【復活】エッチなOL・人妻・学生etc集まれ!!76【猥談】
☆自由参加の場所なんで、宣言は控えてね。
☆いない人の話題はなるべく避けて、今の会話を楽しんでね。
☆ご新規さんがこられたら、身内ネタはご法度よ。
☆大人数の時なんかは周りに配慮してレスしようね。
☆やり過ぎ・悪乗りのしすぎにはくれぐれも注意してね。
☆一言落ち、伝言はOKよ!でも、会話の流れをぶった切るのに注意してね。
☆コテ遊びはほどほどに。みんな混乱しちゃうからね。
★二人で話したいときは、名無しか別コテでひっそり移動しようね。
★嵐さんは華麗なるスルーなりそっと落ちるなりしようね。
3 :
尚樹:2010/11/13(土) 17:01:38 ID:CNSJEOBc0
壁]-)y-~~・・・勃てちゃった♪w
4 :
尚樹:2010/11/13(土) 19:37:15 ID:Qh6tvY14O
壁]-)y-~~…偽物、乙!w
…なんて、自演をしてみるw
>>4 スレ勃起て乙w久しぶりだのう。前みたく賑わうといいな。主が出ずっぱれればなw
6 :
尚樹:2010/11/13(土) 23:09:55 ID:Qh6tvY14O
>>5 おっ、久しぶりやなw
…誰かわからんけど(ぇ
やっぱ俺の責任が大きいわけやなw
前みたいに出ずっぱるんは仕事的に厳しいんやけどな…orz
まぁ、気長にやろうでw
7 :
ハル:2010/11/14(日) 00:25:03 ID:wxXIM168O
>>1 お疲れさまでありますm(__)m
んで、【祝☆復活】やね♪
またみんながボチボチ帰ってきてくれるとよかけどね♪
尚樹さんも、_しないよーにボチボチねッ♪
たまに遊びに来させてくだしゃいw
8 :
まみ:2010/11/14(日) 12:48:11 ID:fYuWiQ5P0
にゃ〜お♪
うれしいにゃ〜!!
尚樹にぃにぃ、ありがとう!
みんなー カムバックだぁ。
景にぃ。。。
9 :
尚樹:2010/11/14(日) 20:49:25 ID:JZdilZoy0
壁]-)y-~~
>>7 たまにと言わず、俺の代わりで常駐してくれww
>>8 じじぃは今頃何してるんやろな〜
勃起不全で意気消沈してんちゃうか?ww
たまにでも誰か書き込みするかどうか・・・
まぁ、ボチボチいこうでw
10 :
まみ:2010/11/14(日) 22:13:17 ID:fYuWiQ5P0
やっほ〜☆
勃起不全なら、私が…///
景にぃが来たらうれしすぎる
みなさま
かむばっく
11 :
尚樹:2010/11/14(日) 23:13:03 ID:Jf/+DsaFO
>>10 たまにROMってはいるんちゃう…たぶん♪w
壁]∀´)ノ ̄|【イケメン主(ぇ】
12 :
まみ:2010/11/14(日) 23:27:01 ID:fYuWiQ5P0
>>11 だといいんだけどねぇ。
そういえば、尚樹にぃにぃは東京に住んでるんだっけ?
奥さんと?
子どもはいたっけ?
13 :
まみ:2010/11/14(日) 23:28:19 ID:fYuWiQ5P0
お!釣りしてたか。
パクッ!
イケメンをスルーしてもうたw
14 :
尚樹:2010/11/14(日) 23:32:42 ID:Jf/+DsaFO
>>12>>13 せっかくのエサが台無しになるとこやったわw
嫁と東京住んでるで〜
子供はまだおらんから、気ままな二人暮らしやわw
15 :
尚樹:2010/11/14(日) 23:44:02 ID:Jf/+DsaFO
壁]-)y-~~…ポツーンw
16 :
尚樹:2010/11/15(月) 00:20:44 ID:iV/WihCBO
明日も早いし寝るべw
おやすみ〜ノシ
17 :
まみ:2010/11/15(月) 00:51:39 ID:RLpuSHRL0
アワアワ…。
ごめんよ尚樹にぃにぃ。
呼ばれたつでにシャワーしてきちゃったよ。
放置プレーはいかが?
奥さんと二人でラブラブだねぇ。
そうかぁ。
尚樹にぃにぃはイケメンなイメージだけど。どうかなぁ??
景にぃは、とぼけたユースケサンタアリア。
ユースケ自体がとぼけ顔だからさらにってのがイメージしづらい。
ほな。
またな〜。
いい夢みてね♪
18 :
尚樹:2010/11/15(月) 06:29:15 ID:iV/WihCBO
電車]Д-)y-~~…ネミー
>>17 付き合ってた頃から数えると十年越えてるからな〜
ラブラブって表現は当てはまらんかもw
っちゅうか、俺を放置してダリンとシャワーで…ぐふ★
俺は世間で言うイケメンではないが、まぁ…イケメン風やな(ぉw
じじぃはユースケのイメージでしかもはや無いわww
19 :
ハル:2010/11/15(月) 08:21:51 ID:fRxzMJwFO
>>18 壁|3-) ゴリノクセニ・・・www
あい♪おはよですッ(・ω・)ノ
月曜はウツウツだけどガンガッテイキましょうッ!!
尚樹さんは、実録痴漢電車しないよーにねッwwwww
いってら〜
ノシ
20 :
まみ:2010/11/15(月) 09:07:14 ID:RLpuSHRL0
おはよ☆
朝からぐったりなのは、なぜかっていうと…ぐふ♪
ニヤニヤ。
イケメン風?
でも、ハルにぃがゴリと?
ほな。
洗濯でもしましょうね〜。
21 :
ホシュザル:2010/11/16(火) 22:13:02 ID:KLmgPEiQ0
保守するでござるw
22 :
ホシュザル:2010/11/16(火) 22:13:47 ID:KLmgPEiQ0
保守するでござるよw
23 :
尚樹:2010/11/17(水) 23:45:18 ID:MjNMp22iO
壁]Д-)y-~~…ツカレタ
>>19 ゴリ言うんはお前だけや!w
朝早いし都内から郊外向けて抜ける電車やから、
行きも帰りも空いててチカンなんかできんわw
>>20 あくまで「風」やで、「風」w
目つき悪いから、厳つい感じやしなww
24 :
尚樹:2010/11/17(水) 23:47:41 ID:MjNMp22iO
25 :
ホシュザル:2010/11/18(木) 21:43:32 ID:RrL5EkVU0
>>24 保守する思いの強さが繰り返させたでござるw
26 :
尚樹:2010/11/19(金) 12:30:49 ID:qjByqZ5tO
壁]Д-)y-~~…ヒルヤスミダオw
>>25 お主…熱烈な俺のファンやな(ぇw
27 :
ハル:2010/11/19(金) 12:47:18 ID:hTgaXstRO
尚樹さん
(・∀・)ノ おちかれさまッ♪
え?
ホシュザルって、尚樹さんの自演乙ぢゃないの???w
て、スパにもきてたけどね♪
昼飯は何?
おいらは焼そばーッ♪♪♪
いただきます(´∀`)
28 :
尚樹:2010/11/19(金) 21:21:26 ID:qjByqZ5tO
電車]∀-)y-~~…ここまで全部、俺の自演(ぇぇえw
29 :
尚樹:2010/11/19(金) 21:23:13 ID:qjByqZ5tO
>>27 昼飯はコンビニのおにぎりだけやけど何か?w
30 :
イカ息子w:2010/11/19(金) 21:59:09 ID:m6JIgbVX0
お、復活しているではなイカw主君おにぎりだけじゃ夜元気出ないのではなイカ?スレもあれも気張ってヤリイカw
31 :
尚樹:2010/11/19(金) 22:22:18 ID:qjByqZ5tO
>>30 ちょwww何、その斬新なコテ?
イカ…息子…って、ザー〇ンを連想させるやんけww
おにぎりでも十分満たされてるで、俺w
32 :
ハル:2010/11/20(土) 02:49:42 ID:QENdJVOfO
ちょwww
イカ息子・・・・
オモロ杉www
腹が痛いじゃなイカ・・・パクったwww
さてと・・・ねりゅzzZ
おやすみ☆彡
ノシ
33 :
ホシュクマ:2010/11/21(日) 17:06:40 ID:3IvygTjY0
蜂蜜ほしい
34 :
まみ:2010/11/21(日) 18:12:45 ID:4S0bAfE70
つ[ハチミツ]
ぷーさん?
うふ〜ん
36 :
尚樹:2010/11/23(火) 00:29:02 ID:0LAsT4rzO
壁]∀-)y-~~…明日は休みだおw
37 :
尚樹:2010/11/23(火) 20:34:42 ID:0LAsT4rzO
壁]Д-)y-~~…明日から仕事だおw
38 :
もぐ:2010/11/23(火) 21:50:05 ID:NAntKolE0
久しぶりに地上に顔を出してみてもいいかな?イカん?なんちて、色々真似してみたでござるww
39 :
尚樹:2010/11/23(火) 22:06:06 ID:0LAsT4rzO
40 :
尚樹:2010/11/23(火) 22:16:53 ID:0LAsT4rzO
もぐ珍、久々に出てきて一言落ちかいなww
41 :
勝男風味:2010/11/24(水) 00:21:41 ID:MciD/SQ9O
壁]э`)y―~~お久しぶ〜り〜ね〜♪
規制解除ならなイカ…
イカり心頭
イカリング
尚キャン頑張りング
42 :
もぐ:2010/11/24(水) 22:17:43 ID:RYRD4Yx00
寝落ちだスマソ
43 :
尚樹味:2010/11/24(水) 23:06:08 ID:pKngZNPlO
壁]3`*)
>>41勝きゅん、おひさ♪
チンコおっ勃てて待ってたわ////
っちゅうか、イカは流行りなん?w
>>42 んまぁ〜、もぐ珍ともあろう人が寝落ち?w
許しませんわよ、プンプンッ!!w
44 :
まみ:2010/11/27(土) 16:24:12 ID:1noWiOr80
みんな〜〜!!
うれしすぎるぅ!
これも、尚樹にぃにぃのおかげざーます!
45 :
もぐ:2010/11/28(日) 21:06:00 ID:HlC+lmB20
宇多田のグッバイハッピネスいい曲だなぁ…
47 :
もぐ:2010/11/29(月) 22:50:14 ID:2ksxheb40
>>46 えーと
宇多田ヒカルの曲がいいと言ったから感謝されるのか、ずーっと出ないでいて、出てきたからありがとうって言われるのかw
48 :
もぐ:2010/11/29(月) 23:34:43 ID:VHn+K0Zn0
>>46 どっちにしても、こちらこそ^^ありがとうw
49 :
もぐ:2010/11/29(月) 23:55:26 ID:VHn+K0Zn0
俺はここ2年くらいずーっとグッバイハッピネスなわけでねwwしみておりますw
50 :
尚樹:2010/12/01(水) 22:36:23 ID:jpakOS+2O
電車]-)y-~~
>>49 ぱんちゅに我慢汁が染みてるんですね、わかります(ぉw
51 :
尚樹:2010/12/01(水) 22:39:17 ID:jpakOS+2O
>>44 ざーます、てw
リアクションが古いなww
>>45 宇多田の新曲?全く知らんわw
>>46 どういたしまして(ぇ
52 :
もぐ:2010/12/02(木) 22:19:07 ID:2bvNRfiK0
乾いてるんだぜ&渇いてるんだぜw
てすと
54 :
勝子:2010/12/07(火) 21:52:40 ID:5/z1gRPm0
壁]-)yー~~復活したわ♪
55 :
ハルミ:2010/12/08(水) 16:43:07 ID:5YcEh63eO
>>54 復活おめおめ♪
なのに、放置ポレーという試練に思わずレスしてもたwww
勝男君がきてくれたこと、きっとみんなまだ知らんとやろね?
きっと喜ぶはずバイ♪
んでゎ!
ノシ
56 :
勝子:2010/12/08(水) 19:30:21 ID:obJR6xWd0
>>55 壁]-)yー~~挨拶しにきただけやし〜♪
べ、別に誰かに相手してほしかった訳やないし〜♪
ハルミ〜ありがとうwww
ノシ
復活してるしw
参加したこと無かったけど、お騒がせっこのファンでした。
末永くね
ノシ
壁];-Д-)y-~~サ、サ、サ…サムイガナw
59 :
まみ:2010/12/15(水) 02:18:17 ID:s2JuEKFWO
こんばんにゃ☆
トイレ起き…ムニャムニャ
通りスガリ…ムニャムニャ
おやちゅみ☆
60 :
もぐ:2010/12/17(金) 23:21:03 ID:2g5c7qtV0
4時起きロケが続いたがとりあえず一段落。
61 :
尚樹:2010/12/22(水) 19:42:46 ID:HkIMpSE0O
壁]-)y-~~
忙しさのピークは過ぎた…
後は年末に向けてマターリしたいおw
62 :
尚樹:2010/12/24(金) 20:08:59 ID:me8CNkazO
壁]-)y-~~…今日はクリトリスならぬ、クリスマスだおw
今年の俺には関係ないおw orz
63 :
もぐ:2010/12/24(金) 22:33:38 ID:/8H1oZpa0
ベリーメリークリスマス!
64 :
ハル:2010/12/24(金) 23:49:09 ID:D5Sle7MtO
おいらにも関係ないクリスマス・・・orz
でも、メリークリスマス☆
☆
彡ミ
彡*◎。
彡彡‡*。
+彡★ミ♪ミ。
‡彡※◎ミ▲
+彡彡▲彡★ミミ+
彡゚◎彡♪ミ☆*ミ
。彡★*彡彡◆ミ+ミ◎。
彡彡彡☆彡彡ミ★ミミ
┃┃
■■■■
Merry ■■■ Xmas
■■■
___
65 :
ほのぼのえっちさん:2010/12/25(土) 20:16:21 ID:f/ZxS6cQ0
66 :
まみ:2010/12/27(月) 00:47:02 ID:oWG0Ff2jO
☆☆Merry X'mas!☆☆
おそっ!
67 :
まみ:2010/12/28(火) 11:24:09 ID:cvHyYMBYO
沖縄も少しずつ新年を迎える雰囲気だよん♪
チバリヨー!
68 :
尚樹:2011/01/03(月) 12:48:05 ID:SaeSN8yXO
壁]-)y-~~…アケオメコ♪w
69 :
もぐ:2011/01/05(水) 20:45:05 ID:kLQdXEtO0
おめー
70 :
ハル:2011/01/06(木) 08:28:05 ID:/fNZTrmnO
あけましておめれとーッ♪♪♪
今年もヨロシクですm(__)m
71 :
まみ:2011/01/06(木) 14:37:37 ID:jEpjdZ3HO
新年
明けまして
おめでとうございま〜す♪
今年は、みんな集まるといいなぁ。
景にぃ
会いたいよぉ
今年も宜しくね♪
うふ〜ん
74 :
ほのぼのえっちさん:2011/01/09(日) 17:00:07 ID:w/YZLUM/0
75 :
ほのぼのえっちさん:2011/01/22(土) 16:48:56 ID:bzOhG8rx0
76 :
まみ:2011/01/28(金) 11:37:06 ID:sRjy5/MyO
元気元気!
みんなも元気?
どこが元気か…ニヤニヤ♪
77 :
尚樹:2011/02/01(火) 21:06:04 ID:Ect7ou6JO
壁]-)y-~~どこ?…チンコ(ぉw
過疎ってるやんけwww
78 :
ほのぼのえっちさん:2011/02/06(日) 00:13:18 ID:EXDulE8r0
保守
79 :
ほのぼのえっちさん:2011/02/06(日) 16:11:23 ID:4aNncwQ9O
人妻さんいないかな?
ノ
81 :
尚樹:2011/02/08(火) 20:22:52 ID:IwcqSArTO
壁]-)y-~~…人夫ならおるで(ぇw
82 :
ほのぼのえっちさん:2011/02/20(日) 01:29:52.20 ID:99lXrGe2O
アゲアゲ↑
83 :
ほのぼのえっちさん:2011/02/23(水) 01:32:02.88 ID:Szh4pN+9O
アゲアゲアゲ↑
84 :
ほのぼのえっちさん:2011/02/24(木) 14:53:59 ID:9rdkA1vv0
sage
保守
86 :
ほのぼのえっちさん:2011/03/09(水) 04:16:28.36 ID:UgTa3rRbO
アゲアゲアゲアゲアゲ↑
ちなみに…りなです
勝君 だいすき!
87 :
ほのぼのえっちさん:2011/03/10(木) 06:40:30.51 ID:OYestcCLO
88 :
ほのぼのえっちさん:2011/03/15(火) 01:56:07.60 ID:6JVfeqsqO
ゲアゲアゲアゲアゲア↑
合掌
89 :
ほのぼのえっちさん:2011/03/18(金) 17:36:54.75 ID:0i7BGV0KO
負けるな
日本!
頑張れ!
頑張れ!
本当に頑張れ!
有難う
恐怖で心が挫けそうだ
でも頑張るよ!
お疲れさま
ε=ε=┏( ・_・)┛
103 :
きしのぶ:2011/03/28(月) 17:03:57.51 ID:3VJnuYJF0
タレントやアナウンサー目指してる紫ビ(漢字:お)麻ユ(漢字:とも)美は、大阪の北新地で夜の仕事してるし、お金払えばやらしてくれる売春婦ですよ。
ラジオに出てた時の様子がネットに出てるから探してみましょう!
ちなみにCHK中央放送研究会でレッスンしてるんだって。火曜日・木曜日の
19時から20時半〜21時くらいまでなので、そのくらいに前にいれば
会えると思いますよ。ちなみに大阪の天六付近に住んでるらしい。
それにしてもこんな奴がよく出れるし、よく出すよね。
怖い世の中だぁぁぁ
ネット見てたらNHKの朝連ドラにも出てたみたいっ
104 :
きしのぶ:2011/03/29(火) 21:36:54.26 ID:ptKsG0sV0
タレントやアナウンサー目指してる紫(シ)ビ(漢字:尾)麻(マ)ユ(漢字:友)美(ミ)は、大阪の北新地で夜の仕事してるし、お金払えばやらしてくれる売春婦ですよ。
ラジオに出てた時の様子がネットに出てるから探してみましょう!
ちなみにCHK中央放送研究会でレッスンしてるんだって。火曜日・木曜日の
19時から20時半〜21時くらいまでなので、そのくらいに前にいれば
会えると思いますよ。ちなみに大阪の天六付近に住んでるらしい。
それにしてもこんな奴がよく出れるし、よく出すよね。
怖い世の中だぁぁぁ
ネット見てたらNHKの朝連ドラにも出てたみたいっ
もう、誰も来ないの?
106 :
ほのぼのえっちさん:2011/03/31(木) 01:37:28.93 ID:m09fs5+fO
エッチな人妻さんいないかな?
107 :
景:2011/04/03(日) 11:27:33.50 ID:aUPmIyeu0
久しぶり。。ノシ
覚えてる?
108 :
景:2011/04/03(日) 11:29:31.11 ID:aUPmIyeu0
世の中色々あるけど、頑張らなあかんな!
またくるな(^−^)ノシ
俺も少しは大人になってん。。
109 :
まみ:2011/04/05(火) 11:10:32.18 ID:AAyAYVfKO
景にぃ?
110 :
まみ:2011/04/11(月) 14:47:47.74 ID:+vDvCcZJ0
景にぃに会いたいよ
すごく会いたいよ
111 :
まみ:2011/04/18(月) 23:24:35.46 ID:b64v5iCJO
みんな
大丈夫かな?
会いたいよ
景にぃ!
尚樹にぃにぃ ゆきねぇ
ななみちゃん
みんなぁ
チッチちゃんのとこも無くなっててびっくりしたよ
みんなどこに行ったの?
寂しいよ
112 :
まみ:2011/04/18(月) 23:26:48.36 ID:b64v5iCJO
もう一度みんなに会えますように…
アゲッ!
113 :
チッチ:2011/04/19(火) 00:17:38.00 ID:zaesGLmRO
おじゃましますm(__)m
>>111まみちゃん(;_;)
あのね、スレなくなっちゃったの(泣)
ハルもみんなもフラって戻ってきてももうないんだよね…
そしたらこっちに来ると思うけど、もし会えたらよろしくにゃぁ(T_T)
私もまた寄らせてもらうね(≧∀≦)ノ
こんばんわ
,,.. -‐'" ̄|
_,. -、/_;:;:;:;:;:_ /
_ ---- _-,.-'"`'' ‐-、`ヽ、 `ヽ、;:;`> ,、
ヽ;:;:;:;:;:;:;// \ `ヽ、 \|_ ,、 ,. -‐'´ l!
\;:;:;:/ / 、\ ヽ\ ヽ\_,ゝ ̄`',,..‐''"/ / /
ヽ/ i i i !、 \,. -―ヽ !l ヽ'i / / / / /
__,,.. ''li | i! ! !l_l_ヽ ´ヽヽ__! l ! l!ヽ!/ |/ /''´ /
_____ \∠;:;:;:;:;| i !i i'´lヽ_\ i!イl_rヽゝi l !l l、 / / ,'' 、 , ,-、/
.\''ー- .._`'ー\`ヽ、! i!、 il /il _,rl` `ヽl弋zソ /i / i l i、ゝ / | }/, / ノ _,.. 、
\ `''ー- `_ !lヽ lヽ\、弋z' , xx/'´ l/ /人l /./ ,| |// /''"´,..、/
\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
、--――――`- ..__レ `ヽ}从/` 'i'ー </i´ヽ--i' /\ ヽ' ヽ i ヽ _
`'ー .., , -‐''" ̄ ̄/ //=ヽ /!`-''´| {、 ヽ ヽ /`'--'
`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
_ / ヽ丶_,l :;:;:;:;:;:;:; ', ;:;:;:i;:;:;:;:;:; // \ ヽ `'' "´ さあ、真理の海へ飛び込もう
,, '´ >''`-i /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ', ;:;:;:;// `ヽ、 i あんたの持ってたカケラも
,,. '" ,,. '"/ / i!';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ \/ ` たまには見せてよ
`''´ ,,. -'" /'´ ,:' ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ',ヽ、}
,,.. -‐''" i!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`ヽ、;:;:;\i そーゆー訳で、この場はパーフェクトフリーズ!
''" /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;i
/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ ,,. -―――――- .._
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test
みんな、おはよ〜
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\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
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 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
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,,.. -‐''" i!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`ヽ、;:;:;\i そーゆー訳で、この場はパーフェクトフリーズ!
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おはよ
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
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ねむいよ
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ヽ/ i i i !、 \,. -―ヽ !l ヽ'i / / / / /
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.\''ー- .._`'ー\`ヽ、! i!、 il /il _,rl` `ヽl弋zソ /i / i l i、ゝ / | }/, / ノ _,.. 、
\ `''ー- `_ !lヽ lヽ\、弋z' , xx/'´ l/ /人l /./ ,| |// /''"´,..、/
\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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`'ー .., , -‐''" ̄ ̄/ //=ヽ /!`-''´| {、 ヽ ヽ /`'--'
`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
_ / ヽ丶_,l :;:;:;:;:;:;:; ', ;:;:;:i;:;:;:;:;:; // \ ヽ `'' "´ さあ、真理の海へ飛び込もう
,, '´ >''`-i /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ', ;:;:;:;// `ヽ、 i あんたの持ってたカケラも
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寝るね
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
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起きた
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\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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でもまだ寝る
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ヽ;:;:;:;:;:;:;// \ `ヽ、 \|_ ,、 ,. -‐'´ l!
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ヽ/ i i i !、 \,. -―ヽ !l ヽ'i / / / / /
__,,.. ''li | i! ! !l_l_ヽ ´ヽヽ__! l ! l!ヽ!/ |/ /''´ /
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.\''ー- .._`'ー\`ヽ、! i!、 il /il _,rl` `ヽl弋zソ /i / i l i、ゝ / | }/, / ノ _,.. 、
\ `''ー- `_ !lヽ lヽ\、弋z' , xx/'´ l/ /人l /./ ,| |// /''"´,..、/
\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
、--――――`- ..__レ `ヽ}从/` 'i'ー </i´ヽ--i' /\ ヽ' ヽ i ヽ _
`'ー .., , -‐''" ̄ ̄/ //=ヽ /!`-''´| {、 ヽ ヽ /`'--'
`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
_ / ヽ丶_,l :;:;:;:;:;:;:; ', ;:;:;:i;:;:;:;:;:; // \ ヽ `'' "´ さあ、真理の海へ飛び込もう
,, '´ >''`-i /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ', ;:;:;:;// `ヽ、 i あんたの持ってたカケラも
,,. '" ,,. '"/ / i!';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ \/ ` たまには見せてよ
`''´ ,,. -'" /'´ ,:' ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ',ヽ、}
,,.. -‐''" i!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`ヽ、;:;:;\i そーゆー訳で、この場はパーフェクトフリーズ!
''" /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;i
/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ ,,. -―――――- .._
, ';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:,`>''";:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ
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/ ヽ、;:;:;:;:;:ヽ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/≠/ ∨;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|
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122 :
まみ:2011/04/23(土) 22:56:39.38 ID:/O8STBLMO
チッチさん
みんなが来てくれるのを待とうね
今は、大変な状況だからゆっくり待ちましょう
ハルにぃもここに気づいてくれると思う。
あちらが再開したら教えてくださいね♪
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十章〜【別天津神(ことあまつがみ)の民】
遠くで鳴く小鳥のさえずりが鬼狐神社まで、響き渡る冬の日。
裏庭に、少し大きい車が止まっている。8人くらい乗る事が出来るバンタイプの車だ。
この車は、他の神社の神主や、お客さんを送迎する為に鬼狐神社が保有している車。
今は朝8時くらい。この車に荷物を詰め込む秀吉と鬼子の姿があった。
昨日の晩、ヒワイドリの呪縛の解読を途中で抜けてきたきび爺ときび婆。
それに、鬼子と織田、秀吉、般若の6人で話しをしたのだ。
力を持つ人間の民に協力してもらい、今回ハチ太郎が遭遇した力の強い
悪しき輩を見つけ出す。そして、散らす事を。
秀吉と鬼子はその準備をしている所だ。
きび爺、きび婆、弥次さん喜多さん。それに織田と舞子が2人を心配そうに見つめている。
きび婆が鬼子の方に近寄ってきた。
「鬼子・・あんまり無茶はせんでおくれよ。深追いは禁物じゃて」
「解ってるわ。心配しないできび婆。それに皆も。私は大丈夫よ」
鬼子は笑顔でそう答えた。
織田が秀吉の方に近寄って来て小声で伝える。
「おぃ秀吉。鬼子ちゃんが無理しそうな時は、お前が止めるんだぞ。
鬼子ちゃんに怪我させたら承知せんからな!」
秀吉は織田のその言葉に、深くうなずいた。
「解ってます。任せて下さい」
秀吉は口を真一文字にしてそう織田に答えた。
車に乗り込むのは、鬼子、秀吉、般若。それに今朝方やっと呪縛の解けたヒワイドリ。
秀吉が運転席に乗り込み、鬼子は助手席に乗り込む。般若は般若面となり、
鬼子の袂に入れられている。そしてヒワイドリアクセ付きカチュウシャを頭に・・・。
ヒワイドリは・・・徹夜明けで爆睡中だ。織田がそのヒワイドリを後部座席に放り込んだ。
きび爺が2人に声をかける。
「絶対に無理するんじゃないぞ。気を付けてな」
秀吉が、運転席の窓を開けみんなに挨拶をしている。
「じゃぁ行ってきます。皆さんも気を付けて」
鬼子も助手席の窓から皆に声をかけた。
「行ってきます。こにぽんに宜しく伝えて下さい」
こにぽんははだ寝ている。傷を負ったハチ太郎と、徹夜明けの般ニャーとともに。
そして、車は静かに走り出し鬼狐神社から消えて行った。
鬼子と秀吉。そして般若と爆睡中のヒワイドリを載せた車が高速道路を走っている。
鬼子は窓から見える外の景色を、寂しげな表情で見つめていた。
「鬼子ちゃん。車に乗るの初めてだよね。どう?走るより早いだろ!?」
秀吉は、鬼子の沈んだ表情を気にかけているのだ。
「ん〜・・・。私の方がもう少し早いかな」
今、車は時速80キロで走っている・・・。
「え・・・このスピードより早く走れるの・・・?」
「・・うん。でも、早く走れても輩のいる場所は解らない・・・」
秀吉は、輩とは違う話題にしようとしているのだが、鬼子の頭の中は
やはり、心の鬼からなる悪しき輩で一杯なのだろう。
「・・・そ、そうだね。早く走れてもね・・・。ハ・・ハハハ・・・」
秀吉の話しは撃沈される・・・。
一時間ほど田舎風の郊外を走っていたが、所々ビルも目立つようになってきた。
神社近くの風景とは全く違い、近代的なビルが立ち並ぶ。
後部座席ではまだヒワイドリが寝ている。呪縛が解けて直ぐ眠り込んでしまったのだ。
「ねぇ秀吉さん」
と、鬼子が声をかけてきた。
「ん?なんだい?」
「光の世って争い事とかはないんですか?」
輩と関連ずけを出来るだけしたくなかった秀吉だが、やはり、そうもいかないみたいだ。
「ん〜〜〜。あるよ・・・。欲のぶつけ合い、趣味、思考の違うもの同士の争いなんか・・・沢山ね」
「・・・殺し合い・・なんかも?」
「・・そうだね。この前、刑事さんが神社に来たろ!あの刑事さんはそんな争い事を
取り締まっている。大目付だったかな?闇世で言う。闇世も光の世も同じじゃないかな・・・」
「・・・そうですか・・・。何で争い事がおきるんでしょうか・・・どうして生きる者は
争い事をするんでしょうか・・・。皆幸せに過ごそうと思ってないんでしょうか・・・」
鬼子がいつも心で思っている事が、自然と口から出てしまっていた。
「鬼子ちゃんはどう思ってるんだい?光の世の事はまだよく解らないだろうけど、
闇世での争い事なんか・・・」
秀吉は、もう話題は何でもいい。鬼子に喋らせる事でなんとか元気になって欲しいと思っているのだ。
「・・・闇世では・・・悪しき輩との戦いがほとんどだけど、たまに、違う民同士のいざこざもあるの。
そんな話を聞くと、悲しくなってきます・・・」
「そっか。そうだよね。でも、それを直ぐに解決する事は出来ない。
少しづつ、少しづつ争いの無い世界にしていく為にも、まずはその輩を何とかしなくちゃね」
「秀吉さん・・・。今から会いに行く光の世の人間の民ってどんな人なんですか?」
「ん〜・・・。僕も良く知らないんだ。住所と名前だけ渡されたからね。織田さんの言うには
わがままな奴だって・・・。でも、狐火様の紹介だから悪い人じゃ無いよ。きっと」
「・・・そうですか。その人を危険な目に合わす事出来ないから、話しだけ聞く事にしませんか?」
怪我人を出したくない、最悪死んでしまうかもしれないほど強い相手を探してもらう事を、
鬼子は心配しているのだ。本当は自分の力で探し出し解決しなければいけない事なのに、
人間の民を危険にさらしてしまう事への不安が強くなっているのだ。
「鬼子ちゃん。そういう事は会ってみて、話をしてみてから決めたらいいんじゃないかな。
狐火様から力を貸してもらえって言われてるから、弱い人じゃ無いと思うし」
「でも・・・」
「解ってる。鬼子ちゃんの気持ちは解ってる。とにかくそれは会ってからにしよう」
「・・・はい・・」
鬼子の心は、自分一人で解決しようとしているのだ。同行している秀吉にも怪我はさせられない。
今から会いに行く人も危険な目にあってもらいたくない・・・と。
「ふわあぁ〜ぁあ」
後部座席からヒワイドリの声がした。
両腕を上に伸ばし大きなあくびをしながら目を覚ましたのだ。
「ん?ここ何処?」
周りをキョロキョロしながらヒワイドリがそう言った。
鬼子はヒワイドリから見えない様に、自分の身体を車の座席越しに小さくして隠れている。
秀吉はバックミラー越しに言う。
「ヒワイドリ、やっと起きたのか。どうだ?身体の調子は」
その言葉を聞いたヒワイドリは、呪縛を解放された事を思い出した。
「あっ!オレ今どんな風に映ってる?」
「・・・ニワトリだけど・・・」
「・・・そ、そうか。で、ここ何処?」
「車の中さ。今、狐火さまから力を借りる様にと言われた人の所に向かってる途中だよ」
「そうなんだ。まぁオレには関係ないけどな。で、鬼子。何で小さくなってるんだ?」
・・・バレてる。
「・・・ん゛?あんたと喋りたく無いからよ」
呪縛の解けたヒワイドリが、鬼子にどんなイタズラをしてくるか解らない。
今までに無いヒワイな言葉をかけてくるかもしれない。
鬼子は袂に手を入れ、般若面の口から少しだけ薙刀を出し、それを握った。
秀吉は笑顔だ。ヒワイドリが起きた事により鬼子は今、悪しき輩の事を忘れている。
「あ、ヒワイドリ。ニワトリの姿じゃ今後街中一緒に歩きずらいから、元の姿に戻ってろって
狐火様が言ってたぞ。それと、悪さをするなともね」
「そっかぁ〜。ダハハハハ〜。オレの天下だ。オレ様の天下だぁ〜!!!」
ヒワイドリは目から炎を上げている様に、上を向いて天を仰いでいる。車の中だが。
「ヒワイドリ、悪さしようとしたらその時点で消すからな」
と、鬼子の袂から聞きなれたガサツな声が聞こえてきた。般若だ。
「や、やっぱりいたのね・・・。そ・・・そんな事少しも考えて無いよ・・・。
ただちょっと吠えてみただけさ・・・」
ヒワイドリは冷や汗をながしながらそう言った。
「じゃぁ元の姿に戻るか」
そう言ってヒワイドリは、少し念を貯めた。
【シュフォ〜ッ】
ヒワイドリの周りに念の渦が出来る。車の中はその渦の風で紙切れや荷物などが浮き上がり
渦を巻いている。
「ちょ・・ちょっと、もう少し・・・」
と鬼子が言うと同時に、
【バシュー】
車の中が光に包まれ、車が・・・高速道路のアスファルトから一メートルくらい浮いてしまう。
【キキキキ〜〜〜】
慌てた秀吉が何とか車を立て直そうと必死に無言でハンドル操作している。
「こ、こら〜ヒワイドリ〜〜〜」
鬼子の叫び声が車の中に響き渡るが・・・どうしようもなかった。
【キキ〜〜キキ〜〜〜】
秀吉はやっと車を立て直したが、涙目になりハンドルにしがみ付いている。
もちろん鬼子も、涙目に・・・。
ヒワイドリは・・・自分の頭を天井に打ちつけ、抱え込んでいた・・・。
「いって〜〜〜・・・。ごめん。久しぶりだから力加減を間違えちゃった・・・」
元に戻ったヒワイドリの姿は、白髪に一部赤い髪が混じっている。
そして白色を基調とした着物姿に変わっていた。
鬼子は薙刀で突きながら言う。
「あんたねぇ〜・・・ほんっとに厄介者だわ。きび爺は何でこんな奴と一緒に行けって
行ったんだか・・・」
「う、うるせい。仕方ないだろ。本当に久しぶりだったんだから」
「で、あんたは元々何の民だったのよ?」
「ん〜〜〜・・・。思いだせん。完全には呪縛を解いてもらって無いみたいだからなぁ・・・」
「あ、それより鬼子!」
「ん゛?何よ・・・」
「乳の話しでもしようじゃないか」
【プッス】
薙刀がヒワイドリの眉間に突き刺さる。
「お・・・鬼子。それ以上力を入れないでね・・・。
オレ、死んじゃうから」
「ふん。役立たずが」
車はそんな皆を乗せ、高速道路を降りて行った。
大都会。近代的なビルしか立ち並んでいない。こんな所にその人間の民がいるのか。
人が溢れかえり、肩をぶつけながら歩く人々。そんな中、秀吉は片手にメモを握り締め
片手でハンドルを握り締め、ユックリと車を進めていた。
そのまま小さな細い路地を入っていく。少し進むと人の波もまばらになり、静まり返った所に出てきた。
「あっ、ここだ!」
と秀吉は5階建てのビルの前に車を止めた。
そのビルの前に駐車スペースがあるので、そこに車を止めなおした。
鬼子達は車を降り、ビルの看板を見上げた。
【HIBIKI STUDIO】ヒビキ・スタジオと書いてある。
小さな玄関を入ると、階段と小さな電話だけがある空間。そして階段の手前には鉄格子が施している。
秀吉は番号をクルクル回すレトロな黒電話に目をやった。その横に何か書いてある。
【御用の方は受話器を取り、○○番まで】
秀吉は受話器を取り、○○と回した。
【トゥルルルル〜・・・】
呼び出しているが、中々出てくれない。その横で、ヒワイドリが鉄格子をこじ開けようと
【ガシャガシャ】やっていた。
「ハァ〜ィ。どちらさん?」
とやけに色っぽい声が受話器から聞こえてきた。
「あっ、鬼狐神社から来た者です」
「あぁ〜早かったのね!ちょっとまってね。柵の鍵を開けるから。
階段登って二階まできてくれる?じゃぁね」
【ガチャン】
と受話器が切れた。それと同時に
【ポーン】
と言う音が柵の鍵の所から聞こえてきた。どうやら、鍵が開いたようだ。
「うす汚い所だなぁ」
ヒワイドリが裾を少し上に上げながらそう言った。
【キッ】とヒワイドリを睨んで鬼子が言う。
「あんた、言葉を慎みなさいよ!」
階段を上がって行くと、なにやら音が聞こえてくる。秀吉は、その音が聞こえてくるドアを開けた。
すると、ガラス張りのぶ厚いドアがもう一つある。その向こう側では、誰かが何かをしているようだ。
横に有る階段から誰かが降りてきた。
「あ〜ら。良くいらしたわね〜ん」
その色っぽい声の主は、見た目20代前半の女性。とても色っぽく見える。
髪型は茶髪のセミロング、そして白いシャツを着ているのだが、
そのシャツをむやみに、そして力強く持ち上げる胸・・・。
鬼子はそれを見て・・・呆然としている。
秀吉も違う意味で呆然としているが。
【シュッ】
ヒワイドリがその女性の横に素早く動いた。
「ち、」
【プスッ】
鬼子が素早く、ヒワイドリのお尻に薙刀を刺す。
そんな鬼子とヒワイドリの無言のやり取りを他所に、その女性が鬼子の腕に手を添えた。
「あなたが鬼子ちゃんね!か〜わいぃわね」
「え・・あ・・あのぅ・・・」
「解ってるわ。連絡があったから」
そう言いながら、その女性はセミロングの髪の毛をユックリかき上げた。
薙刀がお尻に刺さっているヒワイドリが、その女性の髪の毛の香りを
【クンクン】
と心地良さそうな笑顔で匂っている。
秀吉は、そのヒワイドリを手で隠す様に押しのけながら言った。
「初めまして、鬼狐神社に仕える秀吉と言います。貴女が狐火様から紹介された方でしょうか?」
「いいぇ、違うわ。私はここの事務所の社長よ。社長兼神主だけどね。響って言うの。宜しく〜」
「あ・・・宜しくお願いします」
その響社長はガラス張りの中にいる人達を指差しながら言った。
「紹介されてるのは、あの子達よ」
手前に三人。そのまた奥にガラス張りの部屋があり、その中に一人。
「今、新曲の音合わせ中だけど入っていいわよ」
響社長はそう言いながらガラスの扉をあけた。すると、中では心地のいい音楽が流れている。
「あっ!」
鬼子が目を見開き、焦りながらその人達に指をさしている。
「ぁあ〜・・・金色のビルの看板の人達〜〜〜!」←第五章参照。
秀吉も驚き、唾を飲み込んでいる。
「あぁ・・・テレビに出てる人だ・・・」
その言葉を聞いた響社長は、キョトンとした表情で言う。
「あれ?聞いて無かったの?彼等は歌手よ〜」
「歌手!?」
「そう。中で一人音あわせしている男の子が音麻呂で、手前にいる男の子が歌麻呂。
2人一組のグループで唄ってるわ。そして、手前にいる女の子2人、茶髪の子が
詠麻呂で金髪の子が奏麻呂よ。彼女達も2人一組のグループなの〜」
「知ってます、見たことあります。テレビにもよく出てますよね」
秀吉が目をキラキラさせながらそう言った。
「そう。最近人気が出てきてね、彼らが作る曲っていい曲なのよ〜ん」
響社長は両手を掴み、腰を振りながら満面の笑顔になっている。
「入っていいわよ〜ん!」
秀吉は、響社長の揺れる腰に誘われながら中に入って行った。鬼子も付いて行ってるが。
ヒワイドリは鬼子により、中には入れてもらえなかった。
中にいる女性二人と響社長に悪さをしてもらいたく無いからだ。
見た事の無い空間に圧倒されながら、鬼子が挨拶をする。
「こ、こんにちは。初めまして、ひのもと鬼子と言います」
「ぼ、僕は秀吉です」
歌麻呂(男)と言う人が2人の言葉に返事をしてくれた。そして、鬼子の方を見た。
「あぁ〜よく来たね!君の事聞いてるよ。闇世の鬼の民なんだってね。初めて見たよ〜。
可愛い顔してるから君なら絶対売れるよ〜。俺は歌麻呂。宜しくね。」
歌麻呂はニコニコ笑顔で手を振りながらそう答えた。
すると、その横にいた茶髪の詠麻呂(女)が歌麻呂(男)の背中を【ポン】と叩きながら言う。
「違うでしょ!力を借りに相談に来てるんだから。ね、鬼子ちゃん!」
鬼子は少し引きつった笑顔で返事をする。
「は・・・はい」
「私は詠麻呂。宜しく〜」
詠麻呂(女)も手を小さく振りながら挨拶した。
鬼子も少し焦りながらまた挨拶をする。
「あ・・よ、宜しくお願いします」
奏麻呂(女)が鬼子と秀吉の手を引いて言った。
「まぁまぁ立ち話もなんだから、座ってよ。私は奏麻呂よ。宜しくね」
またまた、鬼子と秀吉は挨拶をする。
「宜しくお願いします」
音麻呂(男)と言う人は、もう一つのガラス張りになった部屋の中で、ピアノを弾いているみたいだ。
音合わせ中と言ってたから、その作業中なのだろう。
中から手を振ってくれているので、鬼子は頭をチョコンと下げて挨拶をした。
ヒワイドリは・・・ガラス張りの部屋の外で、口に指を入れながらこちらの雰囲気を
うらめしそうに覗いていた。
歌麻呂(男)は、自分の前の機械のつまみを、鬼子達には見えない様にしながらスライドさせた。
そして、鬼子達の方に向き笑顔で言った。
「で、その鬼の民の子が俺たちに相談って何かな?」
「は、はい・・。実は・・・」
と鬼子はココに来たいきさつを丁寧に全て話した。
歌麻呂(男)はその話を静かに聞き、腕を組みながら鬼子を見つめている。
「ふ〜ん。そんな事になってたのか。大変だったね。それで、俺達にそいつの居場所を
探して欲しいと」
「は、はい。ハチ太郎の・・犬の鼻を頼りに出来なくなってしまったので、
狐火様が貴方たちの力なら探し出せるんじゃないかと・・・」
神社の人達、そして同行している秀吉からも、しっかり説明して力を貸してもらえる様にと
念を押されていたので全てを話した。
だが、やはり鬼子の心は人間の民に迷惑をかけたくないと思っているようだ。
迷惑だけでは済まないかもしれない、とても危ない場所に同行してもらう事をためらっていた。
鬼子は、歌麻呂(男)と目を合わさず少し下を見つめている。
歌麻呂(男)は、鬼子のその表情を見ながら言う。
「山の中を探すとなると、俺達4人の力が必要だなぁ。単独ではまず見つからないからね。
何日かかるか解らないから、食料も持って行った方がいいよなぁ」
詠麻呂(女)は歌麻呂(男)をからかう様に言う。
「シャンプーやリンス、歯磨きセットとお化粧道具も持っていっていい?」
「キャンプじゃねぇんだから、だ〜め!」
「え〜、じゃぁ着替えくらいはいいでしょ!女の子なんだから」
詠麻呂(女)は奏麻呂(女)にくっ付きながらそう言った。
「き・・・危険な目に合うかもしれません。私はまだ、その悪しき輩に遭遇してませんが、
とても強い心の鬼が取り付いた輩なのは、間違いありませんから」
鬼子の表情は寂しげだった。歌麻呂(男)、詠麻呂(女)、奏麻呂(女)も、その鬼子の表情に
どことなく自ら壁を作っている様に見えた。
鬼子は続けて言った。
「闇世では、その心の鬼に取り付かれてしまうと悪しき輩となってしまうんです。
そうなってしまうと・・・人間の民にはもどれません・・・」
奏麻呂(女)が鬼子を上目使いしながらジッと見つめる。
「鬼子ちゃん・・・。さっきから怖い話ししかしないね。私達の事を・・・
遠ざけてる?・・・」
鬼子は【ドキッ】っとした表情を浮かべる。
「ち・・・違います。じ・・事実をちゃんと伝えなきゃと思って・・・」
歌麻呂(男)の表情が少し厳しくなる。
「・・・鬼子ちゃん。独りで行くのかい・・・?」
その言葉を聞いた鬼子は・・・下を向きながら、膝の上で握りこぶしを作っていた。
「いや・・私は・・・」
秀吉は慌てて、鬼子の言葉をさえぎる様に言う。
「私も行きます。行きますって言うか・・・私は当事者なので」
歌麻呂(男)は鬼子を見つめながら首をかしげている。
「いや・・・秀吉さんを置いて、独りで行こうとしている様に見えるんだけど、
違うかな?鬼子ちゃん・・・。狐火様からの紹介なので、ココへ来たけど
断ってもらえる様に・・・って・・心がそう言ってるよ」
秀吉は驚いた表情で、鬼子の方を見て言う。
「お・・・鬼子ちゃん・・・それ本当なのかい・・・?」
鬼子は目をつむり、下を向きながら少し震えていた。
「・・・だ・・だって・・・秀吉さんも見たでしょ・・。ハッちゃんのあの姿・・・。
もし、秀吉さんや皆さんがあんな事になってしまったら・・・。
死んでしまうかもしれない・・・」
歌麻呂(男)が、鬼子の方に背を向けて、中にいる音麻呂(男)の方を見ながら話した。
「鬼子ちゃん・・独りで行ってどうするの?」
「・・・私独りでも大丈夫です。時間はかかると思いますけど、
絶対光の世は守ってみせますから・・・」
歌麻呂は振り向き、鬼子の顔をジッと見る。
「独りで?」
「はい」
「傷ついても?」
「・・・はい」
歌麻呂(男)は鬼子の目を見ていた。鬼子の心の声を読みとろうとしているみたいだ。
ジッと見つめ続ける。その状態で時間が少し過ぎて行く。
歌麻呂(男)が急に立ち上がった。
「ダメダメ〜鬼子ちゃん。駄目だよ〜。そんなんじゃぁ悪しき輩に勝てないよ!
みんなの力を合わせないと、倒せる者も倒せなくなる。そうだよなぁ?音麻呂(男)!」
歌麻呂(男)がガラス張りの中の音麻呂(男)にそう声をかけた。
中にいる音麻呂(男)に今までのやり取りが聞こえていたみたいだ。
音麻呂(男)は大きくうなづいている。
詠麻呂(女)が鬼子の方を向き笑顔で言った。
「闇世だけの問題じゃぁないんだし、協力して探し出さなくちゃぁね。
鬼狐神社の狐火様からのお願い事なのに、鬼子ちゃんを独りで行かせるなんて出来ないわ」
「で・・でも・・・」
鬼子のその暗い表情を見ていた奏麻呂(女)が少しおちゃらけて言う。
「それに、織田さんがお世話になってる神社だもの、なおさらほっとけないわ」
奏麻呂(女)のその言葉を聞いて、秀吉は思わず口から言葉が出てしまった。
「お、織田さんとはどんな関係があるんですか・・・?」
「関係って・・・ぃやね〜そんな事聞かれたら恥ずかしくなっちゃう」
奏麻呂(女)は顔を赤くして下を向いた。
それを見ていた歌麻呂(男)が笑いながら言う。
「こらこら、からかっち〜駄目だろ奏麻呂。秀吉さん、俺達織田さんに古武道習ってた
時期があるんですよ。子供の頃なんですがね。あの人だけは倒せなかったなぁ〜」
「え・・・習ってたの!?」
「うん。小学5年生くらいの時だったかな。生意気な俺たちをぶん投げて自慢してたよ」
「5年生をぶん投げて自慢・・・」
「だから鬼子ちゃん、俺達は一緒に行くよ。それと、手紙にも書いてたけど狐火様が
鬼子ちゃんの事をすごく心配しててね。ひどく傷ついた友達や、怪我をした神社の人達の事が
心に残ってるから、俺達の同行を断るかもって、独りで行こうとするかもって書いてあった。
狐火様が書いてた事、当ったなぁ」
続けて歌麻呂(男)は言う。
「鬼子ちゃん。仲間って大事だよ〜。独りで解決するとか、守ろうなんてしちゃ駄目さ。
協力し合って、初めて力が発揮される。だから皆を守る事ができるんだ。
その事を解ってて欲しいな」
鬼子は嬉しい様な、でもやはり心配なのは拭い切れないでいた。
「あ・・・有難う御座います」
歌麻呂(男)が、場の雰囲気を少し変えようと笑顔で話しだした。
「俺たちの紹介がまだだったね。今はこの音楽活動に落ち着いてるけど、それまでは色んな事をしたよ。
元々俺たちって、主体にしている核たる物が無かったから。色々やりすぎて、
色んな所から破門状態だし・・・。唯一歌手としての活動は自由って所かな」
「は・・・破門・・ですか?」
「そうなんだ恥ずかしい話しだけど。神主も山伏も陰陽師も古武道も、
その他の神に関わる事全部ね・・・。神職では浄階って言って最高位になる所だったんだけど、
面白くなくなってきて・・・。もう全部笑い話だよ」
秀吉はその言葉に驚きの表情を浮かべた。
「え?浄階って年齢など関係ないんですか?長く仕えてる人がなれると聞いた事がありますけど」
「その通りですよ。浄階の職に就いてた人が俺たちにはその力があるって言って、
勝手にその職に就けようとした事があったんです。
でも、俺達の年齢や態度やら回りからすごく反対されて」
秀吉の驚きはまだまだ続いている。
「皆さんは何故、神主や山伏や陰陽師、古武道と色んな神職に精通してるんですか?」
「それが・・・良く解らないんです。何か俺達の血には、大昔、この世を作り上げた神様の血が
濃く混じってるって誰かが言ってたんだけど。架空の神話なんですよ。
俺達の神職の吸収の早さに冗談で言ってると思います。
別天津神(ことあまつがみ)って神様達らしいんだけど。でも今の俺たちには関係ないし、
どうでもいい事なんですけどね」
歌麻呂(男)は鬼子の方に向いて話した。
「俺たちの音楽活動の原点は祝詞(のりと)なんだよ。神に捧げる歌や舞をしてた時に
なんかこう、ピーンときてね。人の心を和らげるって言うか、癒すって言うか。
笑ったり怒ったりも表現出来るから、今の俺たちにとても合ってるんだよ。
さっき、鬼子ちゃんが悪しき輩の居場所が解らないって言ってたよね。俺たちにもすぐ
その居場所が解るかって言えば無理だと思う。でも、自然の力を借りれば何とかなるかもしれない」
「し、自然の力・・ですか?」
「そう。何かを探す時は、神主、陰陽師の力ではなく山伏の力の方が勝ってるからね。
特に山の力を借りて探してみるよ」
鬼子の耳には聞きなれない言葉だ。山伏、陰陽師、祝詞・・・。そう言う神職が
光の世にはあるのだ。
「皆さんは、必ず私が守ります。だから安心して下さい」
鬼子のその言葉に、歌麻呂は呆れ顔だ。
「いや、俺たちは大丈夫だよ。自分の身くらいは自分で守るよ」
「いえ・・・本当にとても強い輩みたいなんです。
皆さんに怪我でもされたら・・・必ず守りますから。」
「ハハ・・。大丈夫だって、そんなに守る守るって言ってちゃぁ自分の事も守れなくなっちゃうよ」
そんなやり取りをしている所に、音麻呂(男)が中のマイクを通じて話しかけてきた。
「歌麻呂〜詠麻呂、奏麻呂〜。ちょっと中に入ってきてくれ」
音合わせの打ち合わせ中だと響社長は言っていた。鬼子達は彼らの邪魔をしないように
この場で待つことにした。
すると、音麻呂(男)が中から初めて出てきた。
そして、目の前の機械をイジっている。何かのボタンを押したようだ。
「鬼子ちん!ガラス越しに鬼子ちゃんを観察してたんだけど、
俺たちと同じように、すごく頑固だね〜。気が強いって言うか優しすぎるって言うか。
そんな鬼子ちゃんを見て今作った曲があるから聞いていってよ!」
「え・・?」
と、あっけに取られている鬼子と秀吉。
その2人を置いて、音麻呂はまた中に入って行った。
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十一章〜【光の世の力!?】
空高く、筋雲が伸びる冬の15時頃。高速道路を走る鬼狐神社所有の車がある。
運転席には秀吉、助手席には人の姿のヒワイドリ。
その後ろに鬼子と詠麻呂(よみまろ女)、奏麻呂(かなまろ女)、
歌麻呂(うたまろ男)、音麻呂(おとまろ男)が乗っている。
HIBIKI スタジオの響社長は、一応神主なので事務所を離れる訳にはいかない。
と言うか・・彼らが鬼子と同行を決めたので、スケジュールの調節に
あたふたと謝りの電話などをしなければいけなかった。
車の中は、彼らの曲が流れていて心地のいい空間になっている。
車の向かう先は、鬼狐神社から北へ50キロほど離れた山間の中。
そこに、小さなお寺があるらしい。その場所を基点に、
心の鬼に取り付かれ強い悪しき輩となった者を探す為、移動している所だ。
ヒワイドリが・・・助手席から後ろを覗き、鼻を大きく開いて笑顔で匂いを嗅いでいる。
鬼子は、薙刀の枝の部分でその鼻の開いたエロ顔を一生懸命前へ押し返していた。
「ねぇねぇ、鬼子ちゃん。この鼻の下が伸びている変顔さんは誰?」
鬼子の横に座っている詠麻呂が、そう聞いてきた。
変態の話題にしたく無かった鬼子だが、同行している者の紹介はしなくちゃいけない・・。
仕方なく、恐る恐る話す事にした。
「あ・・あのう・・・。こ、こいつも闇世の民で、多分鳥関係の鶏の民だと思います」
4人は目が輝いている。聞いた事は有るが、実際に闇世に生きる色々な民達を見た事が無いからだ。
「へぇ〜。鶏の民かぁ〜。でも人間と同じ姿してるのは何故なの?」
奏麻呂達の興味は当分続くだろう・・・。そう思った鬼子は、早くヒワイドリの話から
離れたかったので、口早にこの変態の説明をした。
「闇世には数多くの民が住んでますけど、元々は皆さんと同じ姿なんですよ。
力を出す時にその民の本来の姿に変わるんです。でも、こいつは、闇世でイタズラばかり
していたみたいなので、光の世で言う警察、闇世で言う大目付によって
罰として鶏の姿にされてたみたいなんです」
すると奏麻呂が椅子から乗り出して来た。
「ぇえ?鶏??なってみて!」
超〜笑顔な奏麻呂。それにとても良い香りがするので、ヒワイドリは上機嫌だ。
「よお〜っし!女性人の頼み事とあっちゃぁ人肌脱ぐしかないなぁ!」
と、ヒワイドリは少し念を入れた。
それを見ていた秀吉が、慌てて言う。
「ヒ、ヒワイドリ。念の込め方を間違えるなよ。事故っちゃうから」
「わ〜かってるって!うっせ〜なぁ。ほらよっ!」
【バシュン】
・・鶏の姿に一瞬にして変わった。今回、車は中に浮く事無く・・・。
「ぉおお〜」
詠麻呂達のどよめきが興る。
「ほ、本当だぁ〜!鶏になってる〜。キャハハハハ〜!か〜わいぃ」
詠麻呂の意外な反応。奏麻呂も一緒になって喜んでいる。
「乳の話をしようじゃ無いか」
ヒワイドリのいつもの唐突なその言葉に凍りつく・・・のは、鬼子と秀吉だけだった。
詠麻呂は、ヒワイドリをバンバン叩きながら喜んでいる。
「なぁに〜、乳の話って〜。お子茶間なのね〜ヒワイドリって!」
叩かれているヒワイドリは喜んでいいのか・・顔を歪めながら悩んでいた。
何故なら、痛いのだ。とても痛いのだ。詠麻呂の叩く力が尋常じゃ無い・・・。
奏麻呂が後ろから手を伸ばしてきた。そして、ヒワイドリの首を掴み、
【グイッ】と自分の方へ引き寄せ、抱きついた。
「キャッハ〜!いい感じいい感じ〜!」
ヒワイドリは、奏麻呂の胸に押し当てられているのだが・・・顔は・・苦痛に満ちている。
ヒワイドリの顔が・・徐々に赤くなりだした。そして、赤くなった顔を通り越し、
青くなり始めた。・・・息が出来ないほど締め付けられているのだ。
「あ・・ぁあ・・」
ヒワイドリの言葉が小さく口から漏れて聞こえてくる。
詠麻呂が奏麻呂からヒワイドリを取り上げようと、足を引っ張った。
すると、負けじと奏麻呂も首を引っ張る・・・。
「私のよ〜返してよ〜」
「あんた独り占めする気?貸しなさいよ」
と声を掛け合いながら、ヒワイドリを引っ張り合いしている。
息が出来ない状態で、引っ張られるヒワイドリ。彼には・・もう意識は無かった。
強い・・とても強い人達だ・・・。と鬼子は思った。
ヒワイな言葉を受け流し、自らそれを楽しんでいる・・・。
鬼子には到底真似出来ない光の世の力だ・・・。
歌麻呂、音麻呂もその光景を見てケラケラ笑っていた。
そんな楽しい?時間が過ぎ、車は小さなお寺へと着いた。
本当に小さなお寺だ。本堂と、ここの神主が寝泊りしている建物だけある。鬼狐神社とは全然違う。
参拝客も見当たらない。車の音に気付いたのか、お寺からカラフルな洋服を着た人が出てきた。
鬼子達は、車から降りてその人物に挨拶をする。
ヒワイドリは・・・鶏の姿で、助手席で気を失ったままだ。
「いやぁ〜よう来なすった来なすった。鬼狐神社の人と、響ちゃん所の人達だね!」
出迎えてくれたのは、腰が曲がった見た目80歳過ぎくらいのお爺さん。
白いヒゲが長く伸びた神主さんなのだが、着ている服が・・・
赤、黄、青と・・・原色に近い色の洋服を着ている。
「わしゃぁ〜ココを守っとる神主で、鷲の民の鈴木ちゃんっちゅーんじゃ。宜しくな」
【ちゃん・・・って・・】と皆思い苦笑いしているが、
鬼子の目の色が変わる。もちろん他の皆も同じだ。
「宜しくお願いします。私はひのもと鬼子です」
他の者も挨拶をしたが、頭の中には、“鷲の民”と言う言葉がこだましている。
光の世の民の人達はもちろん、鬼子も鷲の民を見るのは初めてなのだ。
「鈴木ちゃん!鷲の民になってちょうだい!」
奏麻呂が飛び出して行き、そのお爺さんである鈴木ちゃんにそう言った。
怒られると思った鬼子と秀吉は肩を少しすぼめ、鈴木ちゃん(お爺さん)を伺うように見ていた。
鈴木ちゃん(お爺さん)は・・・超ニコニコ顔だった。
「おぉ〜う。えぇじゃろ。その代わりアンタ等のサインをちょうだいな。
わしゃぁ〜詠ちゃん奏ちゃん2人の大ファンなんじゃ。ダハハハハ〜」
「ぇえ〜私達の事を知ってるんですか?ラッキー!」
秀吉が小さく手を伸ばす。目の前の状況が、心の鬼に取り付かれ悪しき輩となった話題とは、
正反対のミーハーな話しになっていたからだ。
「あ・・あのぅ、鈴木さん・・・」
秀吉の声は、鈴木ちゃん(お爺さん)に全く届かない。
「よ〜し!見ておれ」
と、鈴木ちゃん(お爺さん)は言いながら念を軽く込めた。
【バシュー】
凄まじい音とともに、鈴木ちゃん(お爺さん)の姿が変わっていく。
この世の者では無いとてつもない威圧感の有る形相。鋭い爪とクチバシ。鬼子達を覆う様な大きな体と翼。
鷲の形はしているが、どこと無く人間の形も残している。
そして、何より鷲が持ち得る強大な力が、鬼子達を震わせていた。
腰の曲がった先ほどの弱々しい姿はどこにも見当たらない。
「す・・・すごい・・・。こんな事があるなんて・・・」
鬼子は鷲の姿になった鈴木ちゃん(お爺さん)を呆然と見上げていた。
鬼子達は、鈴木ちゃん(お爺さん)が寝泊りしている部屋にいる。
壁には・・・詠麻呂と奏麻呂のポスターばかり・・。
目の前にいる鈴木ちゃん(お爺さん)とこの部屋を見る限り、弱々しいミーハーなお爺さんにしか見えない。
先ほどの姿は、やはり闇世の力の民の本来の姿なのだろう。
鬼子達は、そのお爺さんの底知れぬ力を感じてからは、身震いばかりしていた。
ヒワイドリは、元の姿に戻り皆と同じ場所にいるが、まだ青い顔をしてうな垂れている。
締め付けられてた後遺症がまだ残っているのだ。
部屋の中には詠麻呂と奏麻呂の曲が流れていて、鈴木ちゃん(お爺さん)はノリノリでみんなに出すお茶を入れていた。
鈴木ちゃん(お爺さん)は上機嫌だ。大ファンの詠麻呂と奏麻呂が目の前にいるからだ。それと・・・。
「鬼の民の鬼子ちゃんだったね!?そんな隅に座らずにこっちに来て囲炉裏にあたりな!」
「あ、は、はい。有難う御座います。でも私はここで・・・」
「・・・気にしとるのかぃ?闇世の事を。光の世にいる時はそんなこたぁ〜気にせんでえぇよ」
鈴木ちゃん(お爺さん)は優しい顔を作りそう言った。
疑問に思った音麻呂が鬼子の方を見た。
「え?気にするって何を?」
「そ・・それはぁ・・・」
鈴木ちゃん(お爺さん)は皆にお茶を出した後、鬼子の手を引っ張って囲炉裏のそばに座らせた。
「ワシらの鷲の民と鬼の民は、昔っからいざこざが絶えんでな。血の気の多い奴等が
お互いの民に手を出したりして、色々あるんじゃ。鬼子ちゃんはそれを気にかけとるみたいだが、
そんなこたぁ〜今ココじゃぁ関係ありゃせんよ。そうじゃろ般若面」
音麻呂(男)、歌麻呂(男)、詠麻呂(女)、奏麻呂(女)はキョトンとしている。
話しの内容は解ったのだが、最後の般若面と呼びかけたのは誰に対してなのか・・・。
すると、鬼子の辺りからガサツな声が聞こえてきた。
「そうじゃ、鬼子よ。光の世ではそんな事関係ないわぃ」
4人は少したじろぐ。鬼子からガサツな声が聞こえてくるからだ。
「お・・鬼子ちゃん。い、今の声は・・鬼子ちゃんなの?」
詠麻呂が驚いた顔でそう鬼子に聞いた。
「ち、違います。これです」
と、鬼子は自分の袂から般若面を出してきた。
すると、ヒワイドリが飛び上がり般若面に指を指しながら言った。
「そこの4人さん。こ、こいつには気をつけろよ。とんでもない悪党だからな」
「誰が悪党じゃぃ。馬鹿たれが!」
4人は鬼子から少し離れてその様子をジッと見ている。
鬼子の頭には汗が流れる。
「ホホホ。お前さんもだ〜いぶ気が長くなったな」
鈴木ちゃん(お爺さん)が般若面にそう言った。
「以前のお前さんなら悪口を言った奴は直ぐ食べてたんだがな」
ヒワイドリの額から汗が流れる。
「え・・・食べる・・?」
「冗談はそれくらいでえぇ。鷲の民の元長老よ」
般若面はそう言って、白い縦長の膨れ上がったお餅のような姿に変わった。
また、4人はその般若の姿に驚きと・・感動と。
「おぃおぃ。闇世の民って何か・・・楽しそうだな」
鈴木ちゃん(お爺さん)は、般若のその姿に驚き優しい顔の眉間に深いシワが出来る。
「お・・お前さん・・・。その姿になれるっ中事は、狐火様に解いてもらったのか。
そ・・そうか。今回の悪しき輩は・・そんなにヤバイ輩なのか・・・」
「いや、まだそうと決まっておらん。やられた仲間は、力が弱いからな。
ここに座ってる鬼子もそうじゃ。まだまだ鬼としては未熟なほうじゃよ」
そう言いながら、般若はヒワイドリに出されたお茶を自分の前に持ってきて飲んだ。
ヒワイドリは・・・何も言えない。
「あのう・・・」
と鬼子は鈴木ちゃん(お爺さん)に声をかけた。
「鈴木さんは、今般若が言ってた元鷲の民の長老・・・って」
鈴木ちゃん(お爺さん)は笑顔で答える。
「そうじゃよ。だ〜いぶ昔じゃが鷲の民の長老をしとった。
今は隠居の身で、大白狐様からの命(命令)で、ココの守り役をしとるんじゃ。
こっちの世界はえぇのう。平和だし、綺麗なお姉ちゃんは多いし、
何より、心地のいい歌もあるからなぁ」
詠麻呂達4人は苦笑いしている。闇世の力の民の中でも恐ろしいとされている鷲の民・・・。
しかもその長老をしていた人が、自分達の音楽を気に入ってるとは・・・。
とても複雑な気分だろう。
音麻呂はふと何かを疑問に思い、鈴木ちゃん(お爺さん)に声をかける。
「鈴木ちゃん、」
音麻呂がそう声をかけると、鈴木ちゃん(お爺さん)の形相が一瞬にして非常に怖い顔になる。
「“ちゃん”とはなんじゃぃ!?“さん”を付けろ!ワシの事を“ちゃん”で呼べるのは
綺麗なね〜〜〜ちゃん達だけじゃ」
男陣の音麻呂、歌麻呂、ヒワイドリの脳内は、
【・・・・・・・・・・殺される・・エロジジイには気をつけよう】である。
もう一度音麻呂は言いなおした。
「す、すみません・・。ちょっと疑問に思った事がありまして・・・。
それほど力の強い鈴木さんがいらっしゃるのに、何故輩退治にいかれないんですか?」
鈴木ちゃん(お爺さん)は、彼等4人の方を見て少しうなだれる。
「そうか・・・今の神職経験者って、そんな事も知らんのか・・・。
ぬるいお湯の中に浸かってしまった者は、皆そうなのかのぅ・・・」
その言葉を聞いた彼等4人は冷や汗を流している。
鬼子も無言で冷や汗を流している。同じような疑問をいだいていたからだ。
「すまんのう鷲長(わしおさ、元長老の事)殿。こやつらはまだまだ半人前でな。
わしの方から説明するわぃ」
見かねた般若が、みんなの方へと振り向いた。
「この鷲長も、鬼狐神社の狐火も、その他、神社、寺、祠などに仕える守り役は皆
鬼子やそち達(4人)より力の強い民達ばかりじゃ。当然悪しき輩をも上回る力を
持っておる。しかし、光の世の神社、寺、祠からは出らんのじゃ。
神職関係での行事などで、神社から出たり、私用で出たりは出来るんじゃが、
心の鬼関係では出られんのじゃよ。出られんと言うより出ないと言う方が合ってるがな」
歌麻呂が、その言葉に反応した。
「あ・・それって・・ひょっとしたらこの国の結界に関係あるとか・・・」
「ほほう、お主は少し勉強しとるみたいだな。その通りじゃ」
歌麻呂が、音麻呂、詠麻呂、奏麻呂の方を見た。
「ほら、俺達勉強したじゃないか。神社や寺、祠の位置関係を」
歌麻呂以外の3人は小さく声を上げる。
「あ・・この国を包む大きな結界の網の目の事か!」
それを聞いた鷲長は少し安堵する。そして、般若は言葉を続けた。
「そうじゃ。光の世では今まで力の強い悪しき輩が出なんだが、
今は状況が違う事を他の守り役は知っとる。もしその時に一部の守り役が
神社を出て、万が一輩に殺されでもしたら、そしてその時にその神社を破壊されたとしたら、
その部分に関係する結界が壊れてしまうんじゃ。結界が壊れてしまえば、
発祥が謎の心の鬼の繁殖が強くなってしまう。そうすると、心の鬼から徐々に力の強い
悪しき輩へと姿を変えてしまう。そしてその悪しき輩が増えてしまえば・・・
いずれは闇世と同じ状態になってしまうじゃろ・・・」
色々な話をしたその日は、そのままこのお寺に泊まる事にした。
そして、セクハラヒワイドリは詠麻呂、奏麻呂には近づかず、音麻呂、歌麻呂の近くで
くつろいでいた。
次の日の朝、お寺の庭先で出発の準備をしている皆の姿がある。
鬼子は、いつもの様に自分の角にヒワイドリアクセサリーを着けようとしていた。
出かける前の癖になっているようである。
鬼子の頭に着いてる般若面は、一言鬼子に言う。
「鬼子、今はその変てこなアクセサリーは要らんのじゃないか」
「あ・・そ、そうね。ついいつもの癖で・・・」
その様子を見ていた山伏装束の奏麻呂が鬼子に近づいて来た。
「あ〜そのアクセ着けないなら私に貸してよ!鬼子ちゃんが着けてていいなぁ〜って思ってたの」
奏麻呂の意外な趣味?ファッションセンス??なのだろうか・・・。
奏麻呂は鬼子からそのヒワイドリアクセを貸してもらい、自分の髪の毛に着けた。
その様子を見ていた音麻呂と歌麻呂はお腹を抱えながら涙を流し、無言で笑っている・・。
「さ〜いくぞ!おまえら!!俺様に付いてこい!」
と大声を張り上げながら歩いて行くのはヒワイドリである。
皆は、ヒワイドリと正反対の方に歩いて行った。
ヒワイドリが焦りながら言う。
「おぃおぃ、お前等何処にいくんだよ」
すると鬼子が答えた。
「そっちは南の方角よ・・・」
その様子を見ていた鈴木ちゃん(お爺さん)はケラケラ笑いながら手を振って
みんなを見送っている。
お寺を出ると、辺りは直ぐ薄暗くなる。
朝陽は照り付けてるのだが、日差しが高い木々にさえぎられ、地面まで届かないのだ。
「よ〜し」
と音麻呂が言いながら、腰に掛けていた法螺貝(ほらがい)を口にくわえた。
【ブオォ〜ン、ブオォ〜ン】
とその法螺貝を力一杯吹いた。
音麻呂、歌麻呂、詠麻呂、奏麻呂の4人は、その場にジッとして動かない。
法螺貝の音が鳴り止んでから少し経った。
「う〜んやっぱり反応なしか。錫杖(しゃくじょう)が響かない・・・
やっぱり俺達4人は、別れて行動した方がいいな」
音麻呂がそう言うと、鬼子が直ぐに近づいて来た。
「え・・別れてって、危険ですよ。皆一緒に行動しなくちゃ・・・」
「いいや、この広い山で一箇所に固まって法螺貝を吹いていてもそう簡単に悪しき輩を
見つける事は出来ないだろ。それなら散らばって色んな方面から法螺貝を吹いて、
山の反応を探らなくては意味ないからね」
「で・・・でもそれじゃぁ危険すぎます・・・」
鬼子の頭の上で般若面となっている般若がしゃべる。
「そうか、お主等のその力は多方面の方が力を発揮する・・と言う事じゃな」
それに音麻呂が答える。
「はい。危険なのは解っていますが、無意味に時間を費やすよりいいと思います」
すると、般若面が白いお餅を伸ばしたような般若の姿へと変わり、地面に降りた。
「奏麻呂とやら。お主が頭に着けとるアクセサリーをちょいとワシにかしておくれ」
「え?こ、この可愛いアクセを?」
「そ・・・そうじゃ」
般若は奏麻呂の独特の感性に驚きながら、そのヒワイドリアクセサリーを受け取った。
「な、何するの?」
と鬼子は般若に聞く。
「ちょぃ見とけ」
と般若は言いながら、両手を前に出しそのアクセに念を送っている。
すると、一瞬そのアクセが輝き、そしてまたすぐ消えた。
「これをお主等4人がそれぞれ持つんじゃ。何かあった時、お主等の念をこのアクセに込めると
その位置がすぐ解るし言葉も交わせる。ワシにも、鬼子にも、お主達にもじゃ。
それと、音麻呂と歌麻呂は一人で行動じゃ。気をつけるんじゃぞ。
詠麻呂には秀吉が付け。奏麻呂にはヒワイドリじゃ」
4人はヒワイドリアクセをそれぞれに分けて渡し、袂に入れた。
鬼子と般若面。音麻呂。歌麻呂。詠麻呂と秀吉。奏麻呂とヒワイドリ。
この5組がそれぞれ違う方向へ歩いていった。
冬場だが、鬱蒼と生い茂る木々。出発した時より少しは明るくなっているが、それでも
やはり辺りは薄暗い。皆と別れてから3時間くらい経っただろうか。
音麻呂、歌麻呂、詠麻呂、奏麻呂はそれぞれの場所で法螺貝を吹き、山の反応を伺っているが、
錫杖の反応は無いままだった。
白いお餅状態で鬼子の頭の上に乗っていた般若が、何かに気付いた。
「鬼子ちょぃ止まれ。あの右側の枯木の近くまで行ってくれぬか」
「え?どうしたの般若」
と鬼子は言いながら枯木の近くまで歩いていった。
すると、般若が鬼子の頭の上から【ピョン】と飛び降りた。
般若はその枯木の下にある黒い石を拾い上げた。
「そうか・・・ハチ太郎の鼻が効かん訳じゃ・・・」
そう言い、その黒い石を鬼子に見せた。
「なにか・・その石に何か書いてあるわね。何なのこれ?」
「これは、神代文字じゃ」
「神代文字!?」
「そうじゃ。この文字の配列は、犬の民の鼻を効かなくする為の念が込められておる」
鬼子は目を見開いた。
「じゃ、じゃぁその術にハチ太郎は引っかかってしまった訳なのね・・・」
「そうじゃ。多分このような石を、この山に配置して犬の民の鼻を効かなくする
結界をはっていたんじゃろう」
「じゃ・・・じゃぁやっぱり般若が言っていた・・知恵の有る悪しき輩がいるって
事なんじゃぁ・・・」
般若は腕を組みながら言う。
「う〜ん・・・。推測じゃがな。しかし、そう考える方が普通じゃろぅ。
知恵の有る輩がいると考えながら、こちらも行動する方がえぇじゃろな」
そう言いながら二人はまた歩き出した。
が、鬼子の表情が先ほどから少し曇りがちだ。
鬼子の頭の上に乗っている般若が聞いた。
「鬼子、さっきから変な顔をしとるがどうしたんじゃ?」
「う〜ん・・・。奏麻呂さんはアクセに念を入れてないのに、居る位置が
手に取るように解るのは何故なのかな〜って思って」
「あ!」
般若はそう言い、鬼子に叫んだ。
「鬼子!奏麻呂の所へすぐ飛んで行くんじゃ。早く!」
鬼子は森を裂く勢いで奏麻呂の所へ走りながら飛んでいく。
そして鬼子は走りながら般若に聞いた。
「は・・般若・・。どうしたの?何故急に?」
「ワシとした事が・・うかつじゃったわぃ。奏麻呂の近くにはヒワイドリがいる。
あやつの呪縛を解いた時、以前より増して力が強く成っておる。力が強くなるって事は、
相手からもその位置が解りやすいって事だ」
鬼子の表情が変わる。目が赤く染まっていき、くれない色の着物からはもみじが舞い散る様になった。
鬼子の鼓動が速くなる。その表情は、悲しさを背負っている様にも見えた。
鬼子は無言で奏麻呂のいる所へ力一杯走って行った。
【バッ】
鬼子が突然、奏麻呂とヒワイドリの目の前に飛び出して来た。
突然の事なので、奏麻呂は素早く一歩後ろへステップし、険しい表情で身構えている。
ヒワイドリはその奏麻呂の後ろに隠れていた・・・。
状況を把握した、奏麻呂の表情が穏やかになっていく。
「あ〜・・ビックリした。鬼子ちゃん驚かせないでよ〜」
「ご・・ごめんなさい。ちょっと心配になって・・・。
で、ヒワイドリ・・。何であんたが奏麻呂さんの後ろに隠れてるのよ・・・」
鬼子はキツイ表情でヒワイドリを睨んだ。
「だ・・だって・・。怖かったんだもん・・・」
ヒワイドリは弱々しくそう返事した。
般若が鬼子の頭から飛び降りてきた。
「ヒワイドリ、お前は鬼子と一緒に行動せい。奏麻呂にはワシが付く」
すると、ヒワイドリが般若に指をさしながら叫んだ。
「ぁあ〜あんた、奏麻呂ちゃんに手を出そうとしてるだろ!」
【ガツン】
ヒワイドリの頭が地面に埋まり、足をバタバタさせている・・・。
般若が殴りつけたのだ・・・。
その時、詠麻呂からヒワイドリアクセを伝って皆の心に連絡が入った。
【皆、ただの連絡よ。まだ遠いと思うけど、微弱ながら錫杖が反応してるわ】
すると、それに反応する様に鬼子が念じた。
【解ったわ、詠麻呂さん。今からそっちに行くからその場で待っててね】
般若もそれに反応する。
【音麻呂と歌麻呂は詠麻呂と近い位置にいるから、用心しながら詠麻呂の方へ
移動せい】
音麻呂、歌麻呂もそれに反応する。
【はい、解りました。回りを探りながら徐々に詠麻呂の方へ近づいて行きます】
般若は鬼子の方を見て言った。
「鬼子、詠麻呂、秀吉と直ぐ合流するんじゃ。ワシと奏麻呂の2人を背負って行けんからな」
「はい。解りました」
と鬼子は言い、直ぐに詠麻呂と秀吉の所へ走り飛んで行った。
ヒワイドリはとっさに鶏の姿に成り、鬼子の背中に飛びついた。
森を凄い速さで駆け抜ける鬼子。やはりその目は赤くなり、着物からはもみじが舞っている。
そして先ほどと同じように悲しい顔をしていた。
詠麻呂と秀吉が悪しき輩と遭遇した訳ではない事は解っている。
解っているのだが、鬼子の心には今までの辛い出来事が蘇っているのだ。
決して、傷つけさせてはいけない、悲しい想いをさせてはいけない・・・。
そう思いながら鬼子は森の中を駆け抜けているのだ。
【ズザッー】
鬼子はあっと言う間に詠麻呂と秀吉の前に出てきた。
ヒワイドリは鬼子の背中にしがみ付きながら白目を向いている。
鬼子のあまりの速さに目を回したのだろう。
詠麻呂と秀吉は少しビックリしたが、それより驚いたのは、鬼子の表情だった。
角が伸び、目が赤くなり、着物の裾が動きやすいように短くなり、そしてその着物から
もみじが舞っていて、手に持った薙刀が少し輝いていたからだ。
「お・・鬼子ちゃん・・・?」
そう詠麻呂は鬼子に声をかけた。
鬼子は笑顔でそれに答える。
「はい。輩の反応はどうですか?」
鬼子は心配していた自分の心を隠し、精一杯の笑顔でそう詠麻呂に聞いた。
「あ、あぁ輩ね。大丈夫。反応は小さいわ。まだ近くには居ないわね」
「そうですか。ココからは私と一緒に行動しましょ!」
心配している心を隠した鬼子の表情を、秀吉は読み取っていた。
「よ〜し。僕が2人を守ってあげるからね。こう見えても、僕は強いんだぞ〜!」
秀吉は、鬼子の緊張した心を少しでも和らげようと織田がいつも言うような口調で
腕まくりしながら力拳を作っている。
それを見ていた鬼子と詠麻呂は笑っていた。
「鬼子ちゃん見て!ほら、錫杖がすこ〜し振動してるでしょ。これって、山の自然の力が
私達の問いかけに反応してくれてるのよ。この山の木々や大地が生きている事を実感出来るって、
すっごく興奮しない!?だ〜からやめられないのよね〜山伏って!」
「へぇ〜山が生きているっていままで考えた事無かったから、不思議で不思議で」
鬼子の表情は笑顔だった。鬼子の心を和らげるのは、秀吉より詠麻呂のほうが、
一枚も二枚も上手のようだ。
鬼子達の前の方から声が聞こえて来た。
「お〜ぃ」
手を振っているのは、一番近くに居た音麻呂だった。
その音麻呂が笑顔で手を振っている。
「あれ?鬼子ちゃんも居たの!?奏麻呂の近くにいたんじゃぁ」
「はい、走り飛んで来ました!」
「え・・?は、速いね・・。とても・・・」
音麻呂はかなりビックリしている。鬼子の位置は、ヒワイドリアクセで読み取っていた。
かなり遠くにいた奏麻呂の所からここへこんなに速く走って来たなんて・・・。
その時突然、音麻呂と詠麻呂が手に持っていたヒワイドリアクセから急に痛みが走った。
【鬼子!】
般若の声が聞こえた。
【バッ】
っと飛び出していく鬼子。
みんなに伝わった痛みとは・・・。
・・・歌麻呂の痛み・・・。
森の中を凄まじい速さで駆け飛ぶ鬼子。
その姿は、角が少し光ながら鋭くなり、着物からもみじが大量に舞い散っている。
薙刀は光輝き、そして・・・目は見開き、赤黒く染まったその瞳からは・・・涙が溢れていた。
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十二章〜【ヒワイドリの怒り】に続く。
おはようございます
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_,. -、/_;:;:;:;:;:_ /
_ ---- _-,.-'"`'' ‐-、`ヽ、 `ヽ、;:;`> ,、
ヽ;:;:;:;:;:;:;// \ `ヽ、 \|_ ,、 ,. -‐'´ l!
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ヽ/ i i i !、 \,. -―ヽ !l ヽ'i / / / / /
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.\''ー- .._`'ー\`ヽ、! i!、 il /il _,rl` `ヽl弋zソ /i / i l i、ゝ / | }/, / ノ _,.. 、
\ `''ー- `_ !lヽ lヽ\、弋z' , xx/'´ l/ /人l /./ ,| |// /''"´,..、/
\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
、--――――`- ..__レ `ヽ}从/` 'i'ー </i´ヽ--i' /\ ヽ' ヽ i ヽ _
`'ー .., , -‐''" ̄ ̄/ //=ヽ /!`-''´| {、 ヽ ヽ /`'--'
`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
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ねむいよ
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
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 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
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ねる
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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おきた
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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お風呂はいった
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\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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じゃあね
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ヽ;:;:;:;:;:;:;// \ `ヽ、 \|_ ,、 ,. -‐'´ l!
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ヽ/ i i i !、 \,. -―ヽ !l ヽ'i / / / / /
__,,.. ''li | i! ! !l_l_ヽ ´ヽヽ__! l ! l!ヽ!/ |/ /''´ /
_____ \∠;:;:;:;:;| i !i i'´lヽ_\ i!イl_rヽゝi l !l l、 / / ,'' 、 , ,-、/
.\''ー- .._`'ー\`ヽ、! i!、 il /il _,rl` `ヽl弋zソ /i / i l i、ゝ / | }/, / ノ _,.. 、
\ `''ー- `_ !lヽ lヽ\、弋z' , xx/'´ l/ /人l /./ ,| |// /''"´,..、/
\ `''ーi i! ヽl\xxx r ヽ ノl人/-、_/ /,,! |、/ ./ / ノ
`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
、--――――`- ..__レ `ヽ}从/` 'i'ー </i´ヽ--i' /\ ヽ' ヽ i ヽ _
`'ー .., , -‐''" ̄ ̄/ //=ヽ /!`-''´| {、 ヽ ヽ /`'--'
`'ー―‐ | --‐‐ノ /'、,/-|_| ∨ \ヽ__`''-- __ヽ、_ i ,ノ 真実は一つの物事につき一つ
,,.. -―‐''" ̄ ,! /ノ , ';:;:;:;:;:;:;:/ ";:;:;:;:;:;:;:;:;`T'/`'- ._  ̄`''- .._´ でも答えは人の数だけ
 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
_ / ヽ丶_,l :;:;:;:;:;:;:; ', ;:;:;:i;:;:;:;:;:; // \ ヽ `'' "´ さあ、真理の海へ飛び込もう
,, '´ >''`-i /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ', ;:;:;:;// `ヽ、 i あんたの持ってたカケラも
,,. '" ,,. '"/ / i!';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ \/ ` たまには見せてよ
`''´ ,,. -'" /'´ ,:' ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ',ヽ、}
,,.. -‐''" i!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`ヽ、;:;:;\i そーゆー訳で、この場はパーフェクトフリーズ!
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小日本がハンニャーを抱えながら、地図に書かれた家へと向かう鬼子達。
ハンニャー『そこに住んでる子はね、去年に図書館の絵画コンクールへ応募してくれた子だったんだけど…』
鬼子『何があったんですか?』
ハンニャー『その子が描いた絵を見た男の人たちが、揃って係員さんのお尻に痴漢をしてったのよ』
鬼子『それって…観た者が心の鬼に憑かれた、って事ですか?』
ハンニャー『そうね。…着いたわ、ここよ』
古びたアパートの二階、下手すればお化けでも出そうな程ボロくなったアパートに辿り着いた。
第十三話:現代の鬼絵師、匠ちゃん
ピンポーン…。インターホンを押しても、何の反応も無い。奥からは何かの音楽が聞こえてくる。
ハンニャー『しょうがないわね…。ちょっと窓から回ってくるから少し待ってて』
小日本の腕から屋根に上げられると、ベランダ側へと降りたハンニャーはガラスを爪で掻き、不快な音をたてる。
ハンニャー『田中さん、開けて頂戴。前に言ってた鬼子ちゃんを連れてきたわよ』
呼ばれた田中さんは、窓を開けて玄関の方へと向かう。
ガチャリと扉が開くと、そこには鬼子と同年代の女子が立っていた…。
田中『あの…あなたが鬼子さん?本当に角があるの?若般さんみたいに霊能力があるって本当?』
ハンニャー『あのねぇ、そんなに一度に聞いたら誰だって答えられないわよ。もう少し落ち着きなさい』
突然の質問攻めに鬼子はキョトンとしているが、それを遮って小日本が質問を返す。
小日本『ネネさまがいつも言ってたよ!まずは相手に尋ねようとする人がなのりなさい!って』
得意げな顔で胸を張る小日本は、少し大人になったと思って嬉しいのであろう、自信満々な顔だ。
田中『これはこれはお嬢様、失礼を致しました。私の名前は田中匠と申します。一介の絵描きでございまして、
そちらにおられます若般様にお世話になって依頼、時折絵を見て貰ったりしている者でございます』
小日本『あたしの名前は小日本、こちらにいるネネさま…日本鬼子よりお名前をお借りしました居候でございます』
真似をして、小日本が少し威張り気味に自己紹介するが、すかさず突っ込みが入る。
鬼子『小日本、居候はそんなに誇れる事じゃないのよ?柚子さんの優しさに感謝しなきゃ…。
私は、日本鬼子と申します。そちらの若般さんに鬼祓いの修行をつけて頂き、現在もその鬼祓いを生業としております』
田中『本当に鬼を退治できるんだ!その…角を見せてもらって良い?』
ハンニャー『田中さん、興味深深ね。でもまずは中に入っても大丈夫かしら?』
小日本『ハンニャーはもう中に入ってるじゃん!変なの〜』
田中『ねぇ、小日本ちゃん、なんで若般さんがハンニャーって名前なの?』
小日本『ハンニャーはね、いつもネネさまの般若のお面を気にしてるし、ニャーとも鳴くからハンニャーなの!』
鬼子『…あの、本当に上がらせて貰っても大丈夫でしょうか?それに…もし鬼の角があったなら…それは怖く無いのですか?』
田中『大丈夫よ、汚い所だけど上がってって。小日本ちゃんも一緒にね』
中に入ると部屋の壁には沢山の絵やポスターが貼られている。机の上には描きかけの絵が置いたままだ。
お茶の準備と終えた田中さんは、帽子を取った鬼子の頭をマジマジと見ている。そ〜、っと手を伸ばされると、鬼子はビクッと身構えた。
田中『ごめん、怖かった?ちょっと触ってみたくなっちゃって。それ…本物なんだよね?』
鬼子『はい、本物です。それより、怖くは無いのですか?本当に鬼だとしたら…』
田中『あたしは何か作っている時に、そればっかり集中しちゃって、他は普段も含めて全然無頓着になっちゃうのさ。
全然怖く無いし、むしろ作品のネタにもっと見せて欲しい位だよ。触っても良い?』
ハンニャー『いい加減にしなさい。それより、田中さんの中に潜んでいるモノを見せて上げて欲しいの』
田中『…解ったわ。けど、目に見えるほどなんてそう無理だと思うんだけど…』
机に向かい、田中さんが創作に集中しだすと、鬼子の目には白い靄が形を成していくのが見えた。
ハンニャー『この子が抱えている心の鬼は、鬼と言うより守り神に近いのかしらね…自分の『拘り』を紙の上へ表現する力よ』
鬼子『でも…害は無いんですか?前に大事になったって…』
ハンニャー『まぁ、こいつのせいで、見ただけで何かムラムラする絵になっちゃうみたいなんだけどね。基本は本人の実力でしょ』
鬼子達が話している間にも、一枚書き終えたのかフッと気配が消えていく。本人に対して害を与える事も無いようだ。
田中『で…何か解ったんですか?私はただいつも通り絵を描いていただけですけど。』
ハンニャー『あなたは普通にその状態を切り替えられるけど、この子にそれは難しいのよ。そのコツを教えて上げて頂戴』
鬼子『ど、どうか宜しくお願いします!私はもっと上手く力をコントロール出来ないと駄目なんです!』
深々と頭を下げる鬼子を見て田中さんはため息を吐いた。
田中『そんなに肩肘張ってちゃ気持ちの切り替えなんて出来ないでしょ?…!そうだ若般さん、この子一日借りて良い?』
ハンニャー『良いけど、どうするつもりなの?』
田中『鬼子ちゃん、あんまり街で遊んだこと無いでしょ?明日一日遊びましょ!何抱えてるのか知らないけどさ、一度全部忘れようよ!』
鬼子『遊び…ですか?本当にそんなので大丈夫なんですか?』
田中『ほら!またそうやってまた硬い事を言う。全部気にしないためだから忘れなさい!明日この駅で十時ね』
鬼子が戸惑うまま、駅名が書かれた紙を、田中さんが手渡してその日は分かれた。
新宿駅北口付近
深夜1時。まだ活気がある街にに銃声と悲鳴が絶えず鳴り響いている。
発砲目標は3mを超えるであろう巨大な鬼。
「ちっ!本部は何をしてるんだ!これ以上は防護結界が持たないぞ!」
「もう少しで特殊部隊が来るはずなんです!」
「待っていたら被害は増大するぞ!ここで仕留めることが出来ればっ!」
「無理です!装備が足りません!」
「なら奴もろとも俺が!」
「む、無理ですって!」
――遅れてすまない。こちら特殊作戦部隊。目標を視認した。作戦行動に移る。地上部隊は避難を。
隊長であろう男を抑えている兵士に無線が入る。
上空にはヘリが見えている。全滅はしなくて良さそうだと兵士が胸を撫で下ろす。
「隊長!特殊部隊です。結界を維持したまま避難しましょう」
「やっとか……生存者に通達!防護結界を維持したまま鬼から距離を取れ!結界が薄くなっても構わん!」
ヘリ内部
「パイロットさん。もっと近づけない?」
ヘリから長髪の女性が目標である鬼を覗き込むようにして見ながらパイロットに相談する。
どうやら、彼女は人ではないようだ。頭部に二本の小さな角を生やしている。
「パイロットじゃない。監視員だ」
「どっちでも良いじゃない。それよりこれ以上は近づけないの?」
「不可能だ。これ以上近づけば、結界が崩壊する。被害が増えるのはゴメンだ」
「それじゃあ、私は部隊が全滅するのを見ていますね。可哀想に……」
ヘリを操縦している男が被っているヘルメットを外し頭を掻き毟る。
どうやら相当悩んでいるようだが決心したようだ。
「あっー!どうなっても知らんからな!くそっ、なんでこんな仕事を請け負ったんだ俺は……」
「愚痴るなら無事に退治してからにしてね」
「分かってるよ」
ガクンッとヘリが一度旋回し急降下を始める。
まるでジェットコースターのように体が浮いている気分がする。
「まだ、あと少し……」
「これ以上は墜落する!」
「ありがとね。監視員さん」
ふわっと風がヘリの内部に流れ込んできたと思ったら彼女の姿は既になかった。
飛び降りたのだろうか?
次の瞬間、ガラスが割れるような音と共に青白い光が視界を覆う。恐らく、結界が割れたのだろう。
「くそっ!墜落する!飛び降りるぞ記者さん!」
男が焦りながら私の服を思いっきり掴み外へ飛び出す。
一瞬の出来事で訳が分からなかったが私はヘリから飛び降りたのだ。
頭を打ったのか酷い頭痛がする。しばらくして、少しぼやける目を開けると先ほど乗っていたヘリが頭上を通り過ぎ、
新宿駅へ墜落するのが見えた。言葉では表せないほどの衝撃音と熱風が私を襲う。
冷たいアスファルトとの温度差が何とも言えない。
「大丈夫か記者さん。あんたがボッーとしてるから目標は退治されちまったぞ。決め台詞を言ったところだけでも撮って置けよ」
「あ、あぁ……」
自ら彼らのヘリに乗りたいと志願したというのになんという失態だろう。
彼女が鬼を退治する瞬間はどうやらカメラに収めることは出来なかったようだ。
落胆しながらも彼女達の監視員である彼の言うとおり最後の場面でも写真に収めておこう。
「萌え散れ……」
彼女がそう呟くと、鬼は一瞬のうちに大量の紅葉の葉へと変わってしまった。
あまりの美しさに私はカメラのシャッターを押したまま時が止まれば良いと思ってしまう程だ。
「あのさ、毎回毎回ね。紅葉を散らすのはやめてくれない?」
「えー。だってカッコいいじゃないですか。こう、ブワッ―っと紅葉が舞う中を私が歩くっていうのが」
「知らねぇよ!経費がスゴイの!今回もヘリは潰すわ、駅は潰すわ、紅葉は散るわで本部に帰りたくないわ!」
「ヘリと駅は知りませんよ勝手に落ちたんですから」
「無茶な要求をするからだろうが!また給料が……」
「それは私には関係が……あれ?記者さんどうしたんですか?」
彼女が私に気づいたようで話しかけてきてくれた。
「あ、いや。今回は取材にご協力いただきどうもありがとうございました」
「いえいえ」
「何照れてるんだ。照れる要素は一つもなかったぞ」
「え?そう?」
「はぁ……記者さんはもう帰るんだな。警察が来たら厄介だぞ」
「そうですね。本日はありがとうございました」
「二回目―」
「次に取材するときは安全な日だと良いな。ま、あり得ないだろうけどな」
私は彼らに礼をすると、直ぐにその場を後にした。
特殊作戦部隊、思ったより危険な人たちでは無さそうだ。今後も彼らの取材を続けていきたい。
週刊鬼報!
「――だってさ監視員さん」
「あぁ、あの記者さんね。ヘタレかと思ったら何気に受身とってたからびっくりだよ」
「え?受身取れたの?」
「いや、受身って言うかただ転がってたというか――」
「私語は慎め!どういう状況か分かってるのか?ヘリを墜落させ、挙句の果てには駅まで潰すという
訳の分からない大惨事を引き起こしてどうするつもりだ!」
「……すいませんでした。以後はこのような事が無いように監視員の私がしっかり見張ります」
「見張られます」
「毎回毎回同じことを言ってるじゃないか!この前の事件では、ヒワイドリが大怪我を負うような――」
『また同じこと言ってるぞチチメン』
『仕方ないよ。ま、アレは私じゃなくヒワイドリが悪いんだけどね』
「それに付け加え、鬼子の方はどうだ?毎回毎回……」
『『早く説教終わらないかな』』
−ここはとある都会にある電気街。都会の空気に馴染みそうにない、和服姿の少女が一人。
駅の改札口で時計を何度も気にしながら待っていた。その文字盤は…まだ九時を指している。
鬼子『…凄い所。みんな色んな想いが渦巻いてるみたいだけど、大丈夫なのかしら?』
見渡す街には「心の鬼」とまではいかないが、多少の黒い感情や集中した白い感情が鬼子の目には見えていた。
田中『ごめんね〜!待ったでしょ?』
後から、改札を抜けた田中さんが声をかける。
鬼子『いえ、大丈夫です。それで…ここで何をするんですか?どこかに潜んでいる鬼を祓うとか…?』
田中『ちょっと、何もしないってば!ただ遊ぶだけ。行きましょう』
そういうと、鬼子の手を取り、人ごみの中へと入っていった。
第十四話:初めての友達
(注:私は秋葉原に行った事がありません。モデルはあの街ですが、表記は絶対本物を表現し切れていないかと)
街中を歩くと、鬼子は帽子が取れないかどうか必至に気にしている。人ごみに押されて今にも外れそうだ。
田中『何やってんの?その帽子、取っちゃって良いよ?』
鬼子の返事を聞く前に帽子を取ってしまう。昔は小さなお面で隠せていたが、大きくなってくると高い麦藁帽の様な帽子で隠していた。
慌ててもう一度被ろうとするが、その手を田中さんが止める。
田中『大丈夫、大丈夫よ、この街では。周りをよく見てご覧よ。もっと変な格好をしている人達が沢山居るから』
人々に見えた想いの渦にばかり囚われていた鬼子は、姿や格好までに目がいってはいなかった。
よくよく見てみると、冥土姿、何か西洋中世の格好に似た姿や、髪を様々な原色系に染めた者までいる。
鬼子『…ここは、不思議な街ですね。なぜこんな奇天烈な格好をしてらっしゃるんですか?』
田中『みんな自分の好きな事に正直だからじゃない?基本的にここで表現されてる趣味はオタクだ何だと世間一般に嫌われてるから…。
でも、鬼子さんみたいなコスプレをしてる人も多いから、ここなら何も気兼ねなく遊べるでしょ?ね?』
突然提案して、何も考えていないと見えてもきちんと考えて場所を選んでいた様だ。その気遣いに鬼子も少し笑顔を見せる。
鬼子『…有難うございます、田中さん。いつも私は怖がられると思っていました』
田中『匠でも良いよ。良かった、気に入ってくれたみたいで。じゃあ悪いけど、最初に本屋さんへ寄って良い?』
鬼子『はい、大丈夫ですよ。何処へなりともお供いたします』
本屋へ立ち寄ると、色々な本が並ぶ中で普通に春画や男色本のあるコーナーへと立ち寄る。
周りに並ぶ本を見て、顔を赤らめる鬼子に対して水を得た魚のように色々と物色する田中さん。
田中『ちょっとこれとこれ持っててくれる?』
鬼子の手に本をヒョイヒョイ手渡すが、その表紙はやはりある程度露出の高い女性ばかり。
ドンドン顔を赤らめる鬼子に対して、最終的に十冊位集めた田中さんは満足げにレジへと向かう。
鬼子『あ、あの…本当にコレをこんなに沢山買うんですか?!』
田中『そ〜よ〜。買うだけじゃなくて自分でも書くんだから、資料資料。後で私が持つから大丈夫よ』
結構な値段になったが、平気な顔で全てお買い上げして、そのまま本屋を出る。
鬼子にとってはどれも見た事が無い風景、事柄である自然に顔もほころぶ−が、一瞬心の鬼の強い気配を感じた気がして振り向く。
田中『どうしたの?急に?』
鬼子『いえ、何か嫌な気配を感じた気がして…でも気のせいみたいです』
そう、その視線の先には何も無かった。ドロドロとした心のモヤも、集中した人が見せる気配も『全く何も無かった』のだ。
田中『そろそろお腹空いてない?ご飯食べようよ』
二人はカフェに入ると向かい合わせに座った。普段は御飯派な鬼子も、郷に入っては従い洋食を前にする。
鬼子『あの…本当にこんな感じで、自分の中に潜んだ鬼を制御出来るんですか?』
田中『また考えていたの?一体何を抱えているのか知らないけど、考えすぎは良くないよ。私なんて気が向いた時に集中してるだけだし』
鬼子『…私の場合は、本当に鬼が憑いてしまったんです。『道引鬼』という鬼の世界へ引きずり込む悪鬼で、今は若般さんが封じてくれてますが、
もし怒りに任せて力を振るえば、その鬼さえも開放されて私が鬼の道へと落ちてしまうかも知れないんです。だから…』
田中『じゃあ、落ちちゃえば?』
鬼子『え!そんな事したら私は人に害を成すかもしれないんですよ!前に同種の『囁鬼』に引き込まれた先々代の…』
田中『ゴチャゴチャ考えてないで、自分で選んじゃえって言ってるの。今日は私と一緒に遊ぶって『人の道』を選んだ、
明日は違う考えが生まれるかもしれない、いつかそれに答えを出して、自分で選べば良いじゃない』
鬼子『本当にそれで大丈夫なんでしょうか…若般さんもかなり警戒されてますし、うちの本家でも…』
田中『全然関係ないよ。若般さん時々酷いんだよ?私が全力で描くと「人を惑わすかもしれない」って控えめにやれって言うんだ。
でも私は本気で描く。それは自分で選んだ道だし、誰にも止めさせたくない。だから私は一人で住んでるし周りも気にしない』
鬼子『強いんですね。私もそれ位強くなれるでしょうか?』
田中『あんまり気負いしすぎなきゃなれるんじゃない?他人のためだけに自分が居るわけじゃないし、楽しみなよ』
鬼子『はい。有難うございます』
二人はその後も街中でゲームセンターやらで遊び、旅館の前まできた。一日全然構って貰えなかった小日本が膨れている。
田中『最初に本買ったのは失敗だったわ。重くてもうヘトヘト…』
鬼子『またご一緒させて下さいね。本日は有難うございます』
その場で深くお辞儀をする鬼子に苦笑いしながら、田中さんは手を振りながら帰っていった。
第十と二分の一話(バレンタインだよ!鬼子と集合!)
鬼子が三つの包みを持って、近くの神社へ行く。そこはいつか皆で綺麗にした場所である。
鬼子『お三方〜居るの〜?』
一番奥に鎮座する社が、ギィ…っと音を立てて扉が開いていく。中から出てきたのは鶏型のエロ神の一種…ヒワイドリだ。
ヒワイ『あぁ、ここに居るぞ?今日はどうしたというのだ?』
出てきた社の奥には、何やら色々な人形やら冊子がいくつか置かれている。
鬼子『最近悪さをしなくなってきている様だから、そのお礼にでもと…もしかしてその後ろのってお供え物?』
ヒワイ『あぁ、そうだな。私は肉欲系の神、それを過剰に感じさせるものをお払いも含めて置いていっている様子だ。
たまる一方ではあるが、おかげで退屈はしていないのさ。これも鬼子、そなたのおかげでもある』
鬼子『なんか前の元気さが無いわね。でも偉いわ、それを見る限りお焚き上げもやって、人々が惑わぬようにもしてるんでしょう?』
ヒワイ『お焚き上げ?何の事だ?せっかくの秘宝(?)を焼いてしまうなど誰もせんぞ?』
鬼子『…じゃあ、今までに溜まった分でそれだけ?「溜まる一方」って言うほど無いみたいだけれど…』
あの大晦日以降も少なからず参拝客はいたはず。約一ヶ月と少し…それにしては少ない。片手で足りる程度だ。
ヒワイ『当然、これ以上溜まっていたさ。だがな、鬼子よ…秘宝とは多くの若者に受け継がれてこその秘宝なのだ。
ここに無い分は全部、近所の性欲旺盛な中学生辺りが持って帰ってくれたよ。あの子らの将来が楽しみだなぁ…』
鬼子『…じゃあ何?有害図書認定なんて軽くしそうな本を、年端も行かない少年が持っていくのを黙って見てた、っていうの?!
せっかく少しでも義理を通そうと思ってチョコレート持ってきてあげたのに…もう知らないわ!萌え散れ!!』
言うなり石突部分でボコスカ殴る。その反動で社にあった魔改造されたフィギュアや無修正のいかがわしい本も散る。
ヒワイ『グ…グケェ…そうか、今日はばれんたいんでーという奴か…道理でエロ心が半端な訳だ。今日ばかりは精神純愛が主になり、
純粋な心でワクワクしておるんだろうなぁ…ここで何度も秘宝を漁っていた彼らも、何か貰えているかなぁ…』
どこか哀愁を漂わせた目で遠くを見つめるヒワイドリは、あと二人の分も合わせた三つの義理チョコの下で気を失った。
一方その頃…ヤイカガシの所では、先日の勇ましく(?)心の鬼とも対峙し、病気の少女を労わる姿に感動した小日本が、
一生懸命考えて作った手作りチョコを手渡そうとしていた。もちろん、躊躇無く受け取るヤイカガシ。
ヤイカ『いいんでゲスか?あっしにこんな大層な物を頂やして。あっしも罪な男になれたでゲス』
小日本『本命チョコ、ってのじゃあ無いんだよ。でもお友達として一生懸命頑張りました!』
ヤイカ『すまないでゲス。さっそくいただくでゲス!…これは!?』
すぐにがっつくヤイカガシであったが、何やら様子がおかしい。チョコの割れ目からは小骨が出ている。
小日本『美味しい?「いわし」ってもっと小さいお魚を食べるんだよね?だから頑張って煮干を砕いて入れたの!ねぇ、美味しい?』
ヤイカ『(この笑顔を消したら…)美味しいでゲス、美味しいでゲス…涙が出るほど美味しいでゲスよ!でもちょっと飲み物が…』
小日本『良かった〜。あ!飲み物なら腐葉土を溶かした特製ココアがあるよ!「ひいらぎ」の葉も育てなきゃね〜』
その日、ヤイカガシの目からは感動か不味さからか解らない涙がさめざめと流れ続けていた。
153 :
ほのぼのえっちさん:2011/04/25(月) 23:43:58.87 ID:SAt6awr2O
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 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
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2月14日!バレタイン!
鳴「日輪さん、鬼子さん」
日「ん?」
鬼「なんですか?」
夜「チョコが欲しいです」
日「ほほぉ〜う」
鬼「私、チョコは作ったことが……」
日「よし!作ってやろう。一時間待てば良い」
鬼「えっ!?」
鳴「キター!」
夜「ヤター!一時間っすね!出かけてくるっす!行こう陽介」
鳴「もちろんさ!」
ダダダダダ……
鬼「どうするんですか?私チョコなんて作ったことが……」
日「誰がチョコを作るって言った?ふふふふふ……」
鬼「日輪さん。何か企んでますね」
――3時間後
鳴「遊びすぎた……3時間も経ってしまった……」
夜「いいじゃないッスか。チョコは冷えたほうが美味しいんっすよ!」
ガチャ
日「ほいっ。バレタインチョコ」
夜「えー。俺、日輪のはいら(ry」
日「あぁん?」
夜「ありがたく貰います」
鬼「えぇと……その……」
鳴「ワックワク」
鬼「ここここれ!受け取ってください!」
鳴「キター!鬼子からチョコキター!ありがとう鬼子」
日「ふふふふ……」
夜・鳴「では、早速いただきます」
モッグモッグ……
夜・鳴「美味い美味い……ってあれ?なんだか眠たく……」
――1時間後
鳴「ん……なんだ。寝てたのか?体が重い……」
夜「なななななんじゃこりゃあああああ!」
鳴「どうし……ってなんじゃこりゃあああああ!なんで胸があるんだ夜烏賊!」
夜「陽介にもあるぞ!」
鳴「ということは……え?性別変わったの?」
夜「なんだってぇー!っは!待てよ……ということは合法的にパンツを盗みほ(ry」
鳴「いや、それはないだろう」
日「ふふふふ……起きたようね」
夜・鳴「!?」
鬼「ご、ごめんなさい!日輪さんの暴走を止めることが……」
鳴「え?なんの話」
日「それはね……チョコに性別を変える薬を混ぜておいたのだ―!」
鳴「Oh...My God!」
日「日頃の恨みを、今こそ……今こそ、返してあげるとき!」
鳴「ま、待て!何の恨みだよ!ていうかなにする気!?」
日「こき使われてる恨みです。あと胸のサイズを測ります」
鳴「えー。そんなに使ってないってヤダー。近寄るな!ケダモノ!助けて鬼子さん!」
鬼「すいません……私も面白そうなので参加します!」
鳴「えーってやだーーーーー!」
鬼「うふふふっふふふ」
鳴「だーーーーー!って……夢か」
鬼「どうしたんですか?大分うなされてたようですけど……」
鳴「いや、なんでも無い。心配してくれてありがとう」
鬼「?」
夜「日輪さん。鬼子さん。チョコが欲しいです!」
日「よし!作ってやろう!一時間も待てば良い!」
鳴「えっ?」
デッデレレーーーン。夢オチEND
いやー。性転換ネタって一回はやりたくなるよね!
短編おば。
或る日テトはジャスミンと出会った。その時の会話。
テト 「お久〜、極楽蜻蛉のジャスミンじゃねぇか」
ジャスミン「何よぉ。その言い方」
テト 「その通りだろうが」
ジャスミン「そりゃー、Take it easyがモットーだけど」
テト 「なら、いいんじゃねぇ?」
ジャスミン「よくない」
テト 「で、話は変わるが、チェニジアって知ってるか」
ジャスミン「知らな〜い」
テト 「フン、もっと世の中はよく見たほうがいい。まぁ、それは措くとして、中国でも同様の動きがあるらしい」
ジャスミン「あたし関係ないも〜ん」
テト 「まぁ、名前が使われた(?)ということでここはひとつ」
ジャスミン「落ちはどうなったのよぉ」
テト 「お前の名前も言霊だったんだとうというのが落ちだ」
ジャスミン「それだけかい」
テト 「それだけだ」
お粗末さまでした
…何やってるんだ。間違えて自分も上げてしまってるし。以下、十五話分投下。
自分なりに刀を背負い、縁結びを行う小日本を説明できそうな話を考えてみました。
水撒きをしている柚子の前に、若般さんと田中さんがやってきた。
田中『こんばんは〜。一晩泊めてもらって良いですか?』
柚子『えぇ、大丈夫ですよ。お部屋は空いてございます。確か鬼子さんのお友達ですよね?呼んで来ますね』
その様子を物陰から小日本がジィッと睨んでいた。
第十五話:小日本はどこから来たの?
旅館に入ると、ヤイカガシに跨った小日本が待ち構えていた。新聞紙を丸めた武器(?)を持っている。
小日本『田中〜!ネネさまを連れて行くな〜!帰れ〜!!』
ヤイカガシは尻をペシペシと叩かれると、仕方無さそうに前に進む。無理やり馬とされている状態だ。
柚子『ハイハイ、お客様に乱暴はいけませんよ。絵本なら私が読んであげますからね〜』
すぐにたしなめられて、奥へと引っ張っていかれる小日本。振り返り、田中さんに向かってアッカンベーをしている。
鬼子『あの…お待たせしました。ようこそお越し下さいました。本日はごゆっくりとお過ごし下さいませ』
田中『そんなに畏まらなくても良いって。ちょっと温泉浸かりにと遊びに来ただけだし…』
ハンニャー『あたしは先にお風呂頂くわね。…なんか変な気配もするけど、本当にここ大丈夫なの?』
訝しげにキョロキョロと見渡しながら、奥の女湯へと向かっていく。
田中さんを先に客室へ通すと、そこには既に小日本が待ち構えていた。背中の刀を無理やり抜こうとしているが…抜けない。
小日本『う…う〜。この刀さえ使えればネネさまをたぶらかす人なんてぇ〜』
田中『べ、別にたぶらかしなんてしてないよ?…小日本ちゃん、鬼子ちゃんを取られたみたいで寂しいんだ?』
刀を無理に抜こうとした小日本は、ひっくり返り外へ転がった所をヤイカガシにキャッチされ、また何処かへ連れて行かれた…。
田中『…ねぇ、小日本ちゃんって、鬼子ちゃんの妹で合ってる?とっても仲が良さそうだよね〜』
鬼子『そうねぇ…でも、本当に妹って訳でも無いのよ。あの子は言ってみれば神様の一人なのかも知れない』
田中『それって、どういう事?若般さんが「心の鬼」と呼ばれる者も、力をつければ別の存在になるって言ってたけど、まさか…』
鬼子『あの子には去年の春頃に出会ったの。私が「後悔の念」から産まれた心の鬼を退治したときにね…』
その日、鬼子は心の鬼を退治した…が、その女性に纏わり付くモヤは未だ晴れない。聞けば自らの宿した子を相手との結婚が許されず、
堕胎した事を強く悔いているという。そこで、若般さんの勧めで近場の水子供養の寺へと共に向かう事になった。
水子供養は恨みを残さぬようにと、この世での縁を切る所…頭の隅に残り続ける迷いを断ち切る事。
そこで鬼子が感じたのは、そこに飾られた刀に多くの白いモヤの様な気配が漂い、纏わり付いている光景だった。
鬼子『住職様、あの刀は何なんですか?』
住職『あの刀が、ここの水子供養に用いられる御神体なんですよ。銘を「童切り緒結」という御神刀にございます。
大昔飢饉があった頃、口減らしのために童を切った刀の持ち主が、どうかへその緒にまた結ばれて産まれてきてくれと、
そう願いながら刀を抱え祈っていると、豊作になった年に切ってしまった子供と瓜二つの子供に恵まれたそうじゃ』
一緒に来ていた女性も、お腹へそっと手を触れながら聞いている。理由は違えど、状況は似たものと感じる状態である。
住職『その刀は寺へと寄進され、水子や亡くした幼子への未練や縁を断ち切り、また新たな出会いの縁と結ぶ御神体としているのだよ』
女性『私…いつか本当に信用できる方を探して、夫婦となり…しっかりと子供を育てます。本当に有難うございます』
幾分か晴れやかになった女性のお腹から、すっと白い魂の様なモヤが、また刀へと引き寄せられる。
それに気づいていない様子の女性は、そのまま深くお辞儀をすると寺を後にして外に出ようとしていた。
鬼子『…住職さん、この刀に触ってみて良いですか?何故か少し懐かしい気がするの』
住職『良いですよ…若般さんのご紹介だ。日本家にも幾分かご縁のある刀と聞いておりますゆえ』
鬼子が近づくと、より一層光を増す。それに触れると、徐々に光が人の形を取っていく…!
???『…ん…ネネさま??鬼子ネネさまよね?会いたかった…ネネさまが消えちゃったかと思ってた…』
そこには桜模様の着物を着て、先ほどまで台に乗っていた刀を背負った少女の姿があった。
鬼子『え…あなたは?私の事を知っているの?』
小日本『えへへ…私の名前は小日本、ネネさまから名前を貰ったんだよ?ネネさまったらまた忘れてるんだね』
田中『…え?あの子は刀から産まれたの?しかも鬼子ちゃんの事を既に知っているってどういう事?』
鬼子『話せば長くなるけど、私の一族には私と同じ様に角のある「鬼子」と呼ばれる女が時々生まれるの。
小日本の言っているのは、多分先代以前の事を言っていると思うんだけど、私の家族は本家を離れたから詳しくは知らないの…』
ハンニャー『ちょっと鬼子!なんでこの旅館にはこんな変態のまで来ているのよ!あんたは本当に甘すぎだわ…』
若般は猫耳まで飛び出し爪の伸びた姿で、バスタオルのみ身に纏い爪の先にはチチメンチョウとヒワイドリを串刺しにしている。
二羽『ふ…ふふ、良い乳を拝ませて貰えれば我らが生涯に一片の悔いも無し!!』
暴れて爪からずり落ちると、一目散に逃げていく。それを湯上り姿で追いかける若般。ほとんど野生に戻った猫だ。体は妖艶な女性だが。
田中『…何、アレ?鳥が喋ってた…。いやまぁ猫又と一緒に泊まりに来た私も変なんだろうけど』
鬼子『…どこまで話しましたっけ?そうそう、それでついて来ちゃってしばらく若般さんと一緒に三人で住んでたんだけど…。
夏にね、彼女が若般さんの前で力を使っちゃったの。図書館に飾る絵が少ない、って時にね…』
小日本『えへへ…私の力なら色んな人を呼べるよ〜!…絵を描きたりし方々よ、この地へ集まりたまへ…萌え咲け!』
目を閉じた小日本が祝詞を上げると、ピンクの花びらが街へと散り、パラパラとコンクールに出展する作品を人々が…。
田中『ちょっとまって!それって夏がテーマの市のコンクールだよね?その人達の中に多分私も入ってるよ。
友達と水着は尻が良いか胸が良いかで喧嘩してて、突然コンクール応募して決着ってのが思い浮かんで…』
鬼子『そう、人の想いにも干渉出来る力、運命すら左右できる力は危険すぎるから、小日本を封印する事も考えないとならない
って言われて、若般さんと大喧嘩しちゃったのよ。それから二人で飛び出して、空き家を見つけてそこに住んで…』
話している所に、また小日本が飛び込んできた。その手には絵本が握られている。
小日本『やっぱりネネさまに読んで欲しい…駄目?ネネさまも遊んだりしたいのよね?邪魔だったらごめんね…』
見つめる二人の目は、いつも以上に優しくなっている。ふと、田中さんが何かを思い出して鞄を漁る。
田中『そうだった、小日本ちゃんにプレゼントがあるんだ〜。ちょっと付けてもらって良いかな?』
そう言うと三つのリボンを取り出す田中さん。それを小日本の頭頂部の髪に一つ付けて『P子』と言ってみたり、
側面の二つ髪に付けて『U子』と言ってみたりする。『私で遊ばないで〜』と恥ずかしそうだが、プレゼント自体は嬉しそうだ。
田中『もし気に入ったなら、鬼子さんに付けて貰いなよ。今度遊びに行く時は小日本ちゃんも呼ぶからさ』
小日本『絶対だよ〜。ネネさま…また私を置いて行ってしまったら嫌だよ〜』
三人は約束をして、そのあと変態がコソコソ覗こうとする湯船に三人で入って温まっていった。
…以上です。『御結』という刀の銘の案を読んだ時に、どうやればストーリー付けられるか考えて、
結局『御』を『緒』に変えて、前に本スレへ書いた水子の本当は産まれたかったというのに無理やりくっつけました。
次に書くのはいつか解りませんが、モモサワガエルを登場させる予定です。
ところで…コミケってどんな雰囲気なんですかね?まぁ結局は想像を頼りに書いてしまいますが…。
当たり前のように続いている日常もいつか終わりを迎える日が必ず来る。
だからと言って諦めた訳ではないのだが……どうしたものかな。
部屋には人外の者が6人。その内、人の形をしているのが4人。
残り二人は鶏と魚だ。二足歩行のな。
まぁ、もともと俺の日常は人の形をしている人外の日輪と夜烏賊が
一緒にいることで形成されていたんだが……いやはて、鬼子を匿ってからというもの
トラブルが頻繁に起きそうな予感がする。現に一週間も立っていないのに居候が
小日本という居候が一人増え、またヒワイドリとヤイカガシという二人増えそうだ。
鳴「なぁ、日輪」
日「なんですか?今はロケットの形をしている乳について語り合っているところで……」
鳴「まぁ、それはいいんだがな。お前、昨日いくら使った?」
日「えーと……いくらでしょうね?」
鳴「今月の食費が……無いんだけど。ってコレは昨日から言ってるが」
日「だから私と鬼子ちゃんがバイトに行くんじゃないですか。ねぇー鬼子ちゃん」
鬼「え、えぇ……」
昨日の事があるのか少し気まずそうだ。
まぁ、それもそうか昨日は着物を脱ごうとしたんだからな。
危うく事務所がストリップ劇場に早変わりするところだ。副作用は考えないといけないようだ。
鳴「それもそうなんだが……それでも食費が足りないんだ。7人だぞ!?7人!」
日「え?ヒワイドリ達も居候していいの?」
鳴「いや、それは別に構わないんだが……」
ヒ「いや、居候はしないから安心してくれ鳴木よ。鬼子と小日本を連れて、山に帰る」
鳴「え?どういう事だ?」
ヤ「どうもこうも無いですよ。元々、そういうつもりだったんです。小日本は想定外でしたけど」
ヒ「そういう事だ。元々、鬼子が記憶を失う原因を作ったのも俺達だ。責任は俺達が取るべきなんだ」
鳴「鬼子はそれでいいのか?」
鬼「わ、私は……」
ヒ「帰るんだよ鬼子。ここは住む世界が違う」
鬼「けど……私は、この相談所の一員です」
ヤ「ならそれも今日まで。帰るの鬼子。家だって放ったらかしなんだから」
鬼「嫌です!私は……貴方達のことは……しらないですし……」
ヒ「はぁ……いいか?鬼子がどう言おうが構わない。だが記憶を取り戻すためだ」
鬼「で、でも……」
鳴「記憶がなくなった原因をしってるのか?」
ヒ「……あぁ、知ってるさ。記憶喰だ」
こいつ、何か隠してやがるな。
まぁ、今は答えたことだけ聞いておこう。
鳴「じゃあ記憶を奪った記憶喰はそこにいるのか?」
ヒ「それは分からない。だが探してみるしか無いだろう?」
鳴「一体はこの街にいたぞ」
ヒ「この街に?そうか、だから昨日は鬼子の様子が可笑しかったのか」
鳴「あぁ、だが記憶喰はそんなに頻繁に出るはずじゃない。なのにこの部屋に居たんだ」
ヒ「あいつらか」
鳴「知ってるのか?」
ヒ「知ってるも何も、住んでたところじゃ頻繁に会ってたからな」
鳴「そいつらが記憶を失う原因か?」
ヒ「いや、違う。あいつらは鬼子の補佐だ。守り神みたいなものさ。鼻が利くからな」
鳴「狛犬か」
ヒ「少し違う。犬神だ。といっても婆さんから受けた恩を返すためにしてるんだろうけどさ」
鳴「婆さん?」
ヒ「あぁ、俺達は鬼だから何百年も前の話になるが……」
ヤ「ヒワイドリ!」
ヒ「あ、すまないヤイカガシ。まぁ、何にせよ鬼子は連れて帰る」
鳴「……なら俺も連れてけ」
鬼「鳴木さん。何を……」
鳴「どの道、記憶が戻らなくてもいつかは帰るんだ。場所を覚えといて損はない。
あ、そうだ。ちょっとだけでも記憶戻った?」
鬼「あ、記憶は戻りました。鬼についての記憶と、薙刀の使い方をですが」
鳴「それは良かった。で、俺は行ってもいいのか?」
ヒ「……荒らすなよ」
鳴「何を荒らすんだよ」
ヒ「鬼子の箪笥」
鳴「俺はお前らみたいに変態じゃない!」
ヤ「失礼な!私たちだってバレないように持ち出してるんだからね!」
鳴「それが変態行為だ!というか盗むじゃないか!」
ヤ「一緒に住んでるので盗みになりません」
鳴「なります」
鬼「というかそういう事されてたんですね……」
ヤ「や、それはその……言葉のあやというか……」
鬼「変態!」
小「ネネさま待って!こにも行く!」
バタバタと鬼子は小日本を連れて出ていってしまった。
夜「下着盗むのはやり過ぎじゃないか?」
日「というか本人の前でそれを言っちゃうのがなぁ」
鳴「いや、お前らが言うなよ」
ヤ「この言葉を聞くのは何度目だろうか……」
鳴「涙拭けよ」
ヒ「それは涙じゃない。心の汗だ」
鳴「かっこ良く言っても涙だ」
ヒ「かっこ良ければ問題ない。イケメンなら乳と……」
鳴「くだらんこと言ってないで、鬼子と小日本探しに行くぞ―」
――まちなか!
鳴「居ねぇよ。蕎麦屋とか探したけどやっぱいねぇよ」
ヒ「そばが好きだからな鬼子は」
鳴「なぁ、なんか電波っぽいので居場所探せないの?鬼電波とかさ」
ヤ「というかさっきから事務所のビルに居るからね。鬼電波で探したところ」
鳴「早く言えよ!というか鬼電波で合ってんのかよ!」
ヒ「残念不正解だ。これは愛という――」
日「それはないわね」
夜「それはないっスね」
ヒ「お前ら……仲間じゃないのか」
――再び事務所!
ガチャ
鳴「鬼子、心配かけr」
バタンッ
日「どうしたのさ?」
鳴「なんかちっこいのが居た。あと大きいの」
夜「何いってんスか?」
鳴「なんかだかな……小さい鬼子と大きい巨乳が居た」
日「まじかよヒャッホーーーウ!」
ガチャ
日「……」
バタンッ
鳴「どうだった?」
日「目が血走ってた。というか鼻血吹いてた。あれは狩人の目だよ。怖いよ!」
ヒ「そんな訳ないだろ。怒った鬼子のほうが怖いに決まってる」
鳴「まぁ……入ろう」
ガチャ
鳴「えぇと……そのですね」
ヒ「おぉ、小日本」
小「やほ、ヒワイドリ」
ヤ「ありゃー鬼子ちっちゃくなっちゃった」
鳴「Hey,You!どういう事か説明を」
小「カクカクシカジカ」
日「そんな事が……ていうか乳すげー!お姉さんと乳についてアンドロメダまで語り会おうぜ!」
鳴「ちょっと黙ってな日輪!カクカクシカジカってなんだよ」
小「漫画等でよくある説明です」
鳴「俺には伝わりませんでした」
小「分かりました。では説明を始めます。なんかー鯖みたいなのがー」
鳴「普通にしてくれ」
小「なんだか、鯖みたいな変な鬼が事務所内に変な術をかけていたらしく、ネネさまと私が
入った瞬間にこう……ネネさまと私の時間が逆になったみたいで」
鳴「……時間系の鬼か。鯖って言うんだったら、逆時鬼でほぼ間違いないな。で、本体は?」
小「知らないよ?」
鳴「えー。元に戻れないじゃん」
小「知りませんよ。というか戻らなくていいじゃないですか。ネネさまがこんなに愛くるしい……ブハッ」
鳴「鼻血出てるぞ小日本」
小「すいません。ネネさま―。今日はお蕎麦ですって!」
鬼「なにっ!?本当か!?」
鳴「おい、今日は飯はな――」
小「本当です!」
鬼「やったー。お蕎麦!お蕎麦!わんこ!お蕎麦!」
小「空気読んで下さい鳴木さん」
鳴「えぇー。だってお金がないからさ」
小「お金とかいう問題じゃないんです!ネネさまだけを幸せにできるかどうかなんです!」
鳴「分かった。蕎麦だな?言ったぞ?ネネさまだけを幸せにって言ったよな?」
小「え?まぁ、言いましたけど」
鳴「出前を取る……あ、すいません。蕎麦の出前、大盛り一人前」
一同「えっ?一人前!?」
鳴「お金がないものでな」
小「それじゃあ私たちは?」
鳴「飯抜きです。ついでに鬼子だけの蕎麦ですので」
小「そんなぁ〜」
馬鹿なやりとりをしていると鬼子(小)が袖を引っ張ってきた。
鬼「お前、イイヤツだな!名前はなんていうの?」
鳴「えっ?俺?」
鬼「うん!」
鳴「鳴木だ。ナルキ」
鬼「ナイキだな!ナイキはいい人!」
鳴「ナルキ……というかそのスポーツ用品みたいな名前はやめて」
鬼「ナイキはいい人ー!」
鳴「……もういいよナイキで」
日「がんばれNIKE」
夜「頑張るっスよNIKE」
ヒ「がんばれよNIKE」
ヤ「きっといいことあるってNIKE」
鳴「ちくしょう……バカにしやがって」
バイクの音が近づいてきた。どうやら蕎麦が届いたようだ。
財布から1600円取り出し、受け取りに行く。
出前「しゃーすっ!1580円になりまぇあああす!」
鳴「じゃあ、1600円から」
出前「しゃーすっ!20円のおつりです!ありやしたー」
大盛りと言ったが相当多いな。
鬼子(小)一人で食べきれるかな?
鬼「お蕎麦きたの?」
鳴「はい、お蕎麦」
鬼「やたー。ありがとうナイキ!一口あげる!」
鳴「おぉ、それは嬉しい」
小「断れ」
鳴「えっ!?」
小「断るんだNIKE。じゃないと運命の赤い糸が未来永劫消えることになるぞ」
鳴「それは困る!……あー、鬼子?」
鬼「なにっ?そんなに食べたいのか?食いしん坊だなナイキは」
鳴「そうじゃない!お兄さんあんまりお腹減ってないから一人で食べな」
鬼「本当にいいの?」
鳴「いいぜ☆」
鬼「ありがとうナイキ!」
鳴「……泣けてくるな」
ヒ「あ、俺腹減ってきた。鬼子ちょっとくれ」
鬼「やらないよ!」
ヒ「ケチ」
鬼「ベーっだ」
小「可愛すぎ!ブハッ!」
日「あ、倒れた。この内に胸のサイズを……」
夜・ヤ「では私どもはパンツの柄と採取を……」
鳴「やめないか」
あっるぇー?小日本ってこんなキャラだったっけ?
どうやら、鬼子と小日本の歳が入れ替わったようです。ではでは。
【日本カレンダー・二月】
「日本さん!あそぼー!」
「た、田中さん……うえぇぇ……」
「ちょっと、どうしたの?
よ、よーしよし泣かない泣かない!」
「ひっく、バレンタインだから、
田中さん、に、お菓子をと思って…ッ
でも、上手くいかな、くてぇぇ…うぇぇ……」
「よしよし。一体何を作ろうとしたの?」
「生チョコっていうの、
簡単だってテレビでやってたから、見よう見まねで…
でも私、生チョコって食べた事なくて、
わかんなくて…ひっく」
「ありゃりゃー。
クリーム入れすぎで固まらなくなっちゃったんだよ。
チョコ増やせばなんとかなるって。だから泣かないで?ね?」
「ひっく、…はい、泣きま、せん!」
「それにしても…日本さんって料理上手なのに、
お菓子作りで失敗なんて意外だなぁ〜」
「お菓子って、お味噌汁作るみたいに目分量じゃダメなんですね…」
「あはは、そりゃーね!
さ、アタシも手伝うから作っちゃおう!」
「ありがとうございます。今度こそ頑張ります!
まだまだ材料のチョコは沢山ありますから!」
「うわぁ!そんなにいっぱい買ったの?」
「どのくらい必要か、よくわからなくって……」
「それにしたって買いすぎだよ…。
よーし、この際だ!色んなの作っちゃお!
私もバレンタインにってクッキー焼いて来たんだ!
あんまり上手じゃないけど。」
「わぁ、美味しそうです!」
「このクッキーに、チョコ溶かして塗っちゃおうよ!
それからホットミルクにチョコを溶かすのも良いよね!」
「あ、私チョコ大副も食べたいです」
「良いね!作り方調べようっと」
「出来あがったら、小日本も呼んでおやつの時間ですね!」
「仕方ないから、ヒワイドリとヤイカガシにも恵んでやるか!」
そんな、二月の思い出。
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`''ー- .._ !li ハ ヽ, 丶 _ ヽ ノ /i、i'´`ヽヽ \''"/ ヽ `'´_/
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 ̄ ̄`''ー-ゝ'i 'i_-- i:;:;:;:;:;:;:;:;{;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/∧ \`ヽ、 `> 過程が同じなら同じ答えに至るわ
_ / ヽ丶_,l :;:;:;:;:;:;:; ', ;:;:;:i;:;:;:;:;:; // \ ヽ `'' "´ さあ、真理の海へ飛び込もう
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,,. '" ,,. '"/ / i!';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ \/ ` たまには見せてよ
`''´ ,,. -'" /'´ ,:' ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ',ヽ、}
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●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十二章〜【ヒワイドリの怒り】
陽の光が傾きかけた午後。薄暗い森の中を凄まじい速さで駆け飛ぶ鬼子の姿があった。
その姿は・・角が光りながら鋭くなり、裾が短くなった紅色の着物から大量のもみじが舞い落ちている。
そして、妖しく光り輝く薙刀を右手に持ち・・・赤黒く染まったその瞳からは・・・
・・・涙が溢れ出していた。
皆が感じた歌麻呂の痛み・・・。その痛みが鬼子の心を強く締め付けている・・・。
みんなを守る・・・と、心で決めていたのに・・・。
【無事でいて・・・】
そう思う一心で鬼子は、木々の小さな枝を避ける事無く森の中を一直線に駆け飛んでいる。
鬼子の顔は・・・木々の枝が当り、血が滲むようになってきていた。
自分のこの小さな痛みなどどうでもいい。歌麻呂の安否だけが・・・・・・。
歌麻呂が何かの影を相手に、険しい表情で身構えている。
右手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、その枝の先には、刀の様な薙刀の様な鋭い刃物が付いていた。
歌麻呂の左腕から・・血が流れ出ている。そして、足を引きずっていた。
「くそう・・・。不意打ちたぁ〜卑怯な奴だな・・・。こ、これが心の鬼に取り付かれ、
悪しき輩と変貌した奴の姿か・・・。醜い姿だな・・・」
彼が見上げたその先には、自身の身体の三倍ほどの大きさのある熊の様な姿の悪しき輩がいた。
歌麻呂は錫杖を左手に持ち替え、右手で素早く九字(くじ)を切り出した。
「臨兵闘者皆陣列在前」←【指を四縦五横に切る動作を伴う】
その言葉を唱えた後、何かの紙をその悪しき輩に投げつけた。
そして叫ぶ。
≪「式神!!」≫
すると、その投げつけた紙が、獅子の姿に変わり悪しき輩に飛び掛って行った。
今回のこの力は、山伏ではなく陰陽師の力だ。
その隙に、歌麻呂は足を引きずりながら少し後ろへ後退する。
獅子にまとわりつかれている輩が大きな爪で、その獅子を一刀両断した。
【ガシーン】
歌麻呂は、険しい表情で下唇を噛締める。
「・・これなら」
そしてまた九字を切り出した。
「朱雀・玄武・白虎・勾陳・帝后・文王・三台・玉女・青龍」
先ほどとは違う唱え方だ。
そう言いながら今度は木の板を懐から出し、それを輩めがけて力一杯投げつけ、叫んだ。
≪「霊符!!!」≫
【ドドーーーーン】
大きな爆発音とともに、あたり一体が炎の海に飲み込まれる。
大きな炎が燃え盛る中、歌麻呂はその場で炎を見つめ身構えていた。
「ハアハア・・・やったか・・・?」
目の前の炎の中で、黒くうごめく影が見える。
歌麻呂は、顔の前に腕をかざし、炎の中のうごめく影をじっと見ていた。
【ドバァッ】
突然炎の中から悪しき輩が現れ、歌麻呂めがけて襲い掛ってきた。
歌麻呂は後ろに飛んで逃げようとしたが、くじいてる足が言う事を聞かない。
そして・・その場に倒れこんでしまった。
「し・・しまった」
歌麻呂はその影を、目を見開きながら見上げた。
覆いかぶさる様に歌麻呂の前に飛び出して来た悪しき輩。
その輩が、大きな爪を勢い良く振り下ろしてきた。
【ガシーーーーンッッッ】
辺り一面に鳴り響く大きな鈍い音。
【ドスン】
と地面に落ちる輩の片腕。
その音に目を開いた歌麻呂の前には・・・・・仁王立ち姿の鬼子がいた。
鬼子が熊の様な悪しき輩の片腕を切り裂いていたのだ。
赤黒い瞳からは・・・小さく輝く涙が流れている様に見えた。
●挿絵1
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=735.jpg
「ヒワイドリ、早く歌麻呂さんを安全な場所まで!」
人型に素早く変ったヒワイドリは歌麻呂を抱きかかえ、即この場から走り去る。
歌麻呂の目には、ヒワイドリの着物の合間から燃え盛る炎の中へ飛び込んでいく鬼子の姿が映る。
手を伸ばしながら歌麻呂は叫んだ。
≪「鬼子ちゃーーーーん・・・」≫
燃え盛る炎の中で、鬼子とその悪しき輩は対峙している。
輩の爪を見ると・・・白い毛がその爪の中に挟まっていた。
鬼子には直ぐ解った。それが、ハチ太郎の綺麗な白い毛だと。
鬼子の髪の毛が逆立って行き、赤黒い瞳が怒りを爆発させる。
≪「・・・お前が・・・お前がやったのかーーーーー!」≫
鬼子は叫び、見た事の無い険しい形相でその輩に飛び掛って行った。
光輝く薙刀を力一杯振り下ろす鬼子。それをかいくぐりながら鋭い爪を
鬼子に突き出す悪しき輩。
炎の中では、【キーン】【ガスッ】【ドガッ】という音が何度も鳴り響いていた。
少し離れた高台に、ヒワイドリは歌麻呂を降ろす。
ヒワイドリは、自分の白い着物の袂を破り、それを歌麻呂の怪我の部分に巻き付けた。
「大丈夫かぃ?歌麻呂」
初めて見る優しい目つきのヒワイドリだ。
「あ・・あぁ。俺なら大丈夫。ちょっと、足をくじいちまってね。それより・・
鬼子ちゃんの方が心配だ。鬼子ちゃんがどれほど強いかは知らないけど、
あの悪しき輩は・・・鬼子ちゃんにとっても強すぎるんじゃぁ・・・」
ヒワイドリが炎の方を見つめる。
「・・・・・解らない。おいらにも解らないんだ。鬼子の強さがどれ程かは・・・」
後ろの草むらが急にガザガザと揺れる。
ヒワイドリは振り向き、とっさに身構えた。
すると、音麻呂と詠麻呂、秀吉が出てきた。
3人の目に、歌麻呂の身体の状態が飛び込んで来た。
音麻呂が、血相を変えて飛び寄って来る。
「う、歌麻呂。大丈夫か!?」
「あぁ、大丈夫。危ない所を鬼子ちゃんに助けられたよ」
秀吉が辺りを見回す。
「お、鬼子ちゃんは何処に・・・?」
すると、ヒワイドリが指差した。
「・・・あの・・炎の中さ・・・。悪しき輩とあの中で闘ってる・・・」
その言葉を聞いた秀吉の表情が、みるみる怒りに満ちた顔つきに変わっていく。
眉間にシワを寄せた秀吉は、ヒワイドリの胸ぐらを掴み、押し上げた。
「お・・お前・・・。鬼子ちゃんを一人で・・・」
「秀吉さん。違います。今さっきヒワイドリが俺をココへ運んでくれたんです」
歌麻呂は、痛む足を押さえながら立ち上がり、秀吉の腕をつかみながらそう言った。
「そ・・そうか。すまん・・ヒワイドリ」
そう言った秀吉は、直ぐに鬼子の方に走って行った。
「君達はココで待機だ。危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ!
決してあの場所には近づかないでね」
そう言い残し、秀吉は鬼子の方に走って行った。
秀吉が駆け込んで行った時、炎は煙へと変わっていた。
そして大声で叫んだ。
≪「鬼子ちゃん!鬼子ちゃん・・・」≫
黒く立ち込める煙の中から鬼子の声が聞こえて来た。
「秀吉さん?こっちには近づかないで!」
その声がした方へ、秀吉は何も考えず駆け込んで行った。
薄暗い煙の中、秀吉の目に飛び込んで来たのは、鬼子の着物が所々切り刻まれていて、
口からも・・・頬からも血を流している姿だった。
「鬼子ちゃん!」
「ひ・・秀吉さん・・・」
鬼子は目を見開き驚いている。
「な、何で来たんですか・・。ここは危険だって・・・」
「・・・鬼子ちゃん・・。一旦下がるんだ。その状態では勝てなくなるよ」
2人の前には、異形の形をした悪しき輩がいる。こちらの動きをジッと見つめているみたいだ。
「だ・・駄目です。先に逃げて下さい。秀吉さんは何も武器を持っていないじゃないですか」
その言葉が終わるのと同時に、悪しき輩が飛び掛って来た。
素早く鬼子の前へ出る秀吉。
輩の大きな腕を瞬時に掴み、相手の力を利用してそのまま下へ押しやる。
下へさがった輩の首元めがけて、秀吉の足が力強く食い込んだ。
【ドガッ】
輩は地面に叩きつけられる。一瞬の出来事だった。
秀吉は、鬼子の腕を掴み後ろへと下がっていく。
「これが僕の武器さ。古武道ってね、相手の力を利用しながら倒すんだよ」
鬼子は秀吉の力強さに圧倒されていて言葉が出なかった。
「あ〜あ。鬼子ちゃんのその姿を織田さんが見たら・・・僕怒られちゃうな・・・」
「で・・でも・・・。やっぱり秀吉さんは下がってた方が・・」
「鬼子ちゃん。鬼子ちゃんがいくら強くても、倒せない相手がいるかもしれない、
そういう時は、みんなの力を借りないとね。力を合わせれば勝てるようになるよ、きっと」
叩きつけられた輩の周りに立ち込めていた煙が、徐々に薄くなってきた。
その時・・・鬼子と秀吉の目に映ったのは、倒れている輩の後ろにもう一体、
大きな異形の形をした輩の姿が映った。
秀吉が、目を凝らしながらその輩を観察している。
「形が違う・・・。やけに長い手足だ・・・」
「あ・・あれは多分、昆虫か何かに取り付いた輩だと思います。でも・・・
ここまで身体が大きくなるなんて・・・」
「鬼子ちゃん・・少し距離をとろう。相手の動き方を読むんだ」
「は、はい」
少し離れた場所にいるヒワイドリ達。彼等もまた、鬼子達の状況を見ていた。
ヒワイドリが険しい表情でそれを見つめている。
「やばい・・・やばいぞあれは・・・。もう一体出てきやがった。
秀吉がいると言っても、一匹相手に苦戦していた鬼子では・・・」
≪「俺が行く!」≫
と声を張り上げたのは音麻呂だった。
「まてぃ」
後ろからガサツな声が飛んで来た。出てきたのは、般若と奏麻呂だった。
「後ろから近づいてるワシ達に気付かんようでは、あの輩は倒せんよ」
奏麻呂が歌麻呂の状況を見て、近くに飛んで来た。
「ど・・どうしたの!?怪我してるじゃない・・・」
「ハハ・・ちょっと不意をつかれちゃってね」
般若は、彼等の周りに素早く結界を張る。
「この結界から出るんじゃないぞ。この中にいれば安心じゃからな。絶対に出るな!
ヒワイドリよ、どういう状況か説明してくれ」
ヒワイドリは、鬼子がココへ到着してから今までの状況を般若に説明した。
「・・・そうか。苦戦しとると言う訳じゃな」
「そ、そうだよ。だから速く助けてやれよ般若」
ヒワイドリはそう荒々しく般若に言った。
「・・・今は駄目じゃ・・・」
「ハァ・・?何言ってんだ般若。お前は鬼子の守護者だろ!」
「そうじゃ・・・。ヒワイドリは知らんのか?守護者とは、必要以上の事をしてはいけないんじゃ。
もしワシが手助けなどしてしまったら、今必死になって考えておる鬼子が成長すると思うか?
今以上に強くなろうとしている鬼子の邪魔をするだけじゃ」
「しかし・・・あの状況じゃぁ・・・」
「解っとる・・・。もう少し様子をみるんじゃ」
般若は鬼子達を見つめている。
ヒワイドリは、握り拳を作りながらその様子を眺めていた。
ジリジリと後ろへ下がる鬼子と秀吉。そして秀吉が鬼子に言った。
「あの這いつくばってる方の輩の攻撃パターンは解ったかい?」
「はい、大体は。あの大きな爪でしか攻撃してきませんから」
秀吉は、もう一体の輩の方を見た。
「じゃぁ後は、あの手足の長い輩の攻撃パターンが解れば、何とかなるかもしれないね。
僕があの輩と対峙するから、鬼子ちゃんはその攻撃パターンを良く見ておくんだよ」
そう言い少し前へ出る秀吉。鬼子はその秀吉の肩に素早く手をやった。
「だ、駄目です。危険ですよ・・・。秀吉さんは相手の力を利用して倒すんでしょ!?
なら、あの手足の長い輩には不利なんじゃぁ・・・」
鬼子のとても不安そうな顔つき。秀吉はその鬼子の顔を見ながら微笑んだ。
「さすがだね!良く見てる。僕の弱点も解ってるなんて凄いよ。
でもね、今君は、肩で息をしているだろ。その状態で突き進んでも解決策は見つからない。
僕は、自分の身が危なくなったら一度後ろへ下がるから、それまではその目で
相手のパターンと弱い所を読み取ってくれるかな。それと、体力を回復させといてね」
「わ・・・解りました・・でも・・・」
鬼子の表情はまだまだ不安そうだ。秀吉は、人差し指を立てて笑顔で鬼子に言った。
「頼んだよ。これから光の世を守っていかなくちゃいけないのは僕じゃなく、鬼子ちゃんなんだ。
その鬼子ちゃんには、もっともっと強くなってもらわなくちゃ。ね!」
そう言って、秀吉は輩の方へと飛び込んで言った。
≪「ひ・・秀吉さーーーん」≫
手を伸ばし叫ぶ鬼子の指先越しに、秀吉の姿が小さくなっていく。
手足の長い輩を一言で言うならカマキリのようだ。
秀吉がカマキリの様な輩の近くに行った時、鋭いその長い手が飛んで来た。
それをしゃがんで避ける秀吉。そして素早くその輩の真下へと潜り込んだ。
お腹の様な部分に、力一杯拳を振り上げる。
【ドグッ】
少しヨロめく輩だが、長い足が横から飛んで来た。
秀吉はすかさず状態を反らす。目の前をかすめ飛んでいく輩の足。
とっさに、秀吉は輩の前に出て飛び上がった。
そして、秀吉の右足が空間を裂く様に輩の顔めがけて飛んでいく。
【ガツーーーン】
輩の首が捻じ曲がる。
「いけるか・・・」
秀吉がそう思った瞬間、背中に熱い激痛が走った。
中を舞いながら振り向くと、そこにはさっきまで横たわっていた熊の様な輩がいた。
その輩が、秀吉の背中をえぐったのだ・・・。
【ゥグッ・・】
秀吉は・・地面に膝を付き、倒れ込んでしまった・・・。
それを見ていた鬼子の赤い目がさらに大きくなり、一瞬にして髪の毛が【ブワッ】と逆立つ。
凄まじい速さで駆け込む鬼子。その目には秀吉しか映っていない。
立ちはだかる二匹の輩の間に素早く入り、秀吉を抱きかかえてその場を飛び出して行った。
鬼子は右足で地面を蹴ると同時に、秀吉をその場に置き、
身体を反転させて、今度は輩に向かって突進して行った。
秀吉の身体の周りは、小さく光るもみじの葉っぱで覆い尽くされている。
輩に飛び込んでいく鬼子の表情は、怒りに満ちている。
激しく光り輝く薙刀が、動きの鈍い熊の様な輩を切り裂いた。
≪「萌え散れー!」≫
●挿絵2
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=736.jpg 大きく叫ぶ鬼子。その鬼子めがけてカマキリ型の輩の長い手が飛んで来た。
鬼子はその手を避けようとしない・・・。頬をかすめ、鬼子の頬を切り裂いた。
しかし、鬼子は瞬き一つしない。かまわず、そのまま突進する鬼子・・・。
鬼子の表情は・・獣のようだ。
その様子を見ていたヒワイドリが何かに気付く。そして手を上げ指した。
「あ・・あれ・・。あの輩の後ろに3匹目の輩が・・・」
その3匹目の輩の姿も大きく、トカゲと狼を合わせた様な姿をしていた。
「も・・もう駄目だ。般若、鬼子を助けに行こうよ」
ヒワイドリは真剣な表情で、般若にそう言った。
しかし・・般若の答えは・・・。
「・・・まだだ」
般若を酷く睨むヒワイドリ。
「き・・・貴様〜・・・」
そして握り拳を作りながら叫んだ。
≪「鬼子を見殺しにする気かーーーーーーーーーーーーーー!!」≫
そう叫びながら、ヒワイドリは結界から出て、鬼子の元に走って行った。
「は・・・般若・・さん」
そう声をかけて来たのは音麻呂だった。
「俺も行きます。これは・・・どう見ても鬼子ちゃんには不利ですよ・・・。
俺達の力が弱いのは解ってます。だけど、これじゃぁ・・・」
般若は腕組しながら語った。
「駄目じゃ。お主等が行くと、鬼子は必ず守ろうとする・・・。
今のあの表情では、自分の身を犠牲にしてまでもな。お主等にはそれが解ると思うがの」
音麻呂達4人は、般若の言葉は直ぐに理解できた。彼等もまた神職に精通する身。
鬼子の目からは、それが非常に解りやすく読み取れていたのである。
「大丈夫じゃ・・・・・。そん時はワシが出る」
般若はそう語り彼等の動揺を抑えた。
ヒワイドリが、怒りに満ち溢れている鬼子の目の前に飛び出てきた。
切羽詰った状況に似合わない笑顔のヒワイドリ。
「よ!助けに来たぜ」
「ヒ・・ヒワイ・・」
少しばかり鬼子の目の色が変わり、落ち着きを取り戻す。
そしてとっさに輩から離れる鬼子。ヒワイドリもそれに付いていった。
「あ!あの輩は・・!?」
鬼子はやっと、3匹目の輩に気が付いた。
「だろ〜。全然気付いて無かっただろ。もうチョッとで殺される所だったぜ」
「・・・な・・何であんたまでココに来たの?」
「何でって・・・助けに来たんだろ」
「た・・助けにって・・・足手まといになんないでよ・・・」
邪魔だな〜と言いたげな表情の鬼子。そんな鬼子をよそに、ヒワイドリは腕まくりしている。
そして、ヒワイドリは鬼子の方を見て言った。
「で・・・どうやって倒そうか・・?」
鬼子は口をアングリと開ける。やっぱり・・今のヒワイドリは
呪縛を解く前のヒワイドリと性格が同じだった・・・。
頭をかきむしりながら鬼子は言う。
「あの手足の長い輩は、接近戦に弱いみたい。でも・・・その中に入るまでが危険なの・・」
「接近戦に弱い・・・か」
ヒワイドリは【ニヤッ】っと笑った。
「よ〜し。見とけよ鬼子」
そうヒワイドリは言いながら、目の前に両手をかざした。
すると、ヒワイドリの回りの空気が渦を巻く。髪の毛と着物が激しく舞い上がった。
【ブワアァ〜〜〜】
●挿絵3
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/53/12-3.jpg 【プッスン・・】
●挿絵4
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/54/12-4.jpg 「あ・・・あれ・・・???」
ヒワイドリの姿が・・・弱々しい鶏に変わって・・・。
鬼子が後ろでこけている・・・。
ヒワイドリの額から、冷や汗が流れ落ちる。
情け無さそうな表情で鬼子の方を見た。
「じゅ・・呪縛が・・・」
≪「ヒワイ!!下がって!!」≫
鬼子がそう叫ぶ。
カマキリ型の輩が襲いかかって来たのだ。
ヒワイドリはまた人型に変り、とっさにしゃがみ込んだ。
その背中をかすめる様に、輩の長い腕が飛んでいく。
鬼子が輩の近くに素早く走り込む。そして薙刀を力一杯振上げた。
【ズバーーーン】
・・・空を切る薙刀。その鬼子めがけて輩の長い手が飛んでくる。
鬼子は、薙刀を振り切った勢いで体勢を整える事が出来ずにいた。
【ドンッ】
ヒワイドリが鬼子に体当たりして突き飛ばす。
鬼子の身代わり・・の様な形になってしまったヒワイドリめがけて、
輩の手が・・・。
【ガシーーーン】
ヒワイドリの頭にかすかに当った。脳震盪を起こしその場に膝を着くヒワイドリ。
カマキリ型の輩が、両手と前足2本で再びヒワイドリを襲う。
それを見ていた鬼子が叫んだ。
≪「ヒワイーーーーー」≫
【ガキーーーーン・・・】
鈍い金属音が鳴り響く。
輩の長い手足が、ヒワイドリの目の前で止まっている。
ヒワイドリが首に巻いていた羽付きファーが、硬く鋭くなり七支刀の形になっている。
七支刀は2本出現し、それが鎖と紐で繋がっていた。
●挿絵5
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/55/12-5.jpg それを使ってヒワイドリ自身が、輩の手足を止めたのだ。額から血を流しながら。
「・・そうか・・・昔、こんな武器も使ってたよなぁ・・・」
輩の手足が、そのままヒワイドリを押しつぶそうとしている。
鬼子は、ヒワイドリを助けようとカマキリの様な輩に近づいて行くが、
輩の他の足に阻まれている。
押し潰されそうになるヒワイドリ。鬼子は強引にヒワイドリの方へと走って行った。
輩の足が、鬼子めがけてかすめ飛ぶ。鬼子の紅い目が、その動きを読み取ろうとしていた。
そして、薙刀を振りかざす。
【ザシュ・・】
鬼子が、何とか輩の足一本を切り裂いた。
ヒワイドリを押し潰そうとしていた輩の手足がかすかに緩む。
その隙に、鬼子はヒワイドリの腕を掴み、外へと飛び出した。
【ドガッ・・・】
・・・鬼子の頭から、血が流れ出す・・・。
輩の鞭の様にしなる手が・・・鬼子の頭に直撃したのだ。
ヒワイドリの目の前で、倒れていく鬼子。彼は、手を差しのべ鬼子を抱きしめた。
ヒワイドリが鬼子を見ると・・・輩の強い一撃で、気絶していた・・・。
「・・お・・・俺なんか・・助ける価値なんてないのに・・・」
カマキリ型の輩が、ヒワイドリ達を再度襲い始めた。
・・長い・・輩の手足が・・・、身動き取れない彼等めがけて飛んでいく。
ヒワイドリは・・・鬼子を抱きしめたまま・・その場を動けないでいた。
彼は・・・黒い空を見上げ・・・力一杯叫ぶしか出来なかった。
≪「は・・・般若ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」≫
そのヒワイドリの叫びを聞いた音麻呂達4人が、般若の方を見た。
しかし・・・・・・・・・その場にはいなかった。
般若が立っていたと思われる部分だけ・・・草が揺れていた。
【ズザーーーン!!】
鬼子とヒワイドリの前で、何故か粉々に切り刻まれているカマキリの様な輩。
その場には・・・赤く光る目を持つ般若の姿があった。可愛い姿には似合わない程の大きな妖気。
その般若が持つ強大な気が一瞬だけ、異形の形をかたどる。
●挿絵6
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/56/12-6.jpg 「鬼子を連れて下がれ、ヒワイドリ」
「は・・・般若・・・」
「秀吉が横たわっている所まで、今すぐ下がるんだ」
そう言われたヒワイドリは、気絶している鬼子を抱きかかえ、
横たわっている秀吉の所まで駆け飛んで行った。
秀吉の横に、鬼子をそっと寝かすヒワイドリ。
彼が秀吉の方を見ると、鬼子から舞い落ちたであろう淡く光るもみじが、
秀吉の傷口へと消えていっている。ヒワイドリはそれに感づく。
「あ・・もしかして、このもみじ・・・こにぽんと同じ癒し効果があるんじゃぁ・・・」
彼は、秀吉には届いていない淡く光るもみじをとっさに拾い上げ、
鬼子の傷口に当てた。
鬼の形相で狼の様な悪しき輩を睨む般若。その輩は、ユックリと般若の周りをグルグル回っている。
般若が言葉を発する。
「貴様か・・・犬避けの石を置いたのは・・・」
【グルルルルー】
●挿絵7
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/57/12-7.jpg 輩は、口からヨダレを流しながらそう唸るだけだった。
「・・こいつじゃ無いな。ただの輩だ」
すると、狼の様な輩の後方から何かがユックリと出てきた。
般若の目は、その何かを睨みつける。
輩の後方から出てきたのは、見た目人間の民の様に見えた。
しかし、両腕が異様に長く、指先には尖った爪を持っている。
背丈は3メートルほどか。そして青黒く艶やかな皮膚をしていた。
顔は・・・縦に長く、横長に切れた大きな目を持っている。
その人間の様な輩が、狼の様な輩の横で立ち止まった。
そして、般若をジロジロと観察しているようだ。
「・・・非力な鬼娘に着く守護者か・・・」
●挿絵8
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/58/12-8.jpg 人間の様な姿の輩がそう喋った。
般若は目を見開いて驚いている。
「・・や、やはりそうか。知恵を持ち得た輩が存在しとるとは思っとったが・・・。
貴様・・・光の世に何しに来た?」
すると、その人型の輩が【ニタッ】っと笑い出した。
そして、長い両腕を左右に広げた。
「何しに来た?お笑いだな。そんな事は決まっているだろう。
この世を支配しに来たんだよ。人間の民を食い潰し、我が力にしてな。
人間の民は美味しいぞ。食えば食うほど新しい知恵が付く。
そして・・・闇世の大白狐をも食いつぶす」
「ほほぅ・・・。大白狐様までも・・・か。それは大層な計画じゃな。
その為に・・・その知恵で、光の世の力石を解読すると言うんじゃな」
輩の目つきが鋭くなる。
「・・・頭の良い守護者だな・・。それに感ずいているとは。
なら、お前の力では俺を止める事が出来んと言う事にも感ずいているだろう。
力の差が大きすぎる。お前のその力では俺に触れる事すら出来んからな」
そう言われても、般若の顔つきは全く変わらない。
「貴様は・・元々闇世の猿の民だな・・。その猿の民が人間の民を喰らい続け、
今の姿になってるんだろう。貴様・・・何処を通ってこの光の世へ来た・・」
その輩は・・一度目を閉じ、そして見開いた。
そぉーっと右手を前へ出していく。非力な般若の事を少し警戒している様だ。
「・・・何処を通って来た・・・か。色々調べているみたいだな。
俺は、闇世で200年ほど色んな民を喰らい続けてきた。
最近光の世に来たが、それでも50体くらいは喰ってるなぁ。」
人型の輩は、話をたぶらかしているみたいだ。
それを聞いた般若の目がさらに厳しくなる。
「・・・何処かの川を・・通って来た・・・のだな!?」
人型の輩は、目で般若を睨み、鼻で般若の何かを読み取ろうとしていた。
「お前は・・・鬼娘の守護者・・・・・・では無いな・・」
そう言葉をかけられた般若は無言だった。
輩がまた話しだす。
「お前の力は、この輩と同等くらいか・・・」
これ以上の詮索を拒むかの様に、その輩が指を【チョン】と前へ出す。
すると狼の様な輩が、不意に般若を襲い始めたのだ。
【ズバーン】
一瞬にして砕け散る輩。般若は動いた気配がなかった。
人型の輩が少し下がりながら、般若を睨み言った。
「お前・・・何者だ・・。いや・・・元は何の民だ・・」
ヒワイドリも、遠くにいる音麻呂達も・・身体に非常に強い殺気を感じている。
詠麻呂が自分の身を抱きしめながら言った。
「い・・痛い・・。身体が痛い」
音麻呂が皆を抱きしめながら言う。
「あ・・あいつの・・・。人型の輩の殺気が・・俺達の身体を痺れさせているんだ・・。
は・・般若さんからも殺気は感じるけど・・・大きさが違いすぎる・・・」
ヒワイドリは未だに目を覚まさない鬼子の近くで、同じ殺気を感じていた。
「は・・・般若・・。あ・・あんたの力でも無理だ・・・。お・・俺達・・もう・・・」
般若を睨みつける人型の輩。その輩が、そおーっと右手を上げ鬼子達が居る所を指差した。
「少しは早いみたいだが、俺の動きには付いて来れんだろう。お前が言う様に、俺は
元々猿の民だ。色んな民の中でも飛びぬけた瞬発力を持っているからな。
お前の目の前で、あの鬼娘の力・・・喰ってやるわ」
そう言い、人型の輩は鬼子達の方へ一瞬にして飛んで来た。
般若は・・・やはりその動きに付いていけずにいた。
人型の輩の大きな爪が鬼子達を襲う。ヒワイドリは、身構える動作さえ出来なかった。
【ギュイィーーーーーーーーーーーーーーーーーン】
人型の輩の腕が、後ろへ弾かれネジ曲がる。
般若が腕を弾いたのだ。遠くにいた般若が・・・。
「ヒワイドリ、2人を担いで直ぐに結界の中へ!」
焦るヒワイドリは、息を止め、鬼子と秀吉を担いで結界の方へと走って行った。
とても醜い形相で、般若を睨む人型の輩。
「・・お・・・お前・・・」
般若の額に、薄っすらと光る文字が浮き出ている。
人型の輩がそれを見て、自分の顔の前に両手を持ってきた。
何か・・・黒く光る小さな文字が輩の手の中に浮かび上がる。
そして般若を見下ろしながら笑い、言った。
「お前は・・鬼の民なのか・・・」
黒い文字を浮かべる輩を見た般若は、目を見開く。
【あぶない】と思ったのだ。
般若は、ヒワイドリの方を見て叫んだ。
≪「速く結界の中へ入るんじゃーーーーーー!」≫
そう言い終わると、般若の額の文字が光輝き出した。
【ブヮアーーーーーーーーーー・・・】
その光り輝く文字を見た人型の輩は・・・のけ反りながら後ずさりする。
「・・そ・・その文字は・・・古(いにしえ)の民・・・・・。
で・・・伝説の・・・・・龍の民か・・・・・・・・」
そう言いながら、輩の手の中の黒光りしている文字が渦を巻きだした。
般若は、大声で叫ぶ!
≪「速くしろーーーーヒワイーーーーーーーーーーーーーー!!!」≫
般若は力を解放した。
【ドォーーーーーーン】
白いお餅を縦に伸ばした様な般若が・・・人型に変っていく・・・。
黒色の袴姿。解放した力の波に激しくたなびく金色の長い髪。
口からは・・・黒い妖気が溢れ出している。
そして、紅色と金色の瞳で輩を凝視していた。
●挿絵9
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/59/12-9.jpg 般若の黒い強大な妖気に、波打ち引き裂かれる輩の皮膚。
その波が、結界を張ってある所まで一瞬に飛んで来た。
結界の中から、ヒワイドリ達に手を差しのべる音麻呂達。
ヒワイドリは、間に合わないと感づいた。そして、鬼子と秀吉を結界の中に力一杯放り込んだ。
音麻呂達は、鬼子と秀吉を抱きかかえながら倒れこむ。少し遅れ、ヒワイドリも結界の中に飛び込んだ。
その瞬間、般若の解放した力が結界を貫く。その時、ヒワイドリの足はまだ結界の外にあった。
人型の輩の皮膚は引き裂かれ、タダレ落ちていたが、構わず般若に襲いかかって来た。
【ドゥン・・・・・】
一瞬にして塵(ちり)となる輩。
輩が塵となり消えていきながら、ポツリと言葉を発した。
「・・・な・・何故だ・・・。鬼の民と・・・龍の民は一緒にいる事が出来ないはず・・・。
ぁあ・・まさか・・・。あいつは・・龍の民の・・しかも唯一の虐げられし者の・・・・・・」
そう言いながら、人型の輩は消えていった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
空から、赤黒い雨が降り出してきている。
そんな中、般若は・・・中に浮きながら人型の般若の身体が輝いている。
のけ反りながらユックリと下へ落ちていく。一瞬、般若の力が暴走し鬼の民が実体化するが
すぐに消えて無くなってしまった。
●挿絵10
http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/60/12-10.jpg 人型の般若から、お餅型の般若に・・・
・・・・・・・・・そして・・・般若面になりながら落ちていく。
「・・・我墜ちて・・・守護神なり・・・」
【コトン・・・】
地面に落ちた般若面は全く動かない。
結界の中にいる鬼子達は・・・皆気絶していた・・・。
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十三章〜【いつもの自分で】に続く。
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子「早速ですが、今日は何の日でしょう!」
鳴「給料日?」
子「不正解!」
日「乳の日」
子「それは貴方達にしたら毎日でしょうがっ!」
夜「パンツデーッス!」
子「なんだそのバレンタインデーの派生みたいな日は」
ヒ「ふっ……お前らお子様だな。今日は鬼子のバストチェックの日に決まってるだろう」
子「鶏鍋になりたいんですかヒワイドリ?」
ヒ「すいません」
ヤ「お前もまだまだだなぁ。今日はパンツを買いに行く日だろう!そしてお古を私が――」
子「今日は天気がいいので七輪で魚を焼くといい感じになりますね」チャキ...
ヤ「冗談ですって小日本様」
子「もっー!なんで今日という日が分からないんですか!」
鬼「わかった!あられの日だ!」
子「正解!さすがネネさま!」
鳴「あぁ、ひな祭りな」
鬼「あられの日違うのかナイキ?」
鳴「合ってるよー」
鬼「じゃあ、あられ頂戴?」
鳴「ひなあられは無いです。代わりに良いものをヘソクリから買ってきてやろう」
鬼「無いのか!?あられ……」
鳴「そんなに食べたいのか?あれ、そんなに美味しく(ry」
子「つべこべ言わずに買ってきたら良いんですよ。ネネさまが欲しがってるでしょう?」チャキンッ!
鳴「そういう脅しみたいなのは良くないと思うな!」
子「では運命の赤い糸を切断してもよろしいでしょうか」
鳴「ちょっと行ってくる」ドタタッ...
――20分後!
鳴「帰ってきたぜ鬼子!」
子「静かに!ネネさまが寝てるんですよ!」
鳴「(´・ω・`)」
鬼「ん……帰ってきたのかナイキ?」
鳴「え、うん」
子「せっかくの寝顔を寝顔を寝顔を……」
鳴「……ほら、お土産だぞ鬼子」
鬼「本当か!開けていいのか!?」
鳴「イエス」
鬼「?」
鳴「開けてイイですよ」
ガサガサッ
鬼「おぉ〜。ちらし寿司だちらし寿司!」
日「うわっ……海鮮ちらしじゃないですか!」
夜「高かったんじゃないんスか?」
鳴「高いよ。一つ3000円くらい」
ヒ「ということは」
ヤ「タダでコレが食える!」
子「やれば出来るじゃないですか鳴木さん」
日(まぁ、いつも通り――)
夜(俺達の分は無いんでしょうね)
鳴「本当だぞ。今日だけで凄い金が飛んだ。一万ぐらい。鬼子、これあられな」
鬼「ありがとう鳴木!」モグモグっ
子「さぁ!早く私たちの分を出すのです!」
鳴「ねぇよ」
ヒ「なん……」
ヤ「だ……」
子「と……?」
鳴「居候の身で贅沢な。自分でお金を稼いでから言いなさい」
子「稼いでるじゃないですか!この美貌で!10年前の時間軸ではありえない美貌ですよ!」
鳴「うるせー!もう見飽きたんだよ!というか金になってねぇじゃねぇか!」
ヒ「俺の分はこの写真で……」スッ
鳴「ん?……こ、これは!鬼子のはd……ダメに決まってるだろ」
ヒ「なっ!?酷いぞ!俺の宝物だぞコノヤロー」
子「へぇ、一体どんな写真」
日「うはっ!生乳写真!」
ヒ「ちょっとお腹が痛くなったので散歩でも」
子「ニヤリッ」
ヒ「ヤダーっ!その笑顔ヤダー!」
――ヒワイドリ退場
ヤ「じゃあ、私はこれでお願いをする!」
鳴「パンツはいらねぇよ!」
ヤ「なんだとっ!これを手に入れるのにどんだけ苦労したと!」ガシッ
子「ニヤリッ」
ヤ「ぎゃあああああ!顔にヒワイドリの血痕が!」
――ヤイカガシ退場
子「さて、私の分はありますか?」
鳴「そんな血塗れの顔で言わないでください」
子「あるんですか?お腹ペコペコですよ」
鳴「あるよチキショウ!」
子「話せば分かる人だと信じてましたよ」
鳴「脅しじゃねぇかよ」
子「ネネさまー。一緒に食べましょう!」
鬼「いいよー」
日「で、私達の分は?」
夜「そうっスよ。俺達の分が無いとか無いッスよね?」
鳴「あるよ。あるって」
日「ふぉおおおおお!コレが……年に一度しか食べれないという高級海鮮」
夜「あれ?コレって共食いじゃないっスか?」
鳴「気にすんな」
夜「そうッスね」
――1時間後
鳴「いやぁ、食った食った」
日「さすが高級。おいしかった」
夜「美味だったけどなんだかいたたまれない気持ちになったっス」
子「ヤイカガシもコレぐらい美味しかったら……」
鬼「美味しかった―」
鳴「さて、全員食べたところで。写真撮影と行こうか」
日「メインイベンツ!」
鳴「ひな壇の撮影でございます」
夜「キターッ!」
子「お雛様はネネさまで、お内裏様は?」
ヤ「私に決まってるだろう」
ヒ「いや、俺だろう」
夜「いやいや、俺が」
日「いやいやいや、私が」
子「じゃあ私が」
鳴「めんどくせェなお前ら。そんなにお内裏様やりたきゃ交代で写真取ればいいじゃない」
ヒ「バッカヤロ―!」ゴッ!
鳴「おぅふ!なにすんだ馬鹿鳥!」
ヒ「てめぇは何も分かっちゃいねぇ。この小さい状態の鬼子と写真が取れるのが今だけということを」
鬼「小さくないよ?」
鳴「だから交代で……」
ヒ「だからこそなんだよ!一番初めに並んで写真を取れた奴こそが初めてをもらえるのだ!初体験だ!」
鳴「その考え方は少し怖いぞ」
子「ということはやはり私が行くしか無いようですね」
ヤ「こにぽん!今回ばかりは譲れない!」
子「……」ドスッ!
ヤ「ぐっ……」
子「他愛もない……」
鳴「争うなよ。そんなに初体験が欲しければ、皆でお内裏様になればいいじゃないのか?」
ヒ「なっ!」
日「それは……」
夜「なんということを……」
子「やはり斬るしか……」
鳴「なんでさ!一度に写真が撮れて十分いい案だと」
子「浮気じゃないですか。お雛様が、数多くのお内裏様とならんでたら」
鳴「あ、そういえばそうだな」
子「やはり邪魔者を排除してから」チャキ...
鳴「待て待て待て!話せば分かる子だっただろ!」
子「それは十年前の話です」
鬼「ダメっ!」
子「ネネさま!どうして!?」
鬼「皆で仲良く!」
子「くっ……ネネさまにそう言われては引くしか……」
鳴「助かったぁ。ありがとな鬼子」
鬼「ご飯くれるいい人だからな」
鳴「あれ?俺ってその程度?」
――20分後
鳴「ひな壇、設置完了でございます」
鬼「おぉー」
日「これはいいひな壇」
鳴「はい、鬼子はここに座ってな」
鬼「よいしょ……コレ終わったらあられ食べていいのか?」
鳴「終わったら皆で食べようなー」
鬼「うん!」
鳴「では、お内裏様集まってくれ」
ドタタッ!
子「それでは、私がネネさまに一番近い位置で」
ヤ「じゃあ、私はパンツが見えそうな位置に」
ヒ「俺は適当に」
日「私も適当に居るかな」
夜「俺はヤイカガシと同じ位置に」
鳴「……なんでその位置全てが俺に体重が掛かる位置なんだよ。重い!退け!」
子「仕方ないでしょ!ここが一番近いんだから!なんだったらその場所を譲ってください!」
日「この位置が一番楽だからね」
夜「同意」
ヤ「同意」
ヒ「同意」
鳴「そんな訳が、って馬鹿!それ以上体重かけるな!倒れる倒れる!」
パシャッ!
ということで、前代未聞のお内裏様が6人、お雛様が1人というひな壇が出来たのであった。
これから事務所に飾られるであろう馬鹿な写真と共に。
ひな祭りということを忘れていた。記念にSSをば。
キャラが分からないかも知れませんね。一様、よろず屋メンバーです。覚えていてくれてればですが。
相変わらずのキャラ崩壊。読んでいただければ幸いです。スレお借りしますた!
暑い。もうすぐ春だと言うのは分かっているが、事務所内が暑すぎる。
原因は分かっている。人数が増えすぎたせいだ。
狭い廃墟のビルを管理がてら借りているというのに……暑くて溶けちまうよ!
日「溶けないですよ」
鳴「読心!?」
日「心の鬼っていう肩書きを忘れてもらっちゃ困りますよ」
え?ということは今まで考えていたことをずっと見られてたってこと!?
恥ずかしい……
ヒ「あ、そうだ。鬼子」
鬼「なんだヒワイドリ」
ヒ「落し物です」
鬼「おぉー、ありがとう?」
ヒ「なぜ疑問形」
鬼「なんとなく」
出前の蕎麦を食べ終えた鬼子にヒワイドリが何かを渡していた。
目を凝らしてよく見てみると、もの凄い形相をした般若面。
え、怖い。大人というか24歳のお兄さんでも怖い。
鳴「ヒワイドリ。それ、何?」
ヒ「え?どれだよ?」
鳴「そのお面」
ヒ「あぁ、般若面ね。鬼子のお面だよ」
鳴「鬼子の?この事務所に来てからは付けてなかったぞ?」
ヒ「山で落としてたんだよ。それを俺のセンサーが発見したってわけさ」
鳴「あぁ、そういう事。変態センサーね」
ヒ「失礼な!愛ゆえにだ」
鳴「そんな一方的な愛は駄目だと思います」
ヒ「現在354万回振られてます」
鳴「ごめんなさい。お気持ちをお察しいたします」
ヒ「ありがとう……今夜、居酒屋で乳の話を聞いてくれるか?」
鳴「聞くわけねぇよ!」
ヒ「可哀想って思ってくれたんじゃないのか!?」
鳴「自業自得だ馬鹿鳥。さっさと鬼子を元に戻す方法を探すぞ」
足元でブーブー言いながら走り回ってる鳥は置いておいて……早く元に戻す方法を探さなくては。
三階の資料室に置いてたっけな。あー、探さないとな。
鳴「日輪、夜烏賊。資料取ってきてくれ。三階にある筈だから」
日「曖昧なんですね」
夜「疲れてるんスよ。最近ずっと怒鳴ってるっスから」
鳴「お前らが悪いんだろう」
夜「まぁ、そういう解釈の仕方もあるッスね」
鳴「それしかないだろう。もういい。早く探して」
夜「はいはいっス」
日「わかってますよ」ガチャ...
資料は日輪達に任しておいてって、俺やることないじゃん。
こうなったら小さい頃の鬼子を写真でも取って永久保存版に……
鬼「ナイキ―。お祭りだ―」
鳴「へ?」
鬼「お祭りだお祭り」
小「わー、本当ですね―」
窓の外を見てみると確かに祭りをしていた。妖怪の類のオンパレード。
一般人には見えていないようだが、俺より鬼子が先に気が付くとは。
そろそろ年というわけか……
鬼「お祭り行こうナイキ!」
鳴「金が……あ、そういえば妖怪は物々交換だっけ?」
小「違います。moneyです」
鳴「何故英語で言った」
小「なんとなくです。それにほら、年齢と共に賢くなった私を知って欲しくて」
鳴「賢くなってないぞ」
小「斬りますよ」
鳴「さぁー、仕事だ仕事」
鬼「お祭りは!?」
鳴「あぁ、お金が……無いんス」
鬼「……ダメ?」
鳴「いや、ダメというわけでは……はぁ、分かったよ。行っていいから」
鬼「やったー!」
相当甘いな俺。子育てをしたらかなり我侭な子に育ちそうだ。
鳴「1000円までだからな。わかった?」
鬼「うん。1000円って何?」
鳴「……おーい、日輪。資料探すのは後で良いから、一緒についていてあげなさい。小日本も」
日「了解。で、私へのお小遣いは?」
小「私は最初っからそのつもりです」
鳴「日輪へのお小遣いはありません。小日本は予想してたからどうでもいいです」
小「うわー。10年前の私なら甘かったくせにぃ。ロリコンですね」
鳴「だだ誰がロリコンか!さっさと行けっての!」
小「わかってますよー。ネネさま行こう」
日「じゃあ、行ってきますね」
鬼「ありがとうナイキ―」
ガチャッ...
鳴「やっと行ったか」
ヤ「私も行きたかったなー」
ヒ「俺も」
鳴「お前らが行くと浪費が激しいからな留守番だ。俺は出掛けてくる」
ヒ「自分だけでお祭りを楽しむ気だな!」
ヤ「私たちも連れてけ!」
鳴「行かねぇよ!通帳の残高チェックだ!俺が帰ってくるまで此処に居ろよ!絶対な!」
バタンッ!
扉を閉めても事務所からは文句を言っている声が聞こえてくる。
鳴「さてと……こっちの路地裏だったけな」
事務所から出て直ぐの路地裏へと入っていく。
確かこの辺に居たはずなんだが……
鳴「おーい。居るんだろ?いつも事務所を覗いてる人。話しがあるなら聞くから出てきてくれ」
……返答はない。そりゃそうか。
いきなり事務所の中の人間が出てきても、恥ずかしいとかそういう感情で出てこれないよな。
仕方ない、出直すか。ついでにお祭りで占ってもらおう。
そう思い、通りの方へ振り返ると声が聞こえてきた。
?「振り向くな」
鳴「へ?」
最初はなんだと思ったが、そりゃ振り向いたら顔覚えちゃうもんな。
ストーカーの類だったら顔を覚えられる事ほど嫌なことはないだろうし。
鳴「分かった。振り向かない」
?「何のようだ?」
鳴「いや、いつも事務所を覗いてるだろ?なんかあるのかなぁっと思って」
?「はぁ……気付いてたのか?」
鳴「そりゃ当然。あれだけ目を光らせてればね。俺の推測だと、君達は鬼子の補佐だろ?」
?「なんでそんな事を?」
鳴「ヒワイドリが言ってた」
?「あの鳥野郎……分かったよ。確かに俺は補佐役だ。鬼子のな」
鳴「そりゃどうも初めまして。名前は?」
狛「……狛〈こま〉」
鳴「なにそれ可愛い」
狛「ぶっ飛ばすぞ」
鳴「それは失礼しました。で、なんでいつも覗いてるんだ?」
狛「言ったろ?鬼子の補佐だ。何かある時はすぐに駆けつける。記憶喰をソファに置いたのも俺だ」
鳴「いや、補佐は分かってるけどさ、なんで姿を現さないんだ?そして、その節はどうも」
狛「補佐は所詮、補佐だ。鬼子自信に守られてるって言う変な気持ちを持たしちゃいけないんだ」
鳴「どうしてだ?」
狛「これは、記憶を失う話になるんだが……鬼子が行っていたのは鬼の浄化だ。闇に心を呑まれれば
人の心から鬼が表面上に現れる。それは人の行動、言動などの全てに影響する。それは知ってるな?」
鳴「あぁ、知っているよ。何年やってると思ってるんだ」
狛「この闇に呑まれた心を救うには心の隙間に巣食っている鬼を元の状態へ戻さなければならない」
鳴「それなら、俺も何回か行って来たぞ。まぁ、対処できる相手は少なかったが」
狛「そういう人達は昔から居たさ。だけど完全に浄化しきれる訳ではない。黒から灰色へと変えるのが精一杯だ。
完全に浄化できる奴らも居たが……子孫にはあまり伝わらなかったみたいだな」
鳴「安倍晴明の事か?」
狛「それと、芦屋道満。その頃から鬼子は鬼の浄化について学び始めた。成長が止まったのもその頃だ。
話は変わるが、鬼には二種類居るって言うことは知ってるか?」
鳴「あぁ、聞いたことがある。堕鬼と善鬼だろ?確か、堕鬼が人や動物、植物に対して悪い影響を与える鬼で
善鬼は普段からそこに居るが悪影響は無く、居たほうが幸福になる場合もある鬼だろ?」
狛「そうだ。補足すると、善鬼が負の感情を受けすぎると堕鬼になる。鬼子が相手にするのは堕鬼だ。それも
最上級クラスの危険な相手ばかりだ」
鳴「そうか、だから姿を隠してるのか。守られているという意識が心に隙を生み、命を落としかねない状況が
増えるのを避けるためか」
狛「そういう事だ。分かってくれて何よりだ」
鳴「あれ?ということはだ。狛がここに居るって事は鬼子の補佐はどうなってるんだ?」
狛「それに付いては問題ない。まだ若いがしっかりやれる坊主に任したよ」
鳴「坊主?」
――その頃の鬼子一行
鬼「ねぇねぇ、蕎麦くださいな」
店「50円イタダキヤスヨ」
鬼「はい」
店「マイドアリデヤスヨ」
鬼「日輪のオネーちゃん!蕎麦かった!」
日「ズキュン!……なんだ、このトキメキは!確かにあと十年したら一緒に話し合いたいのは確かであるが、
こんな胸のトキメキは初めてで(ry」
小「コレが、ネネさまの力ですよ」
日「こ、コレが!」
小「もう、可愛い!一生このままでもいい!」
日「今までは、大きい胸や小さめの胸についてばかり語っていたが、子供の物も……」
?「いや、やめとけ」
小「!!」
?「い、やべっ!逃げろ」
小「日輪さん!」
日「……しかし、現状で小さいものというのは将来的に長い目で見ていくと……」
小「日輪さん!」
日「はひっ!どうしたの!?」
小「あのチッコイ犬耳の子供を捕まえて!」
日「えー、男じゃん」
小「やらないと鶏鍋」
日「よしっ!いっちょ行ってくるね!」ダダダッ...
?「あぁ、もう!なんで追いかけてくるんだよ!」
日「鶏鍋は嫌だからに決まってるでしょう!」
?「はぁ?何いってんだ!人間の癖に!」
日「誰が人間だ小僧コラ!とぉう!」
?「わっ!馬鹿!」
バターン!
日「ふふふ、鶏の跳躍力を舐めてもらっちゃ困りますな」
?「ってー、離せ馬鹿!胸が当たってんだよ!」
日「ほほーう。その年で、胸に反応するとはどうだい?今夜一緒に乳について話そうじゃないか」
?「誰が話すか!ヒワイドリに心乗っ取られてんのか!?」
日「その、ヒワイドリ本人ですが」
?「えっ?」
小「日輪さん!捕まえましたか!?」ダダダッ...
鬼「悪い奴はそいつかー」
?「いっ」バッ...
日「ご覧のとおり、私の下敷きです」
小「どうもありがとうございます。さて、さっきからネネさまの周りをウロチョロと……顔を出しやがれってんだい!」
日「口調変わってる変わってる」
?「わっ、やめろ!布を引っ張るな!」ビリッ...
小「あれ?」
?「何すんだよ小日本!」
小「それはこっちの台詞です。なにしてるんですか柴」
柴「それは……その」
小「まさかストーカーという訳ではないでしょうね。そんな事にしたら犬鍋に」
柴「バッ、違うよ!それに俺が好きなのは小……ゴニョゴニョ」
小「?」
柴「あー、もう!鬼子の護衛だよ!」
小「護衛?」
柴「そう。記憶を無くしてからもからもずっと護衛してたの!もちろんそれ以前からもだけど」
小「なぜそのような事を」
柴「それは知らない。狛に聞いてくれよ」
小「狛は何処に?」
柴「それは言えな(ry」
小「何処に?」
柴「事務所の所に居る……」
小「ありがとう柴。さて、それじゃあ戻りますか」
鬼「えっ!?もう?」
日「鬼子ちゃん。あと、お金いくら持ってる?」
鬼「これだけ!」
日「20円……もう、お金ないからオシマイだね」
鬼「そうなのか。残念だな。また来れる?」
日「それはお祭りがやってればもちろん来れるよ」
鬼「皆も一緒に?」
日「それは、お金があればかな?貧乏だし」
鬼「そうかー。期待してる」
小「じゃあ、ネネさま帰ろうか」
鬼「うん」
柴「それじゃあ、俺もソロソロ」
ガシッ!
小「柴は一緒に」
日「来るんだよねー」
柴「い、いやだぁああああ」
――再び事務所前!
狛「……でさ、般ニャーがな」
小「さて、事務所で取り調べ取り調べ」
柴「いやだあああ。昔は優しかったのにぃいい!」
狛「やべっ!鳴木。ちょっとこっち来い!」
鳴「うぉっ!?」
小日本達が祭りから帰ったのを目にした途端、腰に手を巻き付け事務所の
真正面のビルの屋上へと飛び上がった。
強く絞めつけられて……気持ち悪い……
鳴「うぉえ……」
狛「お、悪い。強く抱きすぎたな」
鳴「吐くかと思った。で、急にどうしたんだ?」
狛「いや、小日本が帰ってきたんでな。けど、隠れる必要なかったみたいだ」
鳴「どういう事?」
狛「犬耳の子供見えるだろ?あれが、俺の代わりに鬼子を追わしてたんだが、捕まったみたいだ」
鳴「あぁ、あの日輪にヘッドロックかけられてる子ね」
狛「そう、あれだ。引取りに行くか」
鳴「そうだな。俺もそろそろ戻りたいし。あ、そうだ。鬼子を元に戻す方法が知りたいんだが」
狛「あの三階でパンツ被ってる男が資料を探してるんじゃないのか?」
鳴「聞こえてたのかよ。あれは役にたたん」
狛「犬だからな聞こえる。そうか、でも俺も知らねぇんだよ。般ニャ―なら知ってる思うが」
鳴「あぁ、何百年も生きてる猫だろ。さっき聞いたけど、気まぐれじゃ意味ないしな」
狛「そうだな。多分まだ、家にいるだろうし。仕方ない、俺も資料探すの手伝うよ」
鳴「あぁ、助かる」
狛「それじゃあ、事務所行くか」
鳴「ちょっと待て……まさか飛び降りr(ガシッ」
狛「よっと」
鳴「ぎゃああああああああ」
――事務所!
ガチャ
鳴「た、ただいま」
日「おかえり―ってどうしたの?」
鬼「顔色が悪いぞー」
鳴「ちょっと、悲惨な目に。もうこりごりだ」
狛「情けないな。アレぐらい耐えろよ」
鳴「耐えれない!死なないと分かってても怖いわ!」
小「……来ましたね狛」
柴「ごめん……捕まった」
狛「知ってる」
柴「怒ってる?」
狛「それはもう凄い」
柴「ごめんなさい!」
狛「日輪さんだっけ?人型を維持してるヒワイドリは」
日「ひゃい!そうです」
狛「そのチッコイのを一日レンタルします。好きなだけ話し相手に」
日「ヒャッハー!三年分蓄積された乳の話を聞かせてやるぜ!」
柴「それだけは勘べ(ry」
狛「ははは、人形は喋っちゃだめだぞ!我、尊ノ命ニヨリ命ズル。拘束第三式、傀儡」
柴「ムグゥ!」
日「これは便利!さっそく聞いてもらうか」
柴「ムウウウウウ!ンン!」ズルズル...
鳴「え?なにそれ怖い」
狛「大丈夫だ。人間には効かないから」
鳴「そりゃ良かった」
狛「ついでに言うと鬼子にも効かない。逆に術をかけたコッチがダメージを負っちまう」
鳴「やったことあるのかよ!」
狛「小さい頃に一回だけ。あまりにもウロウロするもんで」
小「無視ですか。私は無視ですか」
狛「あぁ、忘れてた」
小「このっ!」チャキンッ!
狛「ほれっ!鬼子の秘蔵写真」
小「っ!……卑怯ですよ狛」ゴソゴソッ
狛「ははは、なんとでも言ってくれ。伊達に監視していたわけじゃない」
小「コレ、盗撮って言うんですよ」
狛「資料集めと言ってくれ」
小「まぁ、良いですけど……」
鬼「……ネムイ」グイッ
鳴「なんで俺に言うんだ」
小「やだ!可愛い!」
鳴「小日本。鬼子が眠いらしいぞ」
小「分かってますよ。ネネさまコッチですよ。ここで寝ましょうね」
鬼「ん」
小「くぅー!寝顔もクァワイイ!」
鳴「鼻血垂らしながらコッチ向くんじゃないですよ。怖い」
小「ロリコンの癖にこういう所は理解してくれないんですね」
鳴「ロリコンじゃねぇよ!」
小「ま、良いです。狛、なんで黙って監視なんかしてたんです?」
鳴「流された……」
狛「ん?危険が及ぶからだよ」
小「そうですか。それじゃあ、なんで記憶を失うのを止めれなかったんです?」
狛「俺より強かった。それだけだ」
小「記憶喰が?」
狛「違う。記憶喰は只の道具扱いだったよ。俺が負けたの違う奴だ……同じ相手に二度も負けるとは……」
小「違う奴……一体誰なんです?」
狛「それは、言えない。危険が多すぎる」
小「……じゃあ、今はいいです。記憶喰は探したんですか?ご自慢の鼻と術を使えば直ぐ見つかるでしょう?」
狛「無理だった。一体だけはなんとか見つけて鳴木が、記憶を取り戻してくれたが……残りは分からない」
小「分からない?」
狛「あぁ、なんかこう……探れば探るほど俺に反動が来る。捜索できないように術をかけられてるんだと思う」
小「一体誰がそんな事を」
狛「だから言えない。一つだけ言えるとしたら……婆さんの件にに関わってる奴だ」
小「!……そういう事ですか。分かりましたこれ以上は詮索しません」
狛「分かってくれてありがとう」
鳴「なぁ、婆さんの件ってなんだよ」
狛「まだ、知らなくていい」
鳴「時が来ればって奴か?」
狛「そうだな。時が来ればだ」
鳴「分かった。今はこの疑問は胸に閉まっておくよ」
バタタッ...ガチャ
夜「資料、見つかったっスよー。ってなんですかこの空気は?」
ヤ「私が一言も発することが出来ないほどに空気が張り詰めていた」
ヒ「俺もだ」
夜「そんなにヤバい状況なんスか!?まさか闇金ッスか!?」
鳴「そんなんじゃねぇよ。で、資料見つけたんだろ?元に戻る方法にはなんて書いてあった?」
夜「えーとッスね。『ヨモギと生卵、サバをミキサーにかけた物と』を飲めば元に戻るらしいっス。一週間後ですけど」
小「なにそれ……想像するだけでも気持ちが悪い」
鳴「一週間か。少し時間が掛り過ぎるな。成分促進剤を入れたらどうなる?」
夜「なんとも言えないっスが、時間は短縮はできると思うっス。一晩ぐらいまで、ただ……」
鳴「ただ?」
夜「成分促進剤はゲロマズだったはずッス」
鳴「仕方がないな」
小「えっ!?私は嫌ですよ!」
鳴「つべこべ言うなよ。もとに戻るためには飲まなきゃならないだろ」
小「私は別にこのままでイイですよ!」
夜「あと一ついいっスか陽介?」
鳴「なにだ?夜烏賊」
夜「促進剤の在庫がないっス」
鳴「はぁ!?」
夜「仕入れにいかないとッス」
鳴「くそっ!またあいつの所に行かなきゃならねぇのかよ」
夜「仕方ないっスね。無いんですもん。因みに現在時刻が19時なのでもう開店してるっすよ」
鳴「本当に仕方ないな。今から行くか」
夜「そうっスね」
鳴「夜烏賊、日輪……は鬱憤を晴らしてるから、狛!一緒に来てくれ」
夜「あいっス」
狛「ここはどうするんだ?」
鳴「日輪がいるからなんとかなるよ。小日本もいるしな」
狛「やっぱり、小日本を連れて俺が残ったほうが……」
鳴「来てくれ、じゃないと俺が死ぬ」
小「私じゃ頼りないと?」
鳴「そういう事じゃない。ただ……女の子はちょっとやめといたほうがいいかなっと」
あそこは色々と大変だからな。色々と。
小「そうですか。まぁ、ネネさまと一緒に居れるのでいいですけど」
狛「しょうがないな。一緒に行くよ」
鳴「じゃ、行くか!」
小「いってらー」
無駄に長くなってしまった。申し訳ない。
あと、今回も色々と設定等をお借りしました。(狗がショタだとかゴニョゴニョ……)
I-i
「よーしっ。今日こそはやるぞー。」夕食中だというのに吠えてしまった。
・・・
「勘弁してくれよ、いきなりなんだぁ。」
「何をするのか知らんが、ほどほどにな。」
「何でもいいけど、早くご飯食べて。母さんだって暇じゃないんだから。」
そういうことで、今夜は一大決意してPCに向かっている。
祐子はここ一月ずっとdsを追っている。伝説の日本人ハッカーだ。某企業の不正会計事件で存在が広く知られるようになった。
(非改行)国内外を問わず大学や研究所のネットワークに侵入、様々な分野の研究資料や論文草稿等を読み漁り、研究についてのコメント・侵入手段・対処法を残していくが、dsから他に情報が流れることは無いという。
一月前祐子はdsが残していった問題のファイルを入った先で見た。つまり祐子もハックしていたわけだが、苦労して入った先で「セキュリティーに問題があり過ぎます」といった英文を目にしてちょっとヘコんだ。
(非改行)それ以来気になってdsのことを調べたり、立ち回りそうなところをうろついたりしてみたが、4月になって「居場所」と思しきアドレスが分かった。今夜はそこに入ってみるつもりでいる。
みゃ〜
アラートが鳴った。一月ほど前からあちこち嗅ぎ回っているのがいるので、無断でいくつかハニーポットを置いたのだが、そのうちの一つにアクセスがあった。
『来た。』思いはしたが、慌てて机に戻るようなことはしない。ポットの温め中だ。
『適温。』一旦お湯を捨て、ティーバッグを放り込み、改めてお湯を入れる。アクセスよりお茶の方が大事だ。
・・・
トレイをサイドテーブルに置いて、PCに向かったと思いきや、タイマーをセットしただけで、見てどうもならないのに、ポットを見ている。
みゃ〜ん
ティーバッグを小皿にどけて、AAねこ柄湯呑にお茶を入れる。
『いまいち。』お茶だけは妹にかなわない。タイマーなどに頼っているのがダメなのかもしれない。そうはいっても、ねこには変えられんだろう、ねこには。
それでやっとポットの管理画面に目を向ける。『いい線行ってるけど、ちょっと遅いかなぁ、でもこんなもんかなぁ。』いつまでも構ってられないから仕事をする。入社2年目だが結構忙しいのだ。
み〜
『おわたー。』と思ったら鳴きやがる。入ってきたのだ。いい加減眠いのだが、これは見ないわけにはいかない。
exit
『はいぃ〜。』何がなんだか分からない。片手間にアクセス元は掴んであるから叩いてみる。
『落ちてる・・・。』どういうつもりなのだろうか。何にせよ寝かせてもらえるのはありがたいから、すべてのポットで今回使われた隙をすべて塞いで寝た。他にも隙はあるからまだ入れるはずだ。
はあ はあ はあ
『入れた・・・。』入っただけで感極まって、何もできない。出てすぐhaltした。机を離れてベットに倒れこむ。
『寝れんのかよ?』とはいえ、何もできないなら寝るしかない。
はあ はあ はあ
『何処に消えた?』一度は捕捉したのに、結局逃げられてしまった。探し回って、こんなとこで息を上げてしまっている。
『こんなんじゃダメだ。』姉さんならどうしただろう。心を落ち着けて探知し、見つけ次第何処だろうと構わず踏み込んで斬るに違いない。そもそも一度補足した鬼を逃したりはしない。
『私はダメだ。』振り上げた薙刀を叩きつけようとして思いとどまる。非生物の修復は、不可能ではないが、今の鬼子には時間がかかる。日が登ってしまうだろう。諦めるしかなかった。
comming later
あかりをつけましょ ぼんぼりに。
【日本カレンダー・三月】
今日は嬉しいひなまつり。
別段行事に興味があるわけでもないけれど、お祭り事はなんとなく心が弾む。
女の子が主役お祭り。女の子は皆お姫様。勿論そこにはアタシも含まれる。
そう、今日の主役はアタシなのだ。
「なんだか嬉しそうですね。」
日本さんは茶葉を取り替えながら微笑みかける。
「アタシはお姫様だー!」なんて考えていた事は気恥ずかしくて言えず、
誤魔化すようにエヘヘと笑い返した。
「田中ぁ、今日はゲームとか本は持って来なかったの?」
こにぽんがチョロチョロとアタシの荷物の少なさに首をかしげている。
いつもの田中なら、こにぽんにはこれがオススメだよー!なんて
可愛い絵柄の漫画を持ってきてくれたりするのになぁ、と
残念そうな表情を浮かべている。そんな様子も可愛らしいやら申し訳ないやら。
「今日はひなまつりだよ、こにぽん。」
ポケットからジャラリとそれを取り出すと、
興味深そうにこにぽんの目がキラキラと輝いた。
「たまにはアナログな女の子ゲームも、乙じゃない?」
ビー玉、おてだま、いろはカルタ。
白いお皿に散らばる雛あられは、アタシが持ってきたおはじきに似ている。
試しにぴんと指ではじくと、お菓子らしい軽い感触。
きっとアタシが形作られる前に流行したはずの遊びは
その記憶が無くとも、懐かしく感じるのは何故なのだろう。
「なんだか嬉しそうですね。」
さっきと同じように、もう一度。確かめるように日本さんは私を見た。
彼女には参った。そう言えば日本さんは、アタシを一度も田中とは呼ばなかった。
きっと、最初から気付いていたんだね。
「敵わないなぁ……」
「ふふ、私いつも、あなたのような方々の相手をしていますから。」
「ねぇ、日本さん。ありがとう、楽しかったよ。
最後に一つ、お願いしてもいいかなぁ。」
翌日、犬神神社の木の下を掘り返すと
小さな雛人形が一体埋められていた。
このあたりに住んでいる誰かのイタズラだったのだろう。
鬼子は折り紙でお内裏様を折り、元の場所に埋めなおした。
そんな、三月の思い出。
project light way:2年4月:I-ii(翌未明ー)
黒い体、赤い瞳、大きく開いた口に、2本の角。
『本成!!』
はあ はあ はあ
目を覚まして息を吐き出す。「本成の鬼と対峙した」というだけの夢だが、過去の記憶と胸の圧迫感がひどく印象の悪いものにしている。胸の圧迫感?
「乳の話をしようじゃないか。」
鶏的な居候が胸の上から話しかけてきた。種の名前としてはヒワイドリになるが、うちの個体は「鳥嶋」だ。下の名前は、あるのかどうかも知らない。左手でのど輪を決めて起き上がる。
「く、首が、抜ける。」
辛うじて出る声で訴えるが、知ったことではない。部屋を出て曲がり縁の戸を開ける。まだ暗い。つっかけを履いて、校庭のようにだだっ広いだけの庭に出る。
武芸に苦手は無く、投擲も得意だ。膂力を抑える呪符を仕込んだ左のアームバンドを緩めて手首まで落とすと、右手に持ち替えて全力でぶん投げる。
「にゅ〜〜。」
悲鳴を上げながら虚空に消えていった。星になったかどうかは分からない。
部屋に戻って携帯を見ると4時だ。予定の起床時間に1時間早い。
『どうしたものだろ。』
昨夜の失態が心に引っかかってひどく億劫だったが、同じ理由で寝付けそうにもない。どうせ朝一はいつも稽古だから、妹が起き出してくるまで一人で稽古に励むことにした。
トレーナーを寝間着にしているので、着替えずに運動靴で玄関から庭に出る。ちょっと寒いが、どうせ動けば暖まる。髪を結わえて、まず柔軟体操だ。体はひどく柔らかい。終えると少し右手を開いて呼ぶ。
「鬼斬」
右手の中に現れた薙刀は楕円の鉄柄に楓紋の金象嵌があしらってある。生成してなくても鬼には違いないから、これを片手でぶん回せる。
しかし、まずは中段に構えて、切先を左に回す。相手の武器を外へ払う動作だ。続いて右に回して、内に払う。前に踏み込んで突く。家芸で最初に教わる動作だ。何かあったらここに戻れと強く言い聞かされている。
3度繰り返し4度目で突く手を速めた。二段突き。以前から突けてたが、今のは感触が軽い。
『いける。』
外、内、本鬼。
三段突き切った。会心の笑みを浮かべる。楓紋初代は撃払突を一息で放ったというから、自分などまだまだだが、それでも嬉しい。妹が起きてきたら弓射の稽古を見てやらなければならないが、それまでずっと突いてよう。
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