PINKのおいらロビー自治スレ3

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341ほのぼのえっちさん
余裕綽々の二人だった。時折笑みを零す女性達の姿は、大勢に囲まれている状況の中では奇異な代物でしかない。
しかし、それすら自然と感じさせるほどに、二人は幾多の戦場に身を投じ、骸の山を乗り越えてきているのだ。
そして、そんな異様な空気を察知しているのか黒ずくめ達は遠巻きに固唾を飲む姿勢を崩さない。
しばし待たされて正面奥のゲートが重厚感に満ち溢れたがなり声と共に開かれた。

「ごきげんよう」

やって来たのは年の頃20代前半の、小柄な女性だった。
肩に掛かる長さのおかっぱ髪。服装はカーキ色のジャケット、その下に太ももが見える丈の黒いワンピース。足に革のロングブーツを履いている。
女は口元に笑みを浮かべ、しかしとても暗い目で七海さんを見据えている。

「あなたがAsの白い悪魔、柊川七海さんね?」
「ええ、そういう貴女は?」
「初めまして、私、蒼井聖と申します」

蒼井と名乗った女は含み笑いして見せた。
その独特な、蛇が獲物を狙うかのような雰囲気に七海の背筋が逆立つ。
どうにも生理的に受け付けないタイプの人種なのだろう。

「それでこんな山奥まで連れてきて、一体どんな用件かしら?」

七海が冷静な音色で尋ねると、女は首元を飾る黒いブローチを指で弄びながら答えた。

「私たちは近々、大規模な強襲作戦を行うつもりなの。それであなたにも協力してほしいのだけれど、どうかしら?」

七海さんは相手の言葉を吟味して、やや間を開けて答えた。

「そういう話なら政府側に話を通すのが筋ではなくて? 同じ政府直属と言っても組織としては別枠なのだし」
「そうもいかないの。だって、私たちが攻撃するのは国会議事堂なのだから」
「ああ、つまり、クーデターを起こそうっていう事ね?」

この時点で七海さんの表情は辟易していた。
かつて、クローン技術で戦士を大量生産して全世界に向けて宣戦布告した人々が居たし、そんな彼らの野望を打ち砕いたのは他ならぬ七海だったから。
彼女はポケットから銀色の石を取り出して、指で弄びつつ言葉を紡ぐ。

「参考までに聞いて置くけれど、断ったらどうなるのかしら?」
「もちろん今ここで死んで貰うわ。貴女の大切な恋人にも相応の代償を払って貰うし」
「彼もここに?」
「ええ、どうせ死ぬなら同じ墓穴に入った方が本望でしょ?」
「ご愁傷様」
「どういう意味かしら?」

怪訝な顔の女。反して七海さんはとても愉快そうに笑う。

「水瀬ちゃん。これで私たちの負担は3ぶんの1になったね」
「そうね。帰ってパスタを作る時間までできたわ」
「何を言っているのかしら、あなた達は」

すぐに分かるわ、それまでアナタが生きていられたらの話だけれど……。
それだけを言って、手の中のラピッドストーンを突き出して見せる。

「アレンデール、セットアップ」
【SET UP】

その傍で溜息混じりに菱形の青い石を取り出し、両手で包み込むと祈る仕草で呟く水瀬さん。

「エンジェライズ・リフレクション」

すると彼女たちの輪郭から白と黒、二つの色合いを含む光が放たれ、それぞれに衣服を分解・再構築する。
次の瞬間に同じ場所に立っていたのは、それまでとは違う存在だった。