PINKのおいらロビー自治スレ3

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330ほのぼのえっちさん
『脳みそに特殊なチップを埋め込めば魔法使いだか超能力者だかにはなる。
  でも、それだけなんだよ。実験と戦闘を繰り返して、寝れば悪夢にうなされて。もう5年も続いてる。やってらんねえんだよぉ!!』

怒りに吠えたてる。
そうか。前回のあの女も、この男も、人工的な魔法使いなのね。
ファンタジーではなくてサイエンスフィクションなら遣りようがある。
脳とか心臓とか、致命傷を与えればカタがつく。
雫ちゃんは考えて手合いの攻撃が始まるタイミングを見極める。
飛び道具を持たない少女の必勝パターンは、やはり銃弾をかいくぐって相手の懐に飛び込んでの攻撃。
神威君はその援護に気を回すはずだから、彼から先制攻撃というのは有り得ないだろう。
行く先の軌道を何パターンか考えつつ、雫はさらに腰を落とした。

『貴様らはハラワタぶちまけて死ね! 今すぐに!!』

そして鈍い射撃音が堂内いっぱいに響き渡る。
少女の目は銃口から吐き出される光を捉えていた。
相手の殺意の矛先が、なぜだか白い筋になって見えて、その軸線から逃れるように動けば弾丸は自然と逸れていった。

『当たらねぇ?!』

驚く声が聞こえた。
銃声が、あと五秒で鳴り止む事が分かった。
そして、感じ取ったのと同じ未来が訪れる。
ああそうか。
スローモーションになった景色の中で、敵機めがけて突っ込んでいく中で、不意に悟った。
病院前での事故を予見できたのも、屋敷のゲートをくぐる時に覚えた不吉な感じも。
あれは別に魔法とか特別なものではなくて。
単に『死の臭い』を読み取っていただけなんだ。
だから今、どこに居てどちらに向かえば自分が安全なのか、手に取るように分かってしまう。
今この時。この部屋で最も安全なのは間違いなく敵の懐で、攻撃を繰り出す事こそが自身の生き残る唯一の手段。
だから雫は真っ直ぐに、脇目もふらずに突進すると躊躇うことなく構えていた拳をトンファーごと突き出した。

ベキョベキョ!!

鉄が悲鳴を上げる。
堅い手応えが腕から伝達されてくる。
けれど、まだ浅い。もう一歩踏み込まなければ装甲を抜けない。
「ちっ」
吐き出された舌打ちは誰の物だったのだろう。
突然感じた嫌な気配。見れば束になった銃口がこちらに向けられている。
雫は本能的に仰け反り、その反動で突き立てた得物を引き抜くのと同時に銃口をも蹴り上げる。
ガガガガガッ。
天井を向いた金属筒ががなり立てる音を聞いた。

『だったら、これはどうだぁ!!』

赤銅機械から発せられた雄叫び。
最大レベルの嫌な予感が訪れた。
鋼の輪郭に青白い光が灯ったかと思えば、爆発的な圧力が放出されたのだ。
全身がバラバラになりそうな衝撃を受けながら、シューティングスターが吹っ飛ばされる。

「きゃああぁぁぁ!!」
『雫!』

地面に激突した少女は幾ばくかの間呼吸困難に陥っている。
身体が動かない。どうにか目だけで敵の姿を捉える。
ゴウンッ、ゴウンッ。
援護射撃のつもりなのか、鉛色の神威君がライフルをぶっ放している。
しかし弾き出された弾丸は敵機の十数センチ手前で停止して、それぞれにひしゃげて床に落ちていた。