鬼子『あの…本当にこんな服を着て行くんですか?』
田中『そうよ?今回の私の本のテーマなんだから…申し訳ないけど、一日それでね』
小日本『ねねさま、とっても色っぽいよ〜』
フリフリとしたミニスカート状態の着物を着せられて、どこかそわそわとする鬼子。
途中の電車は、以前見た街の様に同じ様な格好の人達で溢れてきていた。
第十六話:大発生、モモサワガエル
小日本『暑い〜!人多い〜!…気持ち悪い〜!』
会場に着くなり小日本が心底嫌そうに叫ぶ。真夏の同人誌即売会場は、
大勢の人で溢れており、その入り口に向かってギュウギュウと並んでいた。
鬼子『こ…この列に並ぶんですか?相当時間かかりそうですけど?』
田中『大丈夫よ。今日は買う側じゃなくて売る側だから。ただちょっと遅刻気味かな〜』
荷物を引き摺りながら、出品者向けの入り口に向かう田中さんに遅れまいとついて行く。
人ごみや荷物を掻き分けて、自分のスペースに辿り着くと、そこには既に見慣れた猫が…。
田中『げ…若般さん、何でこんな所に居るの?ていうかそれ反則じゃない?』
ハンニャー『…誤魔化さないでね。あなたが描いた絵で何か起きないか心配で来ただけよ』
田中『だ、大丈夫よ。今日は友達に頼まれた奴を変わりに売るだけだから…』
ハンニャー『それなら良いんだけど…古本のコーナー辺りにいるから何かあったら言うのよ?』
手を振って苦笑いしながら見送ると、大きくため息をついてようやく荷物を開けた。
田中『…やっぱり反則よね。列にも並ばず平気で入ってるし。それにしても勘が鋭いなぁ』
鬼子『え?本当は田中さんの作品を売るんですか?』
田中『そうよ、今回は「太股」にこだわって描いたの!誰にも邪魔はさせないわ…フフフ』
小日本『こらぁ!嘘つきはいけないんだぞ〜!閻魔さまにメッってされるぞ〜!』