父『あれから、本家の人間が何度も来たよ。「鬼子と鬼斬はどこだ!」とな』
ハンニャー『申し訳ございません、足が着くと思い今まで連絡をしておりませんでした。
現在まで旧書庫のある街で隠れ過ごしています。鬼子も仕事等も見つけ…』
ポツポツと、道引鬼を封じてからの事を若般が報告し始めた。本家へ戻ってからの事を…。
???『なんと…では時既に遅く、鬼に取り憑かれてしまったというのか!』
ハンニャー『はい、申し訳ございません。ですが表に出ない様、面と呪符にて封印は致しております』
??『ですが、それらは一時的な物。いつか感情が抑制できなくなる時、解かれてしまうでしょう』
????『そうなっては以前の二の舞じゃ。またこの家も人の世も、鬼に襲われる事になりかねんじゃろう』
ハンニャー『私が責任を持って鬼祓いの指導と封印を行います。どうかご容赦を…』
???『鬼が既におるとならば、精神鍛錬の指導役も付けられんぞ?猫風情が全て出来るのか?』
??『ならばいっそ、仲間の血で染まる前に、楽にしてやるのも優しさとは思わんか?』
数日に渡る議論の中、異例の若さで鬼に憑かれた鬼子の処遇は悪い方にしか傾かない。
…雨が降り出したその日、若般は「鬼斬」を持ち、鬼子を背に屋敷を飛び出した。
犬?『おい…何処へ行くんだ?私達はあの家に仕えるのが使命だろう?』
ハンニャー『お願い、見逃して。あの人達は保身のためにこの子を始末するつもりだわ』
ライトの明かりが、すぐ近くを照らす。犬も含めた追っ手が迫ってきているのだろう。
犬?『…雨が激しくなってきたな。これじゃあ自慢の鼻も効かないかもな』
ハンニャー『あなたは…一緒に来ないの?数世代前に鬼子が私達を拾ってくれたのに…』
犬?『鬼子を、守るため必要な物はあの家に揃っている。家を守るのも、鬼子を守る事に繋がるよ』
ハンニャー『不思議ね…猫は家に付き、犬は人に付くって言うんだけど…じゃあ、さよなら』
父『私の、鬼子を人として大切にして欲しい想いを汲んでくれたんですね。ありがとう』
鬼子『父さん、若般さん、私のせいで色々とご迷惑をかけてしまってごめんなさい』
父『気にすることは無いよ。こうして無事でいてくれて何よりだ。
田中さん、これからも鬼子と仲良くしてやって下さい』
田中『はい!あの…結構鬼子ちゃんを振り回してばかりですけど、これからも宜しくお願いします』
ハンニャー『旦那様、魔祓いの儀式に鬼子のへその緒が必要なのですが頂けますでしょうか?』
父『あぁ、すぐに用意しよう。鬼子、どんなに辛くともこうして支えてくれる人がいる。
その事を忘れるんじゃないぞ。もちろん私もその一人だし、これからも増えるだろうよ』
鬼子『お父さん…有難うございます。私、頑張ります!』
二人は固く抱き合い、出発を惜しんだ。