【あたし達は、ずっと一緒だよ】
反響する声が胸に深く染み込んでいく。
そして視界は再び暗闇へ。
ドクン。
鼓動が一際高く脈打つ。
目を閉じて、開く。
底のない暗闇?
違う。これは単に殺意の具現化をぶつけられた結果。
理解する。
敵から魔法による攻撃を受けているだけ。
防御する手段は?
魔法とは性質を変容させた魔力でしかない。
それなら反する性質の魔力をぶつければ、それは消滅する。
魔力とは自然界に満ちているエネルギーと自分の体内エネルギーとを混合した物。
法則を理解すれば、精神のチャンネルを合わせれば誰でも扱える物。
ならば、私にもできる。
魔法による攻撃は魔法によって弾き返す事が出来る。
だから、私にはできる。
「分かったよ、ミカ。……ありがとう」
呟いて未だ暗闇で見えない手を前にかざす。
恐れも怒りも、如何なる感情も感じなかった。
ただ確信があった。全てが自分の思い通りになるという確信。
「道を開けなさい!!」
腹の底から声を絞り出す。
その言葉に呼応するように、暗闇に盾に一本白い筋が入ったかと思えば、どんどん押し開かれてゆくじゃあないか。
『俺の魔法が破られただと?!』
形作られた道の向こう側に赤銅色のAMSが居た。
相手は焦った声でガトリング砲を持ち直すとこちらに向けて発砲してくる。
しかし吐き出された弾丸の嵐は、紅色の装甲の10センチ手前でひしゃげて停止していた。
『馬鹿な!!』
「こういう事ができるって教えてくれたの、アンタだよ」
そして腰を落とす。
全身の装甲が赤く、もっと紅く、炎のような煌めきを放つ。
【――対象座標を固定します】
合成音が言い終えるのと同時に敵機の四肢に光の輪っかが出現してその動きを封じる。
敵は藻掻こうとするが拘束が解かれる事は無かった。
『バインドだと?!』
【――《聖域》を展開しました。魔力濃度圧縮率、臨界値を越えました。攻撃を開始して下さい】
よく聞くとアナウンスする合成音は友人の声にとてもよく似ていた。
そっか、ずっと一緒に戦ってきたんだね――。
姿のない友人をとても身近に感じる。
優しい手が背中を押してくれたような気がした。
少女はふと微笑んで、身を委ねるように前へと躍り出る。