったら、石になれるかな。
何時間そうしてただろう。
記憶が何度も途切れて、たまに眼を開けたら、星の見えない空が、ぐったりと横たわっていた。
だんだん月が、真上に向かって上がってくる。満月。ああ、あと少しで、真上にくるな。
そう想って、何度目かの意識を手放した。
不意に、誰かに頬を叩かれている感触で、眼が開く。
「チバ、おい。チバ、」
誰だ。聴き慣れた声。いや、俺、この声以外知らないんじゃないかと想った。一瞬。
重い瞼を開ける。
「チバ、何してんだよ。」
眼の前に、何度も何度も再生したフィルムと同じ姿をした、アベくんがいた。
――――何でいんだよ。
意識を戻したら、アベくんは、少し怒気を含んだ調子で、また俺の名を呼んだ。
「チバ。お前、死にたいの。」
俺は黙っている。何で。逃げたのに。
「こんなとこで寝たら、死ぬぞ。本気で。」
温いアベくんの手が、俺の額に当てられる。それから、頬を包んで、首周りを滑る。
「いつからいたんだよ。冷え切ってんじゃん、」
俺は凍えて全く云う事を聞かなくなった手を緩慢に動かして、アベくんの手を下げさせる。
「……ほっといてよ、」
一瞬で俺の様子を察したアベくんは、俺のその反応にも、全く怒らなかった。
何で、人が心配してんのに最低だな、とは想ってくんないんだろう。
「ほっとけねえよ。」
取り敢えず、俺の意思だけを酌んで、手を引っ込める。
俺の頭は回らなかった。
「何でいんだよ……どっか行くとこあったんじゃねえの……、」
「何云ってんの、」
「今もこれからどっか行くんだろ。……俺にかまってんじゃねえよ、」
アベくんは顰め面をする。
「もう帰るとこだよ。煙草の自販機探してたら、お前がこんなとこで寝てただけだ。」
「じゃあとっととどっかで買って帰ればいいじゃんか。」
俺はもう、顔が合わせられなくて、軋む上半身を、横に曲げる。
駄目だ、こんな事したら、アベくんは聡いから。
「何があったんだよ。」
やっぱり、聞かれた。
「何もねえよ、」
本当に、ないと云えばないんだ。俺が悪いだけだから。
「ない訳ないだろ、」
そう食い下がる。アベくんがいるのが、どうしようもなくつらかった。
「アベくんがいるのが悪いんだよ、」
そう云ったのに、アベくんはじっと黙って、俺の次の言葉を待っている。
「ほ……ほんとは、俺の事嫌いなんだろ。だったら、ほっときゃいいだろ、」
俺の希望だった。かまわない。俺の事、嫌いになってくれよ、アベくん。
アベくんに、肩を持たれて、正面を向かされる。
虚ろな視界の中で、アベくんの精悍な顔が俺を覗き込んだ。
俺の一番、好きな人の顔。駄目だ。俺から離れろ。また、酷い事を云うから。
暫く、アベくんの手は、俺の肩をしっかりと抱きとめていた。
徐々に、そこからアベくんの体温が、コートごしに伝わってくる。
それですら、火を焚いたみたいに温かかった。
「俺の事じゃねえよ。チバの事を聞いてんだよ、」
アベくんが、俺の眼を見て、云う。
俺は何も云えないままで、アベくんの黒い眼を覗き返すだけだった。
俺の事?
「……、」
何か云おうとしても、言葉は無かったし、寒さで歯の根が合わない。
俺の事なんか、訊かないで欲しい。
知られたくなかった。俺が未だに、たまに顔を合わすアベくんが、誰かと話している時、ずっと
あさましい事考えてる事とか。
――俺のほうがアベくんの事、よくしってるんだからな。
あんまり、近付くなよ。俺の、アベくんに。
そう考えている自分に気付くと、心臓が割れるように痛んだ。
何でだよ。誰のだって。そんな訳はない。俺が勝手に好きなだけなんだ。莫迦じゃねえの。
ずっと、俺の横でギター弾きたいって云ってくれてた奴に、やめようなんて云った俺が。
最低だ、俺は。自分のしたい事ばっか云って、アベくんを傷付けて、まだ好きだなんて
想ってる俺が、悪いんだ。
アベくんは、もう、絶対俺が嫌いになってる。そうだよ。そうなんだよ。
俺がすきですきですきですきでたまんなくても、アベくんは俺の事嫌いな筈なんだよ。
これは、治らない病気だ。何を云っても、アベくんを傷付けると想う。だから、近くにいない方がいい。
「何か云えよ。最近お前、自分の事話さねえだろ、」
俺の事なんか、いいんだよ。
アベくんの手が、俺の顔を包み込んだ。
暖かい。泣きたくなる体温が、そこから全身へ伝わる。
何で、アベくんはこんな事が出来るんだ。アベくんは、どう云う風にできてんのかな。
すきだ。アベくん、好きだ。だから。
「……俺の事、嫌いって云えよ……。」
アベくんの体温で、気が付いたら涙が呼び覚まされてた。拭えないまま、アベくんの手を
伝っていく。
「俺の事なんか、いいんだよ……、」
嫌いだって、云ってくれよ。もう触るな。近付くな。大ッ嫌いだ。そう云ってくれよ。
ひどい俺を、まだアベくんに触れたくて、話したくてたまらない俺を、たたきのめしてくれよ。
それなのにアベくんは、俺の首に手を回して、抗う俺を無理矢理押さえて、キスをした。深く。
歯列をなぞって、唾液を絡ませて、咽喉の奥迄嘗め尽くすような。
昔、俺を抱いた時みたいな方法で。好きだ、と云ってくれた時と同じようなやり方で。
それから、俺の涙の跡を辿って、目尻に舌を這わせた。俺の口から、胸の苦しさで白い息が出る。
アベくんは口を離して、呼吸の荒い俺の眼を覗き込んでから、返した。
「嘘でも、そんな事絶対云わねえ。」
怒るでも、慰めるでもない顔をしてる。
何でだ。何でだよ。俺をばらばらにしてくれよ。
「チバが好きだよ。俺は。」
だからそんな事は云わない、とはっきり、耳に声が届く。
「い、云うなよ、」
「黙れ。」
きん、と夜闇に響く声で、遮られた。
「お前が厭がる事はしたくねえ。お前が俺にどっかいけってんなら、行くよ。」
でもな、と云って、アベくんは立つ。それから、着ているコートを脱ぎ始めた。
「俺の我が侭も三つだけ聞けよ。」
脱いだコートを手に持って、俺の頬にもう一度触れる。
「一つはさっきのキス。もう一つはこれ、」
そう云って、コートを差し出した。
「お前がここで何してんのかは知らないけど、病気んなったら、許さねえから、これ上から
かぶってろ。」
無理矢理俺にそれを受け取らせる。
「い、いらねえよ、アベくん風邪引くじゃんか、」
「我が侭だから聞けよ。」
ぴしゃりと云い放った。それでまた俺は黙ってしまう。
「最後、一個。俺お前が嫌いとか、そう云う事は一生云わねえから。それ、覚えとけ。」
その声は、怒っているのか、諭しているのか、全く解らない調子だった。
アベくんは俺の頭に、温かくて大きい手を置く。
「お前の用事が済んだら、さっさと帰って、暖かくして寝ろ。」
そう云うと、アベくんは踵を返して、また雑踏と夜の闇に紛れ込んで、消えた。
俺の頭のフィルムは、アベくんが俺の頬を叩いてからの様子を、また刻銘に記録している。
何も考えたくないのに、ぐるぐると、フィルムが回った。
風が吹き抜ける。
もう、いやだ。こんなんなら、ばらばらになった方がましだ。
何でアベくんは気付かないんだ。俺の病気に。傷付けたくない。傷付けたくない。
心なんか、無かった方がよかった。
冷え切った身体の中で、アベくんが触れた所にだけ、少しの熱が残ってる。
すきだ、アベくん。俺はまだずっと、アベくんがすきですきでたまんねえんだよ。
でも、それはもう云えない。
「いらねえよ……、」
そう云いながら俺は、アベくんの熱が急速に失われていくコートに顔を埋めた。
マルボロのにおい。アベくんの。
「いらねえよこんなの……、」
冬が長い。どうしようもない。
消えてなくなりたかった。
-----------------------------
すいません 暫くこんな調子なんですけど、続いてもいいですか……?
ごめんなさい不快だったらすいません ほんとに……
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
どうぞもっとハァハァ
続きは明日にでも、と想ったんですが、
もう1ブロックくらい落とした方がいいですか?
暇は暇です くそったれ学生身分なので春休みです
------------------------------------------
俺はアベくんの云った通り、風邪を引いた。
朦朧とする意識をさ迷っては、アベくんの夢ばかり見て、咳込む。頭が割れるように痛く
て、どうしようもなくて、あの日アベくんが俺に渡していったコートを、抱いて眠った。
アベくんのにおいが、いつ迄も残ってる。
風邪は3日程で、倦怠感を残して熱は下がった。
――コート、返さなきゃなあ。
俺は取り敢えず、寝ている間中引きずり回したのを悔やんで、コートをクリーニングに出
した。
クリーニング屋に取りに行ったら、アベくんのにおいは綺麗さっぱり消え去っていて、俺
は何てもんに縋ってたんだろ、と想う。
家に帰ってから、クリーニング屋の袋を抱えたまま、アベくんに会わなきゃなあ、と呟い
た。
電話をしなきゃならない。
アベくんに、電話を。
それだけで、手が震えた。
受話器を持ち上げて、押す事が出来なくても覚えてる番号を、頭の中で反芻する。
返すだけだ、これを。かえしたいからさあ、あえないかな。そう云うだけだよ。
何度も、受話器を上げたり下げたりするのを繰り返して、漸く番号を最後迄押し切った。
コール音。1回。……アベくん、コートかえすよ、だからあえないかなあ。2回目。アベ
くん、コートかえすよ、だから。3回目。アベくん、コートかえすよ。4回目。アベくん。
俺はそこで受話器を戻してしまった。何やってんだろう。
話すのが怖い?これを返したくない?会いたくない?
全部当て嵌まる。アベくんの顔を見たら、また何か云って仕舞いそうで、怖い。俺は居間
のテーブルに突っ伏して、眼を閉じた。
不意に、さっきまで俺がうろうろしてた場所で、電話が鳴る。
電話……取らなきゃなあ。
俺は重い身体を引きずって、受話器を上げる。
「はい、」
「あ、チバ?」
何で反射的に、アベくんがかけてきたんだと想わなかったのか。解らない。
「電話したろ、」
低い音で、アベくんが云う。
「出る前に切るなよ。」
アベくんはいつもの調子で、まるでこの間にあった事を忘れてしまったみたいだった。
「な……何で俺だって解るんだよ、」
「……いや、番号出るだろ、画面に。」
画面?ああ、電話機に付いてる窓か。
「そう……、」
すると、暫くアベくんは黙って、受話器からはこもったような、向こうの音だけが聞こえ
てくる。
ああ、アベくんはどんな風に立って喋ってんのかな。
左足に重心を置いて立つ、あの立ち方を、思い出す。
そこ迄考えた辺りで、アベくんは沈黙を破った。
「お前、風邪引いたろ。」
「え、」
「解んねえと想うか、」
何でアベくんは気付くんだ。声はまだ痛むけど、もう解らないくらいだと俺は想ってたの
に。
「で、どうした。」
アベくんの声に、少し怒気が混じってる。俺の苦手な話し方だった。
「あのさ……こ、コート……、」
「ああ、あれ。」
「……返すから、」
俺は食卓の方にあるクリーニング屋の袋を見詰める。
「あ、会えねえかな。」
云った瞬間、胸がわっと痛んだ。
昔は、云わなくてよかった台詞。今は、云わないでおこうと想ってた台詞。
「いいよ。今晩、暇?」
俺は心臓の辺りを押さえて、ひま、とだけ返す。
「じゃあ、8時くらいでいいか、」
俺は云われる前に、何とか遮ろうとした。
「あッ、アベくん家のとこの駅で待ってて……、俺、行くから、」
そこで返して、ごめん、って謝って、さっさと帰る……。
「駄目だ。」
「なん、で、」
「風邪引かしたくない。暖かいとこで話そう。」
どうしてだよ。それはやだって。
電話だから、言葉の継げない俺は、黙ってアベくんの指定する場所を聞いているしかな
かった。
「暖かい格好して来い。いいな。」
「……、」
「返事。」
「……わ、解ったよ……。」
それから暫く、またアベくんは考えるような間を置いてから、云う。
「遅れんなよ。」
そう云って、アベくんの電話は切れた。
何で、いつの間に、アベくんと話すのに、こんな怯えなきゃなんなくなったんだろう。
俺は時計の針がのろのろ進むのを見ながら、夜を迎える。
―――――――――
予定より少し早目に着いたつもりが、アベくんは先に着いていたらしく、俺を待ってい
た。
アベくんが指定したのは、少しこじんまりとしたレストランだ。店の名前を見る前に、
アベくんが俺を見付ける。
「時間前じゃん。」
俺が傍に来るなりアベくんはそう云って笑った。この間とは別の、黒のトレンチみたい
なコートを着てる。
「暖かい格好してきたか。」
そう、母親みたいな事を云った。アベくんは、優しい。
「……してきた。」
クリーニング屋の袋の持ち手をぎゅっと握って、そう答える。
するとアベくんはにっこりと柔らかい感じで笑って、俺の頭に、ぽん、と手を置いた。
「ここ、美味いんだよ。」
そう云って、俺を店の中に引っ張っていく。
正直云って食う気はしなかったが、断る気にもなれなかった。
落ち着いた内装の静かな店で、温かい色の照明と清潔な感じが眼に映る。
一番奥のテーブルに座ると、適当にアベくんの言に従って、俺はメニューを決めた。アベ
くんが店員を呼んで、注文を云う。行儀のいい仕草で店員が下がった。
俺はその景色の流れをぼんやり見ながら、開いた席に置いたコートの袋を気にする。まる
でいつ爆発するか解らない爆弾みたいに想えた。
アベくんがゆっくりと煙草に火をつけた辺りで、俺は云わなきゃと想う。早くこれを返し
て、また酷い事を云わないうちに。
「こ、コート、」
そう切り出した俺の眼を、アベくんはゆっくり煙を吐きながら見た。ずっと変わらない、
黒いあの眼で。
「後でいいよ。」
その一言で、俺は下がらざるを得なくなる。アベくんはどうやら、俺をとっとと帰す気は
ないらしかった。全部見透かされてるような気になって、取り敢えず俺は落ち着こうとす
る。ポケットの煙草を取って、火をつけた。
アベくんは俺をじっと見たまま、話す。
「俺、電話でどうしようっつったよ。」
「え、」
会おうって……それから、
「会って、話そうっつったんだよ。」
俺はコートの袋を見詰めて、俯く。
「何が厭なのか知らねえけど、そう簡単には帰さねえから。」
俺は漸く、そこで解った。アベくんはずっと怒ってんだ。俺にコートを渡した時から、ず
っと。
「風邪、一応はもういいんだな。」
今度は、アベくんは何処か違う方向を向いて話す。
「……何で引いたって解ったんだよ、」
「あはは。」
アベくんは俺の意味のない抵抗を、場違いな笑い声で一蹴した。
「何年お前の声聴いてると想ってんだよ。」
その言葉で、俺はまた胸の辺りが痛む。何年も、俺はアベくんと話した。こんなに言葉を
探した事だって、ない。なのに、アベくんは平気なんだろうか。
「もういいのかって。」
「……うん。」
俺は、そう答える事しか出来ない。アベくんと何話すかなんて、考えてねえ。
「大事にしろよ。」
「うん……、咽喉、壊すから、」
「そうじゃねえ。」
ぴしゃりと叩き付けるような云い方をされた所で、店員が皿を持ってやってくる。そこで
一応、アベくんは言葉を切った。また静かにメニューを置いて店員は、下がる。
確かに、俺の目の前に置かれたパスタ皿からは、香ばしい匂いがしたが、食欲は全く湧か
なかった。
アベくんの方は長い指でフォークを取って、くるくると皿の上で回すと、綺麗にスプーン
を使って、口に運ぶ。それから小さく、うん美味い、と呟いた。
俺はまるで食べ方を忘れた人みたいに、皿の上でフォークを掻き回す。胸が痛くて食えね
えよ。
不意に、アベくんがこっちを見て訊いた。
「口に合わない?」
俺は一口も食べてないのを誤魔化す。
「あっ……いや、……うめえよ。」
そう云ってぎこちなく、フォークを口に突っ込んだ。久しぶりに口の中に物が入って、少
し咽喉が軋む。そう云えば最近殆ど食ってなかった。食べなきゃ。アベくんに心配された
ら困る。
俺はかちゃかちゃと食器とフォークをかちあわせながら、パスタを胃に詰めていった。
「お前さ、」
アベくんが俺を覗き込む。全部見透かされそうで、怖い。
「俺の云う事は、ちゃんと聞くよな、いつも。」
どう云う意味だ。俺は恐る恐るアベくんの眼を見詰め返す。
「来いっつったら来るし、暖かい格好しろっつったらしてくるし、遅れんなっつったら
遅れねえし、後でいいっつったら返すのやめただろ。」
云われてみればそうだ。でも、俺はアベくんの云う事を聞きたいんだと想う。……そりゃ
そうだよ。俺はアベくんが、
「嫌われてんのかと想った。」
心臓が痛んだ。
俺は俯いて無理矢理フォークを口に運ぶ。あああ。嫌いなんじゃねえよ。嫌いなんじゃね
えんだよ。アベくんが悪いんじゃねえんだよ。
黙ったままでいる俺をよそに、アベくんは話し続けた。
「お前、俺の云う事、聞くよな。」
確認するように、アベくんはもう一度訊く。俺は誰にも解らないように、心の中で頷いた。
それから、アベくんは、声を低くする。周りには聞こえないようなトーンで、云った。
「俺の事好きって云え。」
俺はフォークを取り落とした。思考が止まる。
それでもアベくんは、何でもない風に笑った。
「ごめん、冗談だよ。」
俺は何も返せない。
アベくんはワインを注文して、ついでにどうだと聞かれたが、俺は首を振った。
気が狂うかと想った。
----------------------------------------
飯を食い終わると、アベくんはとっとと代金を払って、店を出てしまう。
俺はまだコートの袋を持ったままだから、追い掛けるしかない。
アベくんは足が長いから、必然、俺より歩くのが速くなる。雑踏の中をすたすたと抜けて
いくアベくんを、俺は必死で追った。さっき無理矢理詰め込んだパスタの所為で、胃が渦
を巻いているような感じがする。アベくんは多分、普通に歩いてるんだろうが、だんだ
ん、1メートル、2メートルと距離が開いていく。おまけに俺は何故か、何もない所でつ
まずいたり、やたら人にぶつかったりで、息は切れるのに、アベくんに追いつけなかっ
た。
待ってよ、と云いかけて、この間の事が頭をよぎる。俺は届かない手を引っ込めて、コー
トの入った袋を握り締めた。
5分くらい歩いただろうか。ちょうど交差点の信号に引っ掛かって、そこで止まったアベ
くんに、漸く追い付く。俺は胃の不快感を抑えながら、無表情のアベくんにやっと問い掛
けた。
「ど、何処行くんだよ、」
アベくんは息を切らす俺を見て、もう着くよ、と云った。
「ホテル、取ってあるから。」
「えッ、」
どう云う事なんだ。俺はこのまま一晩、アベくんと一緒にいる自信なんてない。
「呑むのは、身体に障るんだろ。ちゃんと静かなとこで話したい。」
「……い、いいよ、これ、もう返す、」
俺がコートの袋を差し出すと、アベくんは手をポケットに突っ込んで、受け取らないと云
うサインを出した。
「話そうっつってんだよ。来い。」
アベくんの口調は決して乱暴じゃない。それでも俺は怖くて仕方なかった。胃がぐるぐる
とひっくり返る。
「な、何もねえってば……、」
「俺はお前といたいんだよ。」
そこで信号が青になった。俺とアベくんを残して、人が流れ出す。
「や、やだって、ここでいい、」
それから、音声の信号が流れた。あの、機械の音。
「来い。足切るぞ。」
アベくんはそう云って、横断歩道を渡り始めた。遠くなる。アベくん、アベくん。胸が痛
い。胃の中身が渦を巻く。信号がやがて点滅を始めた。
俺は、アベくんを追って、駆け足で信号を渡っていく。無言で。待って、とは云えない。
-----------------------------------
今日はここ迄にします あんまり一気に落とすと迷惑になる予感なので
また明日の深夜にでも続き落とします 長くてすいません……
817 :
527:2006/02/13(月) 23:19:10 0
萌えすぎて喘息でそうですハァハァ
切なすぎて、すでに泣いた件
。・゚・(ノд`)・゚・。
あと1ブロック落として下さい
寝かさないぞゴルァwww
もう明日全部落としてもらいたいくらいに続きが気になってます
むしろ今全部落として貰いたい私ガイル
>「お前が厭がる事はしたくねえ。お前が俺にどっかいけってんなら、行くよ。」
これぞアベ!! THE アベ!!
全部落として下さい。
全然邪魔じゃありません。
明日にされる方が住人には辛いと思われ
22さんを今夜帰したくない件について
>>823 ハゲドゥ 最後まで下さいおながいします orz
えっ……邪魔じゃないですか?……じゃあもいっこ……
ちょっとハイチャイナしてたりするので、そう云う表現苦手な方はスルーしてください
--------------------------------------------------
そのホテルは、その辺のビジネスマンが泊まるような、安くも高くもないホテルで、うる
さくはないし、空調は利いていて、話すにはいい場所なんだと想う。
俺はずっと無言のまま、アベくんの2・3歩後を付いて、部屋に入った。ベッドが一個と、
電話台兼書斎机みたいなのが置いてあって、そこに固い椅子がぽんと置いてある。
狭いような広いような、でも一人で泊まるには十分な広さだ。それが俺にしては逆に辛く
て、先に入って固い椅子に座ったアベくんから上手く距離が取れずに、部屋の壁に背中を
つく。
胃の中が歪むように気持ち悪くて、それが一体何の所為かも考えられなかった。
「座れよ。」
俺はそう云われて、取り敢えずコートの袋を床に下ろす。アベくんは書斎机の灰皿を引き
寄せて、煙草にゆっくり火をつけた。
俺が座ろうとしないのを一瞥したが、気にせず話し始める。
「……先ず最近の事から聞いてくぞ。」
俺は胸の悪いのを隠すようにして、息を詰めてアベくんの言葉を受けた。
「あそこで何してたんだ、」
こないだの事だ。俺は壁に重くもたれる。
「……何もしてない。」
アベくんは鼻先でくすっと笑って、じゃあ何で、と柔らかく続けた。怒ってる。
「寒いのに?あんながたがた震えて、何もしてないって、どう云う事だよ。」
俺は俯いて、首を振った。アベくんはゆっくりと、それでもたたみかけるように続ける。
「俺に嫌いって云えって云って、ぼろぼろ涙零して、揚句に風邪迄引いて、咽喉潰して。」
昔からずっとそうだ。アベくんはこうなると、止まらないんだよ。
「俺に解るように、教えて。」
多分、声を抑える所為だろう。アベくんはひどく穏やかに見えたけど、凄い怒ってる。
俺は何とか、当たり障りのない言葉を探した。
「……あ、あれはさあ、」
胸を押さえながらアベくんを見る。無表情と云うより、寧ろ微笑むようなアベくんの顔に、
俺は呼吸を喰われていった。吐きそうだ。
「何。」
「は、……反省、みたいな、もんでさ、」
「反省?」
一体何のだよ、と訊ねるニュアンスが、アベくんの語調から滑り込んでくる。云えない。
きもちわるい。
「な、……ッ、って……云うか、」
「何怯えてんだよ。怒らないから、云えよ。」
アベくんは灰皿に煙草を押し付けて、消した。すっと立って、俺の前迄歩く。
やだよ。云いたくねえよ。
胃の中身が、咽喉まで上がってくるのを感じた。
「お……れが、」
アベくんが、俺に触れようとした。その瞬間。
「っ……ぐッ、」
咽喉まで来ていたそれが、多大な不快感を伴って、背中から頭へ突き抜けるような感じが
した。俺は転ぶような勢いで、入り口の脇にある洗面所迄走る。
「チバ、」
アベくんの呼ぶ声が、遠くに聞こえた。あああ、アベくん、やだよ。助けて。来ないでよ。
洗面台に着く寸前に、咽喉が震えて、胃の中身が口の端から落ちる。必死で洗面台に縋り
付く頃には、嘔吐を止める事は出来なくなってた。
「あ、……がッ、」
饐えた臭いが鼻に入って、呼吸が止まる。ある程度まで吐いても、不快感に上体を起して
いられなかった。アベくんが傍迄来て、俺の肩を支える。ふらふらして、アベくんの手か
ら逃れるように蹲った。何か、自分の周りだけ重力が増したような気がする。気持ち悪い。
「大丈夫か、……何で云わねえんだよッ、」
俺の背をアベくんがさする。駄目だって。汚れるってば。
漸く呼吸する術を想い出した辺りで、また吐気が襲う。俺はまた必死で洗面台を掴んで立っ
て、残りをそこに吐いた。
「チバ、」
アベくんの、呼ぶ声。何も答えられずに、床に転がると、アベくんがそこらにあったタオル
で、俺の口の周りを拭う。それから、洗面台の蛇口が捻られて、水が流れる音がした。
身体を折って呼吸を探す俺の背を、またアベくんがさする。
「ご……め、」
「いいから。全部吐いたか、」
俺は取り敢えず頷いて、気分が収まるのを待った。嫌だ。何でこんなとこ、アベくんに見せ
なきゃなんねえんだよ……。
アベくんは、俺の呼吸が取り敢えず整う迄傍にいて、それからタオルを水で濡らして、俺に
持たせた。
「起きれたら、口濯げ。」
俺は眼で追う事も出来なかったが、コップが洗面台の横に置かれる音がする。
情けないのと、何かよく解らない胸の痛みから出る涙を堪えている俺の横で、アベくんは俺
が零した物を、始末していった。
俺が漸く身を起して口を濯ぐと、いつの間にか始末をしてくれたアベくんが傍に立っていて、
俺にミネラルウォーターの入ったペットボトルを、蓋を開けて差し出す。
「ごめん……、」
それしか言葉が出ずに、受け取ったそれを一気に、半分くらい飲んだ。
「もうちょっと気に障らねえもんにすりゃ良かったな。ごめん。」
俺は首を振る。
「お、俺が悪いんだよ……な、何か、食えるとか食えねえとか、全然解んなかった……、」
「大丈夫か、もう。」
俺はアベくんに軽く支えられながら、洗面所の辺りを出た。
たまらない。こうして、アベくんにまた迷惑かけて、何でかアベくんの行為を裏目に出させ
て。それでも、アベくんは優しい。
「なんでさ……そんな風にすんの、」
部屋に一つのベッドの前に来た辺りで、俺はさっき迄堪えてた涙が、眼に溜まるのを感じた。
「チバ、」
覗き込む、アベくんの顔。俺はそれを見返す力もない。
「こんな俺見てさ……アベくん、なんもかんじないの、」
「え、」
アベくんが肩に触れる。体温。今の俺に無いもの。
「……酷い事ばっか云っといてさ、自分勝手でさ、……またアベくんの手、煩わしてさ、」
涙で、アベくんの顔がどんどん読めなくなっていく。
「……俺なんか、いるだけで、……アベくん、不幸んなるよ……、」
アベくんは黙ったまま、俺の肩をぎゅっと強く握った。何で。
「はなしてよ、」
ここにコートの袋置いて帰ろう。そう想った時だった。
「いい加減にしろ。」
アベくんの低い声がしたかと想うと、不意に視界が揺らぐ。背中が何か柔らかい物に当たって、
跳ねる感触があった。脳が揺れる。ベッドに叩きつけられたのかと解った頃には、アベくんは
俺の上に跨って、俺が着たままでいたコートを、剥がすように乱暴に脱がせていた。
「離さねえ。お前が何云ってんのか聞こえねえんだよ、」
「あ、アベくん、」
俺が抗うと、アベくんの右の拳が、鳩尾に入った。さっき全部吐いて中身は何もなかったから、
ただ不快感だけが甦って、俺はベッドに沈み込む。また吐いた時の呼吸を想い出してえづく俺
をよそに、アベくんは俺のジャケットを乱暴にくつろげた。苦しくて晒した咽喉を噛まれる。
ジャケットから俺の腕を抜いて、その下に着ていたニットの中に手を突っ込んだ。さっき迄濡
れたタオルで床を拭いていた所為で冷たくなったアベくんの指が、俺の肌に触れてくる。
「なあ、お前、俺の云う事聞くんだろ、」
完全に乱暴になったアベくんの声が、痺れる脳をつんざいた。俺は流れたままの涙で濁る眼を
必死に開けて、アベくんの表情を探す。鷹みたいな、あの黒い眼で、俺をぐっさりと刺すよう
に見ていた。まるで人が違うみたいに、そこに狂気が宿る。
「俺の事、好きって云えよ。」
さっきの晩飯の店で聞いた時と、全く違った。有無を云わさぬ調子で、耳に入り込む。
「好きって云え。」
そう云ったまま、俺の耳に噛み付いた。昔抱かれていた時の感覚を想い出す事も出来ないよう
な、痛めつけるような乱暴さで全身を探られていく。
――あべくんがおかしい。
アベくんが俺のベルトに手をかけて、荒々しく引き抜いた。
「おい。」
云えないその事を、アベくんの眼が強要する。アベくんのでかい両手で頭を起された。
そのまま、がっしりと固定される。顔を逸らす事も出来なかった。
アベくんの冷たい手と、何がしかの恐怖に震えながら、涙も拭えない。俺は音声より呼吸の音
が大きくなったような声で、必死に言葉を紡いだ。
「あ、べくん、……すき、」
その言葉の後、次の息を吸い込む前に、アベくんがキスをする。深くて、今迄された事のない、
粗雑で乱暴で、貪るようなキスだった。
何だってこんな事、すんだよ。涙が止まらなくなって、俺は抵抗も出来ない。いや、する気は
なくなった。胸の痛みが止まらない。
アベくんが漸く口を離した時には、完全に酸欠になってしまった。深く荒く息を吸いながら、
アベくんの云う事を聞かなくちゃと想う。
アベくんは、俺のニットを胸の上迄たくしあげて、胸の突起に舌を這わした。その蠢く感覚に
も、昔抱かれた時のものはなかった。俺はそれが悲しくてならない。
「あべくん、すき、」
俺がもう一度そう云うと、急に、ぴたりとアベくんの動きが止まった。俺の胸の辺りにあった
顔を起す。
「すきだよ、……あべくん、すきだよ、」
働かない頭と、回らない口で、俺は潰れた玩具みたいに、しゃくり上げながらそれを繰り返し
た。アベくんはじっと動かなくなって、俺の上に跨ったまま、俺の心臓のある辺りを見詰める。
涙で歪む視界の中でも、ふとアベくんの眼から、何かが抜け落ちたような様子が見えた。
俺はすっかり渇いた口をあけて、もう一回、すきだ、と云う。
「チバ、…………もういい。」
そう呟いたかと想うと、俺の胸に顔を埋めて、あああ、とアベくんは短く絶叫した。
その一瞬の振動が、俺の乾いた全身を揺らして、突き抜けていく。
「おかしいのは俺だよ……。」
アベくんは、俺の上に倒れた。俺を締めるように抱いて、ごめん、ごめん、と繰り返す。
「これじゃ強姦じゃねえか、なあ。」
そう自嘲気味に呟いて、俺の顔は見ずに、狭いベッドに身体をずらす。俺を抱きしめたまま。
もう、さっき俺をベッドに叩き付けたみたいな鋭い気迫は、何処にもなかった。その代わり、
泣きそうな細い声で云う。
「頼む。最近、全然眠れねえんだよ。お願いだから、今晩だけこうさせてくれ。」
腹冷えるな、と云って、ひどく優しく、俺のめくれた服を戻した。もう、怒ってるとか、そん
な様子は全く無い。寧ろ何か哀しい部分が、流れ込んでくる。
俺はまだ何も云えずに、何となく、なるべくアベくんにひっついた。アベくんはそれをもっと
引き寄せる。こんなに近くなった事は、2年以上前に遡らないと、記憶がなかった。
「こうしたら眠れるってのは、ずっと解ってたんだよ。」
その声は、泣いているようにも聞こえる。明るく電気のついたままの室内で、俺は眼を閉じて、
ひたすら、耳を済ます。
俺の意識が夢に溶ける寸前に、アベくんが小さく、こんな事を云った。
「お前の心臓が欲しい。」
その意味が解らない。欲しいと云われた左胸のそれが、割れるように疼く。
------------------------------------------
夢を視た。
変な夢で、俺は真っ白な四方を壁に囲まれた所に閉じ込められてる。ひどく寒い。おまけに俺
の服も全身真っ白だ。怖い。だって、出口も入口もないんだ。天井は俺がジャンプしたら触れ
そうなくらい低くて、畳で云うと四畳半くらいの広さしかない。とにかく無音の世界。
初めは壁の色んなとこを蹴ったりを叩いたりして出られないか確認して回ってたけど、無駄だ
った。寒さで足がすくんで、自分で自分の腕を抱きながら、狭い部屋にぺたりと座り込む。
このまま誰もいないとこで、外にも出られないで、死んでくのかな。
だんだん気分が悪くなってきて、俺はのたうち回る。その部屋の中には、影さえなかった。白、
白、白。寒い。おかしいよ、誰か、助けてくれ、って叫ぶ。壁はその声も吸収した。白くもや
になった息を奪われる。小さい頃、喘息で苦しんでいた時の感覚が甦った。
途端に呼吸が荒くなって、肺が鳴る。ここには何もない。どうする事も出来ない。俺しかいな
いし。
どうせ助けてなんて貰えない。
床にうずくまって、凍る息を吐いて泣くしかなかった。ここからだしてくれよ。
「チバ、」
不意に、天井から声がした。俺の真上の白い壁に穴が開いて、そこから黒い服を着たアベくん
が、長い腕をのばしているのが、涙に歪んだ視界の中に見える。
「アベくん。」
俺は嬉しくてたまらなかった。やっぱり、俺にはアベくんが必要だ。アベくんじゃなきゃ、駄
目なんだよ。
「チバ、おいで。」
俺はのばされた手を掴む。瞬間、アベくんの暖かい体温が、凍った俺の手に流れ込んだ。ぐっ
と握り返されて、引き上げられていく感触がある。アベくんの腕が、少し震えた。寒いんだ。
アベくんの顔が歪んで、それでも俺の身体は引き上げられていく。
むちゃくちゃ腕細い癖に、何してんだよ。駄目だってば。
見ると、アベくんの黒い服の袖から、手首を伝って、赤い血が流れ出していた。
俺はその赤い色が見ていられない。
「い、いいよ、もう、俺ここにいるから……ッ、」
その血は、繋がった手から俺の方に流れて伝う。苦しそうな顔。それでもアベくんは俺の手を
離すどころか、左手も出して、俺の腕を引き上げていった。
「少し黙れ……、」
そう云いながら、血で滑って、寒さで凍える手と手を、必死で繋ぐ。
「お前は、お前はどうなんだよ。お前は、俺といたくないのかよ、」
血が出てるよ、アベくん。痛みを受ける顔。
「アベくんが痛い想いするくらいなら、ここにいる。」
「莫迦。」
一層強く、手を掴まれた。
「傷なんか治る。」
アベくん、アベくん、俺はね。俺は必死で云おうとしたけど、何故かそこから先は咽喉が動か
なかった。
アベくん、アベくん、俺はね、アベくんが傷つくのが、一番きらいなんだよ。
身体を引き上げられた所で、その夢は途切れた。
--------------------------------------------
眼が醒めると、息が切れて、汗をかいている。胸の辺りの服をわし掴みにしていた。
もう一度眼を閉じて、息をつくと、頭に何かが触れる感触がある。眼を開くと、アベくん
が肘をついて俺を覗き込んでいた。開いた手で俺の頭を撫でている。
俺は言葉が出ないくらい安心して、アベくんの方へ身体を向けた。
アベくんの、大きい、温かい手。久々にじっくりとそれが身体に触れる事を、感じた気が
する。……昔から、その手が好きだった。
どうしてかは解らないけど、アベくんは、まだ俺の傍にいてくれる。いようとしてくれて
る。眠る前に、乱暴に俺を抱こうとしたのが、それを本当だと逆に物語っていた。
そうだ、夢じゃないから、アベくんはここにいるんだよ。
「今何時、」
「朝の5時。」
そう云ってアベくんは笑った。ああ。
「有難うな。久々に俺、よく眠れた。」
そう云って、アベくんは起き上がろうとする。俺はどうしようもなく傍にいて欲しくて、
アベくんの服を引っ張って、それを止めた。
「……ごめん、」
俺がそう呟いた意味は、たくさん有り過ぎて、自分でも解らないくらいだった。
「何で。謝るの俺の方だろ、」
アベくんはもう一度ベッドに転がって、俺を見る。
「アベくんは、……悪くないんだってば。」
俺はシーツに顔を伏せた。アベくんは、待っている。
俺は話さなきゃならないと想った。夢の中身を頭で繰り返す。
確かに、俺は、アベくんの手を離したくなかった。今、アベくんはここにいる。
俺は、乱暴なんかされたって構わない。アベくんがそうしたいなら、俺は構わない。
アベくんの云う事だって聞くし、アベくんがしてくれって云ったら、何だってする。
そう云えば俺は、アベくんから与えられる何かを、ここ2年、ずっと待ってた。いや、
待ってるだけだった。不意に、アベくんが、この間云った言葉を想い出す。
『俺の事じゃねえよ。チバの事を聞いてんだよ、』
そこ迄来て、漸く俺は、今迄アベくんと話すときに足りなかった物に、想い当たった。
……初めから、アベくんはずっと答えを云ってたんじゃんか。
俺はアベくんのシャツを掴んだまま、ベッドに顔をふせて、あー、と声を出してみる。出
る。よかった。夢じゃないもんな。
「お、俺の……話、していい、」
「聴きたい。」
即座に、アベくんはそう答えた。いいよ、って云う返事じゃないのが、またひどく俺を安
心させる。
「……何でもいい?」
「いいよ。云えよ、」
俺の頭をまた、そう云って撫でる。全然呼吸が苦しくなかった。アベくんは、不思議な力
を持ってると想う。
「は、……反省って、云ったじゃんか。」
「ああ、さっきね。」
俺が悪いんだよ、あれ。云うと、アベくんは、それは聞いた、と返す。
「アベくんをさ、……見付けたんだよ、夕方ぐらいにね。うろうろしてて、」
そこで俺は、自分の気持ちを説明する言葉を、見失った。その代わり、ずっと眠ってた物
が、急に胸の奥から零れてくる。でもそれは、ずっと考えてた事で、嘘じゃなかった。
「……俺さ、……アベくん傷付けるのがやなんだよ。」
一番嫌なんだよ。アベくんが誰かに傷付けられてんのを見たら、俺はなりふりかまわず
に、そいつを引き裂いてやりたいと想う。ずっとそう想ってたし、一生俺はアベくんを
傷付けないと、誓ったつもりだった。それなのに、俺は。
「……俺が何か云う度にアベくんが……何か、あれな感じになるじゃん。」
「どれだよ。」
アベくんの笑う声がした。
「わ、笑い事じゃねえんだってば、」
そうだよ、俺自身がアベくんを苦しめるなんて云う事は、とても耐えられる事じゃねえん
だよ。だから、離れた方がいいと想って、……でも。やっぱりどうしても、アベくんを眼
で追ってしまう。だから、アベくんと離れる理由が欲しかった。アベくんに、突き放して
欲しかったんだよ。
そこで不意に、アベくんは、何一人でシーツと睨めっこしてんだよ、と云って、俺の頭を
ぽんぽんと叩いた。
「そりゃ、ひでえ事云われたりされたりしたら、傷付くよ、俺も。でもお前、俺が生まれ
てから一度も傷付いた事ないとでも、想ってんの?」
「え、」
どう云う意味だ。顔を上げると、アベくんは穏やかな顔をしている。別に、何も隠す気は
ないみたいな。
「傷付くけど、乗り越える。いつかは。」
アベくんがあっさり云い放ったその一言が、俺の中に染み込んだ。アベくんは、変わって
ない。何も。
「でも何か、お前が離れてくのは、耐えらんなかったんだよ。繋ぎ止めたいから、あんな
事してさ。ほんとに悪かった。」
ごめんもうしない、と云って俺の頭をもう一度撫でた。
「……ずりいよ、」
俺はアベくんの腹の辺りで丸まる。
「アベくんって、自分が考えてる事、一瞬で全部云うよな。」
「何が。」
アベくんの手が、肩に触れた。
「……俺云えねえもん……。」
「おいおい、泣くなよ、」
そう云われて初めて、涙が出ているのを知る。
アベくんみたいに、想ってる事をすぐに出すような勇気もなければ、言葉も、俺は持って
ない。どう云えば、今俺の想ってる事が全部伝わるんだろう。
「……俺さあ、……アベくん、好きなんだよ。」
これは本当なんだ。信じて欲しい。
ますます丸くなるしか、俺はこれから先に云う事に対して、する事がなかった。
「……色々、酷い事云ったじゃんか。……そんでも、……好きでさ、」
全然言葉になんなくて、俺はますます、涙で咽喉が歪んでいく。アベくんは、ゆっくり云
え、と云って、強張る俺の肩を撫でた。
「何処にも行かないから。」
俺はアベくんの腕の辺りを掴む。アベくんがそこにいる事を確かめて、途切れながら続け
た。
「そんななのにさ、……傍にいて欲しいとか、……ばかじゃねえのって、…………許せね
えから、」
そんな風な、細切れみたいな事をずっと呟いていると、あるところで、アベくんは、ああ、
とひらめいたような声をあげた。
「そんで俺に離れろっつった訳か。」
「い……今ので解んのかよ、」
「解るよ。」
あまりにあっさりと、アベくんは返す。
「何だ、そうかよ。変な奴。」
「へ、変な奴って何だよ、」
今更そんな事を、アベくんなんかに云われるとは想わなかった。
「俺どうしようかと想った、」
揚句の果てに笑い転げながら、俺を抱きしめる。何なんだよ一体。
「お前さ、電話かけてきたじゃん。」
「……うん。」
「びっくりしたよ、俺。途中で取る前に切れた時、何でかチバからだと想ったんだよ。」
「え、番号出るんだろ、電話に、」
いや出るけどさ、と云ってまた暫く咽喉で笑う。
「番号なんか見なかったんだよ。勝手に俺がお前からだと想ったの。ははは、全然別人
だったらどうしようかと想った。」
意味解るこれ、と云って俺の顔を上げさせた。
「……な、何だよ、」
「お前が好きだって事だよ。」
顔を合わせたままで、まともに変な表情を見られたと想う。
「ほんとはさ、嫌われてるんならまあ仕方ねえか、とか想ってたよ。人生こんなもんか
な、っつう感じでさ。」
でも俺そんなに悟ったような奴じゃなかったんだよな、と苦笑した。
「お前から何か云ってくりゃいいのに、と想ってたからね。だから勝手に電話かけてき
たのがお前だと想い込んだんだよ。それに気付いてさ、これは無理だなと想って。」
「無理?」
「お前と離れる事が、だよ。」
不意にアベくんは話を切って、お前もうちょっと近くに来い、と云う。俺が身体をずら
してアベくんの方に寄ると、眠る前と同じように、抱きしめられた。
それから、また話を続ける。
「眠れないっつうのも、お前にコート押し付けて帰った日からだしさ、酷くなったの。」
だから腹決めようと想って、とあっさり云い放った。
あの電話での、暫くの沈黙は、それを考えてたっつう事らしい。多分、俺の事を誰より
解ってるから、会って話そう、なんて云ったんだろう。
俺じゃなくてお前の事が知りたい、なんて云うのも、自分の感情に向き合ってるから云
える事だと想う。それに引き換え、俺はやだとか、もういいとか、やだとか……。だん
だん恥ずかしくなってきた。
アベくんは、眼を合わさないように俯いた俺に、更に優しい言葉を紡ぐ。
「俺お前が云う事気にするよ。かなり。でも何も云われなかったら、それこそぶっ壊れ
る。」
アベくんは俺の頭を何度も撫でた。……こうすんの、好きなのかな。
「云え、俺に何でも。」
それから俺の首の後ろに手をやった。そして、耳元で囁く。
お前の為なら何でもしてやるよ、なんて、映画でしか聞いた事のない殺し文句だった。
----------------------------
そ、そろそろうざいんじゃないでしょうか……
あとはヤるだけなんですけど……
.。::+。゚:゜゚。・::。. .。::・。゚:゜゚。*::。.
.。:*:゚:。:+゚*:゚。:+。・::。゚+:。 。:*゚。::・。*:。゚:+゚*:。:゚:+:。.
ウワ━.:・゚:。:*゚:+゚・。*:゚━━━━゚(ノД`)゚━━━━゚:*。・゚+:゚*:。:゚・:.━ン!!
。+゜:*゜:・゜。:+゜ ゜+:。゜・:゜+:゜*。
.:*::+。゜・:+::* *::+:・゜。+::*:.
844 :
527:2006/02/14(火) 00:02:11 0
うざいだなんてとんでもない!!!!!!
お願いします、二人を拝ませてください!!
明日仕事だけど、すっとこさんが幸せそうに笑うまで寝ません!
そういや今日はバレンタインですよw!
去年の12月10日の事が出てくるんですが、私そのイベントに行った訳ではないので、
色々齟齬があったらごめんなさい
-----------------------------------
それからまた、そのまま二人してベッドで暫く眠った。夢は視なかったし、信じられない
くらい眠りが深かった。気絶するようにって云うのが適当な感じがする。
俺が自然に眼を覚ますと、隣でアベくんが眠ってた。少し延び過ぎた前髪の隙間から、薄
く閉じられた眼が見える。
……ほんとに全然寝てなかったんだろうな。
すうすうと云う深い寝息が聞こえる。外はもう明るかった。
俺は無意識の内に、アベくんの流れるような黒い髪に触れる。一束だけ指の上に乗せた。
考えてた事とか、悩んでた事とかを、全部アベくんがさらっていったから、妙に全身が
空っぽになってる。
そこに全部、アベくんの事を詰め込みたいなあ。
俺はベッドの上に座ったまま上体を傾けて、手の中にあるアベくんの髪に、キスをした。
部屋にある時計が、かちっ、と云う小さな音を鳴らす。そっちを向くと、ちょうど10時に
なった所だった。
時計の、動く秒針を見詰めながら、アベくん起こすの、忍びないな、とか、想っていたら。
「髪のばしてて良かった。」
不意に背後から声がした。
「……起きた?」
びっくりして振り向くと、アベくんは眼を開けていて、にやにやと笑う。まさか。
「……え、」
「あんな事してくれんなら、切らないでおこうかな。」
俺は一瞬で頭がかっと熱くなった。
「ち、違うんだってば、あれは……、」
アベくんはいやらしいくらいの笑顔で起き上がる。
「気持ちいいなあ、朝は。」
「ま……待てって、違う、違う、」
……違わねえんだけどさ。
アベくんはすたすたと洗面所へ歩いていってしまった。
「ね、寝ぼけててさ、……違うってば、」
俺が慌てて追い掛けて、洗面所へついていくと、アベくんは歯を磨きながら、ここ11時迄
だから支度しろよ、と云う。
「まだ寝てると想ったんだよ、」
アベくんが口に歯ブラシを突っ込みながら、軽く笑ったところで、漸く云い訳に失敗した
のに気が付いた。何であんな事したんだろ。洗面所の壁に頭をがん、とぶつけて後悔する。
うがいをして、歯を磨き終わったアベくんが、ほんとお前相変わらず隙だらけだね、と云
って、俺の頭をくしゃくしゃと掻き回した。……俺も顔洗おう。
---------------------------
二人とも支度を済ませて、じゃあ帰るか、と云う事になった。
「忘れもんないか、チバ。」
「ない……、じゃない、これ。」
俺は自然に手に持っていたあの袋を、アベくんに差し出す。
「あ、ありがとね、これ。」
「まあ、役に立ったような立たなかったような、だな。」
クリーニングなんか出してくれたの、と云って、アベくんはその袋を受け取ろうとした。
でも、寸前でその手を引っ込める。
「ま、まだ受け取ってくんねえの、」
「いや、じゃなくて。」
アベくんは、確認するように俺の顔を覗き込んだ。
「これからは、理由がなくても、会ってくれるな?」
俺はとっさに声が出なくて、それでも大きく一度頷いた。嬉しかった。
部屋を後にして、ロビーへ降りる。タクシーにでも乗って帰るか。
……次、いつ会えるんだろう。そう考えると、離れたくなかった。そうだ、ここで、約束
してけばいいんだよ。
チェックアウトを済ませて戻ってきたアベくんに、俺は頭の中でカレンダーを繰りながら、
話した。アベくんの予定が全然解らなくて悔しい。
「今度さ、イマイくんとのユニットでやるんだけど、……見に来ねえ?」
「いつ、」
「12月だから、今月の十日。」
アベくんは笑って答えた。
「行く。」
ほんとに、と呟きながら俺は顔が綻ぶのを感じる。
「待ってたんだよ、そう云う事云ってくれんの。」
お前の声好きだからね、とアベくんは云ってくれた。
「楽しみにしてる。」
俺は照れと、アベくんの屈託ない感じに嬉しくなる。想わず、口の端から笑い声が漏れ
た。
「何、」
「いや、アベくん、何か可愛い気出てきたな、とか、想って。」
「何云ってんの、」
それから二人して、暫くけらけらと笑う。
俺はこんなに身の軽い想いをした事があったろうか、なんて考えながら、拾ったタクシー
に乗り込んで、アベくんと別れた。
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その十日の日、俺ははしゃぎまくった。
久々にしたたか呑んだ酒の所為にしたかったが、何よりアベくんが来てくれた所為だっつ
うのは、自分で解ってる。云うべき事も云わなくていい事も、べらべらと喋りまくった。
俺がはしゃげばはしゃぐ程、アベくんは笑ってたし、俺は歯止めが利かなくなって、色ん
なもん振り回したり、踊りまくったり、誰かに抱き着いたりしてたと想う。……よく覚え
てない。
只、第一部が終わった頃にアベくんが、すっと俺の傍に寄って、耳打ちした。
もう客は一旦はけてたし、そんな風に近くで云う必要もなかった筈だ。それでもアベくん
は手招きして、囁く。
「先に行ってる。」
「え、」
どう云う事だろう。
「こないだのホテル、また取っとくから。あんま酔うなよ。」
終わってから来いって事か。頭ぐるぐるで、よく状況の解ってない俺は、取り敢えず返事
だけする。
アベくんは俺の前に立った。自然、少し壁に追い詰められる。壁に背を付いてアベくんを
見上げたら、黒い眼の中に少し、抑え切る事が出来ない感情みたいな物が宿ってるのが伺
えた。
何となく恥ずかしくなって、少し俯くと、アベくんは軽く屈んで、俺の耳に沈むような声
で囁いた。
「抱かせろ。」
一瞬で全身が熱くなる。反射的にアベくんを見上げたが、そんな事しなきゃよかったと
想った。
心臓が鳴って、顔が歪みそうになる。
アベくんが、明らかに俺に対して、そう云う意図を示してくれたのが、嬉しくてたまらな
い。
耳に残った余韻で動けない俺の肩を軽く叩いて、アベくんは出口の方へ歩いていった。
「ちょっとすいません、」
不意に向こうから、スタッフらしき人に呼ばれて初めて、我に帰る。
アベくんの姿が見えなくなると、魔法が解けたみたいに、俺はいつものように歩く事が出
来た。
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俺はその後も呑んで騒いで、むちゃくちゃしたが、タクシーに乗って行き先を告げた途端
に、急速に酔いが覚めていった。酔っ払いだと想って乗せたタクシーの運転手は、初めは
渋い顔をしてたけど、急に静かになった俺に不思議そうな顔をしながら、車を転がした。
赤から青に変わる信号を越えて流れる景色を見ながら、酔いと交代で這いのぼってきた熱
に身を焦がす。
アベくんに会いたくてたまらなかった。さっき会った筈が、おかしいくらい恋しかった。
多分、2年分くらいの愛しさが、今胸に来てる。
「スピード出して。」
運転手にそう告げると、やっぱり酔っ払いだ、と云う表情で返されて、車は加速した。
馬鹿臭えとは想うけど、そんな衝動を呼ぶには十分過ぎるくらいだ。
やがてタクシーは、繁華街から少しずれて、それ程人気のない道に入っていく。夜も深い
から、そんなに人もいない。
見上げると、ビルの明かりや街灯の隙間から、星が見えた。
「着きましたよ。」
運転手が控え目に声を掛ける。俺は急いで金を払った。
「ありがとう。」
そう云って、自動で開いた扉の向こう側を見たら、アベくんが立っていた。俺はなるべく
落ち着いて、転ばないように、タクシーを降りる。するすると後ろで、タクシーが離れて
いく音がした。
「アベくん。」
冬の澄んだ空気の中で、俺の声は真っ直ぐアベくんに届く。アベくんは、俺がこの間に返
したコートを着ていた。はやる足を何とか抑えてアベくんの傍迄行くと、腕を引っ掴まれ
て、引き寄せられる。
「遅い。」
短くそれだけ云って、痛いくらいの勢いで、抱きしめられた。
「ごめん……、待った……よな、」
「待ったよ。死ぬかと想った。」
そうだよ、俺も、アベくんも、2年も待ったんだ。
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-----------------------------------------------
部屋に着くなり、靴も脱いでないのに、アベくんは俺を捕らえて、口付けた。深く深く探
られて、鍵の閉められたドアに抑え付けられる。
「チバ……、」
わざとなのかは解らないが、俺の名前を呼びながら派手な水音を立てて、痛いくらいに舌
を絡め取られた。
「あ……、くッ、は……、」
名前を呼ぼうとして出した声が、全部吸い込まれる。
息が苦しくなっても、アベくんは離してくれなかった。
「……あ……はッ、」
酸素が足りなくなるごとに、心臓の打つ数が増えていく。俺の太股の間に、アベくんの長
い足が差し込まれて、全身から力が抜けた。
膝が崩れかける俺の身体を、腕をドアに押さえ付けて止める。
息がどうにも続かなくなって、身体をよじると、漸くアベくんは口を離した。
俺は深く息を吸い込んで、その場にへたり込む。
「……は、」
「待たせた罰。」
そう云いながら、アベくんはブーツを脱いだ。しゃがみ込んで、俺の靴も脱がしていく。
痺れて動けなかった。
アベくんは部屋の中に入ってコートを脱ぎ、面倒臭そうにその辺に放り投げる。
「何へたってんだよ。」
「あ……アベくんの所為だろ、」
ジャケットも脱いでから、立とうともしない俺を起こす。
「我慢出来ねえんだよ。」
これ以上待たない、と云いながら、少し乱暴に俺を引っ張った。
胸元から手を滑らせるようにして、俺のコートを脱がせる。俺はアベくんに抱かれたい癖
に、慌てた。
「し、シャワーとか……、」
「いいよ。汚ねえ訳じゃねえし。」
アベくんは、俺が前を全部閉めて着ていたジャケットの釦を器用に外す。
―――脱がされるのって、恥ずかしいもんなんだな。
「い……いいよ、俺脱ぐから、」
「駄目。俺にやらして。」
優しいのか、意地悪なのか、どっちかにしてくれよ。
ジャケットから腕を抜かせて、シャツの前釦も一つづつ外していった。
「痩せたね、お前。」
そう云って、不意に胸の辺りを、シャツの上から撫でられる。
「っあ、」
声を抑える間がなかった俺を見て、アベくんは嬉しそうに笑った。
はだけた胸元辺りにアベくんは口を落とし、鼻先を擦り付けるようにしながら、残りの釦
をゆっくりと外していく。
鎖骨をゆっくりと舌先でなぞられた。
「あべ……くん、」
「何、」
わざとゆっくり釦を外されるのが、妙に恥ずかしい。
そんな俺をじっくり堪能するみたいに、今度は首筋を舐めあげた。
「ん……ッ、や、やっぱシャワー浴びるって……汗かいたし……、」
「聞き分けねえ奴……、」
ぐっと引き寄せられて、アベくんの腰の辺りに、俺の下腹部が押し付けられる。
「んッ、」
「俺ばっかりかよ、欲しいの。」
―――違うってば。
アベくんは俺のそこに、腰をつけて、ゆっくり俺を追い詰めるようにした。
「やだとか云って、も止めねえけどな。」
「やっ……やじゃねえよ……、」
俺だってアベくんの、もっと近くに行きたい。
アベくんが漸く釦を外し終わって、シャツを剥がすように脱がせる。空調の利いた部屋の
中でも、生身を外に晒すと、寒い。少し鳥肌が立った。
それを逆撫でするように、アベくんの手が動く。俺は突っ立ったまま、どうする事も出来
ず、しなやかに長いアベくんの指が、俺の薄い胸を這っていくのを見ていた。
もっと、深い所に触れて欲しい。
「なあ……、」
アベくんは甘く囁いた。
「すげえやらしい事、……何か云えよ。……俺にしか絶対云わねえような事、」
そしたら許してやる、と云う。……俺が何かしたかよ、と少し想ったが、早くアベくんに
抱きしめられたかった。
「な……何て、云や、……いいの、」
俺は従順にそう訊いたけど、アベくんはなかなか縋りつかせてくれない。
「自分で考えろよ、」
そう云われても、頭は働かなくなるし、アベくんが与えてくるもどかしい刺激で軽く反応
し始めたそれが妨げて、言葉が見付からなかった。
「だ……抱いてよ、」
「40点。」
恥を忍んで云ってんのに、何だよそれ……。
「……アベくんの、好きなようにしてよ……、」
「70点。」
ひでえ。どんだけ恥ずかしいと想ってんだ。
「め……めちゃくちゃにしてくれよ、」
「んー、60点。」
何で下がるんだ。
「か……勘弁してよ、マジで……、」
だんだん我慢出来なくなってくる。抱いて欲しい。
「……何でもするから……、」
「ほんと、それ。」
俺は逃げない熱に苛まれながら、大きく何度も頷く。
「だ……からさ、俺の云う事も、聞いてよ。」
そう云った途端、俺はこの間ここに来た時、アベくんが俺に呟いた言葉を想い出した。
『お前の心臓が欲しい。』
アベくんがそう云った意味が、漸く実感を伴って、俺の中に流れ込んでくる。
俺の云う事聞いてくれよ。
俺の事ばっか考えてくれよ。
俺の事を一番大事な場所に置いてくれよ。
どれも云いたい事だけど、そんな簡単に伝わるような感情じゃなかった。もっと、下から
胸に向かって、突き上げてくるような感覚。それを云い表すには、その一言以外、有り得
なかった。
わがままでも、何でもいい。
アベくんが眼の前にいるから、一度頭の中に過ぎったその欲望から、離れる事が出来ない。
純粋に、次に口を開くと、その言葉が零れた。
「俺の心臓、アベくんにやるよ……。」
俺がそう呟くと、アベくんは一瞬驚いたような顔をする。
「だから……、アベくんのも、欲しい。」
---------------
アベくんは俺をベッドに押し倒した。そのまま勢いで肩の辺りに噛み付かれて、俺はこの
ままアベくんに喰われちまうんじゃないかと想う。
二の腕とか、首筋とか、肩口なんかも舐めてんのか噛み切ろうとしてんのか解らないよう
な感じで吸い付かれた。犬歯が当たってる。
「い……たいってば……、」
それでもアベくんはひたすら噛み付いてくるから、隙を見て身体を起し、キスをした。
上体を起した俺の背中に、アベくんは手を回す。
「……お前からこんな事してくれんの、むちゃくちゃ久しぶりだな。」
「し、しらねえよ……、」
そんな事は覚えてない。昔の事なんて、考えてる余裕はなかった。
アベくんが、胸の突起に舌を落とす。突然柔らかく与えられた刺激に、声が出そうになっ
た。背中に回された手が、俺の骨格を確かめるように滑る。
執拗に左胸の辺りを舌が這い回るから、たまらずに俺はアベくんの髪を掻き回した。
「っ……あ、アベくんも……シャツ脱いでよ、」
アベくんは顔を上げる。さらさらと乱れていた髪が、アベくんの眼を隠した。俺はそれを
掻き上げて、アベくんの瞼の上に口で軽く触れる。アベくんは軽く微笑んだ。
「チバがやってくれる?」
俺は仕返しの意味も込めて、うん、と頷く。それなのに、アベくんは大人しく腕を下げて、
俺がやり易いようにじっとしていた。
向かい合う相手の釦を外すのは、案外難しい。
まごつきながら手を動かす俺の頭を、アベくんはゆっくり、何度も撫でた。
アベくんは別に、脱がされてるとか云う事には全く羞恥を覚えたりしないらしい。時間を
かけるつもりもないのに、鈍い動きになってしまう俺を見て、逆に楽しんでるように見え
る。漸く三つ目の釦を外して、次の釦に取り掛かった。
「次で四つ目。」
「う……うるせえ、」
四つ目を外していると、アベくんの手が俺の腰に伸びて、ベルトの金具に手を掛け始める。
「ま、待ってよ、」
「やだ。」
云いながら、あっさりとベルトを引き抜かれた。慌てると余計に手が上手く動かない。焦
る俺を尻目に、アベくんは俺のジーンズの釦を外した。
「後二つ、後二つ。」
からかうようにそう俺の耳元で笑う。アベくんの手はジッパーを下げて、下着の上から軽
く撫でるように、俺のそれを指でなぞった。
「んッ、」
びくりと肩を竦ませてしまった俺は、手の中から五つ目の釦を取り逃がす。もう一度外そ
うとして伸ばした右手を、アベくんにぱっと掴まれた。
左手に俺の手を乗せて、そこに唇を落としながら、右手であっさりと残った二つの釦を外
してしまう。
アベくんはそのまま俺の指の付け根や、関節を温い舌でじっくりと舐めた。
それからはだけたシャツを脱ぎ捨てて、俺の腰にしがみつくような姿勢を取る。
「最近誰かとした?」
俺は首を振る。
「自分では?」
「し、してねえよ、」
そう答えたら、アベくんは悪戯っぽく笑って、下着ごとジーンズをずらした。そのまま足
から剥ぎ取られる。
「相変わらずお前って、苛め甲斐あるね。」
「は?……あ、」
抗議の声を続ける間もなく、アベくんは俺の下腹部に顔を埋める。もう既に、少し反応し
始めていた俺のそれに、音を立ててしゃぶりついた。
「ひッ……、」
羞恥と久々の感覚に、全身の毛が逆立つような想いがする。
アベくんの舌が、蠢きながら、幹の根元から先端に向かって這った。裏筋の辺りを通る。
執拗にそれを繰り返されて、息が上がっていった。アベくんは俺の弱いとこ、全部覚えて
んのか。
「あ……、やめ……ッ、」
想わずやめろと云いかける自分の口が嫌だった。アベくんは多分、そう云う俺の気持ちも
解ってるんだろうけど、逆にそれを利用してくる。
「喜んでんだろ。」
そう云って、軽く先端を舌で押し広げるようにした。
「んッ……、」
「ほんとに最近いじってなかったみてえだな。」
俺のそれが、アベくんに口を離されてもなお、脈打って快楽を訴えているのが解る。
「あ、べく……、お、ねがい、」
身体を折って、うつ伏せに寝そべるような姿勢になっているアベくんの頭を掻き回し、訴
える。
「な、……なんか、おかしい……んだよ、……ッ、」
アベくんは俺の言葉の途中で、先端を口に含んで、吸い上げた。
「ああッ……は、待っ……あ、」
だんだん、アベくんの唾液以外のもので、濡れてくるのが解る。
「待っていいのかよ、これ。」
アベくんが、意地悪そうに云って、手でそっと先端を撫でた。
「い、……やだ、……あべく、」
更にそのまま、爪を立てられて、尿道を割るように刺激される。
「ひ、……くッ、」
びくりと全身が震えて、想わず足が広がってしまった。そのままアベくんは、俺の足を掴
んで広げさせ、太股の内側にも唇を落とす。強くそこを吸って、跡を作った。
「ああ、お前、こんなに垂らして。」
―――誰の所為だよ。
俺が羞恥で顔を覆うと、アベくんはその手を払う。
「顔、見して。」
見れば、アベくんは黒い眼を熱で潤ませて、優しく笑っていた。妙にアンバランスな感じ
がして、俺はアベくんが愛しくてたまらなくなる。
「ッ、はやく、……はやく、」
覚束無い手でアベくんの左手を握って、俺のそこへ持って行く。余裕なんて全くなかった。
「い……かして、」
アベくんは一度右手をベッドに付いて、上体を持ち上げ、俺にキスをする。
「……たまんねえな、」
そう云って、アベくんは俺のモノを、一度扱き上げた。
「っああッ、」
「手でイきたい?口がいい?」
俺のそれは、ますます先走りにまみれていく。俺はアベくんに縋りついた。
「ど……ッ、ちでも、い……から、」
「早くいかせろって?」
アベくんは身を沈みこませて、俺のそれを口に含んだ。一気に、先を吸われる。
「あ、あ、……っは……ああッ、」
屈み込んだアベくんにしなだれかかるようになりながら、俺は熱を放出した。アベくんは
それを余す事なく飲んで、舐め尽す。
「あ……う、」
脱力して、言葉の出ない俺を、アベくんは抱き寄せて、そのままベッドへ寝かせた。
口付けながら、アベくんは自分のベルトを外して、もどかしそうに下着ごとジーンズを脱
ぎ捨てる。
それから、軽く自分の指を舐めて、赤い舌をしまうのが、俺の霞んだ視界からも見えた。
「ここいじんのも、全然してない?」
「うあッ、」
アベくんがさっき舐めたであろう指が、俺の尻をまさぐり始める。
「い……じる訳、ね……だろ、」
「じゃあ、念入りに慣らさないとな。」
そう云って、俺の身体を反転させる。腹の辺りにアベくんが腕を入れて、尻を突き出すよ
うな形で、四つん這いにされた。
「な、あ……、」
羞恥の余りにアベくんの方を向くと、大丈夫だよ、と笑いながら返される。
……余計不安だよ。
「どうした。」
「ど……、」
どうしたもこうしたもねえ。
「な、……んか、アベくん、……やらしくねえ?」
「歳の所為かな。」
四つん這いになった俺の上に、被さるようにして、耳元迄顔を持ってくる。不意に、耳た
ぶを舐められて、俺は短く息を詰めた。
「お前もな。」
「は……、」
「今日、よく鳴くじゃん。」
「なッ……、」
それは、アベくんが焦らしたりする所為だろ。
……いや、俺が、欲しいからなのかな。
「もっと鳴けよ。」
低く云われたその言葉が、被さってくるアベくんの身体から直接、背中に響く。そのまま
アベくんは、俺の肩甲骨の辺りを舌で探って、俺が一瞬身体を震わせた場所に、口を付け
た。そして、きつく吸う。
「くあ……、」
跡が付いた筈だ。痛い。
「お前が鳴くと、興奮するから。」
そう云ったあと、俺の背骨を伝って、舌が這わされる感触がある。徐々に力が抜けて、俺
はベッドの上に上半身を崩れさせた。一回イった所為もあってか、全身に力が入らない。
アベくんはそのまま舌を這わせ、腰から尻の辺りに降りて来る。
「や、……やだ、それ、」
アベくんは返事をしないで、そのまま舌を穴の傍に付けた。
「や、やめろって、あ……、やだ、」
二・三度その周囲を舐め回した後、そこへ舌を差し込まれる。入り口にあった時は温いと
想ったのに、中に入ると、異様に冷たく感じた。艶かしい音を立てて、唾液がそこへ塗り
付けられていく。
「あ、うあッ、……ひ、……や、めろ……ってえ、」
羞恥と、腰の辺りから昇るむず痒いような感覚に、余計に力が入らなくなった。俺は必死
に腕を立てて身体を起そうとするが、すぐにベッドの上に崩れてしまう。これじゃ抵抗に
ならねえ。アベくんが俺のそこに何をしてんのか、見るのも恥ずかしい。
「あ、……や、め……ッ、っは、」
アベくんの舌が、穴を掬うように一度動いて、離れた。
「っああッ、」
俺は理性に反して、咽喉を引っ掻くような声を上げてしまう。漸くアベくんは、四つん這
いにされたままの俺に云った。
「そうそう。そう云う声。」
「さ……、」
最低、と云おうとしたその声を遮るように、アベくんは今度は指を宛がった。
「ッあ、」
さっき入口を慣らされた所為か、軽い力で冷たい指が入って来るのが解る。
「いっ……あっ……、うご、かすなッ……あ、」
長くて冷たい指が、中を掻き回すように侵入してきた。
「痛い?」
俺はベッドに沈み込んだまま、頭を振る。
アベくんの指は、むちゃくちゃ長い。こんな風にされると、余計それを感じた。
そんな奥迄、何で入るんだよ……。
「きっ……は、っあ、」
中で、その長くて節のはっきりした指が、ゆっくり動く。
「んっ……んッ、あっ、や……、」
この声はアベくんに鳴けと云われた所為だ、と想いたかった。
探るような、弄ぶような手付きで動かされて、じっくりと解される。
「や……だ、ッはあ、……や、あッ、」
「嫌?」
俺が生理的に漏らした拒否の言葉に、アベくんはその長い指を、あっさり引き抜いた。
「うああッ、」
俺は指が抜き取られる感覚にも、頭をベッドに押し付けて、抑える事の出来ない声を上げ
るしかない。
「嫌じゃ仕方ねえなあ。」
多分、子供みたいな顔で、意地悪そうに笑ってんだろう。……いじめんの、やめてよ。
「や……じゃない、から、」
「嫌じゃねえの?」
アベくんの指が、入口を撫で回した。後ろだけじゃなくて、股間の辺りも、またもどかし
いような疼きに襲われる。さっきイったとこなのに。それでも自分の欲望のあさましさ
に、まるで勝てなかった。
「や……じゃね……っから、」
もう腕を立てる力も出ない。口の端から唾液が流れるのも、止められないままだ。
「い……れて、お……ねがっ……、」
アベくんは俺のそのあられもない懇願を聞いて、ふっと笑う。
「ほんとに可愛いね、お前。」
「だ……れがッ、あッ、」
一気に、そこを広げるように、二本指を突き入れられた。
「い……あ、あ、うあっ、」
「気持ちいいか?」
「は……あっ、んっ、」
わかんねえ、そんなの。
アベくんは更に中で指をうごめかせて、入り口の辺りと、中を同時に刺激される。
「あああ、」
「これだよな、確か。」
そう云いながら、また俺に覆いかぶさるように身体を沿わした。空いた方の手で、唾液が
流れ続ける俺の口を拭う。
「は、……ひッ、」
その優しい手付きに、想わず声が裏返った。
腰にアベくんの股間が当たって、反応してるのが解る。恥ずかしさで理性が引き裂かれて
るから、素直にそれを嬉しいと想った。
アベくんの息が、熱い。
「一番好きなのは、ここだっけ。」
不意に奥迄指を入れられて、その先で掬うように指を折り返される。
「きッ、ああああッ、あ、あ、うあ、」
―――そこは駄目だってば!
さっき、嫌と云う言葉を発したら、苛められた。別に拒否してる訳じゃねえんだけど、云
うのが癖になってるから、それを封じられると、想いっきり声が出てしまう。
「もう、挿れてもいいか?」
俺はもう何も考えられなくなってた。頭をベッドに沈めたまま、大きく何度も頷く。
「い、いれて、あッ……もッ……むり……ッ、」
アベくんはゆっくりと指を抜いた。
「いっつもそう云ってくれりゃ、俺もよく解るんだけどね。」
云わなくても解る癖に、こんな事を云う。前だって、嫌って云い続ける俺の言葉を理解し
て、色々してくれた。
「さっきのとこ、いっぱい突いてやるから、こっち向きな。」
そう低い声を、耳元に直接叩き込まれて、俺は溶けてなくなるんじゃないかと想う。
アベくんに支えられて、俺は前を向かされた。
「好きだ、チバ。」
それから、深い深いキス。何秒間?解らない。このまま明日が来ても、構わないと想った。
アベくんも俺も、名残惜しいように、口を離す。息をしなきゃならないのが、もどかしい。
「……れも、アベくん、好きだ……、」
そう云うと、アベくんは子供のように喜んで笑って、お前は可愛いよ、と呟いた。
アベくんのそれが、ゆっくり、俺の中に入ってくる。
「痛かったら云え。」
「い、いたかったら、……んッ、ど……すんの、あッ、」
「ごめん、やめねえ。」
云った瞬間、アベくんのそれがずっと奥迄侵入する。
「ああああッ、あッ、ッはあ……あ、あ、」
「ごめん、我慢して。」
アベくんのそれが熱いのか、俺の中が熱いのか。もう全然解らない。何も解らない。
アベくんがここにいるって云う事以外。
「ひッ、くあ……ああ、」
「ッ……チバ、……チバ、」
暫く、ずっとそれが入ってくる圧迫感と、引き裂かれるような痛みで、ひたすら声を上げ
続けた。力を入れたら痛くてたまらないし、力を抜こうとしても出来ない。呼吸の合間に、
全身を快感が駆け巡る。
アベくんも荒い息をついて、持ち上げた俺の脚を、潰すような強さで握り締めた。
俺の声がある程度収まるのを待って、アベくんは、全部入った、と云って、俺を掻き抱い
た。
「ぜ……んぶ、何か、忘れそうだな。」
そう溜息のように呟いた後、俺の口をもう一度塞ぐ。
それから、動くぞ、と告げた。
アベくんの腰が深く動いて、さっき指で探り当てたそこを、的確に突いてくる。
「ひ、ああ、あ……ッ、ああああ、」
俺はたまらずアベくんにしがみ付いた。爪を立てるのも、アベくんの肩に噛み付くのも、
構っている余裕はない。足が痙攣するように勝手に動いて、アベくんの横腹辺りを蹴って
しまう。それでもアベくんはやめずに、腰の動きを早めていった。
「ああ、ッ、アベくん……はッ、……べくん、アベく……、」
意識が飛ぶ前に、解らなくなる前に、俺は快感の波に囚われながら、何度もアベくんの名
前を呼ぶ。
「っ、チバ……、チバ……、」
応えるようにアベくんは俺の名前を呼び続けて、その言葉の端に、ごめんもう無理、と、
もどかしそうに付け加えた。アベくんは右手だけ俺の背中から離して、俺のモノに手をや
る。
「あッ、く……は、」
軽く扱かれるだけで、俺のそれは限界を訴えた。
「ごめ……中で出さして、」
アベくんがそう云った瞬間、俺の中で何かが叩きつけられるような感覚がある。同時に、
俺の意識は飛んでしまった。
只、ぼやけた視界の中で、アベくんがイった時の顔が、色濃く瞼に焼き付いている。
―――こんなに幸福な時間が、この世界にあるんだろうか。
-----------------------
俺が飛んでいたのは、大体5分くらいだったらしい。
薄く眼を開けると、ぐったりとしたアベくんが、俺にのしかかっていた。
気が付いた俺を認めて、アベくんは身体を起す。
「ごめん、重いな。」
「いや、」
ちっとも重かねえよ。ガリガリの癖に。
俺も少し起き上がろうとすると、不思議とそれが出来ない。
「え、あ……あれ、」
「ん、どうした?」
俺の顔を、アベくんが上から覗き込む。
「な、何か……、」
アベくんは、俺の腰の下へ、手を滑り込ませた。助け起そうとしてるんだろうけど、全然
結局力が入んねえ。
「あ、腰抜けたの、お前。」
「う、嘘……、」
アベくんは呆然とする俺を尻目に、けたけた笑った。
「まあ、いじってなかった上にあんだけ鳴きゃあね。」
「なッ、」
鳴いてねえよ、と云おうとして、想わず口を噤んだ。……鳴いたよ。実際。
「こ……これ、朝になる迄に治んのかな。」
「治んなくてもいいよ。俺が面倒見てやるから。」
「や、やだよ、」
俺が本当に不安に想っているのは解っているらしい。アベくんは俺の髪を撫でて、大丈夫
だよ、と云って笑った。
それから、ゆっくりと狭いベッドの中に潜り込んで、俺の左側へ来る。
「な、何もすんなよ、」
「しねえよ。」
アベくんは俺を引き寄せて、きつく抱いた。それから少し身体をずらして、俺の左胸に耳
を付ける。
「これは俺のなんだろ。」
アベくんのさらさらと心地のいい髪が、俺の胸元に触れた。
―――そんな、無邪気な顔で笑うなよ。
俺は、ゆっくりと腕を動かして、アベくんの薄い左胸に、おずおずと手を付ける。
心臓が、大きく打つのが解った。アベくんの、心臓。
「お前のだから、いつでも触りにこいよ。」
アベくんのその言葉が、あまりに嬉しすぎた。俺のもいつだってアベくんの為に動かして
おくよ。
俺はアベくんの髪に顔を押し付けて、明け方近く迄泣いた。
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け、結局最後まで落としてしまった……終わりです
だらだらすいません。明日お仕事の方、頑張って下さい。
まあ、そんなこんなで今スットコさんが幸せだったらいいなあ、
と想う次第です。
君こそがネ申だ >前スレ22の人
ありがとう。ほんとにありがとう。感動した。
870 :
527:2006/02/14(火) 00:26:25 0
有り難うございます!!!!お疲れ様でした!!
仕事前に活力を頂きました!!
。・゜・(つД`)・゜・。 大感動
感想書きたいが言葉になりません
あ、明日学校なのに泣いちまったでねーか…( ;Д;)
寝る前に読んだら興奮して眠れそうもないです
本当にありがとうございました(*´Д`)
何度か本気で涙滲みました。
既に私の中では妄想SSではなくドキュメントレポです。
ありがとうございました…!!
877 :
158:2006/02/14(火) 00:42:26 0
ありがとうございます。ありがとうございます。・゚・(ノД`)・゚・。
ありがとう!!!
求め合う二人に涙が止まりません・゚・(ノД`)・゚・。
感想とは違うのですが、前スレ22さんのボキャブラリーに平伏いたしました。
齟齬の意味がわからなくて辞書を引いた社会人…orz
ほんとにありがとう!!
読んでて切なくて、最後はほっこりしたよ(´∀`)
平日の晩なのに、皆さんあったかいお言葉有難うございます……
ノートやらパソコンの前でぐるぐるしてたのが報われました
また何か書けたら来ますね……って何書こう……
またなにか書いて下さい。待ってます。
>だんだん恥ずかしくなってきた。
噴きました、噴きましたけど何この明日への最強の活力!
22神様に幸あれ!ありがとうございました!!!!
よかった。
ほんとに凄くよかったです。
ありがとうございます22の人。
感動しすぎてまともにレスできそうにありません。・゚・(ノд`)・゚・。
帰宅してからもう一度じっくり読んで、あらためてまたレスします……
「傷なんか治る。」ってアベの言葉に号泣しました。・゚・(ノд`)・゚・。
この言葉が、アベがチバを想う気持ちを全て表してる気がする。
22さんありがとう!!ほんとにありがとう!!!!!
傷を抱えたまま生きていこうとしたチバには、
傷なんか治ると言い切るアベの強さが必要なのよ、やっぱ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
ルードイベの真っ最中〜翌朝まで、延々とレポを落とした者です。
あの夜のじゃれ合う2人をこの目で見た分、
お話読んでて萌えが加速&涙が止まりませんでした。
22さん、本当に本当にありがとう!!!!!。・゚・(ノд`)・゚・。
>>888 あの時のレポ神様ですか!
ほんとに数年ぶりのリアルの萌えレポ…いや、萌えというか、
萌え通り越してマジ泣きしたレポをありがとうでした。
あの日以来、また幸せな気持ちでアベチバのことを
考えられるようになったんだもんね!
リアルなレポを読んでも
それをネタにしたSSを読んでも萌えられる
夢のようなイベントでしたね…
22さんのお話のフトツはいつも、
「来いよ」じゃなくて「おいで」って言うよね。
そのことばにフニャ〜っと従ってしまうチバがカワユス(*´∀`)
>そうだよ、俺も、アベくんも、2年も待ったんだ。
これに尽きるよ…本当に待ってたよ・゚・(ノД`)・゚・。
ありがとう、ほんとうにありがとう22の人・・
幸せな気持ちになりました。つうかステキすぎて号泣です。
涙の海で溺れてしまわないように浮き輪なしには読めません(byドラムの人)
>>891 その言葉にフニャ〜っとなってしまう私もいます
アベファンだけどスットコスレ住人なのです…
「抱いてよ」が40点だなんて、今までどんなことチバに言わしてんだフトシー!!
>>894 わかるよその気持ちw
自分はチバ萌えの真ん中住人だけど、
アベに「おいで」って言われて、髪を撫でられたいと本気で思う(ノ∀`)
>>888 事後ですいませんが、あの時のレポ、有難うございました!!
昨日投下した話は、ほんとはそのまま悲惨な状態で終らそうかなと想っていたのですが、
(と云うか分裂したまま先に進めなかったのですが)
貴方のレポのお陰で続きを考える事が出来ました……
ほんとに有難うございます……。
切なくて幸せで感動したけど、
同時に、アベのヤラしいヤリ方に(*´Д`)ハァハァしますた…
22様、GJです!
>>896 アベ萌え右住人が鰓にヤラれたいと
本気で思ってしまうのと同じだ罠w
900 :
888:2006/02/15(水) 00:33:20 O
>>897 恐縮です。・゚・(ノ∀`)・゚・。
勢いだけで落としたあんなレポが、
素敵なお話のお役に立てて光栄です。
またアベチバ書いてくださいね〜。
「スピード出して」にえっらい萌えた
902 :
158:2006/02/15(水) 02:30:40 0
┃ω・)<…折角のいい雰囲気壊すかもしれませんが、投下宜しいですか?
どうぞどうぞお気になさらず!大丈夫ですよ。
ドキドキ
905 :
158:2006/02/15(水) 02:49:54 0
┃ω・)<ドン引きさせてしまったらごめんなさい
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壁、天井、床。何もかもが白く埋め尽くされた無機質な部屋。
天井をびっしりと埋め尽くす白いネオン管が煌々と放つ光は、壁や床にぶつかりまくってから俺の目に突き刺さる。
眩しさに細めた視界の向こうには、髪も服も漆黒に塗り潰したアベくんのシルエット。
部屋の中央に立ってこっちを眺めていたアベくんが、ゆらりと動いて近づいて来る。
俺を捕えたアベくんは、俺を壁に押し付けて乱暴にキスをする。
アベくんの膝が俺の両足の間に割り入って、アベくんの手が俺の股間を弄る。
生地越しじゃ我慢出来なくなったアベくんが、俺のジーンズの金具を外して、下着の中に手を入れる。
そこに直に触れるアベくんの体温。絡み付くしなやかな指。
堪らずに腰を捩ると、アベくんはもう一方の手を後ろの穴へ滑らせた。
前後にむず痒く広がる刺激。身体の芯が熱くなる。
「…ん?」
前を弄っていたアベくんの手がゆるゆると後ろへ延びて、真ん中あたりで止まる。
「…ねえチバ、なにこれ」
「うあっ!!」
身体の中心にアベくんの指が差し込まれる。…ん?
ちょっと待ってよ。何でそんなとこに指入るんだよ。
「チバってさあ、女だったっけ?」
「な、なに言っ…や、やあ…っ!!」
「これって、あれだよなあ…?」
「や、やめ…んああ!!」
「うわ、ちゃんと濡れるんだな。何か凄えな」
身体に入ったアベくんの指が動く度、そこからいやらしく湿った音が流れ出す。
新しい玩具を手に入れた子供みたいに、アベくんが目を輝かせて笑う。
906 :
158:2006/02/15(水) 02:51:06 0
「ちょっとさ、入れてみてもいい?」
「な…!!」
「ね?」
力の入らない俺の身体は、いとも簡単に床に押し倒される。
アベくんに組み敷かれて、唇と指で愛撫される。
俺は女じゃねえ。違う。女じゃねえ。
逃げたいのに逃げられない。身体が溶けて動かない。
やだ。やだやだやだ。
「…やめ、ろ」
拒絶してもアベくんは止まらない。目に滲む欲情の色がどんどん濃くなっていく。
アベくんの肩に、俺の足が掛けられる。
アベくんは自分のジーンズと下着を下ろして、勃起したモノを俺のそこに宛てがう。
「こんだけ濡れてたら大丈夫だよな?」
呟いて、身体ごと前に押し遣る。
「うあ…っ!!」
アベくんが、少しずつ、ゆっくりと入って来る。
最初に後ろに入れられた時も相当痛かったけど、そんなの比べもんにならないくらいの激痛が全身を貫く。
女ってこんなに辛いもんなのか?
907 :
158:2006/02/15(水) 02:52:22 0
「だ…痛い………」
「ん、もうちょっと我慢して」
「む、むり」
「チバ、お願い」
「…や…」
お願い、って、あんたに言われんの弱いんだよ。狡いよアベくん。
「…んう…っ」
お願いって言や何でも叶うと思ってんじゃねえよ。
俺だって、俺だってさ、力さえ入れば今すぐぶん殴ってでも退けるよ。アベくんを。
けど力入んねーし、お願い、とか、…狡いんだよバカ野郎。
「ちょ…チバ、力抜いて」
無理言うなよ。身体が言う事聞かないんだよ。
「…きっつ…」
当たり前じゃねえか。そこ初めてなんだからよ。
「あ、ああ…っ」
痛い痛い痛い!!動かないでアベくん痛いから!!
「んあっ!!あああっ!!」
ああもう!!もうどうしたらいいっつーんだよ。痛いけど何かすげー気持ちいいし、でもやっぱ痛いし。
何で、何でこんな事…
908 :
158:2006/02/15(水) 02:52:48 0
「あ、あ、…イ…っ」
穴ん中がびくびくと痙攣して、アベくんのモノを締め付ける。
アベくんが一瞬苦しげに呻いて、動きが止まる。
「は…っ」
アベくんのが脈を打って、中に射精する。
力尽きて倒れ込んで来たアベくんが、荒い息で耳元に囁く。
「…すっげー良かった」
全身に染みる屈辱感。得体の知れない恐怖。
アベくんの呟きに反応して溢れ出した涙は、止まる事を知らず流れ続ける。
顔を伏せたままでいるアベくんは、俺が泣いてんのに気づかない。
それでいい。
気づかれたくない。知られたくない。
同情だとか慰めだとか、そんなもんを向けられるくらいなら。
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909 :
158:2006/02/15(水) 02:53:58 0
「…何やってんのよあんた達」
降って沸いた声に驚いて首を上げると、いつの間に入って来たのか、ドアのすぐ横の壁に凭れてコウジくんが立ってた。
アベくんと同じ、黒に塗れた姿。
硬直して声も出せない俺とは反対に、上半身を捻って後ろを向いたアベくんは心底幸せそうな笑みを浮かべて言い放つ。
「何って、見りゃ分かんでしょ?」
「や、分かるけどさあ、」
「あ、お前もする?」
「はあ?何言ってんのアベくん」
「チバ、女みたいなんだよ」
「…何言ってんの?」
「ほら」
俺の身体の上から退けたかと思うと、アベくんはすぐに俺の両膝を片手で持ち上げ、もう一方の手で真ん中の穴を弄り出す。
「や…っ!!」
アベくんの動きを止めようとして伸ばした俺の手を、コウジくんが横から掬い取って止める。
だから、何でいつの間にか来てんだよ。足音も立てずに歩いてんじゃねーよ忍者じゃあるまいし。
「え、何、どういう事?何でそこ…」
「分かんねんだけど、何でかこうなってんの。んでさあ、すっげー気持ちいいんだよ」
「………へえ…」
「試してみる?」
ちょっと待て。俺の身体は俺のもんで、あんたのもんじゃねえ。
何勝手に決めてんだよ。ふざけんな。
910 :
158:2006/02/15(水) 02:54:53 0
「…そんなにいいの?」
「おお、すげーよ。」
「ふーん…」
悩むなバカ。俺はいいっつってねえよ。
畜生、何で声出ないんだよ。言ってやりたい事は一杯あんのに…
「ん…っ!!」
横から俺の身体を抱き起こして、アベくんがキスをする。
正面から、コウジくんが俺の両足の間に割り込んで、穴の中を弄る。
「すげ、ほんと女みたいに濡れんのな」
「そうなんだよ」
「こーれはちょっと感動しちゃうなあ」
「だろ?」
首元と足を拘束されて身動きが取れない。
僅かに自由になる腰を捩って拒もうとしても、その動きのせいでコウジくんの指を中のツボに引き寄せてしまって、
自分の意志とは裏腹に快感を呼ぶだけだった。
「うあっ!!」
そこを押されて堪らずに声を上げた俺を、2人が楽しそうに眺める。
「堪んねーな、そういう声」
911 :
158:2006/02/15(水) 02:55:57 0
コウジくんが俺の尻を掴んで抱え上げ、自分の上に座らせる。
穴の中に、コウジくんのモノがゆっくりと沈み込む。
「んあ…っ、いや、あ…っ」
根元まで収まると、コウジくんが俺をきゅっと抱き締めた。
腰にはアベくんの舌が這う。
下半身にじわりと滲む快感に、身体が震えて、動けない。
俺は呼吸が上手く出来なくて、苦しくて、コウジくんに目一杯しがみついた。
「…可愛いね、チバ」
コウジくんが柔らかな声で囁いて、俺を抱き込んだままゆっくり床に横たわって行く。
すかさず、アベくんが後ろの穴へ指を差し込んで来る。
「ひ…っ」
ざわざわと蠢き回るアベくんの指は、俺の中と、壁越しにコウジくんのも薄く刺激して、
その度に、俺の背中を抱くコウジくんの指先にぎゅっと力が籠る。
「入れるよ」
背後からアベくんの声がする。コウジくんが頷く。俺は弱々しく首を横に振る。
「い…っ、や、あああっ!!」
アベくんが後ろから突き上げる。違うリズムでコウジくんが下から突き上げる。
2人のモノが、中で壁越しに擦れ合うのがはっきり分かる。
912 :
158:2006/02/15(水) 02:56:25 0
「うあ…っ!!」
背後から伸びて来たアベくんの手が、俺のモノを扱き始める。
「…すげ…いい…」
コウジくんが、うっとりと目を閉じて呟く。
何でこんな目に会わなきゃなんねんだよ。俺が何かしたっつーのかよ。
大体、俺は嫌だっつったじゃねーかよ。俺の身体だぞ無視すんなバカ!!
あああもうやだ。もうほんとにやだ。
…気ぃ狂いそう。
「は、…あっ」
ネオン管が明滅を繰り返す。
真っ白に焼き付いた脳に浮かぶのは、悲憤と悦楽。
2人共、後で仕返ししてやるからな。待ってろよ畜生。
「あ、…んああ…っ!!」
------------------------------
913 :
158:2006/02/15(水) 02:57:21 0
「…っあ!! ………あ?」
背中と後頭部に鈍い痛みを感じて、視線の先には薄汚れた天井。
さっきまでと全く違う風景。見慣れたいつもの部屋。
「なーにやってんの」
アベくんが笑いながら近寄って来る。
身体がまた震え出す。
「大丈夫?」
床に倒れてる俺に、アベくんが手を伸ばして来た。
「や、触んな!!」
「…何、どした?」
「た、頼む、から、ちか、…近寄んな」
「チバ?」
「来んな。こっち来んなよ」
「チバ」
「やだ、」
「分かった。分かったから落ち着け」
「やだ、って、」
「分かったから」
アベくんが、こっちを向いたまま数歩下がる。
「嫌な夢でも見たのか?」
914 :
158:2006/02/15(水) 02:57:51 0
…夢?
「そう言やお前、うなされてたもんな」
「…夢?」
「ん?違うの?」
「…夢、なの?」
あれが夢だっつーんなら、あれ全部俺の願望だっつーのかよ。
冗談じゃねえ。んな訳ねーだろ。
でも、あれが実際にあった事だ、なんてのは認めたくねえ。絶対認めねえ。
「…じゃあどうすりゃいいんだよ!!」
ぐるぐると頭の中で回ってた思考の、最後の言葉だけがするりと口から垂れ落ちた。
前後の脈絡もなく突然怒鳴られて、アベくんが困ってる。
「どう、って言われても」
「アベくん、アベくんさ、コウジくん、…とさ、2人、何かした?」
「ウエノ?お前に?」
「してないよね?何もないよね?」
「何もしてないよ。お前、ほんと大丈夫?」
「だ、…や、分かんねえ」
「…なあ、近く行ってもいい?」
「………」
「何もしないし、触んないから」
「………絶対?」
「ほんとに何もしない。何かしたらぶん殴っても殺してもいいよ」
「……………分かった」
915 :
158:2006/02/15(水) 02:59:37 0
アベくんがゆっくりと近づいて、俺の傍にしゃがみ込む。
「あのさ、チバ。お前、悪い夢見ただけなんだって。どんなんだったかは俺は知らないし、だからって聞くつもりもない。
でも多分、そん中で俺がお前に何かして、それでお前そんなに怯えてんだろうけどさ、
こっちの俺はお前の嫌がる事は何もしないから。約束する。絶対、お前が嫌だって言う事はしない。
夢ん中で俺がした事も全部謝る。だからさ、なあ、許してくんないかな?」
こっちをじっと覗き込むアベくんの目は、物凄く優しくて、物凄く悲しんでた。
アベくんのこんな目、初めて見たな。そう思ったら、心臓がギリギリと痛くなった。
俺が勝手にバカな夢を見て、現実と混同してアベくんを拒んで、アベくんを悲しませた。
何やってんだろう。アベくんを悲しませるなんて、そんなの、一番嫌な事だったはずなのに。
「…あ、あのさ、もっかい聞くけど、アベくん何もしてないよね?」
「してない。」
「夢だった、んだよね?」
「そう。」
「………うん。だよね。分かった。」
俺が腕を伸ばすと、アベくんはきょとんとした顔をする。
「起こしてよ」
「触んないって言った」
「いいから。俺が触っていいって言ってんだよ」
「触ってもいいの?」
「いいっつってんじゃん。早く起こしてよ」
「…っは!! はいはい分かったよ」
満面の笑みを浮かべて立ち上がり、アベくんが俺の手を握る。
ぐい、と引っ張られて身体が浮かぶ。
立ち上がった俺の背中や腰を、アベくんが軽く叩いて埃を取ってくれた。
916 :
158:2006/02/15(水) 03:00:06 0
「そう言やさあ、俺何で床で寝たんだっけ?」
「違うよ。ソファで寝てたの。で、うなされて転げ回って、床に落ちたの」
「そうなの?あ、それで頭とか痛いのか」
「すっげー音したもんな、落ちた時。何ともない?脳みそ大丈夫?」
「何ともねーよ。あれくらいでバカになってたまるかよ」
いつもの会話。いつもの笑顔。いつもと何も変わらない、アベくんの姿。
そうだよ。何も変わってなんかねえんだよ。
あんな夢なんてさっさと忘れよう。さっさとなかった事にしちまおう。
「あ!!」
「何よ急に」
「ちょ、トイレ行って来る」
バタバタと走って、トイレに駆け込む。
鍵を締めて、ジーンズの中に手を突っ込む。
「…うん。何ともない。」
大丈夫。いつも通り。おかしなとこなんて何もない。
大丈夫。大丈夫。おかしな事なんて何一つなかったんだよ。
うん。そうだよ。あるはずねーじゃん。バカバカしい。
------------------------------
┃з・]y-~~<完。
917 :
527:2006/02/15(水) 03:00:38 0
ちょおおおおおおおおお!!!!!!!
最後の楽園で萌えしにしそうです、仕事前なのに沸きあがる何かで胸が一杯です(瀕死
最近、毎日がスペシャルです…
なんですかこの楽園っぷりは
ラストヘブンはここにあったんですね…
う〜〜〜〜〜〜〜んスゴイ。
なんつーか、スゴイ。
Σ(´・ω・)
|彡サッ
(`・ω・)=з
≡/つ【◎】←カメラ
昔「メンバーが女だったら誰と結婚したい?」
ってインタビュアーに訊かれてたよね。
スットコさんが女性だったら多分マイ理想体型(キモい妄想ですいません)
アベはキュウて答えて、チバはコウジ君って言った
キュウはアベ、最後になったウエノは「じゃあチバ」と仕方なく言ったwww
ウエノはバランスを取るのがうまいw
キュウもうまい
ナツカシスwww
アベとキュウは即答だったね。
ウエノとインタビュアーが「なんだ、もう一組できちゃったじゃん」
とガッカリしてた
そのインタビューの回答に完全な四角関係を希望してたw
・チバ→アベ→キュウ→ウエノ→チバ
・チバ→ウエノ→キュウ→アベ→チバ
みたいな感じで…24通りのパターンww
929 :
527:2006/02/15(水) 16:19:32 0
お聞きしたいのですが、4人の話に他人の視点が入る話って駄目でしょうか?
他人が誰かにもよる
誰、というかまったく名前も容姿も存在も無い赤の他人ですね。
取りあえず導入部だけでも落としてみて他の住人さんの反応を見てはいかがかと
933 :
527:2006/02/15(水) 17:08:23 0
はい、ではさわりの部分だけ落としてみます。
934 :
527:2006/02/15(水) 17:09:54 0
男は眼球の中に、魚を飼っているという。
白い壁にリノリウムの床、蛍光灯が沈んだ影を作るカウンセリング室。背もたれのついた椅子に男が座っている。
妙にぎらぎらしてだけども胡乱な視線を絶えず彷徨わせるその目は少しもこちらを見ない。
眼科の医者は、診察したが何の異常も見受けられなかったと電話で言っていた。
そして、彼はその医者から渡された紹介書を持ってやって来た。
ここに行けと云われてと、一息で言えるはずの言葉を要領を得ない、途切れ途切れの会話で随分と受付を困惑させたとも聞いた。
鼻筋の通った、男らしい風貌に少し上がり気味の眼、笑いながら喋ると、口が後ろから左右に引っ張られたようになる具合が見る者に、多少なり畏怖を与える。丸めた背中はあまり厚みが無い。
筋張った手で、何度か和毛であろう髭が疎らに有る口元を摩り、患者は、ぼそぼそと、掠れたはっきりしない声で云うのだ。
なあ、せんせい、俺の右の目ン玉には、はくはくと口を開けた魚が、確かにゆれているんだ、と。
――――――――
こんな感じで始まります。
意見よろしくお願いします。
続き!続き!щ(゚∀゚щ)
続きカモンです
いいんではないでしょーか!!
私は大好きな雰囲気です
なんだろなんだろー!?って感じです。
527さんの独特なお話、また読みたい〜(*´∀`)
いろんなの読みたいから、ぜひ落としてください(*´Д`)
>>158さん 戸惑って怯えるチバと、優しいアベがたまんなかったです!
隠してるけど実は微妙に欲求不満なんじゃないか……スットコさん
>>527さん 続きカモンです!!
あの、この間の話にレス下さった皆さん、有難うございました。
ほんっっとにむっちゃ嬉しかったです。また書きますね〜
ほんと、生きててよかった……
941 :
527:2006/02/15(水) 22:39:00 0
あの、エロ無しの、しかも解散後、みたいな感じなのですけどいいでしょうか・・・。
ワクテカ!!
どうぞどうぞ!
944 :
527:2006/02/15(水) 23:22:09 0
2月15日晴れ
先週診察に来た患者(記録する為、人権を守り以後仮名をAと表記する)が、予約された時間よりも20分遅れで2度目の来院。
本来ここでで診察を受けるにあたり、有るまじき事ではあるがAはアルコールを摂取している。
それではまともなカウンセリングが出来ないと注意したが、Aはにやりと笑って「せんせいは、ピンク色した羊と背の低いキリンに逢いたくないのかい」と云った。
この男が、一体どんな世界で生きているのか解らない。語彙と想像力は極めて豊からしい。
2月28日曇り
午後の診察にAが来院。外は雪がちらつく天気であるにも関らず、Aの格好は軽装すぎる。
それとなく意見してみたが、「今日は寒いのか?」とぼんやりした顔で返される。
懸念し過ぎだとは思ったが念の為、紹介をしてきた医者に連絡を取る。
彼の診断によれば身体的に自身による外傷や擦過傷は見られない。こちらで少しカウンセリングを行ったところ、味覚・痛みに対し感覚が麻痺傾向にあるとの事。
厄介な患者と言える。
3月19日晴れ
珍しく朝の時間にAからの予約が入っていたが、午後にキャンセルされていた。
最近来院は無し。
945 :
527:2006/02/15(水) 23:23:20 0
はくはくと口を開け、水面近くの魚がゆれている。
ほら、なんだっけ何の話だっけ、何かさあ、あれ
あれさあ、なんか思い出せそうで思い出せねえ
喘ぐ腹腔が、へこみ、ふくれ、あがく
女の柔らかな胸に顔をうずめて尖った先を吸う。
ああ、ほら、駄目だ、ちくしょう、思い出せねえ
なんかさあ、どっかの片隅にさあ、あんのにでてこねえ
夜の部屋、ベットの上、皺の寄るシーツ、躯を丸め
煙草の熾き火、点滅が数回浮かび上がって暗闇が深くなる。
明りを点けるのは面倒。起き上がって灰皿が置いてあるテーブルまで歩くのも面倒。
仕方ないから灰はフローリングと服に降りかかるまま。
そう云えば数日、なんとなく食事をしていないような気がする。
はくはくと口を開け、水面下近くでさかながゆれている。
残像が、瞼の映写機から脳にある白布に繰り返されるならば、感覚に飛び火する思考を持っていかれるこれはなんなのだろう。
スタジオに顔を出し取材があると告げられ、こんなことなら忘れたふりをして寝ていたらよかったと悪態をつく。
以前のバンドから今のバンド云々はもう聞き飽きたし、音楽の話で終わらせないライターがうざい。
薄くなった眉山が寄るのを、痛々しそうに見るスタッフが宥めるように話するのさえ感に触る。
946 :
527:2006/02/15(水) 23:24:02 0
ああ、そうだ、趣向を変えてね、何処かの公園で取材するって云ってたよ
どこで話してもさあ、変わんねえよ、何も
ポケットから出した煙草に火を点け胸一杯に吸い込む。
誰かがプレゼントだと持って来たガスライターは、角が手のひらに食い込んで使いづらい。多分ガスが無くなったら捨てるだろう。
疲れるから嫌なんだよ、喋るの
うん、でもね、皆、あなたの話すこと楽しみにしてるんだから、ね
これ以上何を吐けば満足するのだろう、音楽で音を発することは、それ以上のものはどこにもない。音楽にしたモノを言葉にする理由が解らない。
咥えた煙草のフィルターに、乾涸びた葉が付いてたのか口内の粘膜へ纏わり舌の上、唾液が不味い。
ゆすぐ気力も、吐き出す力も湧かず味のついたそれを飲み干した。
どうせ同じ苦味ならビールで味蕾を刺激したい。
947 :
527:2006/02/15(水) 23:24:43 0
そこに何かあんの?
何が
面白い?
コウジくん、俺、疲れたんだよ
うん
手のなかから落としたものを、手ですくったものが、手で払ったものも、拾い上げる行為も何もかも馬鹿らしくて疲れてしまった。
疲れたんだよ
うん
しゃがんで、高さを合わせてくる眼差しが酷く柔らかい。いつか弾いた、ピアノの音のように柔らかくて水に広がった波紋のように広がる。
自分がぎりぎりな位置に居る気はしてる。
もうちょっとしたら立てるから。そんな言い訳をその場しのぎに作れなくなった。躯が重い思考が邪魔臭い吸う息も吐く息も丸めた背中からアイスクリームのように溶けてしまったらいいのに。
チバ、ちょっと散歩しようか
コウジくん
その前にさ、風呂入ろうぜ
コウジくん
そいでさ、飯食おう
コウジくん
捨てて、俺のこと
ほら、手、出して
捨てていいんだよ、俺のこと
差し出した手を引っ張りあげられ、それにつづく床に融合しかけてた躯も浮いた。
948 :
527:2006/02/15(水) 23:25:16 0
煙草を一日に何度も吸うから。
尖ったライターの角で、手のひらの中に青あざが出来てしまった。痛いけど、痛いと口に出したところで痛みが軽減する訳も無い。
日の光が随分と届く公園の芝生に座って、写真を撮られて、写真を撮って。音を仕事に選んだ事を後悔するような質問を何度も繰り返されて、痛みをこらえ、煙草とビールを交互に口に入れた。
日が落ちて撮影もインタビューも終わった。暴れなかったし、殴るようなこともしなくなった。もう後ろにも右にも左にも誰もいないから、多分大人になったからと言うには老熟したのだろう。
ああ、音。
音に生まれればよかった。
骨や筋肉や血、皮膚や髪も目ん玉も全部無くて音で生まれればよかった。
雨の降るときに最初の一粒の立てる音とか。花の咲く瞬間の音だったり、赤ん坊の寝息音、レコードの針を置いた後の。
何となく考えてみても到底ありえない。そんな綺麗なものにはなれないだろう。そして、なりたいものが多すぎる、飲んだビールが躯を冷やしたのかクシャミが続けて出た。
帰ろうと歩き出した視界にざあと広がった、はくはくと口を開け、水面下近くでさかながゆれている。それは何なのだろうか。
複雑な色彩をした夕方の空でカラスが鳴いて飛ぶ。
いつか美容師が云っていたあの話。髪の毛を切る仕事をしているとねぇ、驚くよ。え、なんで?髪の毛ってねぇ、皮膚に刺さっちゃうの。うそ、だって柔らかいじゃん。本当、手のひらの皮膚が一番刺さりやすいの、だって短くしたら柔らかさなんてなくなるものねぇ。
カットされて、短くなった髪は手のひらに食い込む。侵食を始めるのだろうか。唾棄されるはずのものの反乱は何かに似ている。
長い髪が顔を覆う。黒く斑に被る視界。ゆれるさかな。
なあ、おまえ
いつから住み着いたのか解らない、透けて鱗の美しい群青に話しかける。
なあ、
水晶体に居るのか、脳みその中に住み着いたのか全くそうでないような、けれども確かにあるそれはなんなのだろう。
はくはくと口を開けるさかなが、溺れているのかそうでないのか。
なあ、
問いに、答えが返ることは無い。
949 :
527:2006/02/15(水) 23:26:18 0
はい、切符
手渡された、紙片に印刷された文字が散歩と言うには随分と遠い。ウエノの顔を見ても、何も言いそうに無い。
ほら、いくよ
紙片を困ったように眺めているチバは黙ってウエノについて新幹線に乗り込んだ。
アベくんをね、見かけたんだ
え、アベくんを?何処で?
病院
え!?アベくんどっか悪いの!?
うん、多分な
・・・話さなかったの?アベくんと
心療内科のある病院だったんだよ、入っていった先が
なんで、コウジくんはアベくんが心配じゃないの?
お前、終わったバンドのメンバーに会いたいか?
何云ってんの!当たり前じゃねーか!
お前はね、そう云うと思ったよ
だから、キュウはチバの傍で昔から変わらずに位置を維持出来るのだ。
崇拝され、嫌悪され、崇められ、凡そ両極なモノしか与えられないチバに、まあるい球体の中、ダイヤモンドよりも硬い透明な殻で遮られた世界で生きる男を年相応の感情や、幼い日のいつかを思い出させてくれる。
叱ったり喧嘩してもそれがチバには滅多に得られないものだから。
チバには、云った?
いいや、必要はないと思ってね
コウジくん
今、あれだけ参ってるんだ、わざわざ落ちるような事は言いたくない
950 :
527:2006/02/15(水) 23:29:53 0
コウジくんは、
新幹線に並ぶ座席の隣で眠る、チバの柔らかな寝息にウエノは微笑む。
コウジくんは、チバを何だと思ってんの
窪んだ眼窩に沈む色が深い眠る男の瞼に日が当たらないよう少し躯をずらし、影を作る。
数日前に交わされたキュウとの会話が甦る。
チバの様子を見に行くと知らせた。
初めは安心だ、これで少し心が軽くなるよと云った彼の表情が、目に浮かんで。
チバは、大人で男で一人の人間じゃないか
うん
チバは、そこいらにいるただの飲んだくれの、ろくでもなくてバカな男で、俺らの友達なんだよ
うん
チバは、
うん
電話越しのノイズの微かに混じる会話は、どうしようもなく。
コウジくんはずるい
うん
俺に電話して
うん
俺に懺悔してどうするの
うん
俺に云ってどうするの
うん
俺は、牧師でも神父でもないんだよ
ああ
951 :
527:2006/02/15(水) 23:30:41 0
でも、きっと、お前が一番白い神へ近いだろう。そう云う前に通話は切れた。
ごめん、チバ
ウエノは眠るチバに小さく囁く。
ごめんな、チバ
あの男との幸せを願ってやれなくて。関係を祝ってやれなくて。
チバが、アベから向けられる感情をつるりと流す様、何も云わず傍観していた。
アベがぼろぼろになって行く様を黙って外から見ていた。
次第に軋轢の生じるバンドの空気を何知らぬ顔で吸っていた。
ごめんな。
音楽の塊を人の形で包んで産まれてしまった異形の生き物に、愛や恋を与えてどうなる。
気づかせてどうなる。
甘く切なく苦く惨めでどうしようもない、それが。
喰らって、無くなってしまっても気がつかず慟哭と咆哮を叫び続けてそれでも理解出来ず、
壊れてしまう男を見ろと?
生存本能が生み出す美しい擬態から生じる依存が、消えてしまったらどうなる?
それをこの男がが耐え切れるとは思わない。
独自に完結した世界に住んでいる、この異形の男を。
だから、ウエノは願う。
このまま、孤独でいろと。
傲慢に、祈りに添えて、願う。
952 :
527:2006/02/15(水) 23:31:37 0
俺だけど
キュウ
アベくん、元気?
何故?
意を決して電話をかけた相手は、思い描いてた病人のそれとは違う気がした。いつものトーン、変わらない抑揚のあまり無い声。
あ、久しぶりに会いたいなって
ふうん
よかったら飲みにいかない?
いや、悪いな、外出する気分じゃない
アベくん
ウエノあたりか?
え、
しまった、するりと出された名前に反応を返してしまった。つまってしまった返答が肯定で。
代わりの言葉を出そうとしたが、吐息とともに吐き出された声が、それよりも早く耳に届く。
いいんだ
何が
いいんだ、キュウ
どうして
いいんだ
アベくん、どこか悪いの?
いいや
だって、病院へ行ったんだろ
ああ
じゃあ、どうして
なあ、キュウ、俺は、間違ってたのかな
953 :
527:2006/02/15(水) 23:32:38 0
それが、何を示すのかは分からないほど傍に、一緒に居たわけじゃない。
それは間違っていない。正しいものが何なのかなんて誰かが決められる訳じゃない。だって安定など無いではないか。
求めることの何処に罪があるのか。
きれいなものを見せてやりたいと、いつか言っていた男に、大丈夫だよと手を差し出して連れて行こうとした男に。
誰もが、見ているだけだった彼に手を差し出して掴もうとした彼が。
そこに先が見えるとか見えないとか、何があるかなど自分にも解りはしない。
愚かな行為だなんて思わない。
優しさで、悲しみで、痛みで、苦しみで、自分を戒める殉教者を癒してやってくれ。
アベくん
繋がっていた電話は、いつの間に切られたのか無機質音を同じリズムで繰り返していた。
見える筈の無いものが、視界にあるんです
男は視神経に問題があるという。
白い壁にリノリウムの床、白熱灯が沈んだ影から生じたように錯覚しそうな黒い男が、背もたれのついた椅子に座るカウンセリング室。
生々しさの欠片も見当たらない、けれども僅かに遅い瞬きをする眼窩まわりの筋肉が男の生を主張している。視線が絡むと、少し会釈をしたようだった。
眼科の医者は、診察したが特別な異常は見受けられなかったと電話で言っていた。
そして、彼ははその医者から渡された紹介状を持ってやって来た。
背の高い男は、ただ、淡々と受付を済ませたと対応したスタッフが報告した。
白い肌に、骨に貼り付けたような皮膚の輪郭、吊り上がった眼光鋭い眼、笑うと目元と口元にも薄く皺が入ったそれは意外と柔らかい印象を見るものに与える。線が通されたような躯はやはり骨が目立つ。
中々ぴくりともしない口が、発した声は穏やかで、知性を感じさせた。
954 :
527:2006/02/15(水) 23:34:08 0
網膜に焼きついてしまったように、視界に見えるんです
視界に見えるんですか
はい、そこに居ない筈なんです
そうですか、そこに居ないんですか
はい、居ないんです、もう
もう、居ないんですか
さかなが揺れている。口をはくはくと開けたさかなが。
疼痛がある訳でもない、右目に現れた幻覚は、不思議なほどしっくりと収まっている。
幻覚を見続けながら、冷静さを失わない自分が哀れに思えて苦笑が浮かぶ。
カウンセラーとの会話が無意味だと理解している。
それでも確実な何かをみつけたかったのかもしれない。
ああ、気になった記事で頭の隅に留めて置いた話。
瞬間が、心に焼き付けてしまった映像をを網膜がカメラで写し取ってしまったかのような症状の、あの話を思い出した。
ああ、だとしたらこのさかなは。
口をはくはくと開け、ゆれるさかなは。
男はふと笑みを浮かべ、こう云った。
いいんです、もう、いいんです
いいんですか
だって、居ないじゃないですか
男は、そう云って右目をそっと覆う。
いいんです、仕方ないんです
男は、諦めきった口調で笑った。
955 :
527:2006/02/15(水) 23:35:18 0
冬の寒いある日、カウンセリング室に電話がかかって来た。
名前を名乗らない男が擦れた声で、ぶっきらぼうに、だけどもはっきりと話しだす。
なあ、せんせい、目ン玉で魚を飼ってるのもいいだろう
Aが電話の向こうでシニカルな笑みを浮かべたような気がした。
――――――――
お、終わりです。すみません無駄に長くなってしまいました・・・
すご、めっさ文章に引き込まれてしまいました‥527さんの文体、好きすぎる
アベヲタ属性としては息が苦しいよう(;´Д`)はくはく
せ……せつない……
対照的に近いような二人の容貌なのに、
同じような症状になってるすれ違い具合とか、
正に解散辺りの殺伐具合……うわ〜ん!!
527さん乙です……めそめそ
959 :
527:2006/02/16(木) 00:16:00 0
実は、行の一部ミスしたまま投下してしまいました・・・話の流れがおかしいです。
ああああすみませんごめんなさい!!!
解りづらい抽象的な話でごめんなさい!!!
960 :
158:2006/02/16(木) 00:21:12 0
527さん、乙です。
切ないっす…
時期的にはウエノとチバが京都行ったあたりの話ですよね
い、いつだっけ…2004年半ばくらい?
擦り切れたままのアベが。.゜.(ノд`).゜.。
欠けたままのチバが。.゜.(ノд`).゜.。
淡々と苦しんでるウエノが。.゜.(ノд`).゜.。
強くて優しいキュウが。.゜.(ノд`).゜.。
デラセツナス…
解散後の…あの頃なのかな?
チバがすごく落ちてた頃。鰓さんとチバが京都に行った頃…
つかもう!!!!!切ない…切なすぎる。・゚・(ノд`)・゚・。
527さんGJです!また書いて下さい!
4人いっぺんに、こんだけセツナスな話は初めてです。・゚・(ノд`)・゚・。
特にウエノが……
あ〜…涙が止まらん……
読んだ後の抜け出せないような感覚がたまらないです
あの頃だよなあって深く考えればセツナス倍率ドン・゚・(ノд`)・゚・。
527さん、GJです!!!
527さん、ありがとう・゚・(ノд`)・゚・。。
各お菓子スレに来るようになってどんだけ自分があの四人を好きだったか
思い知らされる。
で、時々泣きたくなる。
胸が切なくて泣けるのはいいらしいけど。
チラ裏スマソ
すごい…映画みたい
アベチバなんだけど、キュウとウエノがすっごくいいですね。・゚・(ノд`)・゚・。
前スレ22さんの話のイベントのってチバがふらつきながらタクシー乗る時に
「こんなの初めてだ・・・」
って言ったときのですか?
970 :
527:2006/02/16(木) 17:13:55 0
皆様、曖昧なSSに染みる言葉を有り難うございました。
名前欄をいっそ「フトツ虐待者」と変えたほうがいいような気がしてきました・・・。
京都あたりとスヌー●あたりのスットコ混合イメージして書いたので、解っていただけて嬉しいです。
フトツファンの皆様ごめんなさい!!誤字脱字でごめんなさい!!ミスありでごめんなさい!!
>>971 スットコさんのお尻にしか目がいかない私こそゴメンナサス
お尻なでなでしたい
そんでぎゅって鷲掴みにしてビクってさせたい
マキシマムだっけか、チバがアベに腰辺りを触られて
ビクッと振り返る場面あるよね
肩辺りを掴めばいいものを
流石アベ
>>971 10.11.に抱きつくべきなのは、のーやんじゃなくて、アベでは。
この先も何らかの形で一緒に仕事できそうな方々より、アベでは。
と思ってしまってごめんなさい。
>>974 そのあと耳打ちしてたんだっけ?
正視できんかったと
>>976 二次会終わった後だったか三次会の途中だったか忘れたけど
チバとアベ二人して消えたらしいから
公の場で我慢してたのが爆発したと見ている
>>977 ステレオリンチにはチバがアベに耳打ちする(多分)シーンがあるよね
たった一・二秒のあれを発見した友を私は尊敬する
>>979 私も先日、確かこのスレで知って確認しました
見つけた人は凄い
そろそろ次スレかな?
そうだね〜。
次スレには過去スレ貼らなくていいよね?当然関連スレも。
ご、ごめん…
立てられんかった…
誰かお願いします orz
やってみます
985 :
984:2006/02/16(木) 23:40:58 0
乙です!
ありがとう〜(*´∀`)
(*`皿´)<乙〜
ミ;`_ゝ´彡
ミ;`_ゝ´彡<お、乙…
994 :
527:2006/02/17(金) 01:28:19 0
すかざず右栗ですハァハァ
ごちになります
さあさ、残り5レス埋めますよ
(´・ω・`) 乙っ
朝、目を醒ますと腰が痛かった。続いて喉も痛かった。そして痛みとは違う尻の辺りの違和感。
あーあ。とうとうやっちまったんだな。
一晩たって感じる体の違和感が昨夜の出来事を嘘ではないと教える。昨夜のアベとの出来事は随分前から自分が望んでいたことだ。
後悔はなかったが何故かひどく不安になる。
どんな顔してアベくんに会えってんだよ…。
昨夜はアベを求めるのに必死で感じなかった不安や羞恥心が今になって一気に押し寄せた。
自分の隣でまだ眠っているアベをチラリと横目で見る。
>>997 ちょっ、続き気になるんで新スレで続けて下さい女神さま!
>>998 ありがとうございます。
ですが、自分の文章の稚拙さに愕然としました故、続きはちょっと…。
ミ*`_ゝ´彡
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。