取り敢えず出だしが書けたので、予告編的に投げます。
I-i
「よーしっ。今日こそはやるぞー。」夕食中だというのに吠えてしまった。
・・・
「勘弁してくれよ、いきなりなんだぁ。」
「何をするのか知らんが、ほどほどにな。」
「何でもいいけど、早くご飯食べて。母さんだって暇じゃないんだから。」
そういうことで、今夜は一大決意してPCに向かっている。
祐子はここ一月ずっとdsを追っている。伝説の日本人ハッカーだ。某企業の不正会計事件で存在が広く知られるようになった。
(非改行)国内外を問わず大学や研究所のネットワークに侵入、様々な分野の研究資料や論文草稿等を読み漁り、研究についてのコメント・侵入手段・対処法を残していくが、dsから他に情報が流れることは無いという。
一月前祐子はdsが残していった問題のファイルを入った先で見た。つまり祐子もハックしていたわけだが、苦労して入った先で「セキュリティーに問題があり過ぎます」といった英文を目にしてちょっとヘコんだ。
(非改行)それ以来気になってdsのことを調べたり、立ち回りそうなところをうろついたりしてみたが、4月になって「居場所」と思しきアドレスが分かった。今夜はそこに入ってみるつもりでいる。
みゃ〜
アラートが鳴った。一月ほど前からあちこち嗅ぎ回っているのがいるので、無断でいくつかハニーポットを置いたのだが、そのうちの一つにアクセスがあった。
『来た。』思いはしたが、慌てて机に戻るようなことはしない。ポットの温め中だ。
『適温。』一旦お湯を捨て、ティーバッグを放り込み、改めてお湯を入れる。アクセスよりお茶の方が大事だ。
・・・
トレイをサイドテーブルに置いて、PCに向かったと思いきや、タイマーをセットしただけで、見てどうもならないのに、ポットを見ている。
みゃ〜ん
ティーバッグを小皿にどけて、AAねこ柄湯呑にお茶を入れる。
『いまいち。』お茶だけは妹にかなわない。タイマーなどに頼っているのがダメなのかもしれない。そうはいっても、ねこには変えられんだろう、ねこには。
それでやっとポットの管理画面に目を向ける。『いい線行ってるけど、ちょっと遅いかなぁ、でもこんなもんかなぁ。』いつまでも構ってられないから仕事をする。入社2年目だが結構忙しいのだ。
み〜
『おわたー。』と思ったら鳴きやがる。入ってきたのだ。いい加減眠いのだが、これは見ないわけにはいかない。
exit
『はいぃ〜。』何がなんだか分からない。片手間にアクセス元は掴んであるから叩いてみる。
『落ちてる・・・。』どういうつもりなのだろうか。何にせよ寝かせてもらえるのはありがたいから、すべてのポットで今回使われた隙をすべて塞いで寝た。他にも隙はあるからまだ入れるはずだ。
はあ はあ はあ
『入れた・・・。』入っただけで感極まって、何もできない。出てすぐhaltした。机を離れてベットに倒れこむ。
『寝れんのかよ?』とはいえ、何もできないなら寝るしかない。
はあ はあ はあ
『何処に消えた?』一度は捕捉したのに、結局逃げられてしまった。探し回って、こんなとこで息を上げてしまっている。
『こんなんじゃダメだ。』姉さんならどうしただろう。心を落ち着けて探知し、見つけ次第何処だろうと構わず踏み込んで斬るに違いない。そもそも一度補足した鬼を逃したりはしない。
『私はダメだ。』振り上げた薙刀を叩きつけようとして思いとどまる。非生物の修復は、不可能ではないが、今の鬼子には時間がかかる。日が登ってしまうだろう。諦めるしかなかった。
comming later
行が長すぎるといわれたので、「(非改行)」のところは元々改行のなかったところです。