ハンニャー『もし、このまま人里で何の守りも知らず育てば、いつか鬼に襲われるわ』
父親『だから鬼子には座敷牢ですごせと?鬼を祓う術のみ知る事が一人の女の子の生き方として正しいと?』
ハンニャー『…あの子のためでもあるわ。彼女を奪おうと狙う鬼は何度も現れている、それはお知りでしょう?』
父親『そう、その鬼へ襲われた時のために日本家は鬼子を道具の様に扱おうとしてきた!
鬼の血を薄めるため?そのためには子を持つ幸せも、人を愛する幸せも奪うのが正しいと言うのか!』
ハンニャー『…鬼の血を断つ事は新たな「鬼子」を…不幸になりかねぬ子が産まれないためにも必要な事です』
父親『違うだろう?鬼斬を扱える鬼子を日本家が囲い込むためだけに「鬼子」は不幸になっているのだ。
もし鬼であろうと誰もに受け入れられれば、鬼子として産まれる事は不幸の原因ではない!』
鬼子を本家へ連れ帰ろうとするハンニャーに、子を離すまいとする父…そこへ悲鳴が聞こえてきた。
父親『鬼子!どうした………お前、どうしてこんな事に…』
道引鬼『あぁ遅かったなぁ。もうお前の妻も子供も居ない。後は鬼子の手でお前も殺せば…』
ハンニャー『させるかぁ!!喰らえ!!』
若般は人型に化けると懐の札を投げつける。鬼子の体に貼りつき、動きが鈍る。
ハンニャー『あの面は、鬼封じの面…なのよね?…呆けていないで答えなさい!』
父親『あぁ…そうだ。家を出る時にもしものためと渡されていた…どうしてどうしてこんな…』
呻き声をあげる道引鬼は鬼子の体から札を毟り取り始めている。
道引鬼『本家のメス猫か!くそ…あと一歩まで来たというのに…』
ハンニャー『黙りなさい!人を脅かす悪鬼め!静まれ!』
鬼子が角隠しに付けていた面…今はお多福から般若の様相になった面に呪符を貼り祝詞をあげる。
次第に鬼引鬼の力で膨れ上がっていた腕も、大きく伸びた角も収まっていく。
…鬼子ちゃん、鬼子ちゃん!ねねさま…ねねさまぁ…起きてよう。
ゆっくりと鬼子が目を覚ますと、二人が顔を覗き込んでいた。
古い夢を見て、眼には涙が溜まっている。また鬼に心を囚われた悔しさと悲しみ…。
母を亡くした日の想いが、このままでは駄目だと鬼子へ勇気を与える。
鬼子『若般さん、私…あいつを追い出したい。祓いたい。どうすれば良いの?』