リーゼントの大男は明らかに不満気な表情を浮かべた。
珍しく自分でもどう行動すべきか解らずにいたのだ。そして、モヒカン男はそれをよく理解していた。
「結論は以上だ。俺達が自分達のルールを曲げる訳にはいかない。そこは理解しているだろう?」
「……ああ」
「ならいいんだ。もっとも……」
「なんだ?」
「撲滅運動としてでは無く個人で勝手に何かやるなら俺達には何の関係もない事だ」
「……」
「どうせ一人で行くべきかどうかの相談したかっただけだろう? 俺達の知らない所で何をしようが、関係ないさ」
「すまんな」
「別にいいさ。ああ、要注意リストには載せておくから安心しろ。」
三人は立ち上がる。相談は終わりだ。
そして最後に、本日の議題についての感想を述べはじめた。
「しかし信じられないッス!」
「全くだ」
「そんな人には見えないんスけどねぇ」
「油断大敵だな。俺はまだ懐疑的だが……」
「ホントッスね。自分で気付いてないって所があの人らしいッスけど……」
相談事態はつまらない物だったが、議題そのものはかなり驚きだったようだ。
二人は口を揃え全く同じ事を言った。
「まさかあの懐が女に惚れるとは!」
※ ※ ※
「ぶぁ〜っくしょ!!」
「うわぁあ! き……きたな……」
「スマン。風邪でも引いたか……?」
人が噂をすれば何とやら。
この天の素晴らしいシステムを余すところなく利用している懐は鼻水と唾液を派手に撒き散らす。
懐にとっては定期的に出る謎のくしゃみだった。
「さて……。そっちはなんか進展あった?」
「う……。何も……。やっぱり……その……。うまくメタルの偏見解く所で躓いて……」
「そっちもか……。どうせ『ヘビメタ? あのギャーとか言う奴?』とか言われたんだろ?
そんな奴こっちから願い下げだ」
「あの……そっちは……?」
「こっちも同じだ。メタルやる奴はポツポツ居るけど……。どいつもこいつも下手くそばっか。
いくら速くても音が汚けりゃ意味が無いっつーの」
メンバー捜しはやはり難航していた。
横たわるメタルへの偏見。それを乗り越えたとてまともなプレイが出来無ければメンバーに加えようもない。