project light way:2年4月:I-ii(翌未明ー)
黒い体、赤い瞳、大きく開いた口に、2本の角。
『本成!!』
はあ はあ はあ
目を覚まして息を吐き出す。「本成の鬼と対峙した」というだけの夢だが、過去の記憶と胸の圧迫感がひどく印象の悪いものにしている。胸の圧迫感?
「乳の話をしようじゃないか。」
鶏的な居候が胸の上から話しかけてきた。種の名前としてはヒワイドリになるが、うちの個体は「鳥嶋」だ。下の名前は、あるのかどうかも知らない。左手でのど輪を決めて起き上がる。
「く、首が、抜ける。」
辛うじて出る声で訴えるが、知ったことではない。部屋を出て曲がり縁の戸を開ける。まだ暗い。つっかけを履いて、校庭のようにだだっ広いだけの庭に出る。
武芸に苦手は無く、投擲も得意だ。膂力を抑える呪符を仕込んだ左のアームバンドを緩めて手首まで落とすと、右手に持ち替えて全力でぶん投げる。
「にゅ〜〜。」
悲鳴を上げながら虚空に消えていった。星になったかどうかは分からない。
部屋に戻って携帯を見ると4時だ。予定の起床時間に1時間早い。
『どうしたものだろ。』
昨夜の失態が心に引っかかってひどく億劫だったが、同じ理由で寝付けそうにもない。どうせ朝一はいつも稽古だから、妹が起き出してくるまで一人で稽古に励むことにした。
トレーナーを寝間着にしているので、着替えずに運動靴で玄関から庭に出る。ちょっと寒いが、どうせ動けば暖まる。髪を結わえて、まず柔軟体操だ。体はひどく柔らかい。終えると少し右手を開いて呼ぶ。
「鬼斬」
右手の中に現れた薙刀は楕円の鉄柄に楓紋の金象嵌があしらってある。生成してなくても鬼には違いないから、これを片手でぶん回せる。
しかし、まずは中段に構えて、切先を左に回す。相手の武器を外へ払う動作だ。続いて右に回して、内に払う。前に踏み込んで突く。家芸で最初に教わる動作だ。何かあったらここに戻れと強く言い聞かされている。
3度繰り返し4度目で突く手を速めた。二段突き。以前から突けてたが、今のは感触が軽い。
『いける。』
外、内、本鬼。
三段突き切った。会心の笑みを浮かべる。楓紋初代は撃払突を一息で放ったというから、自分などまだまだだが、それでも嬉しい。妹が起きてきたら弓射の稽古を見てやらなければならないが、それまでずっと突いてよう。
今回はここまで。文章がこの調子なので、なかなか先に進まない。