<>のところは元々非改行のところです。
project light way
2年4月:I-iii(朝ー)
ふぁ〜
案の定興奮してろくに眠れなかったので、バス停でついあくびをしてしまった。少し恥ずかしかったが、他のバス待ちの人々は気にも留めない。当然だが、それはそれで釈然としない。
バスが来た。例によって、車窓を通して大和勇子が立っている姿が見える。バスの始点にある寺の娘だと噂に聞いている。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
学校・学年・クラスが一緒、祐子の苗字は山野だから席は廊下側端列で前後。それでも、割とやかましい学校なので挨拶こそするが、まともに話したことはない。
<>二人とも弁当持ちだが、学校のPCではどうしようもないから、祐子は無線が使えるところで食べるし、勇子も教室で食べてはいないようだ。他の休憩も勇子の方が教室にいない。
<>大体二人とも「話しかけるなオーラ」を出している。そんなだから、挨拶を済ますと祐子は離れた前の席に座った。終点の駅までだから眠りたい。寝る気まんまんでメガネを外して制服の胸ポケットにさした。
大和家が始点付近で、山野家は下ってきて住宅地の真ん中少し上。バスはさらに坂を降りて通勤・通学客を拾っていく。宅地が終わり新市街に間もなくという辺りまで来るともうバスはずいぶん混み合っている。
<>自転車で駅方向へ向かう姿は増えてきたが、駅まではまだちょっとあるからまだ幾人かバスに乗ってくる。
『!』
乗り込んできた客達からかすかだが鬼気が感じられる。集中して探ってみる。
『昨日のオニ!!』
血が逆流した。思わず右手が動き口が少し開く。昨夜のことを思えばこの場で切り伏せたかったが、それではタダの人殺しだ。
初めは入口付近に立っていたが、今は押されて、眠っている祐子の隣にまで来ている。入り口の方を向いても混んでいるから見えるとは限らないし、気づかれるのは避けたい。激情と視認を諦め、落ち着いて鬼の気を調べる。
じっくり調べて気がついたが妙だ。確かに鬼だが、今まで祓ってきた鬼とは随分違う。
『新種?』
今まで存在しなかったものに対する考えとして自然だが、納得はいかない。
『不自然』
いい感じだ。ではどういう不自然さか。こういう思案は苦手だが、今は他にするべきことがない。
『特徴が無い!?』
浮かんだ言葉は普通だが、それが表す考えは異常だった。具体性や個別性を欠いた一般的・抽象的な鬼、鬼の概念みたいなのが憑いている。どんな鬼でも個別の具体的な怨念・怨恨に憑くはずだから異常だ。とはいえ受けた印象にはその考えが最もしっくりくる。
『捕えよう。』
感じたことの説明はうまくいっても、結局それが何を意味しているのかは分からない。手に負えぬ問題だから年長者に相談したいが、引き連れて行った方が話は早い。
<>面に出さないが、父がこうした話を避けたいのは知っている。相談するなら姉だが、家を出て他所に住んでいる。あまり使わない捕縛術を姉のところまで保たせられるだろうか。
ここまで考えたところでバスは駅に着いた。乗り替えだ。