第六話:【暗躍しちゃいます】
「と、いう訳だ」
「無い無い。よりによってアイツの場合は絶対無い」
「そうッスよ。むしろコッチ側の人間じゃないスか」
学園内某所。
秘密の場所で悪しき相談をする者が約三名。
彼らこそこの仁科学園にてカップルの心胆を寒からしめる恐怖の噂、この時代に反発するかのようなリーゼントにモヒカン、そして坊主頭の三人組。
あのカップル撲滅運動の三人だ。
「アイツがそうだとは考えられないだろ。むしろ最近はととろと一緒に行動している事がある。そっちのほうが問題だ」
モヒカンが語る。坊主頭もそれに続く。
「そうッスよ。あれほどのプロレス野郎が護衛に就いたらいざって時の実力行使もやりづらいッス。見事に抑止力になってるッス」
それを聞いていたリーゼントは軽く首を振りため息をこぼす。そして自らの考えを述べる。
「……確かにアイツにそんな噂は今まで無かった。だが今回は割と身近で見ていた俺が確認したのだ。観察眼だけはあるつもりだ。
アイツ自身がバカ過ぎて自分で気付いていないのが何とも滑稽だが、その気になる前にツブさなければ」
「そもそもそこがおかしい。カップルなら問題ないが、今は一人なんだ。そもそもターゲットとなりえない」
「それにほっとけば忘れるんじゃないッスか? あの人なら」
「解っていないな。アイツが本気になったら、おそらく止められんぞ。何事も一直線な奴なんだ。それ以外の事は逆な奴なんだが……。
そうなれば完全にととろ側に寝返る可能性はある」
リーゼントの大男は危機感を煽る。が、それは見透かされている。
モヒカンはそれを言う。
「素直じゃない奴だ」
「なんだと?」
「素直に友達を狙うような事態が恐ろしいと言えばいいだろう?
そのくせ、アイツには自分の事を気づいて欲しい。友達だからな」
「……。フン」
「とにかく今は俺達が手を下すべき時じゃない。まずは奴が何も気付かない事を祈る。次にもし気付いて行動に起こしたら失敗するよう期待する。
もしダメなら……やるしかない」