「――ゴルディアン・キック!」
真っ赤な光に包み込まれる。
機体そのものが真っ赤な光になる。
身動き撮れない標的が凄い早さで迫ってくる。
勢いを付けて、跳び蹴りの体勢に入った流星。
真っ赤な塊は床と平行にカッ飛んで、ほどなくして敵機を射貫いた。
『貴様……、そうか、あの方と同じ力を……!』
ヘルハウンドの隊長を名乗った男はそれだけを最期に吐き出すと木っ端微塵に爆発した。
敵機を射貫いた後、その背後に着地していた紅機体は肩越しに敵の塵になってゆく様を顧みる。
「少年誌にありがちな台詞を死に際に言わないで。お願いだから」
膝を付く格好だったので立ち上がろうとするけれど、どうしたことか尻餅をついてしまう雫。
モニタを見れば電力残量が底を尽きかけている。
いや、それ以前に足腰に力が入らなくて、駆け寄ってきた神威君に抱えて貰わなければ立ち上がる事さえ出来なかった。
『おい、大丈夫か雫!?』
「うん、なんとか」
『詳しい事は後で聞く。制限時間を切ったから脱出するぞ』
「うん、分かった」
仲間の腕を借りつつ来た道を返す二人。
途中で数名の敵兵に出くわしたが神威に残されていた弾薬でどうにか撃退して進む。
二手に分かれたT字路に差し掛かったとき、雫達は別れた人々と再会した。
「元気な様子じゃの、雫よ」
「クソジジイ……あとでぶん殴る」
そこには捕らわれていた源八爺さんが居た。
どうやら水無月チームは無事に仕事をこなしたらしい。
順調に地上階へと上った面々は大急ぎで建物から離脱する。
目端では格納庫から続々とAMS部隊が出陣するのが見えたけれど、彼らとやり合うつもりなんてさらさらない。
目的は達成されているのだから、あとは一目散に逃げ帰るだけなのだ。
「こっちだ、早くしろ!!」
門の所で粘っていた仲間達が怒鳴っている。
その後方には輸送ヘリが風切り音を轟かせている。
爺様は水無月さんが背に負ぶっていて、しんがりの冬矢君とキースさんが火力で追撃を押さえていた。
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こうして、どうにかこうにか奪還作戦を成功させた人々は、輸送ヘリに乗り込んで脱出。
全員無事に半壊した屋敷まで帰還できたのは出来過ぎとしか言い様がない。
しかし如月邸の地下施設に舞い戻った総司令は、全員の労をねぎらうより先に、施設に勤めているスタッフも含めて全員に招集を掛けると会議室に集めた。