先日はまさかの乱入者が場をひっちゃかめっちゃかにしていった。
そのおかげと言っては何だが難を逃れたのだ。
ああ、今日もまた再び現れないものか。そんな事を思い、あの時の珍事を振り返る。
そうだ、部室に連れ込まれ、危うく服を脱がされそうになった時、あの人が現れた。そして髪を引っ張られ蹴りを見舞われ追い出され、そしてその後……。
「……はッ!」
拓人はある事を思い出した。ある意味、かなりの機密事項だ。
思わず京を見る。どうかしたのかと言いたげな京をよそに、思わず要らぬ事を考える。懐の毒が回っていた結果だ。
京には最初、拓人に何が起きているのか解らなかった。
ただ、最初に驚いた顔をし、次に嫌そうな顔をし、トドメに妙な表情となったのを確かに見た。
妙な表情である。
そして京は瞬時に悟る。
「……まさか……!! 何を言われた!?」
「ななな……何の事ですか!?」
「懐は……あのバカは何を言った!? 何を聞いた!?」
「何も聞いてませんッ!! パンツが何色かなんてしりませ……しまった!!」
「やっぱりかぁ!!」
思わず口を滑らせた拓人によってあの後どんなやり取りが行われたのかを連想してしまう。
京は拓人をチラっと見る。妙な表情は消え、いつもの可愛い顔へと戻っていた。だが、さっきの表情は忘れない。
ああ、拓ちゃん、やはりアナタも男の子だったのね。
今度はいても立っても居られず、どうしていいか解らない。
また拓人をチラ見する。なぜか顔が真っ赤になる。
「……ゴメン、また今度!」
そう言って走り出した。何故か死ぬほど恥ずかしかったのだ。
次に湧いた感情は怒り。無論、懐に対して。奴の無駄に鋭い表現力で一体どんな伝え方をされたのか。そればかり気になる。
とはいえ、髪を引きずって床へ倒したのは自分である。自責の念もあったのだ。正直やりすぎたと思っていた程だった。
その結果、恥ずかしい情報が流出してしまった。
「ああもうッッ!」
京はこの時、やり場の無い怒りという言葉の意味をしみじみ理解した。